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あなたの取り巻きになりたい

作者: AGEHA

島崎さくら   今日から憧れだった 『辰恵真学園』(ときえまがくえん)の1年生!


この学園に入る為に どれだけ頑張ってきたことか…


中学2年の時 学年順位最下位に近かった私が この学園に行くと決めてからの1年間 

『1に勉強2に勉強 3、4が甘い物で 5に勉強』 と 涙ぐましい努力をして勝ち取った『合格』!


3年間 私の頭で付いていけるか不安はあるけど…

大親友の萌々香と一緒に 乗り越えてみせる!!


だって! 『2人で 憧れのあのお方の取り巻きになる』 という夢があるんだもん!!





中2の夏休み 


私達は 辰恵真学園の近くにあるファミレスにいた 


「ん~~~  美味し~~  やっぱり夏はこれに限るよね!」


『うんうん 限る限る!』


「萌々香 ちょっとちょ~だい? 私のもあげるから」


『いいよ!』


と ちょっとお洒落なかき氷をつつき合っていると 萌々香が座っている後ろの窓に キラッキラのオーラを放つカップルと それを取り巻く集団が横切り 店の中に入ってきた 


私は そのキラッキラのオーラを放つカップルから目が離せないでいると 彼氏さんの方と 目が合ってしまって 私は慌てて下を向いた すると萌々香が


『どうしたの?』


と聞いてきた  私は小声で


「今入ってきた集団見て! 真ん中に座ってるカップル めっちゃ素敵じゃない!?  特に彼女さんの方! でも 見てるの彼氏さんに気付かれたみたい…  今 目が合っちゃった」


と言うと 萌々香は気付かれないように集団を見た   すると


『はっ! うわっ! ひや~~ 何何何何! 素敵~~!!』


と目を見開き 興奮気味で言った


「でしょう!? 高校生だよね! 何処の高校かな?」


と私が言うと 萌々香が はっ!とした顔をして


『ひょっとして 噂の集団じゃない?  辰恵真学園の!』


と言った  それで私も


「はっ! そうかも!!  ううん きっとそうだよ!!  キャ~~~  素敵過ぎる!!」


そう言って私達はしばらく見つめ合い 同じタイミングで コクリと頷いた


この時お互い 同じ考え 同じ思いを抱いていた



☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

 2人で必ず辰恵真学園に入学して 

 憧れのあのお方の 取り巻きになる

☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆





辰恵真学園の噂の集団 それは近隣の中学生の中で広まっていて 誰しもが認める美男美女のカップルを 数人の男女が取り巻く めっちゃかっこよくって めっちゃ素敵な集団の事で 知らない者はいないと言っても過言ではない


そして この噂の集団を目の当たりにした私達は 2人で計画していた夏休みのレジャーの数々を中止し どちらかの家 もしくは図書館で 猛勉強を始めた 2人で辰恵真学園に入学する為に…


萌々香は私と違って頭が良い だから勉強しなくても辰恵真学園に入れる でも 私は下から数えた方が早い程成績が悪い だから萌々香が家庭教師になってくれて 毎日毎日 何回も何回も同じ様な質問をする私を 分かるまで 毎回丁寧に教えてくれた

本当に感謝感謝だった!


そして 受験当日

緊張でガチガチだった私達

2人で辰恵真学園の門をくぐって 生徒玄関に向かっていると 噂の集団が受験生を誘導していた それを見付けた私達は 思わぬサプライズを受けた気持ちになり ガチガチに緊張していた事を忘れ 絶対に合格するぞ!と 闘志が燃え 2日に渡って行われた入試試験を終えた


合格発表は1週間後 

ドキドキ ソワソワと落ち着かない1週間だった


合格発表当日

萌々香と手を握り合って 緊張と恐怖の絶頂の中 合格者発表の紙が貼り出されるのを待っていた

すると 校舎の中から 先生達が現れて 手にしている巻き物を掲示板に貼った


私達は自分の受験番号を探した



「あっ···た!  あった~~~!!」


『私も あった~~~!!』


私達は泣きながら抱き合って喜んだ!


