第29話 これより反航戦を開始するっ!
前回のお話。空船建造を一旦保留にして以下略、悪い人達の空船をずさんなハイジャック計画したら成功して絶賛遭難中の彼ら。船内には誘拐されたと思われる貴族の娘、リリアもいて、どうなることやら・・・。
「・・んっ。ん~~・・・・。よく寝ましたわ・・。私、なんでこんなところで寝ているんでしょう?」
朝。と言うよりは日は少し上がっており午前9時あたり。若干寝ぼけながらリリアは辺りを見渡した。
あ~~。思い出しましたわ。誘拐されて助け出されたと思ったら遭難させらる2次被害を受けていたのでしたわ・・。
「なんでこんな目に遭っているのかしらね?まあ庶民によくフェレストリアの名前で語ってしますけど」
※語るというより持ちネタ寄りである。
「だからってなんで今回はこうなるのかしら?普通こんなこと起きるとは思わないじゃない。しかもなんで昨日は私が船の運転しっぱなしなのよ」
そんな事を思い出すとお腹が鳴きはじめた。
「お腹空いた・・」
そう言えば昨日の夕方から食べていなかったわね。あ~でも何か昨日食べ物が無いとか言っていましたっけ?はあ。食糧もなくて遭難って本当に・・・。
しかしここであることに気づく。
「・・?ッ!?待って。あいつ何処行きましたのっ!?」
昨日は眠くてすぐ艦橋(操舵悍の近く)で寝てしまった。しかしこの場にはもうピクピクしなくなった捕まった大人3人組しかいなく、操舵悍は誰も握っていなかったのである。
「だから操縦しないと落ちるって!言っているでしょうがあああーーーーー!!」
ただリリアはスキルによって彼が何処にいるかは直ぐに分かり、艦橋の上に向かって叫んだ。するとその上から彼の言い返す声がした。
「だから落ちないって~。足軽一兵卒がお眠になった後から操縦してないから」
「落ちなくても風に流されやがるのよっ!あんた本当に馬鹿かしらっ!!」
「ん?風?風に・・流される。あ。空飛んでいるんだから風の影響も受けるのか」
指摘されてやっと彼は風の影響を受けることを知る。
「くっ!この馬鹿は・・」
「今、自分は賢ポイントが2上がった・・気がする」
「いいから降りてきなさいっ!」
こっちはお腹空いているのになんで朝から私は声を上げないといけないのよっ!
しかし彼は。
「今ちょっと凧揚げして動けない」
「こんな状況で遊んでいる場合かっ!!!」
戻ってくるようにリリアも彼のもとに艦橋の上によじ登っていった。
なんで私がこんなことしてるのよっ!
そして苦労してよじ登ると・・・。
「こいつ、本当に凧揚げしとる・・」
「・・・いい風だ。1㎞いってるんじゃない?」
彼の手元を見れば糸を持っており、糸を先を追って目線を上げれば空には確かに凧が上がっていた。しかし凧揚げしている糸にリリアは違和感を覚えた。
「あんた、その糸・・」
「ん?与吉糸」
「よきち糸?あ。あの蜘蛛の・・・待って。もしかしてあの見える凧って」
「与吉だ。脚に糸の膜を張ることによって滑空が可能となり、周辺の地理を把握してもらっているのだ。糸張ったら飛べるんやない?と思ってやらせたらもうあそこまで舞い上がちゃってさ」
「あんたらね・・・」
与吉は飛行手段を得たのだった。
凄いな与吉は~。糸出せるし、糸を使って罠も道具も家すら作れ、遂には飛行能力も手にしたか~。自分より遥かに成長してるね。
もうバレルロールやエルロン・ロールとかは既にお手の物である。
チチ~~(これが地上か~~)。
しばらくして・・・。
チッチ。
「おかえり。どうだった?」
チチ。チッチィ~。
「なるほど。あっちに文明の光が見えたと」
「それで目途はついたのかしら?」
「とりあえずあっちに飛んでいれば人には会えそう」
