第22話 うーーん、まあ思い出した以上は調べてみるか
前回のお話。ミヤちゃん達にスキルを教えることになって、あれやこれやと考え練って思いつき、ミヤちゃん達にふざけてるとしか言いようがない修行内容をさせる彼であった。
ミヤちゃん達に修行させて3日目のこと。
「与吉よ。なんで自分はあれから一日に一回ミヤちゃんから理不尽な暴力を受けるのか不思議でしかないんだがどう思う?」
チッチ?(日頃の行い?)。
ミヤちゃんは『重圧パンチ』の取得に必要な修行内容をする前に朝、彼の部屋を凸しては噛んでくる日課が生まれつつあった。
あとこれが7日も続くのか・・・。
しかしそんなふざけた修行おかげで迷宮探索はしばらく休みになり、自由を満喫できているから決して悪くはない状況だと思っている。
「まあおかげで空船建造計画は、ちょっとずつ進められるのはいいけど」
そして彼はこの数日、別にぐうたらしていた訳じゃなく、ちゃんと空船建造に向けて準備をしていたのである。
現在は浮遊石を置く倉庫を作り終えたので、次にした事は資材作りであった。倉庫を作る場所にあたって、見つけた鉄塊の山からスキルを使って鉄やら銅など各種類の金属ごとに分けて大量の資材を作って用意していたのだ。
「これで多分、施設とか空船に使う資材の用意はできた・・・と思っておこう。まあ足りなければまた鉄塊の山から用意すればいいし」
しかし問題はここからで。
「浮遊石、資材、空船の知識は揃った。あとは建造するだけ・・・だけなんだけど。はぁ」
彼が建造しようとしている空船は、この異世界で飛んでいる木造ではなく鉄の船体、即ち戦艦、まあ駆逐艦から作ろうと考えていた訳だが、そもそもの話、彼に船の建造の知識があるわけでも設計図があるわけでもない。
あったとしても理解できる知識も無ければ技術もない!なので『ステータス改造』から元いた世界のネットを繋げて探せば何とかなるだろ。とたかをくくっていたのだ。無論結果は・・・。
「ああ~~。擬人化したキャラなら沢山出てくるんだよ。専門的なものは少ないし、あっても書籍販売とか図書とかライブラリーに行かないと見れないとか・・あーーー」
いくら調べても得れる物は一つも得れず。そして休みがあと7日。その日数でどれだけ調べられるかで今後の空船建造が大きく変わることになりそうだった。
で、7日後・・・。
「覚えた」
「・・・おめでとう」
まずミヤちゃん達は『重圧パンチ』を覚えられたようだった。
「本当にあんなのでスキルが覚えられるのか今でも不思議だぜこれ」
「あとね、ちゃんとやっても回数に入っていない時があって1日100回以上はやって大変だったよ」
「いや、それだけでスキルを覚えられるのって結構楽な方だと思うぞ」
メルダーとクロエも問題ない様子。しかしその中に一人だけ不服そうな顔をしてる人がいた。
「・・・・・」
「マルリは駄目だったようだな」
「途中から馬鹿らしくなってやめたのよ・・」
ふざけた修行内容に耐えられなかったようで途中でリタイアしたらしい。
まあ、真面目にできる修行でもないよな。まあ3人はこなしたわけだけど。
そして次に彼についてだ。この7日でどこまで情報が集まったか次の彼の態度で分かるだろう。
「まあ無理に覚える必要はないからな。んで、ミヤちゃんよ」
「ん?」
「スキルの修行を終えたから契約記号紙で決められた迷宮探索が再開されるわけだが・・」
「スキル試したい」
「だろうな!んじゃ今から行こうぜっ!もう気分変えないとやってられないからなっ!!」
すぐに迷宮に行けるように教会の外ではボードに荷物を用意しており、何時でも行ける支度をしていた。
まあ予想も何も予定調和の如く情報集めは駄目であった。それどころか4日目で全て諦めて、残る休みの日数を与吉と買い物やら歩き食いをして現実逃避していたのだ!
「珍しいわね。あんたが行く気満々なんて」
「いつもなら引きずられる感じで行くのにな」
「しばらくの間に何かあったの?」
「ふっ。たまには身体動かしてストレス解消しないといけいなと思ってな」
そして彼は少しどこか遠い目をする。しかし彼の様子なんて気にせずにミヤちゃんは迷宮に行く支度して部屋を出て行くのである。
「次から何しようかな・・・」
彼の空船建造・・保留決定!
