第48話 と言うわけで戦艦は追々。まずは手始めとして駆逐艦からだ!
前回のお話。空船建造を以下略、コアの正体はなんと宇宙人が作ったコンピューターであった!そしてアイと名づけて彼の仲間として加わったのである。
「・・と言うわけで今の自分がいる訳なんだよ。当面は空船の建造を再開したいな~って思ってる」
『別次元、転生・・科学基準ですと理解に苦しむ話ですね。クラリオンさんも複雑な経緯でこの惑星にいるようで。今の所もクラリオンさんの手伝いながら片手間でいいので魔法の解析を再開したいところでしょうか』
『つまりAIとは他の星で生まれた宇宙人。そしてマスターは別次元から来た存在と・・。未来人と超能力者がいれば完璧な布陣になるんじゃありませんか?』
現在、彼ことクラリオン、さらにアイとゴーレムは、まだお互いの諸事情と今後自分達は何をしようかと方針を言い合っていた。
なお彼が転生者と言う存在にアイとゴーレムは驚いてはいたが、魔法なら十分あり得る範囲と納得は速かった。
「自分も魔法の解析は協力できる範囲でするよ。未だに元からあるスキルは習得できないからな~~」
『協力感謝します』
そして彼は自分の今後の行動について話す。
「んで、空船建造なんだけど。自分がいた世界で第二次世界大戦辺りの・・まぁ、古い型の戦艦が好きでさ、それを空船仕様にして飛ばしたいな~って思ってるんよ」
『わざわざ旧式の戦艦をモデルにしたい理由はなんでしょう?』
「自分、ロマン溢れる大艦巨砲主義でして」
『ああ。難儀な精神病をお持ちのようで』
「うっさい。趣味を兼ねているからいいの。それで、ほら、ネットに強いアイ様がいるわけじゃん?もしネットにアクセス出来れば自分より上手く調べられるんじゃね?と思ったわけよ」
彼はこの異世界に送った神様が作ったバックドアを介して、ネットに繋がっていることをアイに伝えていた。そこにアイもネットに繋がればと思ったのだが。
『船のモデルでしたら大気圏モデルの簡易民間護衛船なら考案できますが』
わざわざ旧式でしかも効率とか考えていない。再現出来る技術範囲で現地仕様に適した設計にすれば良いのにと彼の理解と納得が出来なかった。
どうしてこの人達はそんなに非効率が好きなのでしょうか・・・。
そしてアイは紙とペンを持つとSFチックな船を描きあげてみせる。
『空気抵抗を意識した旧アドマイヤ社製の船体に主砲としてレベッカ三連式射砲3門、副砲をウィックス小型速射砲の8門仕様です。武器の製作は無理でも船体構造は真似出来ると思います』
「全然分からんけど設定資料並みの絵と説明があって、これはこれで好き」
結構気に入った様子、しかし。
「だがかっこよくないと意味がないっ!これはこれでかっこいいけど求めているかっこよさが違うっ!!」
『・・そうですか』
彼の理解は無理そうとそれ以上聞くのをやめた。しかしそんなことよりも一番重要な話しについて始めた。
『しかしクラリオンさんがいた世界のネットワークの接続。異次元のところにあるネットワークはどのようなものなのか非常に興味深いです』
これが一番重要な話し。そもそも戦艦のモデルをアイに探してもらうにもまずアイがネットワークに接続出来なければ意味が無い。しかしそれ以上にアイがネット接続出来るとなれば軍艦の資料どころかその他膨大な情報も知識が簡潔に得られるという方が重要なのである。
「まあ、そこが大事なんだけどね~~・・」
ただアイがネットに接続出来ればいいなと彼は楽観して言ってるが、正直どんな危険を招くのか悩んではいた。
まずアイが性格もといプログラム的にどう行動して、それがどう彼が元いた世界に影響を与えてしまうのか。
そもそも彼がネット接続しているやり方自体が強引かつ不安定。何が引き金となって何が起きてしまうのか未知数であること。
だがそれでもネット情報を今よりフル活用できると言うのは、情報を制するという意味でも「危険を犯すだけの価値はある」と最終的に判断したのだ。
と言うことで彼が目指す空船建造の再開の第一段階として、アイに彼が元いた世界のネットワークに接続させることに。
