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自由に気ままに異世界大陸指名犯 ー空賊ライフー  作者: クラ108
エピソード0 まだ最初の時
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第55話 我が創造主よ、御観覧あれ、観戦あれ。その命帯びて、一筋の光りを見たまえ

 前回のお話。シルル教会の面々に空船建造がバレた彼ことクラリオン。公認されたわけじゃないが黙認されて、ミヤちゃんは1人で行かなければ好きにしていいらしいとのことで彼は大腕を奮って空船建造に打ち込むのであった。



 シルル教会に面々に空船建造がバレて数日。

 彼はその間に空船建造所で新たに船体用3Dプリンターをもう一基設置することにした。


「うん、順調順調!」

『今さらですが増設は必要だったんですか?』


 そして完成した3Dプリンターで新たな駆逐艦の船体を建造させていたのである。

 

「はぁ。何度も言うけど今後、巡洋艦、戦艦と建造するなら時間はもっと掛かるだろうし、その間他が建造が出来ないのはあまりに非!効!率っ!故に!新たにプリンターを用意するのは当然の行動っっ!」


 と言うことで3Dプリンターを設置することにしたらしい。


『急ぐ必要もないでしょうに。フル稼働すれば30日で駆逐艦6隻は建造できるんですよ?』


 アイからすれば駆逐艦だけでも試行錯誤しているのに巡洋艦や戦艦の建造は、もう少し試験データや設備や技術が向上を計ってから始めればいいと考えており、時期早々と思っていた。


 因みに第二次世界大戦で多く建造された駆逐艦はフレッチャー級と言うアメリカ駆逐艦であり、2年近くで175隻建造された。つまり1ヶ月換算だと7隻以上建造していたことになる。それと比較すると今の建造速度でも十分だともアイは思っていた。


『仮に建造したとして後付けの突貫作業をすれば、駆逐艦の比ではない規模と時間が掛かるのは目に見えて・・・』


 しかしそう悠長に言ってられない事情があるかもしれないと気づく。


『・・確かに夢を叶えるのなら早めの方がいいかもしれない状況ですね。寿命の減り方が尋常じゃなさそうなので』


 と言うのも彼の後ろには彼にしがみつく1人の少女がいた。


「ん゛・・・・」


 言うまでもない、ミヤちゃんである。


 前に言った「1人で行かなければ好きにしていい」との言葉のもと当然ミヤちゃんもセットで来るようになったわけだが、ミヤちゃんからすれば暇なので早く帰宅させようとまあまあ強めに首後ろを噛んでいたりする。要はいつものことである。


『吸血もされてますが大丈夫ですか?成人の献血量と同じぐらい吸われてるようにも思えますが』

「いつものことだし、慣れたっ!と言うか痛くない!」

『それは大丈夫じゃなさそうですね』

「さて、そんなことより出来上がっている部品だが・・・」


 そして今日は3Dプリンターを眺めるだけで来たわけじゃない。部品や設備製作用の3Dプリンターで本日完成予定の()を試験する為に来たのである。


「おお。出来てる出来てる。さて~・・これに教会で作った記号式の基盤をセットして、魔導石もセットして・・。これで動く?」

『理論的に問題ないかと。後は通信距離ですかね。何分私には魔力を測れませんので有効範囲は以前不明のままです』


 何を作ったかと言うとひとえに通信装置(2セット)である。

 1人で艦隊操作する中である程度の自動化や独立航行させるとしても、それらを連携や指揮させるには遠隔操作は必須である。なので作ったのが魔力式総合通信機と言う代物。


 これを各船に設置すればどの船からでも艦隊操作が出来るようになるのだが、エネルギーを魔力で利用している分、アイには魔力が測れないので出力値が計れず通信範囲が不明瞭なのだ。なので今日はその通信距離を測る為に来たわけでもある。


「ん~けど結構大きくない?一部屋半分使いそうな大きさだけど」


 そしてさらにそれは船体内部を狭くさせるサイズでもあった。


『総合と言う名前が付いてる指揮操作システムもセットで繋がっていますので比較的に大型になります』

「なるほど・・。まあこればっかりも仕方ないとして・・。今日はもう試験しながら帰るか。なんか首後ろの感覚が無くなってきてるし」


 これ以上貧血だけじゃ済まなそうなので早々に帰る支度を整えるであった。

 いちよ試験方法は通信機の片方は空船建造所に置き、もう片方はボードに載せて距離を測ると言うもの。


『では通信距離はこの発光ランプで確認してください。双方に電波を送受信せさて距離を測ります。点灯は感度良好。点滅は不安定。消灯状態は送受信失敗。つまり通信範囲外となっております』

