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自由に気ままに異世界大陸指名犯 ー空賊ライフー  作者: クラ108
エピソード0 まだ最初の時
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第60話 オヴェスト事変 Part3

 前回のお話。遂に始まったアラドス連合艦隊のオヴェスト侵攻。その最中でシルル教会では一方的な防衛戦が行われていた。



「・・・・・・」


 町を囲む艦隊の一隻に過ぎないただの艦の中に男は砲撃が響く光景を眺めていた。

 その目先には他の艦隊が城壁が崩れたところから町に突撃する動きがあったからだ。


「艦長、いちよ戦闘指揮中ですよ。眺めてないで定位置に付いてください」

「おいおい、俺達の出番なんてまださ。それにこれから町に他の艦隊が突撃するぽっいぞ。見てみろって」

「定位置からでも見えるので戻ってください。船長自ら規律を守らないのはどうかと思いますし、こっち睨んでる副艦長もどうにかしてください」

「ははは。怖いから嫌だ。けどよ。この光景が貴重なのは確かだぞ。しがない艦長でもこの規模での艦隊効率とか実戦運用における参考になるっ!かもしれないからな」

「・・それっぽいこと言って煙に巻こうしてませんか?それに見るって言っても・・・あれなんですかね?」


 艦長を正そうとするも丁度自分達の艦隊の下を飛ぶ統率もなってない船団がいた。


「ああ・・。ありゃ本物の空賊だ。ある程度制空権確保してから、動くように言われてると思うんだけどな~。先走ったなあいつら」



「しゃぁぁああ!!城壁に穴が空いたぞっ!前の奴らが入ったら続いて行くぞっ!!」

「しかしお頭いいんすか?あいつら止まれって言ってきてますが?」

「分かってねえな。あいつらどっかの滅んだ国の残党でもあんな規模と統制した空賊がいてたまるか。ありゃどうみても金品の物なんか目にしてねえ。もっと違うものだ。それ以外だったらどうなってもいいだろうしな」


 お頭は鋭く行く先を睨む。


「だからよ、どうにかなる前によ、目にしてねえなら俺らが貰っていってもいいだろ?そっちの方がまだ経済的にもいいしな」

「じゃあお頭。なんでそんな奴らを先に行かすんで?」

「ホント分かってねえな。ありゃただの偵察部隊だ。本隊は俺らの上で悠々浮かんでるやつらだ。あいつらが突っ込んで来る前に奪っておかねえと、俺らごと始末するかもしれねえしな、あっはっはっはっ!!そんで盗れるだけ盗って後はずらかるんだよ!」

「はえーー、こえぇすっね。あ、お頭。見てくだせえ。前の奴ら動きましたぜ」

「おっしゃっ!タイミングばっちしだ。速度緩めず進め進め!」

「それとお頭。略奪コースは幾つか考えたんすけど、簡単金品コースと普通物品コースと難易度お高め冒険者ギルドコースのどれがいいすっか?」

「おいおいそんなこと考えていたのかよ。と言うかなあ聞くまでもねえだろ?そんなもん全部行くに決まってんだろ!って言いたいが冒険者ギルドやめとけ。ありゃ火中の栗を拾うそのまんまだからな」



 オヴェスト・トレンボ



「っっまずい!突っ込んで来るぞ!」


 艦隊の砲撃によって城壁が崩れて束の間。艦隊の一部が攻め込む動きが城壁から目に見えた。


「っ!通信水晶、通信記号、回復しません!」

「まずいぞ。向こうはもう乗り込む気だ。今から走って伝えに行っても・・」


 この状況をどう伝えるか模索するも相手はお構いなしだ。

 そして・・・。


「駄目だっ!入れらるっ!」


 崩れた城壁に一番乗りを目指そうと数隻が速度を上げて・・・。


 ガガガ!!!


 船底や方舷に瓦礫を擦りながら一隻が城内に侵入した。そして立て続けに後続から何隻もその後を続いた。



「あっはははっ!我が艦が一番手だ。どうだ!城内の様子は?」

「はっ!城内は混乱の様子。艦影無し、迎撃無しです!」

「まあ同然だろうな!まさか攻めて来る者がいるとは思いもしてなかろうしな」


 周囲の状況を見渡しながら一番乗りを果たした船は余裕そうな雰囲気であった。


 シュッ・・!


「今の音はなんだ?」

「城壁から砲撃を確認!対モンスター用の砲郭です!」


 シュ!シュ!