「はあ~~。これで一安心できたのよ~。だけどそれより・・」
ひとまず窮地は脱したとリリアは安心するも同時に気が緩み、お腹が鳴った。
「大声出してお腹空いたわ」
「大丈夫。人間ギリギリ粘って二日半は生きられるし、いざとなればそこらからモンスターやら動物や虫を狩ればいけれるって」
「あんたらと一緒にしないでくれるかしら。私、貴族よ?そんな不粋な物食べれるわけないじゃない。そんな食べるのでしたら何も食べないわよ」
「え~結構ワイルドに食い散らかすイメージがあるんだが」
「ふん。そ・れ・よ・り!目的の場所が分かったならちゃんと操縦して向かいなさいよ。分かっているわね?昨日は仕方なく私がわざわざ操縦したのよ。今日は絶対あんたが一日操縦して向かいなさいよねっ!」
「はいはい。風に流されないようにしますよ」
結局お腹を我慢して人がいる方向に向かうことにした。しかし・・・。
「ねえ?もう夜ね」
「そうだね。真っ暗で何も見えないね」
「でも人がいる方向に真っ直ぐ向かっているのよね?」
「多分真っ直ぐに進んでいると思うね」
いちよ空船は与吉が見つけた人がいる場所へと進路に向けるも、もう日は沈み辺りはもう真っ暗であった。
「ならそろそろ灯りとか薄っすらでもいいから見えてもいいんじゃないかしらね?」
「そうだね。不思議なこともあるもんだね☆」
「不思議なこともあるもんだね☆じゃないわよっ!あんた風に流されているじゃないっっ!!!」
「はっ!こう暗いと流されているかなんて分かるかっ!」
辺りが暗くて周りに比較できる対象の物が見えなくて、再び遭難してしまったのである。しかも悲しいことにこの空船の止め方が分からないのでさらに迷っていく結果に。
「星とか方角で分かりなさいよっ!船乗りじゃなくてもそれぐらい分かるでしょっ!!」
「知らんっ!星座は夏の大三角形見ようと間違ってずっと南の方を向いていた思い出しかない!」
「どこの星よそれはっ!そんな事よりこの先どうするのよ!夜になる度に方角間違えるとか着く気ないのかしらっ!!」
確かに夜になる度に方角を見失うのは問題である。
ん~仕方ない。あれをやるか。
そう彼は思うと彼は小さい魔弾を作り始めた。
「ちょっといきなり何をやっているのよ?」
「小さな魔弾もとい魔球。自分の魔球は長持ちで数日は光っぱなしで残るんだよ。これの色違いを用意したり、与吉に持たせてまた空を飛んでもらって、方角の合図してもらう」
「あら?解決策あるじゃないのよ」
いちよながら解決手段はなくはないのだ。ただ・・・。
どこまでお互い意思疎通と合図が分かるか。あと合図を忘れないか、簡単じゃないと覚えられないし、テンパってお互いに余計なアドリブを入れないかなんだよな~。
「まあやってはみるけど。そんな訳で与吉よ。また空飛んでくれ」
チ。
「んでこの球を持って・・・」
与吉に球の色やどんな動きでどんな合図になるかを簡単に教えると、再び空を飛んでもらった。
「お~暗くても球の明かりが見える」
「ええ、あの緑と赤ね。何か点滅させてるけど」
イメージは飛行機とかに見る光のあれである。
「さっき教えた飛行機ごっこ」
「何変な遊びを教えているのよ」
ともあれこれで方角の確認は出来そうであった。
そして朝。遂に第一農村を発見。
「お~い足軽一兵卒~何か村ぽっいの見えたぞ~。起きろ~」
「んんっ・・・。その変な呼び名・・朝からやめて下さる?って村がありましたのっ!?」
「ほれ、目の前に」
これで家族に連絡ができるとリリアは安心した様子で涙を浮かべた。
「ああ。これでこんなクソから離れることができますのね!!」
「与吉~。こいつグルグル巻きにして船体に下に吊るしてくれない?」
チチ?
