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自由に気ままに異世界大陸指名犯 ー空賊ライフー  作者: クラ108
エピソード0 まだ最初の時
58/82

第39話 これどっか道あるんじゃないの?

 前回のお話。空船建造を以下略、地下迷宮と称される新宿駅モドキに入った彼は、ゴーレムの手掛かりになる情報求めに更に地下深くに入っていくのであった。



 情報屋(ブローカー)の情報の元、古物に詳しい人物の情報屋の場所に向ってる彼ら。しかし案内係の2人は道中不安を漏らしていた。


「な、なあ。俺ら本当に大丈夫なのか?」

「ずっと目線を向けられている気がしてならねえんだ」

「いちいち気にしたら駄目だよ。弱気だとモンスターもミヤちゃんも見計らって襲ってくるから。それにこっちはモンスターの群れと闘い慣れているし、人間なんて楽々」


 あれから後をつけ狙う集団がいるのを彼も気付いてはいる。ただ襲ってこない限りは何かするつもりもなかったし、異界に入った経験から普段よりも警戒はしているのだ。

 そして立て続けに彼は話す。


「にしてもまさかこんなところにまで自分の噂が広まっていたのは驚きだったけど」

「そりゃ、お前さんが採ってきた魔石とか魔導石が裏取引で流れてくる時があるからな」

「マジか」


 彼が採ったとされる魔石が一部で裏取引されているこに驚いた。


「表立だにされたくないどっかの国の奴とか買手がゾロゾロ来る始末だ」

「それにその魔導石がこの駅に入ってくると嫌でも空気がピリつくのさ。魔力に反応して人も物を騒ぐはでな」

「だからかあんたの噂も流れるさ。あの魔導石は人がいる中で爆発発掘したもので、血が染み憑いているからあんな空気になる。とか、人の血で作られた魔石だからだとか色々あるぜ」


 うわ。酷い言われよう。


「はあ。全く・・そこまで酷くないのに。でもそいつらの血で魔石が出来るか試してやろうかな?作れたら分けてあげる~」

「どこに清く優しい素直なところが・・」

「どうすればここのヤバい奴らと張り合えそうな神経持てるんだよ」


 そんな狂気温まりそうな会話と無数の視線を向けられながら進むと案内係は苦い顔をしだした。


「・・・やっぱこの下の階に降りるにはやっぱここ通らないと駄目だよな・・」

「薄々分かっていたけどよ・・。よっぽどじゃない限り通りたくない階だなここは」


 下に続く階段に元に着くと案内係は足を一旦止める。


「どうしたん?この下に行くんじゃないの?」

「お前さん、ここから地下18から24階はな、ミシャロ商会の品が多く売り出されているんだ」

「異界の階と比べれば得体の知れない何かがいるかいないかの違いだな。まさにカオスってところさ」


 頭を抱えそうに話す2人とは逆に彼はミシャロと言う言葉にテンションが上がる。

 

「え?ここから下ミシャロ商会の品売り場なの?販売終了した商品が今でも売られていると言う、寄ってみたかった場所じゃん。え!?階ごとに品分けされているの?それともトンギーみたいな感じで売り出されている感じ?それとも個人マーケット的な?」


 あのミシャロの品が!こんな場所で!販売終了になった物が!売られている。それだけで彼には充分な内容だった。しかもそこにあるのはミシャロ商会の中でも屈指レベルの危険物、劇物指定にされた品、各国あるいは大陸の全国家から禁止使用物扱いされた物ばかり。とんでもない火薬庫でもあるのだ。


「あのなお前さん、あそこあるミシャロの物はな、そこらのミシャロの物と一緒にしちゃあいけねぇ・・」

「偶に通路でうわ言言ってる奴らとかいるだろ?全員が全員ではないが、ミシャロの道具でああなった連中も多い。ただその階を通っただけでそうなった者がな・・」



 ※追記。ミシャロ商品が売られている階には異界に繋がってる階段があり、不用品がそこで処分できる究極のゴミ処理施設になっている。その為、この大陸でもミシャロ商会の品が安全に処分できる珍しい場所でもある。



「そんなことが・・」

「むしろミシャロ商品を輸入してるからなあ、その階は」

「まあここは駅だったしな。どこか通じるホームがあるんだろうな」


 しかしそれを聞いても彼は。


「なるほどなるほど、んじゃ行くか」

「お前、人の話し聞いてたか?」

「どうして行く気になれるんだよ」

「任せろ。まだ日は浅い方だが自分はミシャロ通だ。むしろよく売れ残り貰っているし、買っている。だから大体何が危険で危ないか分かるから」


 彼がこの異世界で普通に凄いところその一つ、ミシャロ商品に強い。スキルのおかげが大きいが『万物追及』で物質を操ることで、商品に彫られている記号式を潰したり、元素ごとに分けることも可能でもあるから有害物質でも安全に分解できたりするのだ。ただ本人はそこまで気付いてないところも多々あるが。



