3.5話 ミシャロ商会との出会い
これは彼が初迷宮から数日後のこと。お金に余裕ができて色々と生活用品を揃えようと思っていた頃の話し。
「部屋も変えたし、広くなったし、物も置けるようになったし、何か欲しくなるよね~」
お金の余裕ができはじめた彼は、そろそろ何かちょっとしたものを買いたい。と常々思っていた。なので今日は奮発して何を買うか色々と悩んでる最中なのである。
「まあ生活に使う消耗品はいつも通りだとして・・。あとやっぱ本とか服?あとは薬草とかポーションとかの貯め置き?いやでも薬草なんか売ってるの見たことないな。ん~でも小型冷蔵庫みたいなのがあれば買っておきたいし・・・」
考えるときりがないな。
とりあえずどこかの店に適当に行って、見てから何か買うことにしようと彼は決めて、どの辺りの店に行ってみようか考えると、ふと空を飛んでる船が目に入った。
「空船だっけ・・。あれ」
そう言えばよく東大通りで飛んでいるよな~。
「ん~。そっちに行ってみるか」
行き当たりばったりで東大通へ行ってみることに。
しかし。
「あんまりこれといったものはなく・・」
来てみたもののそこは倉庫街。城壁に空船の港があり、荷物の運搬するために昇降機らしき物が動いているのが見えるのみ。
「殆ど倉庫やら事務所みたいな建物ばかり・・・」
来るとこ間違えたといつもの買う店の辺りに行こうと曲がれ右で引き返そうとするが、倉庫の壁に貼ってあるに一枚の広告のチラシに目が行った。
『売れ残り一掃セール。物によっては何とタダ!!2番地14建物8番倉庫まで足をお運びを。ミシャロ商会」と簡素に書かれている。
「売れ残り・・物によってタダ・・・・」
これを見て悩む始める彼。
ん~。なんか使える物ありそうかな~?しかもタダか。お金に余裕があるけど少なく済むならそれに越したことはないし・・。だけど2番地?14建物?8番倉庫?謎だ。
よく分からない番号に?顔になるも住所ぽっいのは何となく彼も分かる。
「これか?」
そしてよく見れば目の前の倉庫の壁に番号が書かれた数字で2-10ー4と書かれており、他の倉庫にもよく見れば同様に番号が付けられていた。
ここで説明を入れよう。この町に限らずこの異世界の建物はビル並みの高さを魔法で、1週間1ヶ月の速さで建築することが出来るのだ。普通の家(3~4階立て)でも1日で3つ4つできる。だから短期間で大量建築できるから、町や都市の整備や住所管理がしっかりしている(そうしないと正しく迷宮に化けるから)。
「これが住所なら割と近くか・・」
こうして2ー14ー8の数字がある倉庫を探してみると。
「ここか」
見つけた倉庫には『歓迎 ミシャロ商会 売れ残りセール品会場』とある張り紙があるからここで間違いないようだ。
「お邪魔しま~す」
そして遠慮なく倉庫の大きな扉を開ける。
「誰もいない?」
しかし誰がいる様子が無い。
人もいなければ鍵もしてないとか無用心じゃない?