しかし意外にも機転の変わり目が訪れた。それはミヤちゃんの契約記号紙で決めた迷宮探索期間が終わり、約束その4である10日間の休みを得れた日の事・・・。
「休みがあっても今何かしたいことはないんだよな~。与吉は何かしたいことはある?」
チチ?チィ・・・チッチ!
「料理・・って与吉よ、君は一体何を目指そうとしてるんだい?」
なんか岩塩貰った時があったしな~。ん~~・・謎だ。
「だけど本当に何やろうかな~」
チッチ。
「まあ料理は出来るに越したことはないけど・・。あ。そう言えばミシャロで何か買ったあれがあったな」
岩塩の事を思い出してたら、確かあの岩塩は箱に閉まっていたよな。あとミシャロで買った物も一緒に閉まっていたっけな?とミシャロ商会で結構前に買ったSFチックな造形をしたコアみたいなものの存在を思い出した。(11話参考)
「あーー。あったあった。何かよく分からないコア」
箱をガサゴソと漁ると隅っこに押しやられたコアを手に持った。
「いやーー。本当にすっかり忘れていたわ。買ったな~こんなもの」
しみじみと買った時のことをを思い出す。
「これ勢いと珍しさで買ったんだっけ?結局忘れて箱の隅っこに追いやってしまっていたわけだが・・何か可哀想なことしたな」
武器や道具を作ったりする傍ら、作ったものが忘れ去られるのは、寂しいものがあるよなと思いながらコアを眺めると。
「うーーん、まあ思い出した以上は調べてみるか」
と言うわけで目的を無くした今、暇つぶしで謎のオーバーテクノロジーであるコアをこの休み期間で調べてみることにしたのだ。
では改めてSFチックな造形をしたコアについて書こう。
まずそのコアはミシャロ商会で買ったもの。元はどこかで発掘された物らしく、鑑定をミシャロ商会がしたわけだが現在技術では製作不可能と結論が出た。
形は菱形の水晶になっており、4ヶ所に配線差し込み口みたいなものがある。さらに水晶の中は電子回路のようなものと、コア、核、CPUとかそんな感じなものもある。情報としてはこれぐらいしかない。
「それでこの差込口だが・・・」
どの差込口にも端子らしきものが付いていた。それだけでも電子部品であるのはもう間違いようがないのだが、問題なのはそれが何の端子かであった。
端子と言っても種類は数多くあり、端子だけを見てもそれが何の端子か分かるものじゃない。映像、音声、電源、通信、伝達、規格、出力云々もあったりと端子の一つ一つが違うのだ。
「テスターとか欲しくなるな~。でもこれ、んーー・・」
ただ彼は元いた世界ではPCは自作で作ったりと基盤や配線とか見る機会はあった。だからまあまあの範囲で素人よりは電子部品は分かる方で・・・。
「これ単体で動く分けでもないから、多分どこかのピンで電源貰って動いていたはず。となると電気・・か~。しかも電圧とか電流とかも考えないといけないよな~~。テスターとか・・欲しくなるな」
無駄に時間が掛かることになりそうと早くも手が止まる。しかも何かやる度に何か必要となることが今までの経験則から更に悩む。
しかし意外にもその問題をどうにかしてくれる存在が近くにいたのである。
「ん?あるよ」
「マジで!!!??えっ?電気を生み出して、電流電圧とか何か色々できたり、そんなもんが!えっ!?本当にあるんっっ!!??」
「電流とか電圧は知らないけど電気が出るやつなら倉庫にあったはずだぞ」
それは毎度お馴染みミシャロ商会。何か手助けになる道具でもないか駄目元で行ったら、倉庫の在庫管理担当のアレンからそれぽっいのがあると言われたのだ。
因みに最近は色々と忙しかったからアレンとは久しぶりの出会いでもあった。
それを聞いた彼はウキウキだったのが、実物を見に行くと・・・。
「・・・・・・」
「ほらこれ、このボタン押すと電気が流れるのが見えて、これを押すと電気が増えて・・これでもっと明るく出来たりする。だけどこれ危険物でさ、壊したら結構な爆発範囲で死人が出たからお蔵入りになった商品なんだよ。欲しければあげるけどよ、扱いには気を付けろよ?」
「・・・説明どうも」
しかしそれはプラズマボールだった。プラズマホールについての詳細な説明は省かせてもらうが、ガラス球の中には希ガスが入っており、希ガスに電子が当たると発光する仕組みになっているのだ。
そして今彼の目の前にあるそのプラズマホールに使われている希ガスが『ラドン』であるのを彼は知らない。