「ほら行くぞ。お前ら」


 彼はそう言って階段を降りていく。


「「・・・・・・」」


 それに2人は着いて行きたくないが、今でも何処からか向けられる視線に「まだ彼と一緒にいた方が安全」と仕方なく彼に着いて行く。

 しかしそれから2人は大変であった。その一部がこれである・・・。



「あのさ、やっぱりあれ買っておきたかったんだけど・・」

「見ただろ!横たわってた人がキノコになってるのを!あれをどう見てあんなのが欲しいと思うんだ!?」

「いや、あいつらは使い方がまずかったんだろう。ミシャロ製は暴発以外は手順踏めば基本安全だし」

「どの道具でも普通はそうだっ!」

「でも見ただろあのキノコ!松茸はもちろん、椎茸、エリンギ、エノキダケ!その他諸々!季節関係無しの生え放題!あれがあればどこでもキノコが勝手に育つ!あれは強い!」

「人がキノコになってる時点で駄目に決まってるだろうがっ!」

「しかもよく見ろ!どのキノコも馬鹿みたく胞子出しまくって!どこの谷だっ!」

「おい待て、最後は何かの実が生えていただろ。それにあれは世界を清めるのに必要な存在なんだ」

「お前らは一体何の話しをしてるっ!?いいからすぐここを離れるぞっっ!!」

「ええ~色んな菌類で埋まってる商品とかあるのに、与吉もいるから虫使いに・・」

「いいから次の階に行くぞ!!買うんだったら俺達の案内が終わってからにしろ!」



 大体どの階でこんな感じ。目を輝かせながら絶対に危険だろうと思う場所に突っ込むは、洒落にならない品を衝動買いし掛け、明らかに押すな危険ボタンがある商品の注意書きを見ても躊躇いなく押しに行く。

 こんな調子で案内係は暴走する彼を無理矢理引っ張っては次の階に行き、たった数時間を数日過ごしたかのような思いでミシャロエリアの階を生きて降りるのだった。



「・・死ぬかと思った」

「俺もだよ・・」

「いや、死ぬような場面は無かったぞ?でもさあれにはビックリだったな。回復の泉が売られていたのは」


 正確には泉発生なる装置で、設定されたミシャロ商会製のポーションをランダムで生み出すと言うものだった(泉かどうかはさておき)。欠点はランダム故に効能不明、色、味、におい、とろみ具合に偶に浮かぶ不純物、薄めて使用する濃度100%ものであったりと、その辺り気を付けないといけない代物である。


「けど俺らの後をついて来る連中はいなかったな」

「まあミシャロエリアなんて流石に命の保証はねえしな、当然さ」

「あと途中で発掘して買ったこれも役に立ったでしょ?時差時計。これでどこが時間の歪みが深いか分かって行かずに済んだしさ」


 あとミシャロエリアには普通に時空が歪んでるところがある。最終的にどうなるか深さによって様々で、タイムスリップに近い状態、老けて生還、タイムパラドックスが起きて・・・。など本当に様々である。


「確かにそれはいい拾いもんだったな。けどよ、店員・・だったのか分からなかったがもう干乾びていただろ。わざわざ金を置くなんて勿体無ねえことするよな~」

「それはそれ、これはこれ。埃被っていたけど2ハク22バレルって値札あったしね。だけどセンの両替可能の看板立っていたけど。聞いたことない単位だったな~」

「そりゃ、お前さんが生まれるずっと前に使われてた金だな。100センで1バレル。廃止されなければセンが主流通貨だったさ」

「へえ~」


 ちょっと豆知識を知ったところでもう1人の案内係が次の階段を見つけて声を掛ける。


「お~い。いい加減喋ってないで下に降りるぞ。次の次で目的の人物やらがいる階だからな~」

「はいはい、行く行く~~」



 こうしてまた下の階段を降りて行き・・・。



「ここかーー」


 やっと遂に古物に詳しい人がいる階に着いた。


「来ては来たものの・・」

「本当にこの階にいるのかね~。俺らでも来たことないし」

「え?来たことないの?」


 案内係の2人も初めて来たそうだ。


「そもそもよっぽどじゃない限りミシャロエリアに降りたりしないからな」

「けどどの階も大体同じ構造のホームと通路が幾つもあるからな。慣れれば分かるさ」

「ああ。そう言えば地図でもコピペのような感じだったか」

「まあ、ここに来る奴は常識外れか抜け道を知ってる奴らぐらいだな」


 常識外れね~・・。

 そんな言葉に妙にしっくりする。ミシャロエリアから下の階の人達はちらほらいる程度だが、身なりはしっかりした印象。しかし考えればこんな場所に普通にしているのだから・・まあ普通の人とは違うのだろう。