「萌々香 おめでとう! そして ありがとう  萌々香のお陰で合格できたよ!」


『さくら おめでとう!  ううん さくらが頑張った結果だよ!  これで1つ 私達の夢へ近付く事ができたね!  一緒に 夢 叶えようね!』


「うん」

 

と お互いを称え合っていると 後ろの方から


〔合格 おめでとう!  素敵ね お互いを称え合うなんて〕


と 声がして振り向くと


なんと!! 噂の集団が私達を見て微笑んでくれていた!


私達は 涙でぐちゃぐちゃになってる顔を手で拭き 2人同時に


「『ありがとうございます』」


と 深々とお辞儀をしながら返した

すると 私達の憧れのお方が


「ふふっ」


と笑い 


〔あなた達 名前は?〕


と聞いてきた  私達は サッと起立して


「し··島崎さくらです」


『岩田萌々香です』


と言って また深々とお辞儀をした

すると 憧れのお方が


〔さくらちゃんと 萌々香ちゃんね  覚えておくわ  それじゃ4月に 待ってるわね!〕


と言って去って行った


私達はその後ろ姿を見送りながら 放心状態になっていた


随分経ってから私達は お互い見つめ合い


「きゃーーーー! 嘘じゃないよね! 憧れのあのお方に私達 声をかけてもらったんだよね!!」


『うんうんうんうん!! 嘘じゃないよ! 憧れのあのお方に 声をかけられたんだよ!  しかも 私達の名前 覚えておくって!!』


『「きゃーーーー!!  きゃーーーー!!  きゃーーーー!!   嬉しすぎる~~~!!」』


と 私達は人目も気にせず喜んだ




1週間後 私達は中学を卒業した






4月1日 辰恵真学園の入学式


ここの学園の入学式は 他校と違い 在校生達も参加して 生徒会の活動や 部活動の紹介も行われる だから 賑やかな入学式になるのだ


私達の憧れのお方は 生徒会副会長 

そして 彼氏さんが会長で 取り巻きさん達が全員役員だった


だから入試の時 みんなお手伝いしてたのだと この日知った



入学式を終え 教室に戻る為廊下を歩いている時私は 

"憧れのお方の取り巻きになるには 私達も生徒会に入る必要がある!  でも どう考えても私には 性格的に生徒会は相応しくない…

だけど 憧れのお方は3年生 だから 今年しかチャンスがない…

どうしよう…  

萌々香に入ってもらって…  

ううん それじゃ意味がない…  でも…  あ~どうしよう…"


と考え込んでいると 萌々香が


『さくら! さくら!』


と私を呼んだ 私が萌々香を見る為顔を上げると 萌々香の隣に 憧れのお方が立っていて 私は


「えっ!」


と思わず声が出てしまった すると


〔お久しぶりね さくらちゃん  入学おめでとう〕


と 憧れのお方が言ってくれた

私は驚き 憧れのお方に おめでとうと言ってもらえた嬉しさや 私達の事と 名前をちゃんと覚えていてくれた事の感動で 泣きそうになりながら


「ありがとうございます」


と またまた深々とお辞儀をした

すると憧れのお方が


〔実は2人に お願いしにきたの 聞いてもらえる?〕


と言ったので


「はい 何でしょうか?」


と 私が返すと


〔2人共 生徒会に立候補して 私達と一緒に 生徒会の活動に参加して欲しいの 大丈夫?〕


と 生徒会への思わぬお誘い!

私と萌々香は顔を見合せ グッと口を結び 小さく頷き合い


「お誘いありがとうございます 私達でお力になれるか分かりませんが 生徒会に立候補して お手伝いさせてもらいます」


と力強く返すと 憧れのお方は


「ふふっ」


と笑い


〔頼もしい! ありがとう じゃあ お願いね〕


と言って去って行った


私達は無言で また見つめ合い 今度は口元が緩んでしまうのを押さえながら 足をバタバタさせ喜び合った


そして私達は約束通り 生徒会に立候補した




生徒会活動初日


私と萌々香は緊張しながら生徒会室で 憧れのお方が来るのを待っていた


「あー 緊張する!」


『ほんと 緊張するよね』


「ヤバイ 緊張で手が冷たくなってきた」


『私も ほら』


とお互いの手の冷たさを確認し合っていると 会長を先頭に 噂の集団が入ってきた


教壇に(アイ)字に置かれた机の真ん中に 会長の彼氏さん 私から見て右隣に 憧れのお方

私にはその景色が 雛人形の内裏雛のように見えた


"素敵なカップルだな~" 


と思いながら ぼ~っと見ていると 誰かの視線を感じ その視線の方に焦点を合わすと 会長と目が合った!


