第27話 よしっ!ハイジャック成功だ!
前回の話し。空船建造を一旦保留にして以下略、1ヶ月掛けてやっと隣町であるノルドに彼ことクラリオンと与吉は着けたのだった。
「・・・う~~ん。いい朝だなぁ~」
いつもなら二度寝三度寝が当たり前なのに。新しい町だからな?
「お~い。与吉や~。朝だぞ~。起きてご飯でも食べに行くぞ~」
ンチィ~・・。チチィ。チィー・・。
「え?外が騒がしい?気のせい気のせい」
・・チィ。
しかし彼らの周りからは、はっきりとざわつく声があった。
「おい、なんだんだよあれ?昨日には無かったよな?」
「なんかのモンスターの巣か?」
「冒険者かギルドに連絡した方がいいだろあれは」
という感じで。それに彼は「ああ、なるほど」と頷いた。
「きっと与吉が作った巣が立派すぎたんだろ。まあ昨日泊めてもらえなかった宿屋の隣に突然現れた立派な巣に驚いているだけかもしれないが」
不適に「ふっ」とにやける彼。昨日何故か宿に泊めてもらえなかった腹いせに宿屋の隣(2、3階の高さ)に与吉に頑張って巣と繭(1DKサイズ)を張ってもらい、一夜を繭の中で過ごしたのだ。
「だけど関係ない隣の建物に糸を張ってしまったのは申し訳なかったな。まあ落ちない為に仕方ないとはいえ・・」
しかも。宿屋の隣の建物も本当にいいとばっちりを受けてる始末。
「にしてもこの糸の扉が何とも・・。ん~~」
繭の入り口には糸の蓋が設けられており、蓋が閉じた状態だと外見で蓋があるのか見分けがつかない。それをなんかツボにはまったのか彼はパコパコと開け閉めを楽しむ。しかし外の人から見えれば繭から何か出てくる動きでしかない。
「おいなんか出てきそうだぞっ!?」
「誰でもいいから早く冒険者呼んでこいっ!!」
しかしその声を彼は雑音程度にしか聞こえてなく、気にせずにパコり続ける。
チチィ~~~・・。チッチ!チチ!
欠伸をして背を伸ばすといい具合に与吉も目を覚まし始める。
「んじゃ、朝食食べに行くか。その後乗れる船を探して、昼食取って、その後は・・ん~船に乗れたら移動して・・駄目ならまた巣を張ってもらうか。今度はアレだな、東京タワーに繭を作ったあの形にしてもらおう」
チ~~。チィチィ(この繭作るのだって大変なんだよ。昨日も疲れたし)。
「ここでしか買えないいい肉買うから」
チィ~・・。
若干不満そうになるも仕方ないな~と頷いた。
「じゃあ行くか」
繭の中に置かれたボードの上に荷物を置き、糸の扉を開いた状態にさせると勢いよく外に飛び出した。その光景は周りの人からすれば、繭の中から何か飛び出してきたのだから大パニックである。まあそのまま飛んで行ってしまうが。以降そのような謎の繭が数日に渡って続出するようになり繭玉事件と呼ばれ、それを彼に話すと話しを逸らそうとするらしい。
え?糸玉事件?ああ、繭玉ね繭玉。まあモスラの幼虫でもいたんやない?知らんけど?
話は戻り・・・。
「さて、どの空船のところに声を掛けるかだけど、う~ん・・」
適当な店で朝食を済ませると今度は空船港で彼は悩み声をあげていた。
「駄目だ。根本的な問題として・・工国の場所と自分の場所がまずはっきり言って分からんし、知らんっ!よく考えたらここどこだよ!!!」
今更ながら隣町に来れたはいいが、周辺地理とかが全く分かっていなかった。
「いやさ、バスとか電車みたいに何々町行き、都市行きとか。急行、特急行きとか色々あって。わ~~便利~って思ったけど知らんがなっ!町や都市の名前出されても分かるかっ!!!」
とさっきまで自分は騒いでいたました。しかし頭脳は大人な自分、すぐに冷静になって対処したさ。
「はい。そんな訳で地図を買ってきたぜ!」
彼は地図を買ってきた。
「どうだ与吉?中々自分は利口じゃないか?」
チッチ(はいはい)。
「軽くあしらわれた。だがいい。これで場所がわか・・。ん~~、なるほどなるほど。この北の大地は人類未踏の地だから不明と・・。その下に、ふむ、多種多様な国家が引き締め合ってる辺境国家群で、さらに下には中央国家・・ってこれ世界地図っっっ!!」
と地図を地面に叩き付けて一人で突っ込みを入れる。
辺境国家群とか中央国家とかせめて国の名前だけても書いておけよ・・。
「と言う世界地図問題が数十分前にありましたが、今度こそ周辺地理やこの国の地図をちゃんと入手してきました。世界地図を売ってきた店主を逆さまにして店の地図全部買ったから間違いなし」
おかげで彼はこの国について少し詳しくなれた。
※本来地図は国家機密になるものだが、この異世界では空船と言う飛行可能な物があり、計測が容易であること、一つの移動手段としてあることから地図は一般的に入手できるものになっている。
「んでな与吉、どうやら自分達がいるここってフェレストリア王国と言う国らしい。初めて自分がいる国の名前知ったわ」
そしてこの異世界に来てからやっと自分がいる国の名前を知った瞬間でもあった。
チィ?