「え~っと。この通路を抜けて角で曲がったホームのどこかにいるらしいが・・」

「おっ。もうすぐじゃん」


 古物に詳しい人までもう少しのところまで来た。

 そして案内係の言葉通りに角で曲がったホームに着くと・・・。


「・・・何ここ。異界の親戚?と言うかホームだったのここ?」


 見えたのは天井まで埋まったゴミ溜めみたいなところだった。


「何か引っこ抜いたら崩れるんじゃねえかここ・・」

「俺達こんな中に入るのか?と言うか入る場所あるのか?」

「・・・迂回していける通路とかホームある?とりあえず全体を把握しておこう」


 そんな訳で一旦このホームに通じる他の通路にも行ってみた。が、どの場所もゴミで塞がれており、結局彼らは最初に来た場所に戻ってくることに。


「それでどうする?いちよ俺達、案内はしたにはした訳だけどよ」

「戻りたいってのもあるが、また俺らだけでミシャロエリアに行くのはな・・」

「いや、まだ目的の人には会ってないから案内は続く」

「けど目の前にあるのはゴミ山だぜ?」

「あいつのことだ。ガセネタだったんだろ。一旦戻るの手じゃねえか?」


 色々と迷うところだが彼は少し冷静に考察する。

 今までの階にはそれぞれ特徴があった。異界にしろ、ミシャロエリアにしろ、特徴づける何かがあった。そして目の前には天井まで埋まっているゴミ溜め。()()ある。何か無ければあんなゴミ溜めにはならないはず。と言うかどうやればこんなに溜まるんだ?とにかくだ、その何かの手掛かりはないのかと。


「・・・・・・」


 腕組しながら改めて眺める。


「異臭はしてもハエとか虫が湧いてないな・・」


 ゴミ溜めならば虫がいてもおかしくないが虫がいるような感じはしない。周りをよく見ると・・・。


「何か漏れているのは・・油?それにこれ、生・・ゴミ??」


 齧りかけで腐って変色した果物を見つけると、何か怪しさを感じて指で弾いてみると・・・。


 カーン・・。


 弾いた果物が他のゴミに当たると金属音が響く。これに気付いた彼は・・・。


「まさかこれ全部金属かっ!?」


 驚きながらそこらのゴミを触ってみると、どれも手触りは金属。その様子に案内係も触ってみると彼と似た反応をした。


「おいおい。見た目も臭いもゴミと同じだけどよ、これ本当に全部金属で出来ているのかよ・・」

「とんだ()()()()だな・・」


 そうなると天井まであるゴミ溜めは全部金属のスクラップと言うことになる。ただのゴミ溜めではないとなると・・・。


「これどっか道あるんじゃないの?」


 改めてゴミ溜めではなくスクラップの山の壁を調べてみる。すると案内係の1人が隠された道を見つけた。


「あったぜ・・。道が」


 取っ手もないそこらのスクラップの塊を引っ張るとバネのような反発を受けながら、隠された奥に続く通路が現れた。


「妙にスカついた感触があると思ったら、まさか隠し扉だったとはな」

「おお~当たり。んじゃお先~」


 そう言って彼は先に進んで入って行くと残った2人はお互い顔を見合わせる。


「・・どうする?行くか?」

「ここで2人留守番しててもな。大丈夫な保証もねえし・・・。はぁ・・。お~い、先に行き過ぎるなよ~~」

「俺ら冒険者でも無いのにな~」


 彼の後を追って2人も隠し扉の奥へ進んで行った。そしたら先に進んでいた彼が何かを見ながら待っていた。


「お~いお二人さん、見てみ、あれ。何だと思う?」

「おいおい勝手に先に進みやがって、大人だとこの道狭いんだぞ」

「んで、何が見えたって?」

「あれあれ。あれって本物だと思う?」


 彼が指差す先の場所は少し通路が広めになっており、その真ん中に巨木の幹だけが見えていた。だが、その幹だけ何故か薄く光っているのだ。


「照明かあれ?」

「こんな場所木が生えているのもおかしな・・話しでもないな、ここは何でもありだしな」

「あと気づいたんだけど異臭もしてないんだよね。空気が綺麗と言うか、空気が通っていると言うのか」


 色々と不思議に思いながらもここでも幹の周りを調べると、先ほどの隠し扉よりも簡単に、と言うか見えにくいだけで普通に扉が付いていた。



「・・お邪魔しま~す」


 扉を開くと中は、周りのスクラップと同様にごちゃごちゃしているが、ある程度まとめられており、人手が行き届いていた。


「なんだ?誰もいないのか?」

「あんま中も変わらないな」


 案内係も入って中の様子を見渡していると、彼はある事に気づく。


「あ。値札・・14ハク?高っ。このスコップが?」


 そして目を凝らせば所々に値札が置かれてた。


 ガサッ・・・。


 そこに突然物音が響く。

 彼らは音がした方に目線を向けて警戒して構えると・・・。


「あ~らま、人が睡眠と瞑想と今日ご飯食べたか食べてないか自問自答してるところに人が来るとは、来てしまうとは・・。今日のラッキーアイテム、魚の骨だから飾っていたんだけど・・」


 緑の燕尾服にシルクハットと片メガネ。壮年あたりの男性が床の物に埋もれていたのかガチャガチャ音を立てながら立ち上がる。


「ん~~。ん?んんっ?あ。ここの骨だけ人骨だった。ああ~、なるほどなるほど。運が上がらない訳だ。ステータスの運も変わってないし。まあ上がった試しもないんだけど・・。それでそれで?あんたら何者さんよ?」


 これから自分はこの人と話しをしないといけないのか・・・。

 個性的な人物に流石の彼も躊躇の姿勢を見せるのだった。

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