私は思わず目を反らした


"びっくりしたー! まさか会長に見られてるとは… 気を付けなきゃ…"


そう思っていると 会長が席を立ち


〔それでは 第1回 生徒会会議を始めます  まず 新入生の為に 自己紹介から始めます  では僕から   会長の 長谷川 仁です 1年間 よろしくお願いします〕


と言って会長は 軽く頭を下げ 椅子に座った


私はその様子を見ながら 

"長谷川 仁さんって言うんだ! かっこいい~!  さすが私の憧れのお方の彼氏さんだ!"

と思った


椅子に座った会長は


[じゃあ 次 恩田]


と言うと


[はい]


と憧れのお方が返事をして 席を立ち


〔副会長の 恩田 麗です  よろしくお願いします〕


と言って 会長と同じ様に 軽く頭を下げた



"あぁ 素敵!  ただ椅子に座ってるだけでも素敵  何をしてても素敵! 笑顔なんて最高に素敵!

私もあんな風になりたいな~!"


と 思いながら うっとりと憧れのお方を眺めていたら また誰かの視線を感じて その視線の方を見ると 会長と目が合った


私は目と口が開き そのまま身動きできないでいると 会長の口元が ニヤリと動いた



"えっ! 何 今のニヤリは!?

きっと会長 私の事変な奴だと思った?…

ってか 前々からそう思ってたのかも!  

あっ! だから私の事見てるんだ! 変な事しないか!

ひょっとして私 見張られてる!?

どうしよう~"


と思いながら萌々香を見ると 私と会長の様子を見ていたらしく そぉ~と45度程私の方に顔を向けながら

"さくら ヤバイよー!"

と言ってそうな顔をしていた


その顔を見て私は 落ち込んで下を向いた すると会長が


[じゃあ 班分けをします  クジを引いてもらいます  そのクジには1~5の数字が書いてあります その数字ごとに班分けとします

じゃあ 2年生から引いてください]


と言って グジが入っている箱を机のうえに置いた


2年生がクジを引いた後 私達が引いた

私は小さく畳まれた紙を広げ


「私 1」


と言って萌々香に見せると 萌々香は


『あぁあ 離れちゃった…』


と言って 自分の紙を見せてくれた

その紙には 2 と書いてあった


"ほんと 離れちゃった…  ちょっと不安だな…"



[では 各班のリーダーを発表します]


と会長が言いながら席を立ち 後ろのホワイトボードに書き始めた


1班➡️長谷川

2班➡️恩田

3班➡️#※

4班➡️※◇

5班➡️☆※


私は 数字が書かれた紙を握りしめながら 1班➡️長谷川 の所を瞬きもせず眺めながら


"嘘でしょ!? 私… 会長の班!?

どうしよー!! よりによって何で会長と同じ班なのよ…  私の事 変な奴って思ってるみたいだし… ほんとに どうしよう…

萌々香はいいなぁ~  憧れのお方と同じ班で…"


と 会長が何やら話しているのに 私の耳には入ってこず 羨ましさうな目で萌々香を見ていると


[さくら]


と呼ぶ声がして 私は はっと我に帰り 私を呼んだ声が 憧れのお方でも 萌々香でも無い事に動揺した


[お前 1班だろ!? 早くこっちへ来い]


会長がそう言って 自分の横を指した


私は 動揺が収まらないまま 指された場所に向かった


[全く… じゃあ 1班は主に#※○◇☆.....]


と会長が話しているのに 私は動揺の原因を思い返していた


"会長 私の事呼び捨てした?よね… [さくら] って呼んだよね?  え? 気のせい?  ただ 島崎が聞こえなかっただけ? ん? やっぱ 気のせいだよね…  呼び捨てされる程 会長とは接点ないし!  うん そうだ! 私の気のせいだ!"


と 自分に言い聞かせていたら


[ではこれで 今日の会議を終わります  お疲れ様でした]


と会長が言った   私は サッと席を立ち 萌々香の所に行こうとした時


[さくらは居残り]


と会長に言われた


「えっ!? いっ 居残りですか!?」


[そう 居残り  話し聞いてなかったから]


私は

"バレてた!"