「なるほど。分かりやすい」


 他にも装置の仕組みを教えてもらいながら軽い説明を受けてもらった。

 因みにミヤちゃんのスキル『吸血』は度重なる行ないでレベルアップし、相手に痛みを与えない(麻薬成分投与)しながら吸血できるようになったらしい。



 アドラス王国 王城



 王城の一角では中央国家の軍人との会議が行われていた。


「現状における陛下のご心配、大変理解しております。我々も無駄にこれ以上長引かさるつもりはありません」


「いくら貴国の支援があるとはいえ、現場は限界近い。現在集結している艦隊数からも作戦には十分であり、これ以上待つ必要がないと我が軍は考えている」

「早期行動すべきと言っておきながら貴国の行動はなんだ?いまだ予定の艦隊が来ないと言うのは?」


「言いたいことは分かります。ですが現状についてエス大将から報告する内容があります」


 大将と言われるエスだが軍服には勲章はおろか階級章すら付けていない。機密保持の為に徹底的な格好であったが本当に大将なのか分からない。それでも長年軍に務めているのが分かる程の貫禄はあった。

 そしてエス大将は手を上げると周りに説明する。


「この遅れは我が軍でも一部にしか知られてない極秘の艦の存在の故、徹底した隠密行動、通信封鎖を行なっているのが原因だ。だがこの度封鎖が解除され、通信報告がなされた。10日以内には現地付近到着とのことだ」


「つまり・・」


「到着と配置次第、作戦決行だ」



 アラドス連合艦隊旗艦『ポエリオ』



「報告ですっ!!本国より通信!『ドマーニ夫人はご機嫌。馬車はリベルタ橋を渡った』と」


 部屋の扉を開き急ぎで伝えると部屋にいる何十人の軍人がどよめく。


「本当かっ!?」

「確かです!」

「やっとか・・」


 今まで彼らは作戦準備として待機されていた。中央国家の直属の艦隊が派遣されるのを半年近く待たされ、補給路の問題で維持も難しく消耗を強いられた。それがやっと解消されるのだ。

 しかし安堵した声と共に不満も漏れた。


「これで長かった待機も終わるわけだ」

「全くなぜ中央の艦隊を待つ必要があったのか分からんっ!戦力は十分どころか過剰。しかも相手は軍艦はいなく商船のみだろうに」

「命令である以上は仕方ないだろう。あとは本土から天馬も来るとなると作戦決行は10日前後ぐらいか?」

「しかし馬車の数が艦隊規模を示すと聞いていたが、それが無いとはどういうことだ?まさか単艦で来るわけないだろうな?」

「どうあれ作戦決行は間近・・。そろそろ貴公から知ってることを話して頂いてもよろしいかと思うんだが。どうだろうか?」


 そんな言葉を投げかける先にいたのは沈黙を貫いていた中央から派遣された軍人で、その投げかけの言葉に口を開けた。


「・・通信が来るまでは内容は伏せるようにと厳命でしたので。何しろ今回の作戦で最も重要な役割であり、秘匿であることが最大の武器の艦らしいので」

「秘匿?」

「と言いましても私もその艦についてもどの程度の数が来るのかも詳しく聞かされてませんが」

「待て。それではどう連携しようと?」

「今回の作戦は規模こそは大きいものの支配が目的ではありません。まあ空賊くずれがやりたければ勝手にさせるとして・・。あくまで目的は魔導石の入手。そしてどう安全に周りの目を掻い潜って運ぶかです。その為の艦らしいので」


 どんな艦が来るかは不明であり、しかも来るのは補助艦に該当する艦だと言うのながら周りの一部の人は声を荒らげる。


「待て!つまり我々は輸送船を待ってたと言うか?」

「ふざけるなっ!たかが運搬船の為だけに半年も待たされたのかっ!!?」

「強奪ののちにどこか奥地で受け渡せば済む問題だろ!?何故そんなのを待つ必要があったっ!!?」


 だが中央の軍人は変わらない様子で話しを続けた。


「落ち着いてください。忘れてませんか?戦略級の魔導石となれば扱いを間違えばオヴェストの町はおろかその何倍は吹き飛ぶ恐れがあるんですよ?しかもそれが複数もあれば尚更そんな事を起こさない為に特別な設備を備えた船が必要なんです。私もただ運ばせる船を待つのにこんな長く待たされたくはありませんよ」


