15回 特型駆逐艦についての補足コーナー2
「前回に引き続き特型駆逐艦について続きをやっていきたいと思いまーす。担当は変わらずクラリオンと」
『アイでお送り致します』
「本編も駆逐艦周りがやっと終わるし、これで一区切り?つきそうかな?」
『グダグダと長くなるのはいつものことで簡単に終わるとは思えませんが』
「そこはしゃ~ない。個性と言うことで。んじゃ、改めて補足コーナーやっていくよー」
では前回、特型駆逐艦の建造経緯と特徴について語ってもらったので、船体や武装についてと史実の特型駆逐艦と私達の特型とどんな差異があるのかも説明もお願いします。
『はい。では今回も簡潔に説明していきたいと思います。まずは船体の特徴について語りましょう。
前回でもお伝えしてますが、船体の特徴と言えば艦首に強めのシアーと船体中央までフレアーがあることを話しましたが・・ざっくり説明しますと、シアーとは船体の上甲板が艦首に向かって反り上がっていることを言います。フレアーは艦首の舷側が上甲板まで外側に広がっている曲線を言います。
それが特型駆逐艦ではシアーの反り上がりが高く、フレアーの長さは通常は艦首までのを船体中央まで伸ばしているのが特徴的なのです』
「まあ波を切り分けやすくなった、って感じかな?おかげで陵波性抜群で荒波が多い外洋航行も容易にさせたわけよ」
なるほど。当時では革新的であったということですね。
『他に艦橋も前級の睦月型の露天艦橋だったのに対し、吹雪型では固定天蓋の艦橋、皆が思う一般的な艦橋で建造されました。理由は多岐あると思いますが、外洋航行する場合は露天艦橋だと外洋での激しい波浪や雨風には不適応であり、固定天蓋が採用されたのが大きな理由だと思います』
確かに雨風の中で指揮をするのは辛そうですね。他にも何かあったりしますか?
「まあ悪い面で言うなら船体強度問題だな」
『はい。当初は排水量(船体重量)を抑える為に前級(睦月型)と同じ船体サイズを求めておりましたが、砲門や魚雷発射管の兵装が増えるとなれば船体の大型化は避けられませんでした。その為船体に積極的な軽量化を施しました。それが船体強度を大きく下げた要因となり、地球西暦1935年に第四艦隊事件が起こり強度問題が露呈しました』
確か初雪、夕霧が艦首切断したという・・。
『はい。他にも友鶴事件もありましたが、尺の都合上個人でお調べください』
「まあ防御力を犠牲にして攻撃力を上げた結果がそうなったと言う感じかな」
では次はその兵装についてお願いします。
『まず特型駆逐艦では12.7cm連装砲3基6門、十二年式3連装魚雷発射管3基が主兵装となっております。ほかに雑把な機関銃がささやか程度と爆雷投射機、掃海具も備わっておりますが尺の都合上省略します』
「7.7㎜単装機銃が2挺だよ。爆雷は八一式、掃海具は・・何だっけ?」
『こちらもご興味ありましたら個人で調べて頂ければ幸いです』
そ、そうですか。では主武装について改めてお願いします。
『12.7cm連装砲の正式名称は五十口径三年式十二糎七砲と呼ばれており、幾つかのタイプがあります。吹雪型はその元型であるA型を搭載しており、平射砲としては優秀な性能でした』
「当時の海外の駆逐艦の大体が12cm~13cm単装砲が4門か5門。一部砲弾の直径サイズで負けてるところはあったけど、性能で比べると・・」
『12.7cm連装砲は初速910m/秒で最大射程は18㎞程度。海外の駆逐艦では初速750~880/秒、最大射程は15㎞前後の砲が大体でした。スペックを比較すればで分かると思いますが砲撃戦だけでも優勢に立てるものでした』
確かにスペックを見ると上位互換の存在ですね。
『ええ、ですが対空攻撃は限定的でしかなく、むしろ殆ど出来ないと言っていいものでした』
「まあ対艦戦を重視してたものあるけど当時は航空機は発達してなくてまだ対艦巨砲主義があったからと言うのもあったしね」
なるほど。当時の考え方からすると対艦戦が主な戦闘で、防空の意識はなかったわけですか。
『また魚雷では日本海海戦(地球西暦1905年)での雷撃戦の活躍から他国と比べ大型のものを搭載する傾向になりました。それで搭載したのが610㎜魚雷(八年式魚雷)です。前級の睦月型と同様の魚雷ですが、それでも海外では553㎜、550㎜魚雷が一般的な中ではやはり大型魚雷であることは変わりありませんでした』
