依頼達成とその後の話
「初依頼達成、お疲れさん。聞いたぜ、黒龍の覇者の腹に大穴空けてぶっ倒しちまったって」
アブソリュートドラゴンの血を大量に手に入れた私たちのパーティーは依頼を無事に達成した。
しかも、手に入れた血液の量があまりにも多かったので、ボーナスを弾んで貰えるらしい。
アブソリュートドラゴンの血は万病の霊薬と言われる“エリクシール”の材料として必須らしく、かなり単価が高いのだそうだ。
つまり、計らずともアブソリュートドラゴンを討伐したことは決して無駄ではなく私たちの今後の査定にかなり貢献してくれたのである。
『リアナさんのおかげで、魔力が高まって今までにないくらいの力を出せました。精霊魔術士って凄いんですね』
『私は回復担当だったから、暇だった……』
『まぁ、認めてやるよ。お前はSランクに相応しいギルド員だってことを』
とまぁ、こんな感じでカインたちとも仲良くなれたし、万々歳で終わったのかな。
私も思ったよりも戦えたからびっくりした。あんな大きいドラゴンをぶん殴ったんだもんなー。
これで私も憧れていた一人前の魔法使い……
魔法使い……? ドラゴンをボコボコに殴る魔法使いが何処にいるんだよ!?
あっぶなー、騙されるところだった。うわー、マジで本当にこれで満足するところだったよ。
「エルヴィン、あんなの魔法使いの戦いじゃないよ。蹴ったり殴ったりじゃなくて、炎や氷をバーンと出す方法を教えてよ~~」
「もちろん、教えてやるよ。基礎をちゃんと覚えてくれたらな。精霊強化は精霊魔術士の基本戦術なんだ。他の魔法を使うにしても、精霊強化は維持しつつ使わなきゃならない。繊細な魔力コントロールが必要だから、今のリアナが使えるようになるには……」
「要するにまだまだ時間がかかるってこと?」
「そうだなぁ。精霊強化を使っている状態が当たり前って思えるくらい自然に使えるようになれれば次のステップに進もうか」
エルヴィンは気まずそうな顔をして言葉を濁す。
私が思った以上に不器用で理解力不足ってことを短い期間で悟ったからだ。
精霊強化を自然に使えるようなるって、寝たときでも常に維持するくらいだって前に言ってた。
寝ながら使うなんてどうやるんだよ~~。
◆ ◆ ◆
「新人Sランク、リアナ・アル・エルロン。初依頼で超危険指定生物を討伐し、王立ギルドにて鮮烈デビューを果たす、か」
エルトナ王都新聞とやらの記事を読んでいるエルヴィン。
どうやら、私のことが書かれているらしい。
初依頼を達成した反響というか、アブソリュートドラゴンを討伐したというニュースによって私の名前は結構有名になったらしい。
この前、エルヴィンと一緒に新聞を書いている記者さんの取材に応じたときにそう言われた。
精霊魔術士という存在はやっぱり世間では無名だけど、エルヴィンが王立ギルドの宣伝も兼ねて記者の質問に懇切丁寧に答えて、その凄さについて説明する。
横で聞いていた私は、ただ、ただ自分へのハードルが上がることが嫌すぎて嫌な汗をかいていた。
記者の人には、特に半永久的に尽きない無限の魔力を譲渡したり強化したりできるという点がウケたみたい。
新聞にはパワースポット人間として紹介されたりしていた。
そうなんだよな。私の実家のギルドってパワースポットって呼ばれていたけど、あれって私が原因だったんだよなー。
そう考えると父は私を嫌って追い出したけど、それと同時にエルロン・ガーデンはパワースポットじゃなくなったってこと?
今の今まで気付いてなかったけど、父は私を追い出したこと後悔してたりして……って、そんなはず無いか。
妹のティナも聖女になって活躍してるだろうし、清々したと思っているだろう。
「リアナ、この前の活躍のおかげかギルドの運営がお前に予定より早めに挨拶したいんだとさ」
新聞記事を読んだ後、何気ない感じでエルヴィンはギルドの運営者が私に早めの挨拶をしたいと言ってることを伝えた。
ふーん。ギルドの運営が私に挨拶。別に気を使わなくても良いのにな。
私も今回の戦果は出来過ぎだと思ってるし、カインとかみんなの助けがあったおかげだと思ってるし……。
あれ? そういえば、挨拶したいと言われて今さら何だけど――
「ねぇ、王立ギルドの運営って誰だっけ?」
「んっ? バカなこと聞かないでくれよ。王立ギルドだぞ。絵本にも描いてあったろ? 国王陛下だよ。オウルストラ様がリアナに会いたいって言ってんだ」
「ええーーーっ!!」
「うおっ!? 大きい声出すなって、新聞を落としてしまったじゃないか」
「あれ? この記事は……」
国王陛下と謁見しなくてはならないことを聞いて、びっくりした拍子にエルヴィンが落とした新聞の記事が目に入った。
『リヴァリタ王国の名門ギルド、エルロン・ガーデン、ギルドランク不正疑惑により経営権剥奪まで発展か!?』
隣国にある実家のギルドの経営権がヤバいみたいな記事じゃないか。
この国にまで不正疑惑の話が来るって何があったんだろう――。
私は偶然見つけたこっちの記事の方に驚きの全てを持っていかれてしまった――。
いよいよ、リアナの父親にざまぁの影が……。
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