第14話 そしてやっぱ最後はここだな。ミシャロ商店!
前回のお話。ミヤちゃんが武器を持つテスト、略称第2回ミヤテスは、ミヤ母ことコヨテが今後の娘の為にと彼に対して打算と策略が組まれていた。そして彼はミヤちゃんとパーティーを組むことになったのだが・・・。
シルル教会・・・。
「日帰りじゃないとダメ、です!」
デデン!と効果音が響きそうなミルティアが彼らの前に立ちふさがっていた。
「ん~。うちら獣人なら問題ないと思うんだけどね~」
「それでも迷宮に行かせること自体、私は反対なんです!せめて日帰りで帰って来るようにしてください」
「困ったわね~」
迷宮の出来事から今後ミヤちゃんと彼は、パーティーを組んで迷宮に潜ることをミヤ母がミルティアに話してたわけなのだが、ご覧の有り様で反対されているのだ。
ミルティア先生・・。もっと厳しく言っていいんですよ。
そして彼は内心応援している。自由を奪われかねないミヤちゃんパーティーには、解散してもらいのだ。
「子どもを預かる身として、シスターとして、危ない迷宮に行かすのを見過ごす訳にはいけません!行けるにしても行く必要はまだミヤちゃんにはないんですから!」
「でもこの前は行かせてくれたじゃない」
「昨日はコヨテさんが一緒にいたからですよ。親同伴なら問題ないです」
「でもね~。うちの娘一度決めたら止められないわよ?無理に引き留めないでクラリオン君と一緒に迷宮に行かせた方がいいのよ」
と、あーだこーだと話す2人。シスター的には危ない所を分かって子どもに行かせるのは見過ごせないところであり、せめて日帰りで迷宮から帰って来てほしいのだ。
しかしこの町の迷宮は3,4日潜る位置が冒険者の活動場所。日帰りだと大した冒険はできなくないから、そこをどうかしたいのがミヤ母なのである。
その間に彼とミヤちゃんは、メルダー達に事情を色々と話していた。
「え!ミヤ、これからクラと一緒に迷宮に行くのかよっ!?」
「クラとミヤのパーティーか~。すごいドタバタしてそうな感じになりそう」
メルダーとクロエは聞くと羨ましそうで。
「危ないに決まっているでしょっ!?なんでわざわざ行くのよミヤはっ!」
マルリはミルティアと同様に反対的。
「自分だって諸事情さえなければ・・。あ。でも与吉も入れれば三人?パーティー?」
「強くなって戻ってくる。アイルビーバック」
彼は言わずと消極的でミヤちゃんは積極的である。
「あ~俺もクラ達と迷宮に行きてえな~。こうモンスターをバシバシ倒したり」
「だけどミル姉はさっきからミヤママに駄目って言っているよね」
「当たり前でしょっ!なんでわざわざ危ないところに行きたがるのか私には分からないのよ」
「分かってないなマルリは~。迷宮はロマン!なっ?そうだよなクラ?」
「まあロマンはあるな。まあロマンが曇るとただの出稼ぎ重労働業務だから、夢はあまりお求めない方がいい」
経験者は語ると言いたげ。実際に迷宮に潜り始めた時は重労働で、今は魔導石を作る為に魔石を採取する作業する場でしか彼は感じ取れなくっているのだから。
「うわ。冒険者とは思えないこといいやがった」
「夢がないね~」
「ほら、迷宮なんか行っても良いことなんてないのよ。ミヤも分かったでしょ?」
迷宮に対する憧れを現実目線で低下させる彼がだが、ミヤがそれに・・・。
「迷宮は広かった。行ったことがない先がずっとある。母達が行くの分かる。火も氷も沢山だせるのもなお良し」
「それはやめて」
口数が多いわけじゃないミヤちゃんが迷宮に潜った感想。簡潔ながら心躍てったのがよく伝わる。
「あー!余計に行きてえーー。なあクラ、こっそり連れて行ってくれるの駄目か?」
「今の言葉で初心を思い出したけど、面倒なのでノー」
「なんでクラリオン君とミヤちゃんがここまで迷宮の見え方が違うのかな?」
「性格の善し悪しじゃないのかしら?」
彼らも色々と話しが盛り上がる。しかし依然とまだミルティアとミヤ母の話は終わっていない様子。
「で、結局ミヤはどうなるんだ?迷宮に行けるのか?」
「だけどこれってクラが行けてミヤが行っちゃいけないのはあれだよね」
そこなんだよな~。と彼はミルティア達の方を見る。そもそもシルル教会のミルティアの立場として託児所を請け負ってるだけで、家庭の事情に割入れるほど強く言えるわけじゃない。
「メルダー、クロエ。そこは喋っちゃ駄目だ」
なのでそこは指摘されたくない話し。絶対にこじつけられるし、潜らす否定ができなくなる。そして今の話しを聞いて動くであろうミヤちゃんを止めておこう思うも・・・。
「ミヤちゃ・・」
もういなかった。
くっ!いつもより行動が速い!
