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自由に気ままに異世界大陸指名犯 ー空賊ライフー  作者: クラ108
エピソード0 まだ最初の時
53/82

第34話 あの新宿駅のことか

 前回のお話。空船建造を一旦保留にして以下略、フェレストリア王国と彼はちょっと大戦争引き起こしかねない事態に彼は魔石を用意してもらうことになって、急遽オヴェスト・トレンボに戻ることになったわけだが・・・。



「いや~被害甚大だったね~エヴァン君。けど必要な分の魔導石は用意したし問題無いよね?」

「問題大ありだよお兄ちゃん・・」


 空船の甲板上で上機嫌で話す彼ことクラリオンと彼と共に同行することになったエヴァンは、ため息を吐いていた。


「まあ魔導石はギルドの方で売っちゃったわけだけど、いちよギルドに売った魔石って最終的に国に来るんでしょう?ちょっと間を通してだけど取引成立!成立だよね?」

「ギルドの方にも色々と説明入れないと・・。あぁ、また余計な仕事を・・」

「はい。ということでこれよりこの船は工国直行便に変更になりました~。皆~よろしくっ!」

「よろしくないからね?」


 あれから彼らは王都からオヴェスト・トレンボに向かって、何とか必要な数の魔導石を用意することが出来たらしいが色々とあったみたいであった。

 そんなわけでオヴェスト・トレンボで何があったかダイジェストに伝えよう。



「お前らっ!遂に到着だ!」


『オオーーーー!!』


 彼ら一行オヴェスト・トレンボの空船港にまず到着。


「伝えた通り第1から第3小隊は町でミヤちゃんの発見及び誘導!第4小隊は迷宮入口で見張り!獣人幼女がいたら迷宮に潜らせるな!第5小隊は空船港で防衛、我らの最終防衛ラインだ!抜かせな!非戦闘員は空船港で騒ぎがあった場合、速やかに緊急出港!船に関係者以外が乗りに来るようなら叩き落とせ!返事はっ!」


『イエッサーーーーー!!!!』


「よし!トンガ作戦決行だ!」

「お兄ちゃん。本当にそれ必要な行動なの?」



「ほ、報告っ!。第2小隊、ミヤちゃんと思われる獣人幼女と美男子のお兄さんと名乗るが町中で会話していたを発見!」

「なんでそんな奴と会話してるのミヤちゃんは・・」

「接触を試みたところ・・そのまま襲われ第2小隊は・・壊滅」

「なっ!?」

「生き残りの報告によれば『クラの臭いがする』とかで襲ったようです」

「くっ!幼女でもそこは獣人か!」

「それと誘導用に持っていたお菓子や玩具は強奪して去って行った模様」

「しかも抜け目ない・・!っ!第4小隊にミヤちゃんの発見と誘導に回るように伝令。迷宮の見張りはしなくていい!」

「イエッサー!」

「お兄ちゃん。指揮するの上手いね。何かやってたの?」



「報告!ミヤちゃんの誘導成功!王室御用達のお菓子に夢中!シルル教会で友達と仲良く食べているのこと!」

「・・本当はアレ、自分達用にテイクアウトしたやつなのに・・」

「あとシスターから言づけで『一体何なんですかこれは?説明してくださいねクラリオン君?(怒)』と申しつけられました」


 チチィ・・・。


 多大な犠牲を払い、ミヤちゃんの誘導に成功。その間迷宮に潜って魔石の採取を進める。なおシスターの言づけは黙殺することにした。


 空船港。


「大変です隊長!!獣人幼女がこっち(空船港)に向かっているらしいです!?」

「なにっ!?どういうことだっ!?」

「どうやら誰かがゲロって居場所を吐いたようで・・」

「今あいつ(クラリオン)は迷宮に潜ってこっちにはいないと言うのにっ!」

「どうしますか隊長」

「あいつの指示通り、船を出港させろ。流石に船の上で暴れられたら敵わんからな」

「了解です」



「よしよし。魔石も大量確保。魔導石に変換済み。あとは船に積ん・・・港で煙が。ああ、間違いなくミヤちゃんが原因だな。これちょっと行かない方がいいな」



 冒険者ギルド。


「あら~クラリオン君久しぶりね~。工国には行けたのかしら~?風の噂で捕まったみたいなことが流れていたけど~」

「フレアさん。お久しぶりで~す。まあ何とか無事です。それでちょっと野暮用ができて戻って来たんだけど・・この魔導石、この国の王城宛てで送ってもらっていいですか?お金云々は金融大臣の?大蔵大臣・・いや違うな、か・・カル、カル何とか大臣に話付けてくれればいいから」