「んー。しかし・・売れ残りセール品とはこれのこと?」
疑問を持ちながらも見えたのが倉庫の3分の1程に乱雑に積まれた商品やら箱。それがゴミ山のように置かれているのだ。しかしそれでも適当に漁ってみると。
「ん~・・・何これ?ヒノキの棒?」
謎の棒があったり。
「貯金箱?あ。注意書き・・・チトナイト製なので簡単に穴が空きません。盗まれても簡単にお金は取られる心配なし・・・」
チトナイト?しかも小銭の穴に逆流防止加工って・・なにこの、なぜ作ったシリーズ物は・・・。
とにもかくにも非常に特色ある謎商品が多かった。
「売れ残った理由が分かる気がする」
そんなことを思っていたら扉から1人の男が現れた。
「おっ、珍しいな。まさか人が来るとは」
そこにいたのは17、18歳ぐらいの青年。しかも手押し車を引きながら売れ残ったのであろう商品の山が積んでいるのが見える。
「って、子ども?」
「そんな驚く?」
ほんとなんでこの町の人は子どもで驚くんだろうかね~。
「いや~意外っていうか珍しいからな」
「珍しい?」
「まあ子どもだろうと気にしないから適当に見てくれていいぞ。引き取ってくれるなら大歓迎だ」
少し気になる内容があった彼だが、気にしないで今は商品の方に目が向ける。
「あ~つまりやっぱこの山は売れ残りなのか」
「年々積もった売れ残り品だ。んで何かいい物でもあったか?」
「ん~~。掘り出し物は・・無いな」
彼の直球な言葉に青年は苦笑しながら言う。
「そりゃあな~。けどここの殆どはタダだし、持って行ってくれると嬉しいんだけどな」
「えっマジ!?」
そこに青年からまさかのタダ発言に彼は驚く。そうなると話しは変わってくる。物は何か欲しいし、それ以上に珍しそうな素材で使われてる商品が多い。彼の『万物追及』であればどんな物質でも素材に戻どして、売るも使うも簡単にできる。
お~。ゴミ山がなんという宝山に・・・。
「何だ?欲しい物でも見つかったのか?」
「うん。お宝見つけた」
しかしそもそもなところ何で売れ残りがこんな山積みになっているか色々と疑問が残る。それをちょっと青年にその辺りを聞くと何とまあシビアな内容だった。
「なんだお前、うちのミシャロ商会のこと知らないの?有名なのに?」
「まったく」
まず聞くこと数分。ミシャロ商会と言うのは、個性的、偏屈、変態のプロフェッショナル集団達が考え出した唯一無二の商品を世に送り出す商会らしい。つまり変態企業、いや変態商会だった。
「なるほど。それがあの山か」
「あいつら凄いんだぜ。情熱が違う方向に飛躍して時に凄いの作るし」
それ故よく商品が売れ残るのだと言う。そこに何故誰も作るの止めさせないんだろうと思ってはいけない。彼らは駄目だと言われてもあれやこれやとまた違う方向に飛躍しはじめるのだから。
まあそんなことはさておき、売れ残った商品は廃棄すればいいと思うだろうが、どの国でも厳しい廃棄基準があって簡単に捨てられないらしい。
廃棄する物によって何らかの影響で周辺の魔力異常で悪影響を及ぼす可能性、知能あるモンスターに影響を及ぼす可能性があるからだそうだ。(ミシャロ商会は過去にそれで軽いバイオハザードを何度も引き起こして、各国の廃棄基準が高くなった要因でもある)。
「うわ。それで何が起こったの」
「そこらのモンスターの知能が上がって徒党組んで、小国の幾つかを亡命政府にまで追いやったぐらいか?」
「うっわ・・・」
ならせめて素材にでも戻せればいいのだが、彼らが作った商品が普通の商品であるはずがない。無理に何かすればまず爆発する。さらに無理すれば大爆発を起こす。触らなくても時々爆発する。素材に戻すのもかなりの時間、労力、人員が必要なのだと。
「なんでそんなことして商売できるんだ・・」
「そりゃあ決まってる。ミシャロ商会だからさ!」
理由になってない・・。
