第32話 どこも一件落着してないわっ!!控訴だ!控訴!
前回のお話。空船建造を一旦保留にして以下略、フェレストリアの巡洋艦ノクスを半壊なのか撃沈させたのか、まあどちらも変わらないことをした彼ことクラリオン。この先の運命はいかに・・・。
あれから軍艦ノクスを撃沈して数十日・・。今、彼は・・・。
「これよりノクス撃沈について吟味を致す、一同の者、面を上げぃ」
「ねえ?なんで裁判所の中に町奉行みたいな舞台セットがあるの?どっきり?今まで受けた尋問や事情聴取はなんだったの?」
「被告クラリオン。私語を慎め」
裁判に掛けられていた。まあ軍艦を撃沈したのなら当然裁判やら処刑やらされるのは当たり前であるが。
いちよノクス撃沈後は語られてないも船長達には謝罪と事情の説明をしたのだ。が、勿論謝罪したところで「許す」なんてことは無く、拘束され事情聴取やらされ、救助船が来きてからも色々聞かされるは回されるはで王都まで連行され裁判を受けることになったのだ。
だが彼が言った通り裁判所とは思えない異質な空間で裁判が始まろうとしていたのだ。
「言うよっ!!なんだこれ!!?あれから大人しくして!拘束されて!尋問にも応じて!ちょっと賄賂でも渡そうか悩んだり、裁判所に連行されたらこれだよ!真面目にできるかっ!」
「慎めと言っているだろう!!」
しかも周りの人の服装は和服ではなく中世&ファンタジーもの。畳のような床があっても皆その上で立っている始末。
カンカン。
「静粛に。ここは神聖な裁判の場。それ以上乱すことはしないよう」
裁判長が「静粛に」と言う時のあれを叩く。
くそ。拘束されてから結構シリアスな展開とか語ってないけどあったのにっ!なんだこの怒涛のギャグ回は!?やれと?
「さてクラリオン、我れらのフェレストリア国の国有資産である船籍、巡洋艦ノクスの建造物等損壊罪とあること相違無いな?」
「滅相も・・って言うかっ!わざとじゃないって言ってるだろ!遊び人の足軽と与吉を呼べ!あいつら全て知ってるだろうが!」
というか自分は被害者と加害者の二役かよ。
因みに彼が拘束されてる間、重要参考人としてリリアと与吉との面会は許されておらず、しばらく会えていない。
「チカヤマ殿。これは聞くまでもないこと。この者の罪状は明白。これ以上の白洲は無意味ですぞ」
裁判長の横にいる高官が言う。
しかもお前は敵側か。あと裁判長チカヤマ、あと白洲も何も白い石すらもないだろ!と彼は心で突っ込む。
「だから遊び人からも聞けって!」
「よかろう。その2人からも参考人として聞こう」
ふう。これで何とか。いつもなら自分が茶番劇やら寸劇する側なのになんでされる側に・・。
頭にシルル教会でふざけて寸劇を始める自分を思い出す。
あ~今なら少しだけミルティア先生の気持ちが分かるな・・。
そして裁判所に与吉とリリアが現れ・・・。
パ。パシャン。
周囲が暗くなったと思えばスポットライトが現れる。
本当に次から次に・・!これ本当に裁判か!?
裁判所の厳格なイメージが一切無い中でも裁判は続き・・・。
「では参考人リリア・ティア・F・ティトニア」
「はい」
ん?誰ぞ?