と思いながらも また呼び捨てされた事にドキドキしていた

すると 会長が言った事を聞いていた憧れのお方が


[仁....]


と 名前だけ呼んで じっと会長を見た

すると会長が


[分かってるよ!]


と 答えた


そのやり取りを目の前で見せられた私は 

"凄い! 目だけで何が言いたいのか分かるんだ! やっぱ凄い この2人!"

と興奮していた



[じゃ さくらちゃん お先]


と 憧れのお方が言って 私と会長だけを部屋に残して 扉を閉めた


扉が閉まったのを確認してから会長が


[さて! じゃあ 始めようか!]


と言った   私は


「何をですか?」


と言うと


[尋問]


「尋問?」


[そう 尋問]


尋問と言われて ポケッとしていると 会長は「クスッ」と笑って


[さくらはどうして この学園に入学しようと思ったの?]


と始めた


私は困惑しながらも


「不純な理由ですが 中学2年の夏に憧れる人が現れて その人が この辰恵真学園の生徒だと分かったので この学園に入学しました」


と答えると


[へぇ~ その憧れの人って 誰? 男? 女?]


「えっと 副会長の 恩田先輩です」


と私が答えると 会長は少しがっかりした感じで


[麗か…]


と小さな声で言った後


[うん…  じゃあ 今日はここまでにするよ 帰っていいよ]


と言った  私は


「えっ!? あっ はい では 失礼します」


と言って 逃げるように部屋を出た


"何だったんだろ…  会長 何であんな事聞いてきたんだろ…  それに…  何であんな寂しそう? な顔をしたんだろ…"


と疑問に思いながら 萌々香の所に急いだ 


教室に戻ると 萌々香が真っ先に


『大丈夫だった?』


と聞いてきた  私は居残りの尋問の事を萌々香に話した


『えっ!? 何それ???  会長何で…』


と考え込み出した


萌々香は私と違って 頭がいいだけじゃなく 勘も鋭い

萌々香の分析によると 会長は 私の事 好きなんじゃないか?  と言う事だった


「まさか! それは無いよ!  だって 会長には 私達の憧れのお方がいるんだよ! 知ってるでしょ~が だからあり得ないよ(笑)」


と私が言うと 萌々香が


『いやっ 絶対そうだよ!』


と 不気味な笑みを浮かべながら得意気に言った

私はその笑みの意味が分からず 萌々香を見つめていると


『そのうち分かるよ!』


と私の肩を ポンと叩いた


私は よく分かんないけど 萌々香がそのうち分かるって言ってるんだし いいかぁ!


と 気持ちを切り替えた


この日から毎回 生徒会会議がある度に 私は何故か居残りをさせられ 憧れのお方と 話す事も 側に行くチャンスすら減ってしまい 少し会長の事を恨んでいた


するとある日の昼休み 憧れのお方が1人で 私達の教室に現れた

そして 私にこう言った


[さくらちゃん 理由は話せないけど 仁の事 嫌いにならないであげて欲しいの 仁って不器用だから上手くさくらちゃんに話せてないと思うんだけど とにかく 嫌いにならないであげてね それだけどうしても言いたくて…]


と言った 私はどうしてそんな事を言うのか 不思議に思いながら


「は···い」


と返事をすると 憧れのお方は ほっとした様子で 素敵な笑顔を浮かべ


[よかった…  ごめんね お昼休み中に じゃあね]


と言って 教室から出ていった


私はその後ろ姿を眺めながら


"はい と返事したけど 何であんな事 わざわざ言いに来たんだろ…"

と 思っていると 萌々香が 


『やっぱそうだ 確定だわ!』


と言った 私が何が確定なのか聞くと また不気味な笑みを浮かべながら


『さくらは鈍感だからな…   私も確定の理由を言うわけにはいかないわ!  もどかしいかも知れないけど きっと近いうちに 憧れのお方が言った事と 私が確定した事の意味がわかるよ!』


そう言った




秋の文化祭前日

私達は準備に追われていた

ふと気付くと 外はもう暗くなっていた

その時会長が


〔みんなお疲れ様 明日はいよいよ文化祭です 僕ら3年は 大きなイベントとしては最後の生徒会活動です 悔いを残さないように 頑張りましょう! そして いい文化祭にしましょう!〕


と言った この言葉を聞いた時 はっ! とした


"そうか! もうすぐ憧れのお方と一緒にいられる時間が 終わってしまうんだ!"