「そんで発射管が9門。これも海外の駆逐艦より多く発射できたのよ。因みに雷速は38ノットで射程10㎞、27ノットで20㎞だったらしい」
砲撃や魚雷だけでも相手からすれば厄介だったでしょうね。
『そして注意して頂きたいことがありまして、日本の魚雷と言えば酸素魚雷(九三式魚雷)で有名ですが、吹雪型には搭載されませんでした』
え。そうだったんですか。
『はい。吹雪が就役したのが1928年、戦没が1942年。1933年に酸素魚雷が実験用で作られ、1938年に生産が開始されましたが、吹雪には搭載されませんでした』
思っていたよりイメージが違ってきますね。
『魚雷発射管の次発装填装置も有名ですがこれもまた搭載されておりません』
「まあ酸素魚雷を最初に搭載したのは陽炎型。次発装填装置は初春型だったけ?防盾付き発射管が最初から付いてたのは・・暁からだったような?うる覚えだから覚えてないんだけど」
『イメージする日本の駆逐艦の大体は第二次世界大戦中(1939~1945年)に建造されたものです。吹雪は第二次世界大戦ではもう旧式艦になっていました。もちろん水雷戦隊や護衛艦隊として活躍してましたが、やはり劣るところは多々ありました』
こうして聞くと意外に吹雪型は古い艦だったんですね。
「まあ特型駆逐艦の一番艦だから古いと言われればそうだけど。どの当時や時代の見方によって違うから、一概に古いとは言えないけどね?」
失礼しました。では次に吹雪型を元にした自分達の吹雪型とはどう違うかを教えてください。
『若干誤差はありますが船体はほぼ原寸サイズです』
「勝手なことしなければ原寸に忠実だったんだけどね」
『もちろん内部構造や設備に大きな違いはありますが、ファンタジーでは些細な事なので省いて挙げるなら装甲と砲塔関連の2点でしょうか』
「ああ、砲塔は大変だったね」
『本編でも語っていますが、吹雪型に限らず当時の駆逐艦の殆どは架砲と言われる形で砲を搭載しております』
「イメージするなら中世の船の大砲あるやん?その大砲の足場が回転台になって撃ってる感じが架砲」
『砲塔は・・戦車みたいなものだと思ってください』
「ざっくりし過ぎじゃない?まあ・・船体内部まで砲関連の機構が伸びて、そこから火薬庫、砲弾庫から砲弾と装薬を送り出すみたいな・・?言葉で説明するのむずいな」
『そこも個人で調べて頂ければ幸いです』
結構投げますね。
『架砲の場合、複雑な機構ではないので設計がシンプルなんです。設置も甲板上で済ませられますが砲塔はそうではありません。船内まで砲塔の機構が入りると狭い船内がさらに圧迫して、重量も増えて速力が落ちてしまいます』
「維持費に点検も時間掛かるだろうし、コストを考えると駆逐艦にそこまでお金掛けていられないのが現状だったかな」
『また当時の船体の半分以上は缶やタービンの機関部で占めていますから、砲塔機構まで載せると船内を圧迫して居住性はさらに悪化してしまいます。砲塔を載せるとなると巡洋艦、戦艦のサイズぐらいないと余裕がありません』
「実際にうちらの駆逐艦も幾つか船室を潰したからな~」
確か先輩から聞いたことありますね。見た目より中は狭かったって聞いたことあります。
「本当にうちらの初期の駆逐艦って臨機応変と言うか、乗るのは自分、アイ、与吉が基本でたまに数人程度だったし、居住性は後回しでもいいかなって。それに自分、ロマン重視だから火力は大切だし、ね?」
『このように自分の趣味主体で我々は苦労するわけです』
あ~だから頑なに空母を配置しないんですね。皆そっちの方が効率いいのにって思っているのに。
「はい、そこ違います~。戦略的に、コスト、資源、を考えると非効率だから配置しないだけで航空艦隊はいつでも編成できるんです~。と言うか戦闘機に限らず飛行機は魔法が万能過ぎて、まあまあ撃墜されるし、そもそも燃料とか化石燃料たる石油が発掘されないし、合成燃料用意してもぶっちゃけ魔法で大体何でも出来るから、使い道限られるし、撃墜率から消費と生産資源を考えるとやっぱ非効率で、と言うかうちの空船はレシプロ機並みの速度出せるんだから、戦闘機に資源使うなら艦の生産に回した方がいいんじゃね?ってなっただけです~」
意固地になってません?