そこにいたのは確かに彼が足軽と呼ぶリリアであったが、以前名前を聞いた時と少し違っていた。
「久しぶりだな。だが待て足軽一兵卒。何か名前の途中と最後が自分が聞いた時と若干違う感じがするんだが」
「気のせいですわ」
「こいつ・・」
F・ティトニア。Fとはフェレストリアの略。ティトニアは現家系の名である。以前にリリアの名前について説明したことがあったが、さらに補足するならばフェレストリアの名は遠縁であってもと公には出さず大抵はイニシャル表記なのである(それでも名乗れなくないが)。それをリリアは庶民向けの持ちネタとして庶民に口にして彼に言っていたのだ。
「被告人。参考人への発言は許可された時のみ。慎むように」
「・・善処します」
無理です。
しかしはっきり心では否定の言葉を入れる。
「改めてリリア・ティア・F・ティトニア。君達がノクス撃沈に至るまでの状況は知らされている。しかしそれは別として彼はノクスを撃沈させたことを認めているが故意ではないと貴方を呼んだ。それに関して何か言うことはあるか?」
「ええ。確かに私も故意ではないかと。食べ物が無くて船から奪って食糧を得ようと彼は言っていましたし、あとあいつは頭がイカれていると思います」
「おい最後」
リリアの発言が終わると横からスッと契約記号紙が渡される。そこにサインをすると今の証言が嘘か本当かが分かり、証言の内容も保存される仕組みになっていたりするのだ。
そして高官と裁判長は虚偽の有無を確認する。
「証言に偽り無しと確認した」
「ほれみろ。いや、でも最後・・」
だが。
「異議あり!裁判長!それは誤りです」
スポットライトが今度は弁護士のような身なりの人に当たる。しかも髪型が少しギザついた印象があってどこかの裁判ゲームのキャラにも見えなくもない。
「こいつら混ぜてきたぞ」
ボソッと彼は呟くもその人は話を続けた。
「確かに彼はノクスを撃沈させたのは故意ではなかったかもしれません」
「それ以外何があると?」
「ですが彼が攻撃した距離からは十分に目視でも相手の船や船員、旗の確認できる距離!ならば攻撃の加減も出来たはずなのに過剰とも言える攻撃!これは明らかに撃墜することも視野に入れていたのではないのでしょうかっ!!」
「なわけないだろ」
しかしこれに周りはざわつく。
「裁判長。その証拠としてある証人をここお呼びしてもよろしいでしょうか!」
「いるわけないだろ。いるなら呼んでみろ」
それに裁判長は。
「よかろう。では証人を呼んでくれたまえ」
そして再び周囲の明かりが落とされスポットライトが現れると・・・。
チチ。
そこにはまさかの与吉。
「与吉!?」
この裁判は何でも有りか!?
「なお被告人が有罪後、与吉君の身柄については今後私のアシスタントとして雇うことになっています。では与吉君。君から聞いた話では」
「え!?なんて!?」
てか聞けたのかよっ!!
「彼がノクスを攻撃した時に言っていた言葉をこの場で教えてくれませんか?」
チィ?チチ・・。チチッ!チチィ~チ・・チチ!チィーーーーチィィィーーーーーーー!!!!!
「と言っていたそうです」
「分かるかっ!いや自分は分かるけど!!」
「誰か意訳を」
裁判長も流石に意味は伝わらない。しかし。
「ご安心を。これを与吉君に・・ホンヤク糸こん」
「アウト!」
咄嗟に声が出た。
そして与吉に渡すとちゅるちゅると食べ始める。
与吉はもう少し警戒して食べようよ・・・。
チュルチュル・・ゴックン。
「では与吉君、もう一度言ってもらっていいかな?」
そして与吉は。
「・・・アジ。ウスイ。シカシカンショクオモシロイ。マジウケル」
「分かりました。ではこの味付き糸こんにゃくを」
「おいそれ以上与吉に変な物食わすな」
「ダイコン。タマゴ。チクワブ。テバサキ。タァーーメリック!!」
「与吉、それ大丈夫なんだよな!?」
与吉の謎テンションに心配する。
「静粛に。再び与吉君、もう一度言ってもらえるかな?」
再度裁判長が聞くと。
「タァーーメリック!!」
「そっちではなく」
「クラエ!ナントカナントカ?サレタ・・?イチゲキヒッサツマリョク!レーーーザーーーーー!!!!チュルリ」
と再び与吉が糸こんにゃくを食べ始める。
「と、彼はノクス攻撃の際に一撃必殺と言っていたのです!明らかに高威力の攻撃であることを承知している言葉だ!」
「いや確かにそうは言ったけどさ・・」
それに裁判長は。
「なるほど。確かに考えられる」
「どこにそんな肯定的な要素があったんだっ!?」
かなりの言いがかりだがそれでも裁判長が肯定の仕草に驚く。と言うのもここはファンタジーの世界。似ているところはあっても文明が違えば文化も価値観もまた違う。
真面目に説明するとこの異世界ではスキルと魔法が別個で存在してるのはかなり前に説明したのがあるからそこは省くが、魔法は詠唱や呪文を発して行う。そんな環境があるためか言葉の重みの捉え方が元の世界とは違うのだ。例え言った言葉が本心でなくても深い意味を持つ、持ってしまうことすらある。だから言っただけでも重要な要素として捉えられることは割りとおかしくないのだ。
つまり口は禍の元。
「裁判長!裁判長!皆に渡されてる記号紙の紙を自分にもプリーズ!攻撃の技名に意味深はないと誓う!と言うかそれに撃墜が故意かどうかなんか書かせればいいだろ!」
しかしそれに弁護士が口を挟む。
「契約記号紙は確かに書いた内容の虚偽の見分け、精神や肉体に負担を与えることもできる。しかし書かれた内容によっては誤魔化せることもできる。だからこそ裁判のやり取りも含めて虚偽ができる隙間を可能な限り無くす為に裁判自体の意味があるのだ」
「ぐっ・・」
かつてミヤちゃんの契約記号紙で約束事を決めようとした時にも色々策略を考えたことを思い出す。
まさかこんな形で自分に返ってくるとはな・・。
「だが技名に意味深はない証明として契約記号紙での虚偽だけは!虚偽の確認だけはしてほしい」
「・・よかろう」
はあ。契約記号紙はこう言う時に証明能力が高くていいよな。
しかし悪い印象までは取り除けずに裁判は続き、判決は・・・。
「判決を言い渡す。被告クラリオン。そなたは巡洋艦ノクスの撃沈は、撃墜に至る十分な攻撃であるものであり、故意でなくても許されるものではない。我が国における軍事力の重大な損失であることを考慮し・・打ち首獄門!」
最後それ言いたいだけじゃないよな!