※普通は安全であるネオンとかが入っている。
「まあ元々インテリアで結構人気だったのにホントおしいよな~これ」
「・・本当におしいところまで来ていたと思うよ。電気は生み出しているけどさ」
予想とはかけ離れていたが、とりあえず発電装置ぽっいのは付いていそうなので、それをうまく活用できればと思った次第であった。
そんなかんや数日間中で・・・。
「なるほどね~。この魔導石から・・この石に魔力がきて・・電気が発生して。これを記号式に組んで電圧と電流を制御?していて・・・。ふむ・・」
まずはプラズマホールから電気を生み出す部品を見つけて。
「この記号式は電圧と電流を制御してるのは間違いない。しかしこの記号式考えた奴は天才か?まだ素人だけど、この複雑さを見るに相当時間掛けて考えたんだろうな・・」
絶対見られたくなかったんだろうな~。今まで分解して見てきた物の中で、断トツの殺意こもった量の爆発石使っているし。
気分転換としては今の所彼にはいい刺激にはなっていた。
因みに当の製作者は、記号式の盗難は絶対に許されるべき行為ではないとわざと希ガスをラドンにしてまで使用していたのである。
「記号式はコピペして・・。そうだな、魔力を電気に変えるこの石・・ミシャロとか売ってないかな?んで、石の大きさで出力の調整。または電気抵抗の記号式を作って加え・・あ~駄目だ。まだこの記号式分かってないし、手を加えるとか。やっぱ石の大きさで調整しかないかな~」
そして記号式のコピペをしたり・・・。
「電気に変える石が無くても魔導石で出力調整すればいいいじゃないか!うん、その手があった!そうだよ魔導石なら大量にあるんだし、それでやれば良かったんだよ」
そしたら・・・。
「魔力抵抗の記号式作らんとあかんな。あんな爆発して・・。だけどこの石が本当に無事で良かった・・・」
いつもの如く失敗して学び・・・。
チチィ。
与吉は一度彼が集中すると挫けるか熱意が冷めるまで、他を忘れて没頭する悪癖に「しばらくあれだと多分料理のことなんて忘れているだろうな」と思い至って。
チ。チッチ!
よし。自分は料理について学んでみよう。と、彼の財布から金抜いて、どこかの料理店で見学しに与吉もやりたいことを始めた。
そして遂に・・・。
「犠牲もあったが自分の中ではすんなり作ることに成功した方だと思う」
この数日間で発電装置を完成することに成功したのだ。
いちよ発電出来ているか確かめる為にネットで見つけた手作り電球のサイトを参考にして異世界版電球を作り出し、光って爆発(4回目)しながらも通電の確認は出来ている。その後、通電したら音が鳴るようにと他にもちょくちょく改良を加えられていって、今の発電装置があるのだ。
ともかく完成した発電装置に備え付けたテストリードピン(極細)で端子に一つ一つ当てながらコアに通電の確認をしてみると。
ピーーーー。
音が鳴った。つまり通電したのだ。
「あ。鳴った。とりあえず出力はこれで大丈夫そう。で、この端子とこの端子から電気を貰っていると・・。と言うか通電したと言うことはこれはまだちゃんと動く?ってことかな?」
そしたら今度は不思議な現象が起こった。
ピーー・・。ピ。ピーーーー・・。ピ。ピ。ピ。ピーー・・・。
通電が続く限り発電装置は音が鳴りっぱなしになる仕様なのだが、どうしてか音が途切れ途切れに鳴り始めた。
この現象に最初はコアの不具合によるものか発電装置の不備で起きているものかと思った彼だが、今度は一定のリズムで途切れ始めたのだ。
ピーー。ピーー。ピ。ピ。ピーー。ピーー。ピ。ピ。ピーー。ピーー。ピ。ピ・・・。
「え?何これ?何かの故障?え?でもだからってこんなリズムが起きるもん?」
勿論何かリズムが出る仕様にしたことはない。もし何かあるならコピペした記号式にそうような物が施されていたなら分かる。が、そんなことに記号式に組めば無駄な魔力消費に繋がるから、記号式を組む者ならそのようなことはしないだろう。つまりあらゆる事を考えるとこの現象を起こしている原因は一つだけになる。
「もしかしてこのコア?」
ピーー。ピーー。ピ。ピ。ピーー。ピーー。ピ。ピ。ピーー。ピーー。ピ。ピ・・・。
未だにリズムを刻む音に彼は・・・。
「え。こわ」
端子に付けていたテスターピンを引っこ抜いたのだった。
やっと書けた。