「まず自分がネット接続口になっているところはステータス画面にあるメッセージ欄。これは自分をこの異世界に送った神様がバックドアを通して作ったもので、このバックドアを通してネットに繋がっているわけだが、このバックドアにアイが触れられるかどうか試していきたいな~っと思ってます」
まずはどうネットに触れられるか出来るところから確かめようとした。
『ステータスの存在は知っていましたが見えませんね』
そしてアイにステータスを見せられるようにしたけど、やはり見えないらしい。
「ん~~けどさ、同期できてると言うことはアイ自身のプログラムと記号式が上手く連携?連動?していると思うんよ。だから間接的に魔力と繋がれていると思うし、アイの身体だってゴーレムのだから魔力で動いているわけだし」
『同期に関してはその通りだと思いますが、何と言えば・・プログラムで動く我々がプログラム無しで動かしているような・・魔力で動いている『実感』がいまだ捉えられないんですよね』
「とりあえずアイに自分のステータスが共有できるような記号式組み込んで、見えるようになるのか触れられるのか試してみるか」
記号式なら魔力で携わる部分も認識できるのでは?と記号式を組むことに。
あとはどう記号式をアイと組み合わせるかだな~
『記号式は私が組みましょう。記号式の組み合わせは理解しておりますし、非常に高質な魔導石も用意出来るとのことで、遠慮いらずな記号式を組むことができます』
「やべぇ。めっちゃ助かる。まだ記号式は分からないことろが多いからな~。けど陣とか記号が多いと描くの大変だから出来るだけスマートにまとめてくれない?」
『無理ですね。ステータスの共有化と言う仕様上、標準記号だけでは表現不可能なので通常文字も使用しなければ、記号式が出来ません』
※忘れていると思うが記号式の魔力消費は10記号で魔力を約1消費する(標準的な記号式に使う記号は60~120)。通常文字(日本語)の代用も可能で記号だけでは表現できない部分も補える。しかし1記号を通常文字で訳すと10~20文字分に相当し、記号で表現出来ない部分を書くとなるとかなりの文字数で魔力消費が異常に高くなってしまう。
そんなアイの回答に彼もそうなる事は分かりきってはいるもやはり書くとになると大変なのだ。
しかし彼らは意気込んで記号式を描く支度を始め、「よし始めるか」と取り掛かるが、こういう時に限って一つ忘れてはいけないことがある。それは・・・。
バーーーン!!
工房のドアを思いっ切り叩き開く音がすれば、そこにいたのはミヤちゃんであった。
「Oh・・」
ミヤちゃん御襲来の姿に本日の迷宮探索のことを忘れていたと感嘆する。
こうして有無を言わさずミヤちゃんに引きずれていくのであった。
『・・記号式組んでおきますね』
「夕飯辺りには帰ってくるから・・」
そして夕方の時間。ミヤちゃんとの迷宮探索が終わり、シルル教会に戻ってくると・・・。
「はい!ただいまっ!色々あったけど記号式組むぞ!」
『お帰りなさい。ですがもう記号式は出来ましたので後は描いて試してもうらうだけです』
「ですよね~」
『あと私に記号式を組み入れるとのことですが、それに妙案あります。この身体には魔力波長共振器と言うのがありまして・・・』
そこから寝る時間も惜しみ、朝日が昇っても作業を続けて十時間・・・。
「・・正直失敗すると思ってた。今まで物事でスムーズにいった記憶が無くてさ、だから今日中で、と言うか数時間だけで終われるとか・・涙が出そう、出てるけど・・」
『同期に使用している記号式の部分を用いれば可能と思っていましたが、こうもとんとん拍子で上手くいくとは私も思ってませんでした』
遂に完成したらしい。今まで何かやる度に失敗や壁に当たるも今回の快進撃の成功のあまりに彼は泣いた。
では彼らがどんな物を作り上げたと言うと・・・。
まずアイのゴーレムの身体にある魔力波長共振器なるもの。それは昔ゴーレム同士の通信や同期を行っていた装置で、それに彼らが作った記号式を組んだのである。
そして記号式に使った記号と標準文字だけで6万字。その数を収める陣の大きさもまあまあの大きさである。さらに魔力波長共振器自体に描き足せる大きさも無いので、金属基板(拡張カード)を作ってそこに記号式を彫り入れて完成させたのだ。