 その後も船体付近から砲撃による風切り音がするも当たることなく通り過ぎる。


「攻撃がまばらで連携もなってないな」

「通信妨害が効いてますね」

「よし、本隊に迎撃あれど微少。突入は容易。と送れ」

「了解!」

「これより次作戦を開始。城壁の砲郭と指定施設の破壊し、本隊の侵入援護に入る」

「了解。ん?あれは?」

「どうした?何かあったか?」

「突破口から艦船が・・。増援?我々の艦隊のところではありませんが・・」

「うちら以外の部隊だと?どこのものだ?」


 それで士官に言われた先を上官が見ると苦虫を嚙み潰したような顔になった。


「あのクソ空賊どもめっ。勝手な行動をっ」


 そして同時に空賊側は・・・。


「しゃっっああ!!強奪の時間だ野郎ども!!もたもた同じところにいりゃあ敵からも()()からも攻撃の的されっぞ!大方奪ったらすぐ移動だ!分かったか野郎ども!」


「「「「「おおおおおおーーーーーっっっ!!!!」」」」


 そんな船長の言葉に手下は雄たけびを上げる。

 他の空賊の船も同様に町に侵入にするとそれぞれ目当ての場所へと散らばって行く。


「船長!そろそろ目的の場所でさあっ!」

「よおっし!お前らっ降下準備だ!」


 それに手下供は悪い笑みを浮かべなから準備に入る。

 ある者はロープを手に持ち、ある者はダイビングをするかのように船のへりに座っていつでも降下体勢に整える。

 そして降下場所に近づくと底部にある砲門から砲身が顔を出し周囲に向かって制圧砲撃し、先制すると・・・。


「降下ーーー!!」


 降下の声に「待ってました」と言わんばかりに歓喜を上げながら空賊達は地上に降り立ったっていく。


「野郎ども仕事に掛かれーーっ!奪えるだけ奪ってこいっ!」


 そして地上に降りた船長の掛け声に手下供は辺り一面に散らばって略奪し始めたのだった。



 更にオヴェストの外で待機していた艦隊は、偵察艦隊からの連絡に橋頭堡の構築に向けて、崩れた城壁周辺に数十隻の空船に地上制圧の為の兵を送っていた。


「速やかに指定エリアを確保!敵は少数!足は止めるな!相手は全員殺せ。捕虜にする必要はない」


 各空船が指定エリアに兵を降ろし、次々と主要ヶ所を制圧していく。そしてそれらを指揮する総部隊長は旗艦にて報告と順調具合を確認する。


「今のところ順調か。衛兵本部の方はどうだ?落ちたか?」

「まだ報告は上がってないです。流石に簡単に落ちないのは仕方ないと思いますが」

「ここまで来るのに時間を無駄に掛けたんだ。早く終わらせてもらいたいところだがな」

 

 だがその数十分後に衛兵本部も制圧。城壁周辺は1時間もせず橋頭堡が築かれた。


 そして・・・。


「部隊から報告!橋頭堡、確保!」

「よし!これより我が第2艦隊は城内の制空権確保に向かう!第2艦隊、行動開始!」


 それに士官と幹部達は各々動きだす。


「了解。各艦に開始を送れ」

「船員に告ぐ。艦隊行動開始!艦隊行動開始!」

「機関部からの浮力伝達問題なし、操舵問題なし、視界問題なし。操艦問題なし」

「前進微速」


 こうして第2艦隊はオヴェスト・トレンボに向かうのだが、彼らは1つ見逃している事があった。住宅区域にある『シルル教会』である。


 最初に侵入した偵察艦隊は艦隊侵入支援の為、城壁の砲郭破壊が任務に課せられていたが砲郭は攻撃してくる砲郭のみを叩き、住宅区域側にある砲郭は無動作であったから、住宅区域まで確認することも近づくこともしなかった。


※視認による索敵で無動作の物を見つけるのは難しく、かつ航行(30㎞~50㎞速度)中で、不規則に動く中で見つけるのはより困難で、攻撃してこない限り目標の視認は難しかった。


 それ為近づかなければ迎撃してこないシルル教会を見逃し、更に防犯システムにより教会が要塞に変貌しつつあるのを偵察艦隊は気づけなかった。これがアラドス連合艦隊にとってこの後大きな誤算となるのだ。



 そしてそのシルル教会では・・・。



『お疲れ様です。全てのウェーブを防ぎ、残りの敵は撤退していきました。防衛成功です』


「・・・・・・・・」


 FPS感覚で防衛戦をやらされ、相手が撤退したことで束の間の休憩を得たミルティアは疲れ切った様子で床にへこたれていた。子ども達も「ふう」とか「やり切った」とか「なんでことやらされているのよ」と一息付く。

