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怪獣バトル、レディ………ゴー!

挿絵(By みてみん)


古代怪獣 ティアマト

深海龍 ヨルムンガント


レフェリーロボット ジャガーアローン


謎の女性


登場

 あっっっという間に一週間は過ぎ去って…………


 ついに、芹沢優助とエミリア神宮司生徒会長との怪獣バトル当日を迎えたのだった。




 雲一つない清みきった青空に、白い煙だけの花火が複数上げられる。


 大戸島高校のグラウンドには全校生徒と教師一同……のみならず、

生徒の保護者を初めとする近隣住民の方々までもが観客として集まっていた。


 バトルフィールドであるグラウンドの周囲には、食べ物の出店や屋台等が立ち並び、


アイスクリームや缶ジュースを売り歩いている人や優助とエミリアのどちらが勝つかの賭けをしている人までいる……


 まるでお祭りのような騒ぎようだった。


『……ついにこの日が訪れました!大戸島高校生徒会・エミリア神宮司生徒会長と『大戸島高校のパシリ怪獣使い』と呼ばれる2年生・芹沢優助君との、怪獣研究部の存続をかけた怪獣バトル!果たして芹沢君は数えきれない程の連戦連敗記録に終止符を打ち、怪獣研究部を廃部の危機から救えるのか!?本日の実況は私、大戸島高校校内放送部所属・立花 ゆりねが、大戸島高校運動グラウンドよりお送りいたします!そして、解説は……』

『大戸島高校新聞部『大戸島高日報』校内イベント欄担当の真城(まき) 小太郎(こたろう)です。よろしく~♪』


 なんと、実況役と解説役までいた。

 まるでプロレス興行そのものだった。


『なお、今回の怪獣バトルは大戸島高校公式Webサイト並びに公式SNSより、全世界同時生配信されております』

『いやぁ~、生徒会長もこんな公開処刑紛いのバトルを全世界に公開するなんて……本気みたいですね~』

『さて……現在の『校内オッズ』は、エミリア生徒会長:8に対して芹沢君:2という状況になっています』

『まぁ……芹沢君のこれまでの怪獣バトルの戦績から言えば、彼の勝利に賭ける人が2割も存在する事の方が凄いと言えるでしょうね。もしくは大穴の逆転勝ち狙いでしょうか?』

『さぁ、まもなくバトル開始!果たして芹沢君は、生徒会長相手にどう戦うのでしょうか?』


☆☆☆


 その頃、肝心の優助はと言うと……


「……ハァアアアアアアア」


 ……グラウンド横に用意された選手控え室代わりの仮設テント内のベンチに腰掛け、

頭を抱えながら深い深ぁ~いため息を漏らしていたのだった。


「ユー君、大丈夫?」

「……あんまり大丈夫じゃない」


 不安そうに優助を見つめる山根笑子からの問いかけに、優助はまたもため息を漏らす。


 まだバトル前だと言うのに、優助の顔色はすでに惨敗したかのように暗くなっていた。


「……まさか、生徒会長がこんなお祭り騒ぎにするなんてねぇ」


 その隣では、松宮カナエ部長が外の様子を眺めてながら同じくため息を漏らす。

 優助のようなプレッシャーによるため息ではなく、精神的な疲れによるため息だった。

 