「目がチカチカする・・記号が浮かんで見えるんだが・・これ飛蚊症かな?」
『病的なものでなければ放置で問題ないです』
限られたスペースに記号式を彫り入れる超精密作業は、肉眼だけでは無理なのでスキルも使ったせいか何か見えるらしい。
「へえ~。そう言えば小さい時はよく見えていたけどいつの間にか見えなくなってたな~。けど今はどうでもいい!アイ!装置の具合は?」
『今のところ異常無しです。あとは組んだ記号式をアップデートする形で装置を起動させるだけです』
あとはちゃんと正常動作するのか。ステータスの共有ができるのか確かめるだけ。
「よし、やれ!」
『中々の即決ですね。では起動させます・・』
遂にこの時が来た。
見た目に大きな変化が起きるわけでもないも彼はその様子を凝視する。
そしてアイでは・・・。
魔力波長共振器のアップデートプログラムを確認。
アップデートを開始・・アップデートを終了。
プログラムの再起動を開始・・・。
プログラムにエラーの確認は出来ませんでした。
魔力波長共振器を起動します。
「んんっ!?何か・・何か感じる・・。何だこれ、何かこう・・何とも言えないワサワサ感が。もしやこれがニュータイプ!?うわ、これがそうだったらショック」
不思議な感覚に身体をよじらせる。
『あ』
そしてアイが一言だけ発して続けて神妙そうな感じで言った。
『世界の真理が出ました』
「・・おめでとう」
かつて彼も初めてステータスを出した時と同じ反応から、ステータスが見れたと確信した。
『非常に興味深いですね・・。どうもステータスは記号式のプログラムで動いているようです』
視認してステータスを確認するのとは違ってアイはプログラムでステータスを見ているらしい。だが・・・。
『身体情報のリアルタイム更新に・・情報をどこかに送信もしてますね。アクセスがはじかれました。他に幾つか機能がロックが・・・記号式とは別のプログラム、しかもかなり特殊なプログラムで動いているようです。ロック解除出来ませんでした。ソースの確認も出来ません。専用のアクセスコードでロックが解除されるようです』
見ている世界が違うのか色々と触りまくっていた。
「アイさん、アイさん。興味深いのは分かるけどいじってるのうちのステータスだからね?何か起こって困るのうちだから」
『失礼。つい癖で』
「それで?そこまでやっているんだからバックドアの方はどうなの?」
それが一番重要である。バックドア。そこに繋がる彼がいた世界のネットワーク。そこにアクセス出来るかが終点なのだ。
それにアイは顔は変わらないも不敵な笑みが絡んでいそう声で言った。
『失礼。余裕がありましたのでステータスも調べていたんです。当然バックドアを調べましたよ。その先のネットワークも』
「!!!」
その言葉に目を見開いた彼は、再度聞き直す。
「マジかっ!!?」
『マジのマジです』
それを聞いて一息を入れると・・・。
「・・・・っっっ!!!勝ったぁぁぁぁぁぁああああああああーーーーーーーーっっっっ!!!!!!!」
アイがネットに繋がった喜びに歓喜を上げる。
「勝った!!全てに勝ったああっっ!!今までネットが使えても活かせる技術が無かった!!しかし今はアイがいる!遥かに我より知り得て最適解を導く偉大な金字塔が今ここに建ったのだっっ!!」
凄い喜びようである。そしてアイもバックドアについて色々と語る。
『このバックドア自体もまた別のプログラムで動いていましたが、連携するプログラムと記号式を発見し、解析を行ったところ記号式は解析出来ました。さらにその記号式を適応プログラム「NLP.ver0.1」に統合して「NLP.ver0.2」となり、より連動する記号式を組むことで・・・』
専門用語で話し始めたアイの話しは途中から分からなくなったが、不安定なバックドアの繋がりを安定させたらしい。
「良く分からないけど、大丈夫ならヨシ!」
うんうんと彼は頷く一方、アイは独り言のように話しを続けている。