 そしてミルティアはヘッドギアを脱ぎ捨てて抗議する。


「もう私やりたくありませんよっ!全部分からないし、前の人はずっといるし、吐きそうになるし、いい加減町に何が...!」


 ビーー、ビーー、ビーー。


『町の外に動きあり。空襲に注意』


 防犯システムが町の外の動きを感知し警報を響かせる。


『防空戦に緊急移行。高射砲塔展開』


 すると教会の地面が揺れ、建物の外壁に沿って地面から装甲板がせり上がり、建物全体を覆い、多数の武装も展開していく。これが防犯システムの「エクストラ・ホーム・アヴァロン」の真骨頂。状況に合わせて防衛と武装を過剰展開するただのハッピートリガーシステムでもあるのだ。

 そしてその姿は教会ではなく要塞だったと後に市民から言われたそうな。


 そして防犯システムはさらに何か起動を始めた。


『主機用電導石に魔導石を強制接続。急速発電開始...』


 地下の揺れは増し。


『電圧、既定値に至らず...。予備魔導石も接続開始...。既定値に至らず...。電圧不足により魔力式加速機構が起動...』


 また揺れが増し・・。


『電圧、既定値に達成。試験機『電力式ハイブリッド型円形加速器』2基に電力供給開始』


 轟音が響く。そして。


『加速器、既定値まで加速。地上に配置開始』


窓も装甲板で覆われているも覗き穴があったためそこから外を見るとまた地面から昇降機が現れて地下から出てきたそれは・・・。


()()()()()。発射準備良し』


 彼らが今まで作った物の近代兵器が一つ。言葉の通りの荷電粒子砲である。

 いつかは作りたいとロマンを求めていた彼とアイが未知の物質や物質と魔力の関係を研究の為にも加速器は作れた方がいいよね、と言う目的が噛み合って生まれた共同開発兵器なのだ。


 が、例によって機材の精密性や電圧問題等々。魔法技術を用いて解決してみるも魔力を認識出来ないアイには魔力による異常を感知出来ない安全面から、結局は試作止まりのお蔵入り。なので出力調整や安全装置の類の物なんてついておらず物騒危険極まりないなんちゃって兵器である。



「あのあからさまに危ないアレはなんですかっ!!??魔砲ですか?魔砲なんですかっ!?と言うよりそれより絶対ヤバいやつですよねっ!?というかクラリオン君っ、なんで教会で兵器作って置いておくんですかっ!」


 ごもっともな意見である。


『魔砲ではなく荷電粒子砲です。お蔵入りだったのですが接収してシステムに組み込みました』


 そしてミルティアはその後も何かと言うが、その間に荷電粒子砲は異様な光りを出しながら高射の高台の方に設置され・・・。


『城内に空船(空中浮遊物)が侵入。迎撃対象とし教会への危険度から先制攻撃を仕掛けます』


「え?あのだから待っ『発射』」


 唐突な宣言と行動に止める間もなく荷電粒子砲は唸りをあげた。



 そしてまだ城内に入ってない町の外周にいた第2艦隊旗艦は・・・。


「一部艦隊城内に侵入。抵抗は確認されず」

「偵察艦隊の火力だけで大体の砲が潰せてるのだ。支障が起きる方があり得んとおも・・」


 ビシュン・・!ドゴォォーーーンッッ!!


 城内の方で光が見えたと思った瞬間、いきなり城壁が吹き飛び一本の光の筋が見えたのだ。


「なんだ今のはっ!?」


 そして城内の偵察艦隊は突然の光と爆風に襲われた。


「っ!?なんだ今の攻撃は!?どこからの砲郭だっ!?」


 いや砲郭だとしてもなんだあの威力は!?