いつもより素早い動きかつ音もさせずにミルティアとミヤ母の前にミヤちゃんは立っていた。そして・・・。
「クラが行けてミヤが行けないのはおかしい」
さらに続けて。
「異議有り。これは種族差別である」
彼がよく減らず口で喋る言葉をミヤちゃんが真似してミルティアに宣戦布告したのである。
あかん・・。
彼の首が垂れる。
「ミ、ミヤちゃ~ん?」
「あらミヤ、よくそんな言葉知ってるわね。誰が教えたのか予想つくわ~」
何か余計なこと言いましたね?とミルティアからの視線。うふふ~と笑うミヤ母の視線が彼に刺さる。それに彼は何もしてない、寧ろミルティア先生を庇っていたんです!と無罪の視線を送るもミルティアの判定はギルディ。あとでお話しですと顔に出す。
「でも確かにクラリオン君が行けてミヤが行けないのはおかしいわよね~」
「ク、クラリオン君は、いちよ冒険者なので・・いいんですっ!」
「差別反対」
「ミヤちゃん、ちょーっと大人しくしてようね~」
横でミヤちゃんの加勢にミルティアが静かにさせようとするも。
「クラが言えって言った」
「ッ!?」
平然と嘘づくにミヤちゃんに焦る彼。再度ミルティアに違うと訴えるが。
「クラリオン君あとでお話です」
「先生っ!!無罪です!!」
「ダメです」
くそっ。この教会は嘘と暴力で満ち溢れてやがるっ!!
「ん~、シスターミルティアの言い分なら、ミヤも本格的に冒険者するのだから迷宮に潜ってもいい理由になるんじゃんないかしら?」
「そ、それは、そう・・なりますけど・・っ」
「困るわね~」
そしてミヤ母はある名面を浮かばせる。
「あ。ならこうしましょうシスターミルティア」
「な、なんですか・・」
笑うミヤ母に彼同様に何か怪しいことを考えていそうな雰囲気にちょっとミルティアは警戒する。
「ミヤ達にクエストを発行するのはどうかしら~?」
「クエスト・・ですか?」
「そうよ。迷宮に潜れる実力があるかどうか課題クエストを出すの~」
ミヤ母の考えはこうだ。ミルティアに課題クエストを出してそれをクリアしたなら、ミヤちゃん達に普通の迷宮探索を認めてもらうというものだ。
「どうかしら?シスターミルティア?達成できなければ実力不足。ミヤにはまだ早かったと納得してあげる。達成できたなら迷宮の活動を認めると言うのは」
これなら実力の有無をはっきりさせられるし、依頼内容はミルティアが自由に決められると提案は悪くない。しかしミルティアは悩む。何しろ実力を認めるクエストとなるとこの町だと迷宮に潜らせるぐらいしかない。だから本末転倒とミルティアは悩むのだ。
それで・・・。
「ん~~・・・わかりました。ミヤちゃん達にプリオエルバの草花の採取を依頼します」
ミルティアはどんな課題クエストするか決めたようだ。そしてその言葉を聞いたミヤちゃんは・・・。
「分かった」
即答する。
あのねミヤちゃん。準備だって色々必要なのよ?
