第45話 そのコードヴェリタって言うのは?
前回のお話。空船建造を以下略、町に戻ってきた彼ことクラリオンはいつもの日常に戻りつつあった?
そして今現在・・・。
「え?取引できない?」
「はい・・。今は非常事態の最中でクラリオン様との魔導石の取引は停止せよと、ギルドマスターからのお達しがありまして・・。その・・申し訳ございません」
彼らは冒険者ギルドにて魔導石を換金しに来たら取引停止と言われていた。
心当たりが無くもないけど、え~今、教会の改装資金が必要なのに。
「じゃあこっちの魔石は?」
今度はミヤちゃんが「ん」と持ってる魔石の袋を出す。
当然だが彼が1人でどこかに行かせるなどミヤちゃんが許すはずもないから、しっかり彼と与吉も一緒に来ていた。
「あ。そちらのは大丈夫です」
「そっちはいいのね・・」
普通にモンスターで狩った魔石は大丈夫らしい。
そしてギルド職員から更にこうも言われた。
「あとギルドマスターから言伝がありまして、クラリオン様が来たらこれを出すようにと」
「トクガワさんから?」
すると何かの紙を出されたと思うと紙が光って、トクガワの声が流れ始めた。
『クラリオン君、分かってると思うが魔導石を売ったら駄目だよ。国際状況が本当に危ないことになってるからね。どんだけギルドが苦労してるか分かるかい?
あとどこかにこっそり売るのも駄目だからね。売ったら今後、全冒険者ギルド及び冒険者ギルド関係の施設の利用停止だから。分かったね?本当にっ・・!くれぐれも!余計な争いの元を作らないでくれよ・・』
と、ブラックリスト扱いするよのこと。
うち・・。そこまで悪いことしてたかな?
彼の魔導石が世界大戦のきっかけになりかねたのだから、緊張を高めるわけにもいかないのだろう。と言っても彼はまだそれに気付いてもないのだからたちが悪い。
「え~でも、他のところで売るの禁止なんて、いや禁止とまでは言われてないか・・」
「あの、本当にっ!何処か秘密で売るのやめて下さいねっ!自分がやったことよく考えて下さいねっ!?」
ギルド職員がガシッと「分かってますよね!?」と肩を捕まれ説得させられる始末。
出来ることなら監視も拘束もしておきたい。が、彼を拘束しようものなら戦略級魔導石を独占している、と各国は思ってしまうだろう。
何よりすでに彼の周りでは各国の諜報員を送り出され、秘密裏に接触しようとしたり、または阻止しようと裏方達のスパイ大戦争が始まっているのだ。呑気に町を歩いたり、迷宮に行ってる場合じゃないのだ。
「本当にっ・・よく、周りを見て考えて下さいねっ!?」
なのでギルド職員は念を強く押すことしか出来ない。と言うより何普通に今の状況で片手一つで魔導石を持ってんのっ!?!?明らか怪しい奴らがこっち見てるだろが!分かってんのかクソガキ!!と叫ぶの我慢して目で訴えるも悲しいかな、全く気づかない。
「え~。でもお金がな~。う~ん・・仕方ない、今のお金でやり繰りするしかないか」
ギルドのお菓子が食べれらなくなるのは嫌だしな~。と何処かに売るのは諦めさせたことには成功したのだった。
グイッ。
「もう行く」
そこに今度は換金が済んだミヤちゃんが彼を引っ張って迷宮に向かおうとする。
「行くから行くから。あんま引っ張んないで」
こうして彼らは冒険者ギルトを後にした。それを見送ったギルド職員は・・・。
「彼ら分かっているのよね・・・?」
一末の不安しかない彼らにどうか大人しくしてくれと願うのであった。
しかしそんな願いは叶わず彼らは迷宮に向かう。そして今回は下層の前線と呼ばれるところまで行くことにした。と言うのもミヤちゃん強すぎ問題で、いっそのこと下層でもいいんじゃない?かと思ったからだそうだ。
そして案の定。
「流石前線。中層よりも更に強いな。今まで数秒足らずが数十秒で終わるんだから」
チチィ~。
前線でもミヤちゃん無双だった。
そしてある程度ミヤちゃん無双を終え、一息入れて彼らはお茶を飲みながらゆっくりしていた。
「・・・・」
そんな中ミヤちゃんは不満顔で宙を見つめていた。
「ミヤちゃん、もしかして今ステータス見てるん?」
「ん」
そう言うとミヤちゃんがステータス画面を見せてくれる。
うっわ・・。
見えてもらえばミヤちゃんの体力の数値がもう1000を越えていたのだ。これは成人の獣人と大差ない数値。そんでもって彼の数値は22。
あ。もう物理で勝てんわ、これ。
しかし彼も彼で成長真っ盛りだけあって、魔力数値は初期より上がって4万近く。ミヤちゃんは240。と166倍近い差があるのだからどっちもどっちだろう。
「ミヤちゃん・・。ステータス的にはもう充分な強さになってない?」
「なってない」