 今の砲撃で入ってきた第2艦隊の数隻が墜落してしまい、損害を出してしまった事を悔いるも今は一刻も早くあの砲を潰さねばさらに被害が出ると早急に対処する必要があった。


「砲撃は..方角からして市街地側かとっ!」

「チッ!市街地は見て回ってなかったのが裏目に出たか。すぐに舵を市街地に向けろ!掃討するぞ!」


 そして偵察艦隊の数隻が急いで市街地に向かう。


『荷電粒子砲により1隻、直撃で撃沈。3隻、爆発に巻き込まれ墜落。さらに5隻がこちらに向けて進路変更。現在、荷電粒子砲は再度発電中、砲身冷却中、再発射まで1分32秒。その間通常迎撃兵装にて対応開始』


 ※教会には対空砲として(元は駆逐艦の載せる兵装であったのを転換した物)12.7センチ砲、12センチ砲、10センチ砲、その他機銃が25㎜3連装機銃(爆風避盾付)が展開されているが史実では小口径の砲弾は基本榴弾で、信管や榴弾の製造技術が現時点では無い彼らでは再現出来なく、砲弾は全て徹甲弾仕様になっている。



 そして荷電粒子砲で貫く光にミルティア達はと言うと・・・。



『ちゃんとヘッドギアを装着できたわけじゃありませが、今の光が綺麗に城壁を貫通するところが見えました。これは異世界の言葉で言うタマヤというやつでは?』


 ついでにゴーレムはヘッドギアのスクショ機能を使い、チャット欄にその光景画像を載せて呑気に状況説明する。


「みんな、すぐに与吉君を見つけなさい!はいっ!すぐ!」


 あれをすぐに止めないと町がもっと酷いことになる。今、町で何が起こっているかより、何か起こす()()を止めないと駄目だと切り替える。そして、これを止めるには操作権限のある与吉を捕まえないといけないと言う訳である。

 そして当の与吉と言うと物影から一切動かずに息を殺し続けていた。


 チチ・・(あれはヤバい。クラリオンがいつも酷い目になるオチの気配のやつだ。何度も見てるから分かる。捕まれば・・捥がれる!)


 与吉は落ち着くまで息を殺し続けることに決めたのだった。 



 そして迎撃が行なわれて数十分。


「くそ!また落されたっ!これで何隻目だっ!?」

「想定より被害が大きいぞ!」

「何とかしてあの攻撃を止めさせなければ制空権なんか取れないぞ!地上部隊はまだか!?」


 荷電粒子砲だと知らずに向かった艦は全て撃ち落とされた。それはそれで愕然したがそれでも後方で観測した艦から砲撃は市街地の建物からだと判明した。

 その事から兵士か冒険者が建物から兵器かスキルで攻撃したと思い込んだ。が、交戦が続くにあたり更に正確の位置を割り出すと。


「っ!あそこはまさか!」


 作戦指定目標に名前で挙がっていたシルル教会であった。

 あそこは戦略級魔導石があるとされ、地上では対人戦や室内戦は要注意されていた場所だ。しかし防犯の一環で迎撃用や防御用の魔法や記号式が組まれてることがあってもまさか兵器が施されてるとは予想もしてなかった。


「艦長!駄目です!市街地に向かう艦は全部落とされますっ!魔砲による遠距離攻撃も・・っ!」


 シュイン・・!ドゴォォン!!


「ミラー!撃沈!」


 他の士官が叫ぶ。前方にいた艦船『ミラー』が魔砲の遠距離攻撃をしようとしたが撃つ前に荷電粒子砲が直撃する。


「っ!遠距離攻撃を探知してあのヤバい魔砲撃ってきます!」

「全魔力を防御に回してもあれは防ぎきれん、くそっ!打つ手が無い!!飛ぶことすら困難だぞ!」


 しかも荷電粒子砲は城壁も突き破って外周を包囲している艦にも当たるほどで、包囲している艦隊も対応が求められた。


「自分達を守る城壁ごと貫いて攻撃するなぞ非常識にも程があるぞっ!」

「しかも我が艦隊はその流れ弾で12隻撃墜と23隻が航行支障。笑えんな」

「市街地側の艦隊が城壁を破壊して新たな突入口を作り、挟撃の形で制圧が理想だが」

「馬鹿みたいな攻撃をしてるところがあの教会と言うことは戦略級魔導石が使われているだろうな」

「だとすると艦隊火力でどうこう出来るものじゃああるまい」

 

 そして。


「中央からのあの部隊を出す時か」

「執行部と言うところか」

「その所属について調べたがまともな情報が上がってこん。中央からの派遣だから問題ないとは思うが」

「教会の対処に用意された連中だ。この状況でも対応は可能だろう」

「そうだな。すぐに出撃準備させよう」


 この状況にアラドス連合艦隊は執行部という部隊をシルル教会に差し向けることを決めたのだった。

ここ最近ぎっくり腰をうけてまともに動けずにいました。

しかしぎっくり腰ってヤバいね。横になっても辛くて不眠気味な日々が数日続くとは思ってもなかったよ。

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