「……よぉ、優助。大丈夫か?」

「ガウゥッ」


 重苦しい空気に包まれつつある仮設テントに、尾形秀一とそのパートナー怪獣であるフェンリル(大型犬サイズ)が入ってきた。


「あ、シューちゃん」

「シューちゃん、遅いよぉ~?」

「……だから、『シューちゃん』は止めろって」


 優助と笑子から『シューちゃん』呼びされて、秀一は苦虫を噛み潰したような顔になった。


「いやぁ~、悪いね秀一君。わざわざ協力してくれて……」

「あ、いえ……別に大丈夫です……」


 カナエからねぎらいの言葉をかけられ、秀一はばつが悪そうに苦笑いをした。


「ん?どうかしたかい、秀一君?」

「いや、その……普段優助や笑子から『シューちゃん』、『シューちゃん』呼ばれているから、『秀一君』って改まって呼ばれると、こそばゆいというか……」

「あ、じゃあ私も『シューちゃん』って呼んだ方が良かった?」

「それは嫌です絶対に」

「……わがままだね、君は。まぁ良いけどさ」


 秀一の反応にカナエは唖然となったが、すぐに気を取り直して優助や笑子に向き直った。


「……さぁ!それじゃあ入場の準備だよ!」


☆☆☆


「……」


 校舎側に近いグラウンドの隅。


 そこにリボンのついた鍔広帽子を被り、肩から水筒をぶら下げた白い長髪の女性が一人で佇んでいた。

 一週間前、河原で優助にアドバイスを送ったあの謎の女性だった。


「……」ズズッ……


 女性は水筒の中身を飲みながら、バトルが始まろうとしているグラウンド中央を静かに眺めていた。


 帽子の鍔から覗く目は、まるで数えきれない程多くの戦いを経験してきた歴戦の戦士のように鋭く、

 気の弱い者ならば、見ただけで竦み上がってしまいそうな雰囲気だった。


☆☆☆


『……さぁ!それでは、選手入場です!!』


実況の立花ゆりねの宣言と共に、

 まずエミリアと彼女に率いられた生徒会役員達がグラウンド東側に設置された青いカーテンの入場ゲートからグラウンドに姿を現す。


 入場曲として流れる音楽は、アニメ『タイムボカンシリーズ タイムパトロール隊オタスケマン』のオープニング主題歌『オタスケマンの歌』だ。


「キャー!会長!!」

「こっち向いてぇー!!」


 軽快でワクワクするようなBGMに合わせて入場するエミリアは、まるで舞踏会に向かう貴婦人のように優雅で瀟洒な雰囲気を漂わせており、

自分に向けられた黄色い声援に微笑みながら手を振って答える程に余裕満々だった。


 続いて、グラウンド西側に設置された赤いカーテンの入場ゲートから、優助とその愉快な仲間達が姿を現す。


 入場曲として流れる音楽は、アニメ『タイムボカンシリーズ ゼンダマン』のオープニング主題歌『ゼンダマンの歌』だ。


「芹沢ぁぁぁ!!」

「俺はお前に学食の無料(タダ)券半年分賭けたんだ!負けたら承知しねぇからなぁー!?」

「ははは……」


 同級生からの声援……もとい、脅迫染みた叫びに優助は苦笑いを浮かべると共に乾いた笑いを漏らす。

 余裕満々なエミリアとは対照的に、優助は採用面接直前の就活生のように緊張でガチガチになっていた。


 そこへ一緒に入場している秀一が耳打ちする。


「……とりあえず深呼吸しろ。大丈夫、あれだけみっちり特訓したんだ。勝つにしろ負けるにしろ、全力を出せば良いだけだ」

「あ、うん……ありがと、シューちゃん」


 秀一からのアドバイスを受け、優助は歩きながらゆっくりと深呼吸して息を整えていく……


「どうでもいいけどさぁ、何で入場曲がタイムボカンの曲なわけぇ?」

「副会長さんの趣味らしいよ」


 ……一方、優助と一緒に入場している笑子とカナエはどうでも良い話題で雑談していた。


そしてついに、優助とエミリアはグラウンドに並び立つ。

 バトルフィールドであるグラウンド中央を境にして、優助とエミリアは向かい合った。


「芹沢君、逃げずにここまで来た事は誉めてあげましょう……けれど、たかだか一週間足らずの特訓で連敗記録から抜け出せると思っているのならば、それは『大間違い』だと言って差し上げますわ」

「……」


 エミリアからの圧力に優助は気押しされ、ゴクリと大きな音を立てながら唾を飲み込む……と、優助の肩に何かが置かれた。


「?」


 振り向けば、笑子や秀一、カナエが優助の肩にそれぞれの手を置いていたのだ。


「大丈夫だよ、ユーくん。ボクらがいるから」

「『勝つ事』にだけこだわり過ぎるな。全力で戦えば良いだけだ」

「負けたって怪獣研が廃部になるだけだからね。硬く考えなくて良いからさ」

「みんな……」


 幼なじみ二人と先輩からの言葉に優助の胸は熱くなり、

首から下げられた『絆の鱗』を無意識に握りしめていた。


「スゥ…ハァ…スゥ…ハァ…」


 優助は大きく深呼吸をすると、自身の頬を叩いて喝を入れる。


 そして、ジャケット裏のホルスターから自身のアドウェンテスを引き抜き、改めてエミリアに相対した。


「……よし!それじゃあ始めようか会長さん!」

「……えぇ、望むところですわ。と、その前に……」


 エミリアは自身の左手首に巻かれた腕時計(スマートウォッチ)を確認する。


「……そろそろの筈ですが」

「……えっ?何が?」


 その時だった。


『ハーハッハッハッハッハッ!!!』


 どこからともなく高笑いが聞こえてきたのだ。


『おぉっと!この笑い声は!?』


 実況のゆりねも席から立ち上がり、周囲の観客にもどよめきが広がる。


「あっ!あれ!」


 観客の一人が指差す青い空の一点で、『何か』がキラリと輝き、同時に轟音が響き渡る。

 

 よく見れば、それは赤青黄色の三原色でカラーリングされた人間大の小型ロケットだった。


 ロケットは大戸島高校のグラウンドへまっしぐらに飛んでいき……地面に激突する直前で形を変える。


 翼やエンジンが折り畳まれたり収納されたりして、

代わりに人間のような手足や頭部が飛び出る。


 変形が終了すると、グラウンド中央には赤青黄色のトリコロールでカラーリングされたクドイ顔をした人型ロボットが着地していた。


ロボットはポーズを決めながら名乗り口上を力強く叫ぶ。


「ひとーつ!贔屓は絶対せず!