「え~~。ミヤちゃん的にどうすれば満足な強さなの?」
それにミヤちゃんは。
「・・1万越えたら強い」
「oh・・」
これはまたと言いそうな数値に長い付き合いになるな~と遠目になる。
「あとスキルも覚えたい」
「・・・・」
そしてまたスキルを教えないといけないのかと課題が増える事にため息を吐くのだった。
数日後・・・。
「は~い。業者確保したので、これより教会の改装及び増築工事を開始したいと思いま~す」
約束の教会を増築する為、彼は業者を雇う。
因みにお金は迷宮で稼いだお金を借りて業者発注にこぎ着けた。
「はぁ~やっとこの荷物がどうにか出来るんですね」
「本当にお金の工面が苦労しましたよ、ミルティア先生」
そして教会の前では作業に取り掛かってる業者の人を見ながら、彼はミルティアにどんな感じに増築と改装になるかを設計図を見せながら説明した。
なお、ミヤちゃんは彼の後ろを無言で見張り、メルダー達は以前に仕掛けたと言うネズミ取りの罠の回収があると言って出かけている。
「え~っと工事自体は今日中で終わる感じで、あそこからここまでが増築個所で・・。改装は窓枠部分と屋根と・・・」
と言う感じで概ね簡単にミルティアに話していき、最後に増築して割り当てる部屋の一つにある事を付け足す。
「最後に、ここの部屋は工房で、そこだけ超強度な壁設計だからもしかしたら今日中に終わらないかもです」
「ふむふむ。なるほど・・。ん?工房?」
ミルティアが首を傾げる。
「いや~~。業者も工房作るとなると色々必要な資材が足りないって言うからさ、自分が持ってる資材で使えるのないか相談したら、ギリ作れるからお願いしてもらったよ」
「・・・・なんでそんなの付け足したんですか?」
眉毛をピクリと動かして説明を求めますと言われるた。
「いやさ、と言うのも・・・・」
彼曰く、ミヤちゃんの拘束はしばらく続きそうだし、宿屋に戻って製作やらゴーレムの研究もできないから、ならいっそ教会の増築に作業スペース作るのもありだなと、思って工房を追加オプションしたのこと。
「だから費用も掛かってさ。でも資材の提供したからその分割り引いてくれたから良かったよ。親切な人で良かった~」
まあそうしないとゴーレムの研究に充てられる時間がないのが現状のため、遅かれ早かれ教会に作業スペースを堂々とまたは密かに作っていただろう。
「はぁ・・。クラリオン君、そう言うのは早めに言わないと駄目ですよ」
ため息を吐きながらお小言を言うも。でもそういう部屋があってもいいですね。部屋も余裕できますし。と許すことに。
ただミルティアが想像する工房とは絵とか工芸に関するアトリエであり、彼の工房は鍛冶工房寄りで資源加工、道具製作、解体、実験など色々。それに気づいた時は花を生けてあげようと部屋に入った時だったという。
そして夕方になって。
「改装と増築の方終わりましたー。最後内装の最終確認してもらっていいすっか?問題なければ、書類にサインを・・・」
「はいはい~」
今日中に終わるか不安だった工房部屋も無事終わった。
いや~本当に異世界の建築は早いな~。リアルタイムラプスだよな~。
「はぁ~。これで荷物が片付きますね。だけど部屋も増えたんだから、家具付きでお願いすれば良かったです」
「・・ミルティア先生。それは欲張りすぎでは?」
「冗談です。流石にそこまでお願いしませんから。ですけどミヤちゃんの荷物の移動までちゃんとやってくださいね?」
ミルティアもご満悦である。ただワンチャンお願いすればやってもらえるかも思ってるあたり勘弁してほしいのであった。
この異世界の大人は信用出来ないんだよな~。
それから彼とミルティアは業者の書類手続きも終えて、無事引き渡しが終わり・・・。
「では皆さん、料理を食べる前にちゃんとお祈りしてから食べましょうね~~」
「「「「はーーい」」」」
「・・・・・・」
増築お祝いとしてお食事会を開くことになった。と言ってもミヤちゃんのお土産にはまだ食品関係のものがあるからその消費のためだがそんな諸事情はどうでもよく、彼は目の前に出されている料理に無言で見つめていた。
まあ何があったのかと言えば・・・。
まず冒頭で言ったように増築祝いに料理を作ることになった。それに彼は準備や手伝いにゴーレムを呼ぼうと思い、ミヤちゃんと一緒に宿屋から連れ出した。
ついでに工房に置く道具も持ち帰り、教会に着くと中にはメルダー達が帰ってきていたらしい。
そしてメルダーは彼らに気づくと満面の笑みで両手で掴んだあるものを見せてくれたのだ。
「すっげぇな!!教会新しくなってるじゃん!けどうちらのも見てくれよ!すっげえいいの捕まえたからっ!!」
ヂューーーッッッ!!!!!!
