怪獣使いの少年
古代怪獣 ティアマト
原始怪獣 ブラッドザウルス
登場
都立大戸島高校-
午後の授業も終わり、帰りのホームルームも間近な夕暮れ時……グラウンドで2体の怪獣が睨み合っていた。
「グガアァァァァ!!」
一方は、後頭部から山羊を思わせる角を生やした黒い体色のオーソドックスな二足歩行恐龍型怪獣……『古代怪獣 ティアマト』。
「ウルガアァァァァ!!」
対するは、ワニとトカゲを掛け合わせたような四足歩行恐龍型怪獣……『原始怪獣 ブラッドザウルス』だ。
双方の足下にはパートナーである人間……大戸島高校の男子生徒が並び立っていた……とは言っても、ブラッドザウルス側にはパートナーの他に応援団というか、サポーター的な集まりが複数名いるのに対して、ティアマト側にはパートナーである眼鏡をかけた細身の少年しか居なかった。
グラウンドに残っていた生徒達は例外なく全員観客となっており、校舎にいる生徒達も窓からにらみ合う2体の怪獣の様子を眺めていた。
「……怪獣バトル!レディー……ゴー!」
レフェリー役の男子生徒の叫びを合図に、バトルが始まった。
「ブラッディ!バクテリア液だ!」
「ウルガアァァァ!」
先手を切ったのはブラッドザウルスだった。
口から液体……現在では絶滅した古代バクテリアの混ざったバクテリア液を水鉄砲のように勢いよく吐き出した。
「ティア!ガード!」
「グガアァァァ!!」
ティアマトは両腕を顔の前で交差して、バクテリア液を防いだ。
「尻尾打撃だ!」
「グガアァァァ!」
続いて、ティアマトが太い尻尾を鞭のように振り回してブラッドザウルスに叩きこんだ……だが、
「ブラッディ!噛みつけ!」
「ウルガアァァァ!」
ブラッドザウルスは尻尾の一撃を避けると、ティアマトの尻尾の半ば辺りに噛みついた!
「グ!?グガアァァァ!?グガアァァァ!?」
「ティ、ティア!?」
ブラッドザウルスに尻尾を噛み付かれたティアマトは、苦痛に顔を歪ませながら尻尾を振り回してブラッドザウルスを振り払おうとするも、ブラッドザウルスはまるでスッポンのように離れなかった。
「バクテリア液だ!」
「ウルウルウル!!」
ブラッドザウルスはティアマトの尻尾に噛みついたままバクテリア液を吐き出し、ティアマトの体内にバクテリア液を流し込んだ。
「グガッ!?グ、グガァ……」
ブラッドザウルスのバクテリア液が体内に侵入し、ティアマトの顔色……どころか、体全体の色が紫に染まっていき、そして……
「ガアァァァ……」
ティアマトは地響きと砂ぼこりを上げながらグラウンドにうつ伏せで倒れこんだ。
レフェリー役の男子生徒が倒れこんだティアマトに近寄ると、腕の指を一本持ち上げる……しかし、持ち上げられた指はすぐにまた倒れてしまった。
怪獣バトルにおいて、対戦相手の怪獣を先に気絶or戦闘不能状態にした方が勝者となる。すなわち……
「ティアマト戦闘不能!ブラッドザウルスの勝利!よってこの勝負……ハルの勝利!!」
『うおぉぉぉぉぉぉ!!!』
勝敗が決まり、観戦していた生徒達が歓声を上げた。
「ウウゥ……」
「ティ、ティア!ティア大丈夫!?」
一方、敗北してしまったティアマトにパートナーである眼鏡の少年……芹沢 優助が駆け寄った。
ちなみに『ティア』とは、このティアマトのニックネームである。
「ウウゥ……」
ティアマトは苦しげなうめき声を上げながら優助を見ていた。
その姿を見ているだけで、優助の胸は締め付けられていくようだった。
「あぁ!戻って!早く戻って!!」
慌てて優助はアドウェンテスを操作し、ティアマトを収納した。
「はぁ……ごめん……ごめんねティア……ごめんね……」
ティアマトがアドウェンテスに収納されると、優助はアドウェンテスを額に当てて座り込み、何度も何度も内部のティアマトに向けて謝罪の言葉を口にしたのだった。
「……うんじゃあ芹沢ぁ!体育用具の片付け、よろしくなぁ!」
「あ……あぁ、うん、分かったよ」
怪獣バトルの勝者は敗者に一つだけ命令ができる(※ただし『生命に危険が及ぶ行為の強制』、『現金の譲渡』、『犯罪行為の強要』の3つはNG)。
敗者たる優助は勝者からの命令に従うしかなかった……。
芹沢 優助
大戸島高校2年。
怪獣バトルの戦績:連戦連敗中
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