「まあ与吉には関係ないか。にしてもこの国の地図の方は・・ほお~結構細かく町や都市の名前書かれているな。こっちの地図には・・なんだろう何かのルートかな?それぽっい線が描いてあるし。もう少し店主から聞いておけばよかったか・・」
まあとりあえずこれで自分の達の場所が分かったし、どの行きの船に乗ればいいかもおおよそ分かった。
「よし!後は乗せてくれる船があるかどうかだなっ!」
そして彼はどこ行きの空船かを探しては声を掛けて行くのであった。
しかし・・・。
「よし!誰も乗せてくれない!いつかこの町に災いが起きないかなっ!」
水平線に太陽が沈みかける時間になっても乗せてくれる空船はいなかった。
「仕方ない。やっぱり今日も与吉さん頼みます」
チィ・・。
再びどこかの場所で与吉に繭を張ってもらうのである。
それから数日。
「もうこの町からはボードで移動しようと思っていた矢先、噂で迷宮資源の闇取引してる空船がいるらしい。そいつら見つけてハイジャックしようと思うんだ。どう?与吉?結構いい作戦じゃない?」
突然何の捻りのない作戦を彼は与吉に提案する。
おおよそ、いざとなれば悪いことしてる奴に全てなすりつける考えもあってだろうが、与吉にはそれがいい案かまでは分かるはずはない。しかし碌でもないのは何となく分かった様子である。
チィ・・。
「よし!それっぽい船を探すか!」
こうして唐突にハイジャック計画を愚策する彼であった。しかし意外にもそれは事が進んだのだ。
それはハイジャック計画を愚策しての初日の夜。久しぶりにスキル(『サーモアイ』)を使ってボードで静かに空船港を見渡していると・・・。
「ん?お?。マジか。まさか初日でこんな深夜に怪しく動く熱源が複数いるなんて。もしや遂に運が上がったのか?」
初日でそれらしい集団を発見したのだ。幸先良さそうな流れだが、彼の運のステータスはいまだ初期値の0のままである。
「後は本当に裏取引なのか確かめてっと・・」
一旦近くの空船の影に隠れて持ってきた荷物の中身から何かを取り出すと、それを高く上に投げ、上空がパアと光り出す。
「チッ!バレたか!」
「取引は一旦ここで・・」
「ああ、残りは後日取りに行く」
「ええ、例のあそこで」
それに怪しい連中は慌てるがそんな会話までは彼には聞こえない。しかし慌てて逃げる様子が見えれば彼には充分だった。
「ビンゴ。あとは跡を着けて・・・ふ~ん、あの小型船ぽっいな」
熱源は建物街がある方向に逃げれば、まだ空船港の近くでうろつく熱源もいるし、今ので警備兵のような人も駆け寄ってくる姿もあった。しかしその中で一部の熱源は一つの空船に集まるのを目にする。
よし。これで船の確認はできた。あとは襲うだけ・・。ふっ。なんか自分普通に悪事してるよな。いつからそうなっていったんだろ?
「まあ相手が相手だし、バレなきゃ犯罪じゃないと言う格言もあるし。うん、大丈夫か!」
チチィ・・・。
それに与吉は不安そうに声を出すのだった。もし悪い人達じゃなかったらどうするつもりなんだろうと・・・。
それから彼はその空船を見張り、出航する日を待ち続けることにして・・・。
遂に・・・。
「時は来たっ!ほお~。お昼からの堂々のご出航とは。表向きは普通の空船と装っているのかな?まあどうでもいいか」
彼もまたすぐに追い掛ける支度をする。
「よし与吉!そのケバブとチャイを急いで食べるんだっ!あ。でもそのケバブにチリソースはかけないで。塩で食べたいからっ!」
チチ。
急いでいつでも追い掛けられる支度をしてあるボードに乗り、ケバブは道中荒い運転で落ちないようにそこだけはゆっくり丁寧にボードの固定容器入れに大事にしまう。
「行くぞ!与吉!」
そして目的の空船に彼らはバレないように尾行し、ある程度町から離れて・・・。
「・・・・・」
周りに他の空船がいないことも確認し、一気にボードは目的の空船の後ろに着く。
よし。ばれていない。与吉、ボード固定を。
与吉にハンドサインを出して、空船にボードを固定してもらう。
「甲板に人影、見張り無し。クリア。船橋には複数確認、こちらには気づかず・・」
小声で状況確認にすると彼と与吉は後方甲板に降り立った。
小型船だからそう複雑な作りではないはず。船体は2階層か3階層構成。艦橋の大きさからして操舵室と航路室だけでよさそうかな?