うっわ・・・。
それは大変活きがいいデカいドブネズミだった。まあネズミ取りに行ってたのだから持ってくるものなど予想できるが。
ミヤちゃんも駆け寄り、順番と言わんばかりにメルダーからドブネズミを譲り受け、尻尾を掴んで重さと活気を味わい、感想を言い合う子どもら。
忘れてたよ・・。こいつらこういう事するんだった・・。
「クラリオン君、ミヤちゃん戻って来たんですね。皆も帰ってきたところなんですよ」
さらに奥からミルティアも現れるもそれよりも彼はミルティアの手に視線がいく。
「・・ミルティア先生。その手・・」
薄っすらと血が滴っているように見えるのを指摘すると。
「え?あ~、さっき二匹捌いておいたんですよ。ほら、料理の方に出そうと思って。新鮮な方がいいでしょう?」
美味しく調理してますよと笑顔で言うミルティアに彼は顔を上げて「あ~・・」と最悪な事態が台所で起きていると悟る。
忘れてたよ。ここ、邪教と大差ないってことを・・・。
この邪教名物ドブネズミ料理が作られることにもはや手遅れと膝が折れる彼だが、僅かな希望を胸にネズミを使わない料理をお願いするも結局はどれもネズミ肉が盛り付けられてる料理になってしまったのだ。
今だったら神に膝折ってお願いするかもしれん・・・。
「では皆さん、料理を食べる前にちゃんとお祈りしてから食べましょうね~~」
「「「「はーーい」」」」
「・・・・・・」
「クラ~、かおが死んでるぞー。どうした~?」
「このサバト料理だよ」
それにミルティアは「あ」と名案と思いつく。
「クラリオン君、今回ばかりは好き嫌いしては駄目ですよ。じゃないと工房は使わせません」
「っ!!?」
好き嫌い無くす為のミルティアなりの善意だが、このとんでもない発言にげんなりしてる彼も機敏に反応する。
この魔女ーーっ!!卑怯だぞそれっ!!
「少しずつ好き嫌いを治していかないと大人になってから恥ずかしいですからね」
「大人になればわざわざ嫌いなものなんて食うかっ!あとこれは好き嫌いとかじゃない!ドブネズミを食わせる時点で人としてどうかと思います!」
「どうもないです」
ばっさり切り捨てらた。
ええい!虐待で訴えるぞ!
「ミルティア先生、シスターなら慈悲を下さいっ!洒落にならない!隙間時間に聖書読みます!こんな理由で死にたくないっ!」
結構必死で言ってるのをミルティアも「そ、そこまで嫌ですか・・」とちょっと考えを思い直す。
無理に食べさせるのもあれですね。嫌な思いをさせてまで食べさせるのも教育として良くないですし・・・。
「じゃあこうしましょう。一口だけ。一口食べたらいいことにします」
「・・一口」
それに彼は真剣に悩み、目を閉じてしばらく考え込む。そして・・・。
「あの・・本当に勘弁してもらえませんでしょうか・・?」
床に跪いてガチの土下座をする。あれこれ回避手段を考えるも教会から逃げればミヤちゃんは怒るだろうし、恐らく無理矢理喰わされる羽目にもなるともはや打つ手がないと悟ったのだ。なので彼ことクラリオン、この異世界にて本気で土下座する。
「「「「「・・・・・・・」」」」」
祝いの場でこの行為に皆「そこまでやるか・・」とまさかの行動に注目する。
「・・はぁ、分かりました。そんなに嫌なら食べなくてもいいですから」
「今だけは神に感謝を・・」
土下座外交成功で無事にドブネズミ肉を回避した彼。しかしそうただで終わらないのがこの異世界の住人達。
これは彼に反省させたい時に使えるかもですね。
彼の弱点が明確に判明し、彼に対抗できるカードを持てたと、ミルティアは「フフ」と笑うのであった。
因みに彼が食べなかったドブネズミ肉の分は与吉が美味しく頂いた。
かくしてシルル教会の改装祝いは無事?に終わり、工房も使える許可も得た。これでやっとゴーレムの研究に回せる時間が得れたわけで、後はどれだけ彼が成果を出せるかで・・・。
数週間後・・・。
「・・・よし、お前達は・・2型枠・・で派生の初期ゴーレム?でいいんすかね?」
『『おそらく?』』
「くそぅ・・こいつら本当にロボットと見ていいのか?」
しばらくの間ゴーレムを調べる余裕の時間が出来てコツコツと調べていた彼だったが、未だにゴーレムの種類が分かっていなかった。
何せゴーレムの種類やバージョンだけで百種類、甲型やら乙型やらZ型なんかもあって見分けも難しい様なのである。
「せめて型番とか明記してあればな~~」