ふたーつ!不正は見逃さず!!

みっつ、見事にジャッジする!!!

怪獣バトル公式レフェリーロボット・ジャガーアローン!ここに見参!!」


『なぁーんと!ここで、国際大会やプロトーナメント等の公式戦でお馴染みのレフェリーロボット『ジャガーアローン』が登場だぁ!!』

『おぉー!!』


 ゆりねの叫びと共に観客達は歓声を上げ、トリコロールのカラーリングとクドイ顔をしたロボット……ジャガーアローンも観客達に向けて手を振るのだった。


「ほ、本当に本物のジャガーアローンだ……」

「スゴーイ!ボク、生で本物見るの初めて!!」


 突然のジャガーアローンの登場に、優助は眼鏡をずり落としながら目を丸くし、

 笑子は小学生男子児童のように目をキラキラと輝かせた。


 一方で、カナエと秀一は困惑を隠せなかった。


「け、けど……な、何でジャガーアローンがここに……?確か、『ネットの公式ウェブサイトで申し込みをすれば、アマチュアの草バトルのレフェリーも引き受けてくれる』っていうのは聞いたことあるけど……」

「だとしても……誰が申し込みを……」

「……(わたくし)ですわ」


 秀一の疑問に答えたのは誰あろう、エミリアだった。


「どうせ怪獣バトルをするのであれば、中立かつ公正な立場の方に審判をお願いした方がよろしいかと思いまして……まぁ、おかげで今年度の生徒会予算の半分が飛びましたけれど」

「か、会長さん……普通そこまでやる……?」


 エミリアの用意周到さと念の入りように、優助は背筋に季節外れな寒気を感じたのだった。


「では審判も到着しましたし、早速始めましょうか。ジャガーアローンさん、よろしくお願いいたしますわ」

「うむ!任された!」


 ジャガーアローンはエミリアに向けてサムズアップすると、グラウンド脇へと移動し、右手を高々と上げる。


「それでは、双方ともパートナーを出しなさい!」

「ほら、ユーくん」

「あ……よ、よぉ~し!」


 ジャガーアローンの登場に調子を狂わされた優助だったが、

 笑子に促されつつ、自分のアドウェンテスを掲げる。

 同時にエミリアも自身のアドウェンテスを構えた。


「ティア!出てきて!」

「ヨーミー!行きなさい!」


『サモン・モンスター!』


 アドウェンテス画面に表示されている『SUMMON(サモン)』アイコンをタップすると、

 アドウェンテス内部で電子データ状態で収納されているパートナー怪獣が実体化する。


  優助とエミリアがそれぞれ構えるアドウェンテスから光る球体が放たれると、

 それは瞬く間に巨大な怪獣へと姿を変え、地響きを轟かせながらグラウンドに降り立つ。


「グガアアアアアア!!」


 優助側に立つのは、後頭部から山羊のような角を生やしたオーソドックスな黒い二足歩行恐龍型怪獣……『古代怪獣 ティアマト』(ニックネーム:ティア)。


「シャキャアアアアア!!」


 対するエミリア側に立つのは、ウミヘビと東洋風の龍を掛け合わせたかのような細長い体を持った爬虫類型怪獣『深海龍 ヨルムンガント』(ニックネーム:ヨーミー)。


「グガアアアアアア!!」

「シャキャアアアアア!!」


 ティアマトとヨルムンガントは唸り声を上げながら互いに互いを威嚇しあう。


 役者が揃った事を確認すると、ジャガーアローンは開戦を告げた。


「怪獣バトル、レディー……ゴー!!」

今回初登場の『ジャガーアローン』について軽く解説


イメージCV:遊佐 浩二

(主な出演作:『仮面ライダー電王』のウラタロス、など)


モチーフは『ビーロボカブタック』の『キャプテントンボーグ』とアニメ版『メダロット』の『ミスターうるち』。

決め台詞もキャプテントンボーグのパクr……もとい、オマージュである。


名前はテレビアニメ版に登場して現在知名度向上中の『ゴジラシリーズ』ほぼ唯一の人型ロボットヒーローキャラクター『ジェットジャガー』とその原型『レッドアローン』。

派手なカラーリングと『クドイ顔』もジェットジャガーのオマージュ。


ロケットから人型に変形するのは『マグマ大使』と僕が一番好きなアニメ『コンクリート・レボルティオ~超人幻想~』に登場する『人間衛星アースちゃん』のオマージュ。

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