「ふふ。今まで売ってきた以上の数の魔導石ね~。取引額が大陸史上最大の単位になりそうなんだけど~これはどういうことかしら~?お姉さん詳しく知りたいわ~」

「さあ?事情はよく知らないけど何かこの国の王様が魔導石を大量に欲しいんだって。そんで魔導石を売ってくれたら工国までの往復便出してくれると言われて取引してるんよ」


 フレアにこれまでのゴタゴタを話すと・・・。


「・・ふふ。なるほど。あの王様魔導石全部売っちゃったのね~~。売り方気を付けろ~ってこっちは釘を何度も刺していたんだけど・・。ふふ、そう・・そうなのね~」

「わーお。顔が笑ってないや」

「こっちは迷宮管理で忙しくて周りの国家情勢なんて知る余裕なんてないしね~。まあ普通にクラリオン君の魔導石がどんな物かぐらいは理解してると思っていたけど・・そうでもないとか・・ふふ、本当に・・困ったわね~~。そう思わないクラリオ・・?あら?いないわね~?」


 ヤバそうな雰囲気に換金所に送り先の紙と魔導石を置いて彼はギルドから立ち去っていた。


「まあ今はそれどころじゃないわね~。マスターに緊急会議と国に至急面会しないと。本当に嫌になるわね~。彼も彼で。この国もこの国で。戦争でも起こしたいのかしら?」


 ギルドは前々から魔導石の扱いについては国に口酸っぱく言っていたらしく、彼の話で問題が明るみに出て、ギルドも大層ご立腹した模様。



「さて、魔導石はギルドに任せるとして、ミヤちゃんだな。とりあえずいざとなれば船は出港させるようには言ってあるし・・。ミヤちゃん会わないように残ってる部隊を回収して外で合流するか」


 

 そして現在、町の部隊を全員回収して出港した空船と町の外で無事合流して、話しは最初の冒頭に戻り・・・。



「はい。ということでこれよりこの船は工国直行便に変更になりました~。皆~よろしくっ!」

「よろしくないからね?」

「分かってるよ。PTSD発症したの面倒も考えないと」


 横目で見渡すと項垂れている人や横たわるが多数。獣人幼女が予想以上にトラウマを植え付けたようだった。

 まあミヤちゃんだからな~。普通に骨を折ってくるし、死のギリギリを見極めて内蔵破裂させるのもお手の物だし、きっと大多数がミルティア先生のお世話になったんだろうな~。わかる・・・。

 甲板の上で遠くなるオヴェスト・トレンボを眺めながら彼は遠い目で思うのであった。


「そもそもね。被害が出るなんてこっちは思ってもいなかったんだよ?どうしてこんな事が起きるのお兄ちゃん・・」

「言うがな、ああでもしないと自分が町に入った瞬間、捕捉されて周りの連中よりもっとエグい目に合わされて、魔石すら用意するの困難になるんだからな。ミヤちゃんが町にいる以上犠牲は必要だったんだ!」

「犠牲って・・ああ、だから行く時あんな演説をして報酬も用意したのね・・」


 力強く言う彼に「そう言うことか」とエヴァンは腑に落ちないが百歩譲って納得するも・・・。

 はあ。だけど彼のおかげで魔導石は集まったんだろうけど・・冒険者ギルドか~~。絶対何か言ってくるだろうな~~。と、項垂れるのであった。


 後日。王都にギルドから魔導石&面会でギルドマスターであるトクガワと護衛のフレアと諸々引き連れて緊急会議が開催され、王様もギルドの人もお互いに胃を痛めながら話し合ったと言う。そして冒険者ギルドの多大なる尽力と協力もあって少々の遺恨を残すも大戦争は回避の方向に向かっていったとか。