空船の構造はそれなりに教わったので、いちよは船体構造は予測はできていた。しかし気になるのは船員人数である。
「普通なら小型船は1人か10人以下構成。ただ今回は相手が不明だから・・なんとも言えないんだよな~。100人はいないだろうけど・・」
隠密にことを進めたいから人数は何人いるのか把握しておきたかったが、とりあえず彼らは艦橋を占領しようと音を立てずに扉の近寄る。
3人か・・。全員男性。まあ身なりは普通の商人ぽっいけど・・。
彼は音を立てないように扉を少し開けると再び与吉にハンドサインを出す。
それを読み取った与吉は少し開けた扉に入り・・・。
「・・・ッ!?」
「ンッ!!」
「ッ!?!?」
秒速で呼吸ができる鼻の部分を残して3人を糸でグルグル巻きにさせた。
「流石与吉~。蜘蛛だけあって音もせず、秒で拘束するとは。まあいつも通りと言えばそうだけど」
突然何があったか分からず拘束された3人は、声をあげようとするも口は糸で開くことはできず、唸り声しか上げれない。
「おっと。そこの3人、自分達がどうしてこんなことされているか・・まあ聞かなくても分かるよね?」
そう言う彼は一人だけ口に塞がった糸を外そうするも地味に背の高さから届かない。
「・・与吉。この人だけちょっと下に下げてくれない?そうそう・・あともうちょっと下。オーライオーライ。はい、ストップ、OK」
自分の高さまで調整してもらうと今後はちゃんと口に塞がった糸を解いてあげる。
「っく!お前、こんなことたたでっっ!!」
「いや、定番のセリフ言わなくていいから。まあ言ってもいいけど口の中切れないようにね?」
騒がれないように口の中にナイフを突き立てる。
「・・ッ」
「はい。静かでいい子。んで、改めて聞くけど。お兄さん達は怪しい裏取引してる人でいんだよね?はい、大きな声を出せないでどうぞ」
一旦ナイフを離して喋らせられると。
「俺らヴァンプ一家を知っ!!」
「はい、また定番をありがとう。だけどまた静かにしようね?」
再度ナイフを口に入れる。
うん。悪い人決定。問題なし。
「与吉~。下にいる人間全員拘束しておいて~。自分の分のケバブあげるから」
チッチ。
与吉には船体の占領に向かわせた。
「さてと必要な情報は得た。この3人には・・」
彼は腰の袋からある瓶を取り出しす。
「ミシャロ商会特製、痺れ薬~(中型大型モンスター用)」
液体だが瓶の蓋を取ると蒸気となって周りに広がる拡散仕様。欠点は人が大量に吸い込むと駄目な有害物質付き。けど効果は抜群な迷宮禁止道具。
「これを・・やっぱ面倒だから顔に少し垂らしておけば勝手に吸うか」
鼻に吸わせようと布に浸み込ませて吸わそうと思ったが、面倒そうなので顔に掛ける。これに3人はもがく。と言ってもただの痺れ薬ならいいが、ミシャロと言う単語に特製と言う言葉に碌な物ではないと知っているからこそもがくのだが、流石はミシャロ商会にして特製、効果は速かった。
「今まで使ったことなかったけど、凄くピクピクしてる・・。これ大丈夫な方のピクピク具合なのだろうか」
あまり大丈夫そうではないピクつき具合であったが、彼にはその見分けはつかず、解放されるまで3人は放置されるのであった。
「よし。船の操縦は・・ん~、あんまりその辺りは話さなかったんだよな~。まあ、さっきからいじらなくても勝手に進んでいるし、まあ小型船だから・・操舵稈と何かよく分からないレバーが数本のみ・・。うん大丈夫だろ」
こいつはハイジャックしながら、そこまで考えていなかったのかと言いたいところだが、それは置いておき・・・。
チッチィ~。
「お帰り~。大丈夫だった?怪我はしてない?」
チチ。チッチチ、チィ~チ。
「下は7人いて全員拘束と」
チ。
「よしっ!ハイジャック成功だ!」
無事に彼らはハイジャックすることできた。
ああ~何か今までの中で一番仕事した感があったな~。
「んじゃ進路を工国行きにしますか。道が分からなくなったらこいつら起こせばいいし」
そして彼は景気よく操舵悍を握ると。
「取り舵~~~!!」
船首の方向を変えて工国に向けるのだった。しかし彼はもう少し確認しておけば良かった。船体の中には与吉は言われた通り人間全員を拘束したのだが、その中には船員ではない女の子が一人間違って拘束されていたのだから。そして忘れていた。目的にしている空船建造であるが、いちよハイジャックながら空船を手にしていたことを。
この小説投稿してから1年・・・全っ然話しが進まねぇーーーーー!!!!じゃなくて進んでねぇーーーーー!!!!
いやもう今年で何とか序盤くらいは形にして終わらせようと思ったけどっっ!!話しがまとまらんのよ。自分で書きながらよくそう思ってるんだけど、それでも改善できなかったんだよね。
だからね、今から半年経ってもまだ序盤のままかもしれないんだ・・・・・・。