『『我々は一種族として生命を確立し、人類よりも遥かに・・』』
「ロボット三原則勝手に破らないように~」
『『了解しました。お茶組み係博士』』
「・・・・・」
せめてこいつら自身が何か分かっていればな~~。
ゴーレムの内部を調べる為にフレームを外して中の部品についての質問にどれも答えてはくれたんだが最後に『知らんけど』と付けるのだから信じていいのか分からなかった。
「しっかしな~。こればかりは謎と言うか・・魔法云々でもどういう理屈だこれ?」
CPUやら演算装置と思われる部品はそこそこ大きい立方体の金属の形をしたものが胴体にあった。
スキルを使ってその金属を透視すると何十枚という薄い金属板が重なっており、その金属板の一枚一枚に裏表にミリ単位で刻まれた記号式でびっしり埋め尽くされていたのだ。
「そう言えば以前びっしり書かれた記号式の本あったな・・。これか?この写しか?」
大抵記号式で消費する魔力は記号10個使って1魔力消費する。記号式の標準記号数は60~120ぐらい。立方体の金属だと万にも及ぶ記号数になりそうで、その消費魔力は千にもなるはずなのに、ゴーレムの動力源である魔導石の魔力量は千もいかない感じなのだ。
「記号数からして魔力が足りないはずなんだよ。けど動いているんだよな~。なんでだろうな~・・」
あれか?まだ解明されてない記号式があって魔力消費が少ないとか?あり得なくはないが、う~~~ん・・。
謎が謎を呼ぶいつもの流れになりかける。
「だがまあ、これも一旦隅に置いといて・・このコアだよな~」
そう、忘れならないのがゴーレムに興味をもったきっかけである謎のコア。ゴーレムの部品であると思いながらここまで来たわけだが、そのゴーレム内部を見るも同様の部品は確認できなかった。
「ん~~普通に種類が違うからか?全く分からん・・」
しかも電気系統のような構造でもないから全くの手掛かりなし。
そんなしばらく悩みっぱなしの彼にゴーレム達は。
『そろそろ外したフレームを戻してもらっていいでしょうか?』
『我々のヌードにご満悦しましたか?』
「基本全裸だろうに。あ~あとそうだ、このコアみたいな部品について心当たりある?」
そう言えばちゃんと見せたことないな。
今までちゃんとコアを見せてなかったことを思い出し、コアを見せてみる。
あまり期待はしてないけどね~。
『近視なので近く持って下さるとありがたいです』
『なら私は遠視なので30mほど遠ざけてもらいたいです』
おふざけが入るもゴーレム達はまじまじと観察し続けると・・・。
『初期型ロッド・・コードヴェリタ』
『接続と同時に同期されます。同期の際に当ゴーレムの蒐集データが初期化されます。正常にゴーレムの起動が困難になる場合があります』
『ゴーレム第一原則に従いどのゴーレムでも同期は可能ですが、正常な作動成功例は記憶されてません。それでも同期しますか?』
このコアの根本に触れる言葉がいくつも出てくる。
え~~・・。
もっと早い段階で見せていれば、もっと早く色々と解決出来ていたのではないかと「あ~~」と言いながらため息も吐く。
「なんでこう・・こうもっと物事がスムーズに進まないのかな~~」
『どうしますか?同期しますか?』
『それとも強制アップデートと言う、仕事に支障をきたすアレをしますか?』
「それはやめて」
う~ん、しかしまさかこんなに情報が入るとは・・。
「とりあえずこのコアで知ってること全部とその説明してもらっていい?」
まずは情報を知ってまとめたいところ。しかし。
『誠に残念ながら初期型ロッドの情報は、他の情報で上書き保存されて情報が削除されました。単語のみの情報しかありませんでした』
『当ゴーレムも上書き保存で情報が削除されてます。ですが復元機能を実施したところ『腰使いが激しいカブトムシの交尾映像』の復元に成功しました。ご覧になりますか?』
有益な情報は無かったようだ。
ろくな情報が保存されてないな、このゴーレムは。
「じゃああれは?何とか原則と言ってたあれ」
『ゴーレム第一原則。コードヴェリタを持つ媒体が接続した場合、コードヴェリタを基準としたプログラム構成されることです』
ん~~コードヴェリタか。
「そのコードヴェリタって言うのは?」
そしてゴーレムらは今までで最も謎が深い言葉を言い放つのであった。
『『未知の領域。観測できない何か』』
2022.05.04 一部誤字脱字編集