 のちにこの事件を『オヴェストの火薬庫』と呼ばれ、別名『爆薬の直送便』と皮肉られたり歴史の教科書に記載される程であった。

 因みに風刺画も作られて、爆弾を掘る人と売る人が大国に爆弾を火が回った導火線付きで笑顔で配送してる絵であるのこと。



「よし!とりあえず工国に向かおう。見方を変えれば慰安旅行だし現実逃避できる!それにお金だって皆に渡したんだし、パッと使ってパッと散っていこうぜ!」

「もう少し周りを見て言ってね。でもまあ王都の方にはしばらく戻りたくないかな~」

「なら決まりっ!あ、あと着いたらミヤちゃん達のお土産よろしくね?ほら、あの契約紙に記載されたお土産2tはこの空船でじゃないと運ぶの面倒だし」

「着いたら手配はしておくよ。正直何がどんな2tがいいのか悩むけど」

「うむ。マジでそれだけは頼む。しかも今回の騒動で良い物用意しないと何されるやら・・・」


 希望と不安を抱きながら工国を目指し・・・。



 8日後。



「皆さん、自分と与吉は今どこにいるでしょう~か?」


 チィ~チチ?


 再び始まるクラリオンと与吉を探せ。


「正解は・・やっと工国だよっ!イェーイ!くそ長かったっ!一体工国に行くまで何か月掛かったんだよっ!?」


 工国に行こうと志してから、まずミヤちゃんとの相談、ブタ箱からギルドでの奉仕活動ブラック、空船に乗るのに密輸船襲ったり、軍艦を半壊させたり、裁判したり、一旦町に戻ることになったりと2ヶ月以上に渡ってやっとたどり着いたのだ。


「普通なら10日か20日ぐらいって聞いていたのに!長いんじゃボケェーーーー!!」

「お兄ちゃんテンション高いね~」


 チィ~・・。


「こんぐらい叫ばないとこの積年の思いが発散されるかっ!」

「別に積年もないと思うけど、外交特権でいくつかの国境超えるのに手続き省略して向かえたんだから早く着けた方だよ」

「はっ!こちとらそれ以前に色々と時間が潰されているんだよ!分かるかその苦労をっ!!しかもだな・・・」


 その後も叫ぶ彼に「あーそうなんだー」とエヴァンは右から左に聞き流す。

 相当ストレスが溜まっていたんだね~。

 

 数十分して・・・。


「あ~言いたいこと言い切った~~」

「ストレス発散できたようで何よりだよ、お兄ちゃん・・」


 チィ~。


 そして彼は気を取り直して解説を始める。


「では改めて・・。私は今、工国の首都バーミンにあるミンガム国際空船港に来ておりまーす」


 何が改めてかは知らないがエヴァンは「またなんか始め出したな~」と仕方なく彼の解説を終わるまで待つ。


「見て下さい。この空船港の広さ。この辺境における国家の中では規模最大を誇り、主要貿易港にもなっているんです。その証拠にあそこらの船は中央国家から来た船があって・・・」


 一体お兄ちゃんは誰に言っているんだろうか?

 エヴァンは見えるのは架空に向かって話しかける彼の姿だけ。

 

「だけどそれよりも目に付くのはアレ!あの山に建ってる建物。実はですねあれは山じゃなくて全部丸々バベルの建物なんですよ!凄くない!?元々平地であんな巨大な建築物とか人手で富士山作るのと変わらないと思うんだけど!」


 なおバベルは円形状に建設(現在は建設中止)した建物で、現状だけで直径10㎞、高さ6㎞に及ぶ規格外な超巨大建造物なのだ。そしてその周りに住宅や工業地帯などが建てられているのである。


「いや~建築技術が明らかにこっちが凄いよね。普通に高層ビルより高い物作れるんだから、流石異世界として言いようがないもん」


 フェレストリア王国の王城でも高さが1㎞はありそうであったりと割と高層物が多かったりと建築技術の高さには素直に関心を抱く。


「お兄ちゃ~ん。そろそろいいかな?」

「うん。終わった。んじゃ、観光、慰安、ミヤちゃん達のお土産2tの用意も兼ねて楽しむぞーーーー!!!」


 チイーーーーーッッ!!


「本当にテンション高いね君達は。だけど船にはちゃんと戻って来てね」



 そんな訳でやっとドキドキの工国に入国。



「ところで与吉・・。自分達はなんで工国に行こうと思ったんだっけ?」


 チチィ・・。


 が、いつもの如く目的を忘れた彼である。そんな彼に与吉はため息を吐きながら、2人はテクテクと首都の中に入っていくのであった。

 その後「あ。そうだ。この部品がゴーレムの部品なのか調べるために来たんだ」とちゃんと思い出したこと。



 そして数日。



「ここに定住しようかな?」


 チッチチ!