この裁判のやり取りだけにどうも本気で捉えられない。
「これにて一件落着」
周りの高官達は「流石チカヤマ殿」と褒めて裁判は閉廷する。
「どこも一件落着してないわっ!!控訴だ!控訴!」
彼は衛兵に拘束されながらも叫ぶ。しかしこれは国家最高裁判。これ以上覆ることを彼は知らないし仮に控訴できても結果は変わりはしないだろう。
そしてこれホントに打ち首獄門になるのか!?と、本当にそうならいつ逃走するのかこのふざけた裁判の決定にどんな報復してやろうか、そんな思いを巡らようとした時・・・。
「この裁判ちょっと待ったあああーーーー!!」
終わったはず裁判であったがスポットライトが声の主に向いた。そしてそこにいたのは彼と同じくらいの歳に見える男の子。しかもジャケットに蝶ネクタイ付きの登場である。
うわ。またなんか出た。
この登場の胡散臭さに彼は細い目になる。
「このお兄ちゃんの身柄は僕達『特務情報機関』が引き受けるよ。あとねこの裁判は少し保留してほしいかな~なんて」
「既に決まったこと!覆しはしない!さらにこの罪人は我ら国家の軍艦を撃沈したと言ゔ・・」
この名探偵もどき、隠すことなく堂々と針飛ばしたぞ・・。
手の腕に付けられた何かから針らしいのをプスッと射出して裁判長の首に刺さる現場を目撃する。
「はい、これ~~。王様からの勅令状。これでいいよね?」
勅令状と言われた紙を周りに見せるとそこには王家の家紋とサインがあった。それには周りも驚きと戸惑いが溢れる。
そんな傍ら彼は名探偵もどきと視線が合うと刺した意味は?と言いたげに見ていると目が合ったのか彼に答えた。
「だって多分『者どもであえであえ!』ってうるさくなるからね」
「本当にごちゃ混ぜだな・・。とりあえず助かった?って?言えばいいのか・・。すまん、これまだ何かの続きだったりするの?」
拘束が解かれた彼は、まだ何かあるんじゃないかと周りを見渡す。
「お兄さん。だいぶ混乱してるようだね。まあ裁判掛けられていれば無理もないかな?」
「こんな裁判掛けられれば無理もないと思うけどね。と言うかこれ本当に裁判?」
「まあ何にせよこのままお兄さんは僕に着いて来てほしいな。あ。あと君達もね」
「え?わたくしもですの?」
チ?
傍聴席に移動して高みの見物していたリリアと与吉にも同行させるようだった。
「うん。とりあえず皆、一旦王城までね。あ。迎えの馬車あるからそれに乗って移動だから」
とにかくすぐに打ち首獄門にならずに済んだ。しかし彼の顔は浮かない。何故ならこの先の流れについて嫌~な直感をビンビンに感じ取っているのだ。
だって分かるもん。何かやる度に何かやる羽目になる流れがさ。一体何回経験してると思うんだい?しかも王城に行くって・・。あ。あと何か勅令状に王様のサイン?本当か分からんけど。はぁ・・・。
「・・・工国に、行こうとしたら、この騒ぎ。弱り目祟り目、憂き目で涙~・・」
ただただ思い通りにいかない事を短歌で嘆く彼である。
いや~投稿するの遅くなっちゃった。と言うのも書き直しを三回ほどしたんだよね。
空船撃墜後の彼らとクラリオンとのやり取りとか書いていたんだけど、何か「う~ん」って迷ってさ、また無駄な話数が増えるのは・・っと思ってガラって話を変えて、んじゃどう調節しようか考えていたら一ヶ月くらいに・・・。
と言うのは半分嘘です。一ヶ月考えていたんじゃなくて、ちょっとネトゲに熱が入ってしまって・・。ほら11月とか12月ってイベント事多いやん?だから書く時間が数十分、数時間と減って・・こんな有り様になりました。イベントが悪いんです。自分は悪くないんや・・・。
はい。そんな感じで誤字脱字とか変なのあったら指摘してね。




