パワースポットの代償(バルバトス視点)
「な、何故だ……。なぜ、悉くワシのギルドのパーティーは依頼に失敗しおるのだ!?」
分からん。意味が本当に分からん。
魔法士たちのギルドランクを一斉に上げて、魔法士中心のパーティーで以てして、まさに鉄板の布陣で最重要案件である王宮からの依頼を振り当てたのだが――その殆どが失敗に終わってしまう。
辛うじて我が娘である聖女ティナのパーティーのみ、早期に依頼達成をしてくれたが……それで面目が保てるほど甘い世界ではない。
冒険者ギルドの運営とはクライアントとの信頼関係によって成り立っている。
一つや二つの取りこぼしは仕方ないにしても、片っ端から失敗は致命的だ。
しかも王宮からの直接の依頼ばかりとなるとその時点で我がエルロン・ガーデンの信頼はガタ落ちなのである。
「それに、この記事は何だ!! まるでワシのギルドが! エルロン・ガーデンが不正をしているような論調ではないか!!」
『リヴァリタ王国の名門ギルド、エルロン・ガーデン、ギルドランク不正疑惑により経営権剥奪まで発展か!?』
今回、魔法士のギルドランクを一斉に引き上げたことによってBランク、Aランク魔法士が多く誕生した。
そして、その引き上げた連中はこぞって魔力不足に陥り依頼に失敗している。
その結果――魔法士たちのギルドランクをワシが不正に引き上げて混乱を招いている、という理不尽なイチャモンをつけられることとなったのだ。
「くそっ! ワシのギルドが不正などするものか! ただ、たまたま一時的にパワースポットの効果が薄れておるだけだ。そう、妙な偶然が重なっただけなのだ!」
全く、気分が悪い。
どこのギルドだって、失敗くらいするだろう。それをマスコミは槍玉に上げて――。
ふん……。隣国のエルトナの王立ギルドに新たなSランクか。
あそこは格好つけてAランクの上にSとかいう格付けを作ったんだっけな。
まぁ、伯爵と同等の地位を与える程だ。余程の人材にしか与えられるものではないだろうが――。
『新人Sランク、リアナ・アル・エルロン。初依頼で超危険指定生物を討伐し、王立ギルドにて鮮烈デビューを果たす』
「はぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!? なんじゃこりゃあああああああああ!!」
何で落ちこぼれの無能の名前がここに!?
え、え、Sランクだと!?
まさか同姓同名の別人? んな馬鹿な……!
『伝説の精霊魔術士として、王立ギルドでは実に五年ぶりにSランクスタートを決めたリアナさんは、魔力を魔法士に譲渡し強化出来るというパワースポットのような力と自身の身体能力を飛躍的に上昇させる魔術で、黒龍の覇者を圧倒し……討伐。エルトナ王立ギルドに新たな英雄が誕生したのでした』
せ、精霊魔術士? 古代の伝説の英雄たちが修得していたという特技をあの娘が……。
馬鹿な、馬鹿な、そんな馬鹿な。
あいつは聖女にすら成れないエルロン家の落ちこぼれだぞ。
それにアブソリュートドラゴンを討伐? 超危険指定生物など、Aランクを十人集めても倒せるかどうか分からないレベルの化物をあいつが倒しただと……?
「そして、何よりもパワースポット? あの無能者に魔力の譲渡と強化が出来る能力があったなんて……。そんな馬鹿な話が信じられる、か!」
だが、しかし一致するのだ。あの娘を追放した時期とパワースポットの効果が無くなってしまった時期が。
よく考えてみればエルロン・ガーデンがパワースポットとして認知され始めたのはリアナが誕生した年からだった。
無能者かと思っていたが、あの娘自身がパワースポットの正体だっただと……?
だとしたら、ワシは、ワシは……。如何にも無能ではないか。
「リアナを連れ戻す。エルロン・ガーデンをパワースポットに戻すために。さっそく、使いの者を派遣するか。あの娘もよく知らん国よりも父であるワシに貢献したいと思うだろうし。精霊魔術士としての力が本当にあるなら、低コストで死ぬほど使い回せる! つまり、損害分を取り返せるのだ!」
くっくっくっ、チャンスだ。ポジティブに捉えるとこれはチャンスなのだ。
精霊魔術士、リアナ・アル・エルロン。ワシの娘として認めてやる。
聖女ティナ・ネル・エルロンと共にエルロン・ガーデンの再生に尽力するのだ!
タイトル回収の時間が近付いてきました!
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