そう思うと 寂しさと 悲しみとが私の胸を締め付けてきた

私は作業していた手を止めて 俯いたままぼーっとしていると


[さくら ちょっと手伝ってくれ]


と言う会長の声がした

私がその声に反応して ゆっくり顔を上げると 会長が私の前まで来て


[おいで]


と言って私の手を取り 生徒会室を出て 同じ階にある 音楽室に連れてきた

そして 私の目の下を親指でなぞり


[何で泣いてるの?]


と聞いてきた


泣いてる? 

私はこの時 自分が泣いている事が分かっていない程 放心状態だった事に気が付いた

会長は 何も答えない私の頭に手を置き


[さくらに泣かれると 俺…]


と言って黙った

そして どれくらいの時間が経ったか分からないけど 私の頭に置いていた手を離し 


[その涙が 何の涙なのか分かってるけど… 本当は明日 話すつもりだったんだけど…]


そう言って少し黙り  


[さくら · · ·  俺と付き合ってください  返事は 今は要らない!  振られるの分かってるから! だから 俺が卒業する迄に 俺の事を知っていって それで ちゃんと考えて 返事して欲しい]


と いきなり告白された


急な告白に 私の脳がついていかない!

でもこの時 萌々香が "会長は私の事 好きなんだと思う"  と言っていた事を思い出した


"萌々香の予想通りだ!

でも どうして? 会長には憧れのお方が…"


そんな事を考えていると 


[あっ! そうだ!  誤解があるようだからこれだけ言っとくよ  俺と麗の事 恋人同士だと思ってるだろ?  実は俺と麗は 二卵性の双子の兄妹なんだよ!   俺達の両親は 俺達が小学3年の時に離婚して 麗は親父 俺は母親に 母親は離婚と同時に旧姓に戻したから 名字が違うんだよ!  知らなかっただろ?   まあ 知ってるのは 生徒会の3年のメンバーだけだけどね!  だから 余計な気を使って俺を振らなくてもいいって事だから!]


と会長がカミングアウトした


衝撃的な事実を聞かされた私は 憧れのお方ともうすぐ会えなくなる事の寂しさと悲しみを忘れて 今までの2人の距離感や 言葉を交わさなくても分かり合っている様子を思い返しながら そう言うことだったんだ… と納得していた  すると


[涙も止まったようだし 戻ろうか]


と言いながら会長は 生徒会室の方を指差した

私はコクリと頷いて 会長の後ろを付いて行った



生徒会室に戻ると 憧れのお方と萌々香が椅子に座って話をしていた


[皆は?]


と会長が言うと 憧れのお方が


[先に帰したよ]


と答えた そして


[そっか じゃあ 俺達も帰ろうか]


と会長が言って 私達は学園を出た

途中で会長達と別れた私と萌々香は 何故か何も話さず ただ お互い何かを考えていた




次の日 学園祭当日



昨日の突然の告白と 衝撃的な事実のせいで ほとんど眠れなかった私は 眠い目を擦りながら家を出た すると 丁度萌々香も 私の家の玄関の前にいた


"萌々香も何だか眠さう…"

 

私達は学園に向かいながら 昨日の事を話し始めた


会長が私を連れて生徒会室を出て行った後 憧れのお方が 他の皆を帰し 私が会長から聞いた 2人は双子の兄妹だと言う事を聞いたらしい…

まさか そんな事だったとは…と 凄く驚いたと言っていた


その話をした後 私は会長に告白された事を萌々香に話した


『やっぱりそうだったでしょ!? だから言ったじゃん!  それで さくらはどう返事したの?』


「まだ してない…  会長 今返事は要らないって言って…」


『そうなんだ』


「うん 会長が卒業する迄に 会長の事をよく知って よく考えて返事して欲しいって…」


『その通りだね! さくらは会長が さくらばかり居残りにするのは さくらに焼きもちを焼いているから意地悪してるんだって 誤解してたからね  本当は 2人でいる時間を作りたかったからだったんだね!  憧れのお方が言う通り 会長って不器用だね(笑)』


「そうなのかもね…」




3日間に渡って行われた学園祭も終わり 生徒会のメンバーは全員生徒会室で打ち上げをしていた

色々大変だったけど 終わってみると楽しかったと思え 凄く充実していた3日間だった

そして 色んな会長の姿が見れた3日間でもあった


打ち上げも半ば 私はお手洗いに行くため 生徒会室を出た

すると 憧れのお方も後から出てきて


[さくらちゃん お手洗い? 私も一緒に行ってもいい?]