どの道彼も課題クエストに強制参加させられるので、せめて詳細を知ってから了承してほしかった彼であった。
で、改めてどういったクエストなのか聞くと。
「プリエオルバと言うのは迷宮中層にいるモンスターのことです。背中に草花を生やして自給自足する珍しいモンスターなんですよ。そのプリエオルバから草を20日までに取ってきてください」
しかしそれを聞いたミヤ母は微妙な顔をする。
「ん~でもプリエオルバって見かけたことないわね~。この迷宮にいるのかしら?」
どうやら希少なモンスターらしい。これなら無理にモンスターと戦う必要はないし、そう簡単に見つかるモンスターでもないから、ミルティアなりに考えた難しい課題クエストであった。
「あとミヤちゃん。この課題クエストだけは必ずクラリオン君と一緒に迷宮に潜ること。今回のクエストだけは何日も迷宮に潜っていいです」
「ん~」
ミヤちゃんは大変嬉しそう。
「あとクラリオン君は、絶対迷宮ではミヤちゃんといること!目を離しちゃ駄目ですからねっ!」
そして彼には凄い念の入れよう。これに彼は「あ~本当に面倒くさいことに」と直観してミヤちゃんに相談しだす。
「ミヤちゃん。そこらの雑草からプリエオルバから採ったことにしない?分からそうだし」
「名案」
早々と楽に終わらせようと愚策する。正直この課題クエストは失敗した方が、彼にとって自由の時間が守られるわけなのだが、目の前にある面倒事もどうにか楽に終わらせたいのである。
因みに採れる草はウドとかフキが採れるらしい。
「本人の目の前に堂々とよく言えますよねクラリオン君は」
だって目の前で言っても騙せそうだし。とは彼は言わない。
そんな訳でこの課題クエストの期間だけはミヤちゃんは自由に迷宮に潜ってもいいと仮許可を貰い、明日から本格的な迷宮探索をすることに・・・。
「行こう」
「ストップミヤちゃん。流石に今から~~~っ!待って、首の服持たっ。伸びっ、ちょっ・・!ええいっ!人の話を最後まっっンブッ・・!」
「行ってくる」
今から迷宮探索と彼を気絶させてミヤちゃんは皆に手を振り、彼を引きずって出発しだしたのであった。
「あら~。流石私の子ね~。行動力が速いわ~」
「・・はっ!いつもの雰囲気にミヤちゃん行かせてしまいました!今の止めた方が良いんじゃないですかっ!?」
「ん~。止めなくていいんじゃないかしら~?冒険って突然始まるものでしょう?」
止めずに眺めるミヤ母。
「クラ達、あれで大丈夫か?」
「流石に戻って来るんじゃない?」
「はあ~~。どうして、こう唐突に行くのよ・・」
メルダー達も心配そうに話すしかなかった。
「じゃあ私も行くわね~。私達もしばらくまた迷宮に潜るから、ミヤの課題クエストが終わるタイミングで帰ってくるわ~」
「え?ミヤちゃんと一緒に行くんですか?」
「違うわ。夫が勝手なことしないように色々と~、ね?」
ミヤ母もシルル教会から出て何かする為に出て行くのであった。
そんなこんなで今日からミヤちゃんと彼は迷宮探索する。
「って!いきなり迷宮に行けるかっ!最低限の準備させて!せめて我がボードないと迷宮を歩くなんて死ぬわっ!!」
気絶から目を覚めてミヤちゃんに迷宮に連れて行かれる前に何とか彼はミヤちゃんの行動を止めに入っていた。
「早い方がいい」
「早い!けどその前にまずはここに行きますっ!」
そんでもって彼らが今いるのは商店街。制止を聞かないミヤちゃんをどうにか商店街まで連れてこさせたのだ。
「ここでプリ何とかの草取りに必要な物を買い揃える。いいね?」
「やだ」
速攻に否定される。
くっ・・。なんでこうすでに次から次へと面倒なことに・・・!