しかし、天才と馬鹿は紙一重。天才や有名な人ほど偏屈と言われることは聞いたことがないだろうか。だからこそなのかこの大陸にいる天才や有力な冒険者、各国に影響力を持つ人達は大体ミシャロ商会の物を愛用していることが多いのだ。もし、ミシャロ商会に危害を加えるなら愛用者達がどう動くか、その潜在影響力は計り知れない・・・かもしれない。
その後・・・。
「お前タダって言ったけどな・・。分かっていると思うが返品不可だからな」
「分かってるって~」
タダと言われ、上機嫌な彼は数多く選別した結果、色んな用途で使える金属の商品を重点的に荷台(これもタダで貰い)に大量に載せていた。
そんな様子に青年も若干不安を覚えるも売れ残りを貰ってくれるならミシャロ商会にとっては神の手の存在。止めはしない。
「本当に分かっているんだが・・。だけどお前一体何者だ?だだでさえ子どもなのにそんなに持ってって」
「ん?最近この町に来たばっかの冒険者?何か物でも買おうと思ったんだけど、まさかインテリアから揃うことなるとは思っていなかったけどな」
「いや、それ全部インテリアじゃないからな?」
「そう?これなんかさ、何とも言えない聖杯感・・・いいご飯の器になりそうだし」
「それ眼鏡洗浄機」
やはりろくな物がないようである。しかし彼の最初の言葉に青年は疑問が浮かぶ。
「ん?待てその前に冒険者?お前まさか迷宮に潜っているのか!?」
「絶賛出稼ぎ中~」
「いやいや・・・。いや、でも。う~んあり得るのか?」
いちよこの青年もミシャロ商会を使う人達がどういう人達がよく分かっている。だからこそ子どもだからといって見た目で判断したりはしない。しかし彼のような存在を初めて目にした青年からはどうも引っ掛かるのと大量に商品を持っていく理由が分からない。ただ忘れてならないのがこの青年もまたミシャロ商会に所属してる者。まあうちらの商品使ってくれるならいい人だろ。と深く考えなかった。
「ん?どした?」
「あ。いや何でもねえよ。また何か欲しければいつでも持ってくれていいからな」
「それはありがたい」
こうしてミシャロ商会とwinwinな関係が成りあがった。
「そうか。じゃあ俺の名前はアレンって言うんだ。けど勝手に持っていくなよ。在庫確認とかしないといけないからな」
「分かった一声かけておこう。自分はクラリオン。バーバリエ宿屋に泊まってる」
「じゃあクラリオン最後に一ついいか?」
「ん?」
「人手いるか?」
実言うと彼はさっきから懸命に荷台を引こうしていた。が、全く動かせずにいたのだ。
「頼む」
そしてアレン協力の元、ミシャロ商会の人がバーバリエ宿屋まで運ぶのを快く手伝ってくれた。
で、また・・・。
「全く何でこんなガラクタ大量に持ってきちゃうのかな。人手まで借りて」
なお人から見ればただのゴミを持ってきた彼を見つけたアスラは、事情を聴いてご立腹になっていた。
「あのねうちの宿屋は物置小屋じゃないのよ。こんなに貰ってどうしようっていうの?いくらクラ君でも駄目だよ」
その後お小言が続づき、仕方ないので馬車置き場に置かしてもらった。料金1日10バレルと使用料は割高だが、とりあえずしばらく置くので10ハクほど渡したらほっぺをプニられ、再びお小言が続いた。
納得できん・・・。
その後解放された彼は部屋に商品を持ち込み、『万物追及』で着々と使える素材に戻していった。なお問題は例えば金属の素材として戻せても何の金属までかは分からないことが多かったことだ。
硬さとか何か混じっているとかは何となく分かるんけどな~。こっちの世界しかない物質なのか。ただ自分が知らないだけなのか。あとポロポロと魔石ぽっいのも混じっているんだよね~。これもよく分からないんだよな~。
「だけどこれはいいね。この全サイズ対応全自動卵割り機はっ!早速試さずにはいられない。卵も買わないとっ」
早々と彼もまたミシャロ商会の愛用者に様変わりしていくのだった。
メインのPCが使えなくなって早数日・・・。中々辛くて小説の投稿の速度が大変鈍っております。もしここで誹謗中傷のコメントが出てきたら、やる気が出なくなって投稿がさらに遅れるかもしれない・・・。