「ほうほう。与吉も気にいったか」


 チィ~チ。


 工国に来てから気分がすこぶるいい2人。


「正に物欲の国。どこなくアキバの雰囲気に所々に九龍城に似た場所もある。これは好きな人は突き刺さる国だろうな」


 チッチチ!チチチ!


「確かに珍しい食べ物も多いよね。保冷?冷凍かな?おかげで魚とか魚介類も豊富だし、海産物もあるし、自分達の町でも魚出せばいいのにね」


 工国は工業が中心な国ながら貿易もまた盛んである。貿易で流れ来た商品で良い品があれば自分達で改造やら魔改造を繰り返す勢いと熱意が凄いところもあるのだ。


 チィ。チチィ・・(世界は広かった)。


「あと書籍も多かったな~。オウカぐらいの価格の本もあって値札三度見したし。けど記号式とか空船関連の本があったのは良かったな~。一冊一冊がくそ高かったけど・・。まあ買ったけどさ」



 2人はここで工国で見てきたことを振り返る。



「にしてもいつ見ても自分らがいた町とは全然景観が違うよな~」


 町作りはオヴェスト・トレンボと似ているが、建物はどれも大きければ高層であるのが圧倒的に多く、どれも60m前後と高層マンションに匹敵する高さであった。

 だが中でも特筆すべきであったのがインフラである。

 

「まさか電車があるとは思っていなかったし」


 なんと工国には鉄道があったのだ。しかも車両は車輪がなくて浮いて走る。一種のリニアモーターカーに近いものであった。


「恐らくあれ浮力だろうな~。レールから浮力が流れて車両を浮かせて移動する・・。空船で色々学んだからそんな雰囲気するんだよな」


 彼の言う通りこの異世界の鉄道は空船の技術で車両が動いている。

 ただ鉄道はこの異世界ではあまり浸透していない。と言うのも空船がいるからだ。


 空船は空を自由に飛べるのに対して、鉄道だとレール上でしか往復できず、長い距離を走らすものならレールを敷くのにコスト、維持費、建設期間、浮遊石も多く必要と諸々デメリットがあるからである。なら普通に空船で運航した方が良くない?となるのだ。


 では何故工国には鉄道があるのか?


「そう言えば前に買ったアレあっただろ?うん、あれ。動くの眺めたいから用意して」


 工国の初代王様がある日突然プラレール感覚のように言われて、仕方なく作らされたそうな。

 しかし幸いにも工国での活用の機会は多かった。無駄に多くある荷物の運搬に貨車として大きく役立ち、さらに「もっと沢山動いているの見たいな~」と初代王様の後押し(ぼやき)で、多くの車両とレールが敷かれて運搬がこれまで以上にスムーズになったとか。


 そして今日まで工国の鉄道は貨車は現役で稼働し、市民も通勤の足としても活躍しているのである。


 チチィ。チッチ!チィーー。チィチィ。


「あ~駅弁ね。何駅だっけ?あそこのチキン弁当美味しかったよな~」


 チ~。チチッ。チッチ。チィ~(こんなお肉があったとは。今まで見逃していたのが悔やまれる)。


「駅も凄かったけけさ。これ絶対転生やら転移で来た日本人が一噛してるよな。誰だよ?新宿駅を模倣しようと思った愚か者は?こっちマジもんの迷宮になってるよ」


 どうも無理があったらしく、とうの昔に廃駅になっていたのだが、明らかに再現しようとしたとしか思えない新宿駅似の駅があった。今ではスラム街となっており違法取引の温床になっている。

 なお、廃駅になってから違法な地下拡張がされており、地下100階が存在するという都市伝説の噂があったりする。


「あ。そうだ与吉。このあとあの武具店に行ってみる?そろそろ与吉特注の料理服が完成する辺りだから」


 そしてその数日に料理にも関心がある与吉の為に料理服を製作をお店にお願いしていた。

 

 チチチ!