と小走りで私の所まで来た


「はい 一緒に行きましょう」


[ありがとう  ねえ さくらちゃん 仁 ちゃんと気持ちをさくらちゃんに伝えた?  不器用だから ちゃんと伝えたのか心配で…]


「(笑) はい ちゃんと告白してくれました」


[そう!?  よかった…  それで… ]


「返事はまだしてないです  まだしなくていい 卒業する迄に ちゃんと会長を知って ちゃんと考えて返事して欲しいって言われたので」


[そうなんだ こんな風にお願いしたんだ…  そうだね 仁の言う通り ちゃんと仁を知って ちゃんと考えて返事してあげてください]


と 憧れのお方が私に頭を下げた


「止めてくださいよ そんな事!  ちゃんと 会長の事を知ったうえで 返事しますから」


[うん ありがとう]





私は 憧れのお方にお願いされた事を 萌々香に話した


『何か 少しプレッシャーだね そんな風にお願いされると…  さくら 大丈夫?』


「うん 大丈夫だよ!  ただ 会長が羨ましく思えたわ  だってさ 私達の憧れのお方に あんなに心配されてるんだよ!」


『(笑) さくらがお気楽な子でよかったよ…  憧れのお方の気持ちに答えるためにも ちゃんと会長を知って 返事しなきゃね』


「うん」




憧れのお方達との 最後の生徒会会議


[今日で 僕達3年生の生徒会役員としての活動が終わります  今まで こんな頼りない会長の僕に 付いてきてくれて 力を貸してくれて ありがとう  感謝します…  #※○#※○····]


会長の挨拶を聞きながら私は 複雑な思いになっていた


"そっか… ずっと一緒にいれる訳じゃ無いんだよね!

こんな大事な事 忘れてた…  

なんやかんやと 側に居てくれて 

いつの間にか それが当たり前になってた…

当たり前じゃないのに…

やっと 気付いた 自分の気持ちに…

会長に 返事をしよう…"




「会長 あの…  この後少し時間ありますか?」


[うん あるよ]


私は会議の後 音楽室で待ってると伝えた



「えと…  あの…  やっと 自分の気持ちが分かりました   私  会長の事  好きになったみたいです   私で」


とまで言った時 会長が私を抱き締めた

そして


[ありがとう 嬉しいよ  本当に嬉しいよ ありがとう 本当に ありがとう]


と言った 


「私こそ 返事待たせてしまってごめんなさい よろしくお願いします」


[こちらこそ]




会長と付き合うようになって 憧れのお方から聞いた話しがある


私と萌々香があの日 あのファミレスで見掛けた噂の集団は 偶然じゃなく 必然だったっていう事


私達が中2になってすぐの頃 会長が通学で利用しているバスの中から 私と萌々香を見掛け いつも楽しそうに笑っている私が気になりだして 好きになったって事


その事を会長は 憧れのお方に話し 憧れのお方が どんな子なのか見たいと言って あの日 あのファミレスに見に行ったという事


そして この学園に入学した私達を 生徒会に誘い 会長との接点を作ったという事



そもそも私がこの学園を目指したのは 憧れのお方に出会い 憧れのお方の取り巻きになる為だった

夢だった取り巻きにはなれなかったけど 今 私の側には 憧れのお方と その回りにいた人達が 私の回りで談笑している

もちろん この中には萌々香もいる

私にとっては 凄く不思議な光景

でも とても幸せな光景


こんな結果になるなんて 思いもしなかったけれど きっと ずっと私は 私の隣で優しく笑う彼の事を 愛していくんだろうと確信している




「会長 卒業 おめでとうございます」


[ありがとう  けどさくら いつまでそうやって会長って呼ぶんだ!?  それに その敬語も いい加減やめろよな!]


「···だって どう呼べばいいか…」


[仁でいい]


と会長が私を見ながら 眉をひくっとさせ 目で "さあ 言ってごらん ほら 勇気を出して 早く"  と言っている


私は恥ずかしさを胸に押し込んで 勇気を出して言った




「じ···ん  卒業 おめでとう」




         -完-



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