『話しは戻って装甲についても語りましょう。まず駆逐艦の装甲ですが・・そもそもありません。ブリキ缶です』
比喩ではなく本当にそうだったんですよね。
『はい。そもそも装甲とは防弾仕様になっており、VH鋼、KC鋼、MNC鋼、等ありますが、どれも駆逐艦には使われてないのです』
「駆逐艦に使われてる装甲と言うか鋼板?鉄板?の厚さって大体2,3㎝ぐらいらしい。記述が少ないから詳細なことは分からないんだよね。一般の船舶用鉄板を使っていたんじゃないかって言われてるらしいけど」
『装甲を付けたところで小口径の砲弾なら弾けても中口径、大口径の前では無意味ですので、それなら速力を上げて回避した方が現実的ですからね』
「だけどうちらの駆逐艦は装甲付き・・って言っていいのかな?あれ」
確か巡洋艦並みの装甲を施したとか。
『はい船底を含めて全体装甲の35㎜の2重装甲、バイタルパート部分には最大65㎜の装甲があります』
本当に重装甲ですね。
『元々船体強度問題もありましたが、砲弾に使う火薬にも問題がありまして』
火薬に?
『今は改良型を使っていますが当時の魔力着火型の火薬は過剰に敏感で、少しでも周囲と魔力の濃度差が出ると即爆発爆沈させるほどでした。しかも魔力の見識がまだ浅いこともあり、安全に運用する為にも物理的な方法として装甲を施して船外からの魔力を遮断や船内の魔力を一定する方法しか考えられませんでした。正直ここまでくるといっそ巡洋艦にすればいいのにと思いましたが、無駄に駆逐艦にこだわる人がいてこうなったとも言えます』
「だってこう言うのは駆逐艦から始めるもんじゃん。そもそも装甲と言っても・・まあ装甲と言えば装甲だけど」
さっきから装甲について微妙な顔をしてますね?
『先ほど装甲の種類について言っていたのを覚えてますか?』
確か色々とありましたね。
『はい、合金鋼にはニッケルやクロムなど使用されているのですが』
「あの時はニッケルもクロムも無くて、装甲は純鉄だったんだよね・・」
『つまり防弾仕様になっていないのに装甲と言えるのだろうか?と言うことらしいです」
な、なるほど。だからそんな微妙な顔に・・。ん?ですと実際防御力はあったんですか?
「小出力の魔砲なら表面削られる程度。中出力だと傾斜角度が良かったらギリ弾ける、かもしれない。まあ殆ど貫通される。大出力だと装甲剝がされると言うか蒸発する」
鉄の棺桶じゃないですか・・。
「うん。ただの物理装甲だけでは防御は皆無だった」
よくそれで今まで無事でしたね・・。
「魔力装甲が実用化するまでは自分の魔力で船体に張って防御してました」
それでも飛ぼうと言う執念が凄い・・。
『こんなのだから私達が苦労するんです』
あ、その、え~っと他に船体の違いとかありますか?