 与吉もそれを聞いて嬉しそうである。



 さて、さっきから色々と工国を楽しんでいる話をしているが別に彼らは旅行に来た訳じゃない。

 空船建造が上手くいかず、気分を変えてミシャロ商会から買った何かのコアを調べる内にゴーレムの部品ではないか?と行き着き、その手掛かりを求めて散々苦労しながら工国に来たのである。



 そしてこの数日で目的であるゴーレムの手掛かりを得たかと言えば・・・。



「あるにはあったんだけどね~・・・」


 実は工国に来て初日から1時間半後には、ゴーレムに関する書籍が雑貨屋で売られていたのを見つけており、ゴーレム関連の本やら部品がごく普通に売られている店がいくつもあったのだ。

 今まで苦労したのにこんな早く見つかるのに複雑な気持ちになるも「早めに見つかっていいか」とポジティブに捉えて、書籍を読んでいくと・・・。



「ゴーレムの種類、系列だけで百種類・・まあそこはいい。だがゴーレムの種類や系列ごとにどれも部品の規格が違うって何よ?」


 汎用性の欠片が一切無かった。


「しかもプレミアなのかアンティークなのか部品だけでも高値。五体満足なゴーレムが一体も見つからないし・・・」


 それで一番悩めたのが。


「記号式が複雑なんてレベルを越えて何かだよ・・」


 ゴーレムの動かす言わばプログラムに当たる記号式が絶賛複雑であった。

 今まで彼が使っていた記号式を数学で例えると足し算、掛け算、頑張って因数分解を使っているぐらいなもので、それがゴーレムだと5次方程式~16次方程式を代数を使って解や証明しようとした無謀な量に匹敵する数の記号式と陣がびっちり書かれていたのだ。


「こんな複雑ならそりゃ廃れるわな」


 むしろよくそんな数の記号式を組めたな。と言うのか組めるのか・・。魔力消費半端ないだろうに。

 

 そんな訳でゴーレムに関することを初日で諦めて観光に走っていたのである。

 

「せめて動けるゴーレムがあればいいんだけどな~~」



 それから彼が言っていた武具店で・・・。



「出来てるぜ。その蜘蛛に着せてみな」

「センキュー。はい、これ後払いのお金。与吉~。ちょい着てみ~」


 チイ~~。


「しかしまあ蜘蛛の着せる服とはね~。初めて作ったよ。しかもコック服で良い素材で作れとか言うもんだからふざけているかと思っていたが本当に作らさせるとはな」

「何が耐熱に強い素材のなのかは知らないし、もう職人に任せて作ってもらった方がいいかな~って」


 チッチ!


「おお、似合ってる~。そのコック帽子もイイね!」


 チッ!


 与吉もノリノリでポーズを決める。


「ほらよ。あとこの道具も持たせてみな」

「お~。補助具の出来栄えもいいね。自分は上手く作れなかったけど」


 服以外にも彼は与吉が調理道具や与吉でも調理道具が持てる道具の製作もお願いしていた。


 チチ!?チッチ!チッチ!


 めっちゃ喜んでるな。次からチャーハンでも作ってもらお。


「なあ。その蜘蛛マジで料理作れんのか?正直道具製作しながらアホらしいって思っていたけどよ」

「さあ?けどやる気ありそうだし、まあ作って駄目そうならカレーにすればいいしね。何を混ぜてもいけるし」

「本当に作らせるのかよ。しかしお前さん。まさかその蜘蛛の為に工国に来たのか?蜘蛛を連れてる子なんて工国でもそう居ねぇしな」

「いや~ねぇ~。ここなら欲しいもん揃っているからな~って来てみたけど、小物程度な物しかなくてね。どこかにあったらいいんだけど」


 お店の人に世間話しを挟みつつ、いつもように聞きにいくと・・・。


「ゴーレムなんて知らねえがあそこなら置いてるかもな。お勧めはしないが」

「お?いい場所があると?」

「地下迷宮だよ。むかし廃駅になって今はスラム街でな。非合法な物を売ってる危ない場所でもあるんだ」

「あの新宿駅のことか」


 なんかそんな話をどこかで聞いたな。


「ああ。普通に販売終了したミシャロ商会の物が売ったりしてるから、国もあまり取り締まらないんだよ」

「行かねば・・」


 まさか工国でも迷宮に潜ることになりそうだとはな・・・。

 それを聞いた瞬間、彼は意気揚々と次に向かう場所を新宿駅にしたのである。

  

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