『そしてネットワークのプログラムも「NLP.ver0.2」で対応可能だったのが良かったですね。お陰様ですんなり構成が分かりました。しかし量子コンピューターはまだ黎明期のようで電子技術は発展途上だったのですね。それにしても感性が独特な種族のようで・・過去に知能差別があった我々ですが肌色やイデオロギーだけで人種差別や戦争が行われるとは・・』
地球の歴史を知って摩訶不思議な生態な種族と頭を捻り続けた。
そして彼の本来の目的は・・・。
「それでアイさんや。自分が知りたい戦艦とかの資料は?もう地球の歴史も知ってなら、第二次世界大戦辺りの船がいいんだけど?」
彼が欲している戦艦の資料。それを元に空船を建造しようと思っているのだが・・・。
『・・・あることはあります』
「何か反応悪くない?」
なぜかアイの反応が悪い。
『その・・悪意はありませんでした。何と言いますか・・ちょっとミリ秒ぐらいした後に気付いた時にはもう遅く・・』
「もしや何かやっちゃいました系ですか?」
若干目を細めながら聞くと静かに頷いた。
『・・・軍艦と言うことでそのワードにヒットするところを調べたところ、軍事機関や兵器製造所など、国家組織から国家レベルまで知らずに調べていました。あとセキュリティーが幼稚でそれがセキュリティーであったのも気付くのに遅れました。後の祭り。時すでにお寿司と言われる感じに』
とてもやっちゃいけない系だった。
そしてどんな事が起きたのと言うと・・・。
ヴィン!ヴィン!ヴィン・・・!
けたたましく鳴るサイレン音に周囲の人は慌てふためき・・・。
「どうした!?何があった!?」
「大規模サイバー攻撃です!!防壁が突破されますっ!!」
「なっ!一体どこからだ!?」
「不明です!国内国外問わずあらゆるところからサーバーから攻撃され・・。っ!!最高位機密事項ファイルにアクセス!!情報が送信されていきます!!」
「早すぎる!最新の量子コンピューターで作った防壁だぞっ!いくらの国家予算で割いて作ったと思ってるんだ!!!」
最新のセキュリティーでもハッキングを防げず、ただ状況をモニターで見ていることしか出来なかった。
「システム乗っ取られました・・。こちらの制御を受け付けません・・・」
「・・はぁ。防壁の突破、機密情報の漏洩・・とんでもない失態だ。国際社会からどんな批判を・・いや、批判だけで済むならいいんだがな・・・」
みたい事が全世界の国々で起こしていた。そして一体誰がまたは組織がどんな目的でどんな手段を使ったのか、機密情報を抜き取られたにも関わらず情報が出回った痕跡も公表も無く、ゴーストハック事変と世界最大ミステリーとして呼ばれるのだった。
「足は・・付いてないな?」
『勿論です』
「偉い人は言いました。バレなきゃ犯罪じゃないと」
『とても有り難い言葉ですね』
そして本人達は小声で見て見ぬふりをする事に決めた。
「まあやってしまったのは仕方ない。とりあえず我が目的である空船建造についてだが」
そして遂に話しが空船について動き出す。
『はい、帆船から現在まであらゆる国の船に関する情報は揃えました。どの船をモデルにしても大丈夫です』
「よし。ならやっぱり最初は戦艦大和・・!って言いたいけど波動エンジンとか縮退炉いきなり作れないしな~」
船は船でも何の船を作ろうと思ったのか。その後も「重力砲ならギリ作れるか?」と少し話しが逸れ始める。
そしてアイは、縮退炉を作るなるとかなりの高度な設備が必要となるのですが。と、縮退炉は作れるが言わずにスルーする。
「と言うわけで戦艦は追々。まずは手始めとして駆逐艦からだ!」
そして軍艦の基本たる駆逐艦から建造することに決めて・・・。
『駆逐艦・・。とするとフレッチャー級などですか?非常にバランスが取れてる上に標準化もされて、情報も豊富にあります』
それに彼はフッと笑い・・。
「身体はこの世界のものであっても心は大和魂!作るはワシントン条約により生まれ、当時の列強に衝撃を与えしその名を特型駆逐艦!つまり吹雪型駆逐艦から我々の航海が始まるのだっ!!」
彼ことクラリオン、この日を境についに本格建造を始動する。
やっと本編が語りはじめが出来ようとしている・・・。




