立ちはだかる悪意!吠えろ怒りの龍鉄拳!! 3-B
とりあえず2人ほど黙らせた。
これで引き下がってくれると楽なのだけども。
「スラッシュ!」
「ハンマーフォール!」
「フェイクアタック!」
3人同時に武器を振りかぶって仕掛けてきた。
まぁ彼等から見ればか弱い乙女にしか見えないだろうから引き下がったりはしないよね。
か弱い乙女にしか見えないからね、ほんと。
右肩側から袈裟懸けに振り下ろされた長剣を左掌で逸らして躱し。
頭上から振り落とされた戦槌を半身を捻って避け。
突くと見せかけて横凪ぎに変化した短剣を腰を落として潜り込むように回避する。
刹那。
躱されたと目を見開いた3人に小さく言葉を突き付ける。
「斗南無敵が龍鉄拳! 拳士リリィ推して参る!」
すっ……と息を吸い、短く、鋭く咆える。
「ちぇい!」
腰を落とした体勢から、体を伸ばすように立ち上がると同時に左足で地面を強く踏みつけ、その大地からの反発力を右拳に乗せて突き上げる。
左足から右拳までを直線としたその一撃を天に向かって振り上げた。
「グゲッ!」
どごん! と空気を震わす打撃音。
武器を振り下ろしたままでがら空きだった戦鎚使いの顎を目掛けての撃ち上げた拳が、相手の体を私の頭より高く打ち上げた。
「とぉ!」
「ギャッ!」
1人目の身体が地面に落ちるより早く。
ぶん! と風切音と共に右拳が唸る。
重心を入れ替え右足で踏み込むと同時に、その突き上げた右拳を体重を乗せて振り下ろし、長剣持ちの脳天を拳底で殴りつける。
お辞儀をするような格好で崩れ落ち、勢いよく地面に叩きつけられた男は、派手に頭を地に打ち付けると跳ね返るように仰向けに倒れていった。
打ち上げられた戦鎚使いと地面で跳ねた長剣使いが同時に地面へと倒れ込む。
お互いが覆いかぶさるように折り重なって寝転がると、そのまま動かなくなる。
「なん……っ!」
残った短剣使いに左掌を突き付け、右拳を振りかぶる。
龍鉄。
攻を司る右拳と防を司る左掌の構えで相手と向かい合う。
「て……てめぇ……ッ!」
強敵と見たか、短剣使いが慎重に得物を構え直す。
無言で手首を反し左掌を上に向けると、指をくいくいと曲げ挑発してやる。
言葉はなくとも「かかって来い」のジェスチャーは通じたようで、改めて短剣使いが手にした武器を振りかぶった。
「クソがっ! フェイクアタック!!」
叫びと共に突き出された短剣が私の顔横をかすめると共に刃の向きを変え、横薙ぎの斬撃へと変化する。
私は剣筋の変化より早く相手の懐に肉薄。
相手の喉に右手の親指と人差し指、中指で鉤を作って掴みかかり、さらに右踵で相手の膝裏を打ち据えながら足を払って投げ飛ばす。
「ほあちゃ!」
「グバァ!」
しこたま背中から地面に叩きつけられ息を詰まらせた短剣使い。
その鳩尾めがけ、倒れ込むように体重を乗せたトドメの肘を落とす。
私の肘を中心に逆ヘの字に四肢をぴんと伸ばして痙攣していたが、白目を剥くと共に脱力して地面に横たわるように意識を失う。
「フェイントかけますって宣言しながらフェイントかけて引っかかるわけないでしょ?」
最後の1人が動かなくなるのを確認してから残心を解き、ゆっくりと立ち上がった。
ぱんぱんと服についた土埃を払うと、意識を失っているのは判ってはいたが一言言ってやる。
「これに懲りたら二度と他人を見下すような物言いはやめなさい。くだらない人間になりたくないのであれば、ね」
くるりと振り返ると、まだ呆然と成り行きを見ていたモリーに向けてウインクひとつ。
「こう見えて、私も結構強いのよ?」
◇◇◇
次回!
悪辣な帝国兵を歯牙にもかけず。
次の街へと向かう2人にさらなる困難が降りかかる。
魑魅魍魎かその姿。闇に潜む魔獣が吠える。
鉄拳乙女のドラゴンロード ~没落皇女は奥義秘伝書を読み漁る~
第4話「金色の咆哮! 獣の影が襲い来る!!」
「斗南無敵が龍鉄拳! 拳士リリィ推して参る!」