『そうですね。私達の駆逐艦が砲塔化によって艦尾2基の場所にある船内搬入口が無くなって、甲板からの船体後尾の出入りがしにくくなったとかでしょうか』
「まあ確かに若干不便になったけど側舷ハッチや船底ハッチあるから出入りは楽になったと思うけど」
『あれは停泊してるのみ利用が可能であって飛行中は使用できませんが』
「まあそこも仕方ない。あの頃は何が最適解なんて分かるはずもないし」
本当に手づかみで建造したんですね・・。
「他に水導石と火導石を使った火力発電機関とか水冷式エアコンの導入、ゴマ油で作ってみたオイルヒーター、ラムネ製造機、アイスクリーム製造機、羊羹製造機も作ってみたら船内圧迫するからアイから製造機は置くなと言われたり・・・」
『ダメージコントロール設備を置いてないのにそんな製造機作る余裕あるなら用意してから置けと言ったんです』
本当によく今まで無事でしたね・・。
「他に工房室も用意したり菜園室も作ったな~。与吉が育てたいって言って」
『狭い船内なのに無駄なものは置かないでほしかったですね』
「いいじゃん。アイも2室ぐらい書斎室や資料室にしてたじゃん」
『空き部屋が多かったもので』
結局お二人やりたい放題やってるじゃないですか。しかしそんなことすれば居住性はどうなったんですか?
『史実の吹雪と比べると大幅に改善されています。空中や高高度での活動が主体なので空調、気圧管理、冷暖房設備は充実させてました』
「色々船内が狭くなったけど、色々自動化してるから無人行動も出来るし、有人操作でも最低1人でいいし、20~30名程度の人員がいれば充分なぐらい。だからスペース的に余裕はあって、船員も狭いけど1人部屋が宛がわれるようにしてるし、部屋のスペースを詰めれば2、4、6、12人部屋だって用意できて一時100名入れる計算にはなってる」
人員が少なく済む分、居住性は良かったと。
『人員30名程度のスペースを考えると快適です。しかし共有スペース、設備を考えると不足するものがあり、食料備蓄量も1ヶ月がいいぐらいです』
「基本は少数の運用だから備蓄は少ないんだよね」
こうして聞くと色々と違いますね。
『同じ船とは言え、海上船と空船では別物ですから。海上船をよくもまあここまで形にして持ってきたなと思って頂ければ幸いです』
「まあ大体こんな感じかな?細かいところ上げれば切りないし」
四苦八苦してたのがよく分かる話しでした。簡単に強く出来たものではなく、それに伴なう犠牲もあったし、問題点もあるというのも。
では最後に一つ、お伺いしてもよろしいですか?
「いいよ」
『何でしょうか?』
吹雪型駆逐艦の話しを聞いて色々と苦労した半面、自分達が作った吹雪型はどうだったと思うのか是非一言。
「ああ、そう言われると言うのは決まってるね」
『ええ、もちろん。設計を担当しましたし、どんなものかも分かり兼ねますから』
では一言どうぞ。
「うちらが作った吹雪型は・・」
『私達が作った吹雪型は・・』
「最高の駆逐艦だな」
『駄作の駆逐艦です』
「・・え?」
『はい・・?』
い、以上持ちまして第15回補足コーナー終了します!次回があればまたいつかお会いしましょう!!
おまけ。
「待って駄作はなくない?」
『駄作どころか欠陥です。趣味を入れ込んでわざと旧式なもの使って運用するなどどんな戦略構想ですか?あれこそ資源やコストの無駄使いです。簡素化して個々にそれぞれ特化運用させた水雷戦隊組ませた方がいいと前々から言ってますよね?』
「単艦運用も想定すると色々必要になってくるの。どっかの宇宙戦艦も単艦で大マゼラン星まで行ったじゃん」
『駆逐艦サイズに宇宙戦艦性能を求めないでください。その個艦優秀主義もいい加減にしてくださいませんか』
「やだ」
『・・・こいつ』
彼とアイ、時々駆逐艦運用についてはよく意見が割れる。