船に戻った与吉に彼はお願いする。まあどちらにしても船は止まれないので糸で降下させるつもりであったが。
しかし村に近づくにつれて村の様子がおかしいことに気づく。
「ん?ん~~・・・何か・・」
「どうしたのよ?私との別れが寂しいのかしら?私は嬉しいのですけど?」
「与吉。降下準備じゃなくて投下準備。勿論こいつのみだ」
「ちょっと乱暴はよしなさいよ!?でも変ね?船がこっちに向かっているのに村に反応がないわね」
「まあそれ以外にも何かさっきから違和感あるんだよな~」
そして村の周りを旋回すると。
「あ。これ廃村ってやつじゃない?」
「廃村・・・だと・・・?」
リリアにはショックが大きかったようだ。
「あんた光が見えたとか言ってませんでしたっ!?」
「いや、与吉は文明の光が見たと言っただけで、物理的な光とは言ってないぞ」
「ああもう!私はもう2日ですのよっ!お腹空きましたのっ!もうベットで寝むりたいのに・・ゔゔぅ」
「大変だな」
「あんたもでしょっ!」
そんなぎゃあぎゃあ騒ぐ2人を尻目に与吉はさっきからある一点を方角を見つめていた。
チッチ。
「どした与吉?」
チ。
あれあれと見つめてた方角に脚で差す。
「ん?何も見えんが・・」
「ちょっと!言いたいことはまだあるのよっ!!」
「足軽。あっちの方から何か音聞こえる?何か与吉が反応してるんだけどさ」
「何ですのよっ!?あっちに何・・か。いるわね・・それなりの大きさはありそうかしら?」
「マジか」
「遠くてまだ分かりませんけど、真っ直ぐこっちに来てますわ」
どうやらこちらに何か向かっていることに全員は一旦冷静になる。
「ちょっと進路変えよう。それで向こうも変えたらこれ完全こっち捕捉されるぞ」
「弱音吐いてる場合じゃありませんわね。せめて何か分かればいいのですけど」
「すっごい気の切り替え。さっきまでのは一体何だったんだよ」
「命の危険があるなら騒がず、冷静に、ですわ。何度の誘拐で学びましたわ」
この足軽。それなりに修羅場をくぐっていたか。
ちょっとリリアに関心した彼であった。
それで・・・
「はあ。間違いなく私達追っていますわね」
チッチ。チチ。
「上空から見た与吉情報だと浮遊して進んでいるらしい。数は1で、やっぱり離れているからモンスターなのか分からないって」
「この辺りで大型の空中モンスターなんて聞いたことないわね。恐らく空船・・。しかもこんな場所を飛んでる空船は、大抵良くない輩で間違いなさそうね」
「その良くない輩と言うと?」
「まあ二ついますわね。ヴァンプ一家のような密輸主体の空船。もう一つは・・商船を狙う空賊ですわ」
「なるほど・・」
空賊か。まあ空飛ぶ船があるなら、そんなのいてもおかしくはないか。
「それで今自分達を追ってる船はどっち?」
「そこまでは分かりませんわよ。そもそもこの船はヴァンプ一家の密輸船。奪い返しにきたと言うのも十分あり得ますし」
ふむ。さてどうしようか?
一旦情報を整理して彼は今の状況を考える。
この船は武装も無ければ操縦もままならないポンコツ船。一発撃沈もあり得るが、ファンシー一家だろうが空賊だろうが、積荷狙いなら墜とすつもりはないだろ。とうなると向こうは接近戦、白兵戦、移乗かな?
「足軽。向こうとの距離はどうなってる?」
「いい加減その変な名で呼ばないでくださる?まあ距離は詰められていますわね。数時間したら追いつかれますけど、それより私、お腹空いてそっちで死にそうなんですけど」
「安心しろ。あと少ししたら追ってる船から食糧が手に入れるから我慢だ」
「それ・・どういう意味かしら?」
それに彼は・・・。
「これより反航戦を開始するっ!」
キリっとそう答えるのだった。
誤字脱字があれば指摘して下さると嬉しいです。




