プロローグ2(又はここもさわり?)
プロローグはじんわり続きまする。申し訳ないのぅ…。
〜とある港町にて〜
その日は朝から天候のすぐれない日であった。
ある若い夫婦は朝から自分たちの小さめの畑で精を出して働いていたが妻の方は直ぐに夫に休むように言われていた。
「エヴァ。流石に今の状態で働くのは無理だよ」
「そんな事ないわよアディム。産婆さんからも適度に動いた方がいいって言われてるじゃない」
妻のエヴァは妊娠しており臨月も近いというのに未だに畑仕事をしようと意気揚々だった。
「だからってもう臨月なんだから動くのもキツイだろ?それに作業中君に何かあったらと思うと気が気じゃないよ」
「もう心配性なんだから…。分かったわ。それじゃあ家の中で編み物でもしてるわ」
エヴァは「もう心配性ねぇ」と少し嬉しそうにため息をついて家の方へ歩いていこうとした時に…
「うぐぅ!?」
「!?どうしたエヴァ!?」
突然苦しみ出した。
「ア、アディム…!う、産まれるかも…!」
「何だって!?」
「産婆さんを呼んできて…!はぐぅ…!」
「わ、わかった!だけどまずは君を家の中で休ませてからだ!」
アディムはエヴァを家の中へ連れていき横になってもらってから人生で最高速で町の産婆を呼びに向かったのだった。
…急いで産婆を連れてきたアディムは産婆の指示にあたふたとしながらもしっかりと出産の手伝いを行っているうちに外は雨が降り出していた。
「ハァッ!ハァッ!ハァッ!ハァァッ!?」
「頑張ればエヴァ!俺も傍に居るから!」
とエヴァの手を握りながら励ましているアディム。
太陽が上り出す頃に陣痛が始まり、昼を過ぎてかなり経ったがいまだ出産は続いていた。
「頭が出てきたよ!もうすぐ産まれるから頑張りな!」
「フグゥゥゥゥゥァァァァ゛ァ゛ア゛ア゛ア゛!!?」
「頑張ればエヴァ…!もう少しだ!」
外からの雨の打つをかき消す最後の力を振り絞ったかのような叫びと共に遂に…
「よし!産まれたよ!」
と産婆の声がしたが
「泣かない…!」
と産婆が険しい顔をする。
「そんな…!まさか…!?」
「ウソ………」
と絶望に染まった声で二人が呟いた時…
カッ!
っと外が光った瞬間に
ドガンッーー!
と家に落雷が落ちてきた。
「「「っ!!」」」
全員が落雷の衝撃に驚いたとき
…この時に誰も気づく事なく、家に落ちた落雷は柱を伝い、息をしていなかった赤子の左手にに微かに触れたのだ…。
そして
「おぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁ!?!」
と息をしていなかった赤子が元気に産声を上げたのだった。
「あぁぁぁ…!」
「よかった…!泣いて…くれた…!」
と咽び泣く二人に産婆は赤子を渡すのだった。
「よく!よく頑張った二人とも!エヴァも赤ちゃんもよく…!」
「あなたが励ましてくれたから…あぁなんて可愛い私たちの子…」
「お疲れ様だね。あんたたちの子供は男の子だったよ。名前は決まってるのかい?」
「えぇ」「はい」
「なら呼んでおやり」
「「…はい!」」
「「生まれてきてくれてありがとう…」」
「「アベル!!」」
万感の思いを伝えるように夫婦は我が子の名を呼んだ。
ダメなのかと思った我が子をの元気な産声を聞きながら幸せそうに二人は泣き笑いをしていた。
…そして若い夫婦に抱かれた赤子に巻かれた布の僅かな隙間から見えた左手には雷紋と呼ばれる模様がうっすらと見えていた…。
その状況を微睡みの中から見ている者がいた…。
抱き抱えられた赤子の中から…。
そして…そのまま夢を見るかのように静かに眠りについたのだった…。