 そう言われると周りは沈黙し、反論する声を出せなかった。

 実際戦略級の魔導石となるとおぞましい程の魔力を秘めている。言わばデーモンコアで起きた臨界事件同様に容易く事が起きやすいもので、そう考えると周りは渋々納得せざるを得なかったのである。

 


 こうして不満は残る形にはなったものの今後の作戦を詰めて話しは終わった。



 ですが私も実際どんな船が来るか知らないんですよね。まあ魔導石を運ぶ以上はただの船ではないんでしょうが・・。問題なのはあの子ども達ですね。

 子ども達、オヴェストではそう言われる存在は彼ら以外何者でもない。


「総合的に魔力量は2、3艦隊分は保持の可能性有り。所有の魔石や魔導石を使われた場合それ以上・・。はぁ、個人で戦術規模、戦略規模の戦闘が出来る存在がいるのが分かった上で戦うとか死屍累々で止めてほしいんですが」


 彼は勿論だが他に獣人の子でありながら大人顔負けの戦闘センスと武器(短剣1号と2号)の火力と威力が凶悪で、テイムしたと思われる彼の蜘蛛型モンスターも迷宮下層のモンスターと大差ない強さと報告があった。想定よりも被害が出ることが予想され、作戦に見直しにもなったほどである。


「特にクラリオンはアドラスにいる天馬が相手するらしいですが・・本当に使えるんですかね・・?」


 彼らの行動次第では作戦の成功率が大きく変わる。その中で厄介な彼にどう対処するかでは、アドラス王国側から我々のところにいる天馬が対応すると申し出たのだ。


 神族に連なる種族は絶対優位となるスキルがある。なんて眉唾物の話しは聞いたことはありますが、遠目で見た限り横たわりながら草食って食っちゃ寝してる姿しか見えなかったんですよね~。あれ本当に天馬なのかも眉唾なんですがね・・。


「まあこちら側でも代案はありますし、仮に抑えられなくても作戦自体は成功するでしょうね」


 この作戦で投与した空船の数、おおよそ・・・。


 アラドス王国、中央国家が提供した艦船合わせて12艦隊から成す大艦隊『アラドス連合艦隊』


 戦艦80隻。フリゲート艦180隻。コルべット艦300隻。補助艦80隻。

 さらに傭兵(空賊)も雇い、フリゲート艦40隻。コルヘッド200隻近く。


 歴史上稀に見る大艦隊。戦争ではなく、一つの町だけに大小800隻以上で攻めるは聞いたこともない。しかし・・・。


「その半数が自爆艦、町は灰燼に帰すのは分かりきってるんだから殲滅の間違いじゃありませんかね?」



 一方・・・。



「あ。ランプ消えた」

『おおよそ100㎞ですね。地形によって変わると思いますが上空なら妨げるものも無いので距離はさらに延びるかと』

「ん~あんま普通の無線機の範囲とか知らないけど、十分だね」


 現状遠距離操作もしないので十分な通信範囲があることが分かった。


「あとさ、この通信ってどんな感じで送ってるん?やっぱ電波とかモールス?」

『音声も可能ですが、今は簡易なモールス信号でワレニオイツクテツキナシでテスト送信してました』

「あ。知ってるそれ。ん?でもグラマンじゃなかったっけ?」

『所説あるようです』



 また一方で・・・。



「バリオスが逃げただとっっ!?!?」


 アラドス王国では彼を抑える要としての天馬バリオスが逃走。

 陛下と側近が大慌てしていた。


「い、いえ、何を感じ取ったのか北西方向に飛んで行ったと・・」

「北西?まて、その方向は」

「は、はい。方角的にオヴェスト・トレンボの方かと」

「っ!すぐに各所に連絡を取れ!バリオスの行動次第で変わってくるぞ!」


 あいつめ。主人を置いて行くやつがいるかっ。

 そして飛んで行ったバリオスと言うと・・・。


『戦だ。遠くで戦音が響いている、我を呼んでいる』


 どうやら彼らの通信装置による電波範囲以上に広域に周囲の魔力をなびかせてしまい、それを感じ取ったバリオスが戦が始まったと誤解してしまったらしい。


『我が創造主よ、御観覧あれ、観戦あれ。その命帯びて、一筋の光りを見たまえ』

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