このまま迷宮に連れて行かれるよりはマシと商店街を進みたい彼なのだが、その前に彼は言いたかった。
「だがその前に一つ言いたい。なぜ一人関係ない人がいる・・・」
彼の隣にはミヤちゃん。そしてもう片方の彼の隣には。
「どうしたのクラ君?お財布でも忘れちゃったの?」
彼が泊まるバーバリエ宿屋の副オーナーであるアスラが一緒に同行していた。そして初対面であるミヤちゃんは若干警戒しており、だからか商店街に行くのを速攻で拒否しているのだ。
「本当に次から次へと・・」
「ふふ。今日の私は運がいい!」
「こっちは厄日です」
「クラ君の他に獣人幼女がいて・・。うん、よく分からないけど2人の買い物手伝ってあげるよっ!!だいじょーーっぶ!今日休み取ってあるから!」
元気なアスラの姿にミヤちゃんは一歩足を引いて睨む。
「あ。ミヤちゃんは初めましてだよね?でも私、ミヤちゃんのこと知っているのよ?え?何故かって?ふふーーんっ!それはとても簡単なことだよ!だってミヤちゃんとお母さんがうちらの宿屋の食堂を使っていたのを見たからねっ!」
※バーバリエ宿屋の食堂は、宿屋に泊まってなくてもご利用可能なのである。
「それにクラ君の部屋の扉壊したでしょ?指紋がバッチリ残っていたよ!」
このお姉さま怖いんだけど・・。
指紋と言う単語に怪しさしかない。しかしそれでも今日は休みを取って商店街で買い物しようとしたら偶然見つけたとアスラは言うのだが、胡散臭さが晴れない。しかし出会っしまった以上は逃れられないと彼は諦めた。
「買い物はお姉ちゃんにまっかせなさ~い」
「「・・・・・・」」
そんな訳で彼とミヤちゃんとアスラの三人で買い物することになった。
ホントなんでこうなる・・・。
しかしよく考えればミヤちゃんが宿屋に泊まってた事実を知ってるのであれば、ある程度行動を予想して待ち伏せしていても不思議ではないのである。
ふふ。子どもを愛するお姉ちゃんは努力を惜しまない!だけどこの町にも教会ってあったのね。あんな大通り離れたところにあったなんて。しかも子どもが預けられていたなんて・・・。お姉ちゃん、この事実に感激しかないわっっ!!
「ところでクラ君達は何を買いに来たの?」
「プリ何とかに生えてる山菜採りに使う道具諸々のかくかくしかじかで」
かくかくしかじか話して・・・。
「う~ん。プリエオルバ・・。最近聞かないな~。うちの宿屋は大半の冒険者が泊まっているから、そう言うの詳しいけど・・」
アスラでもプリエオルバについては聞かないらしい。
「だけどそれよりクラ君とミヤちゃん!」
「何でしょう・・」
「・・・・・」
変わらずアスラに対して警戒して無言を貫くミヤちゃん。襲い掛かりそうな雰囲気があるから手を握っておく彼だが、握り返すミヤちゃんの握力で骨にひびが入りかける。
「迷宮に行く時防具付けないで行ってるでしょっ!いくら強くても私服で迷宮に潜るのは危険だよ!これを機会に防具買わないとっ!ミヤちゃんもそこ真似しちゃ駄目だよ!」
ビシッと言われるが彼はどこ吹く風。いちよスキルと記号式でお粗末ながらも防具の製作は可能なのだが、今は武器作りに専念して作る気がないのである。
「ふっ。いずれ自分に合った防具は自分で作るつもりさ。あとミヤちゃんは母から貰った防具あるし・・。あれ?そう言えばミヤちゃん防具は?」
今気づいた言わんばかりにミヤちゃんは防具付けていなかったことに気づく。
「クラが付けてないから置いてきた」
前々回から防具を付けずに迷宮に行ってた彼を見て、必要なさそうとシルル教会に置きぱっなしにした様子。持ってきていたのは腰に付けた彼の短剣2本のみ。見事にアスラが彼の悪いところを指摘したところが当たる。
「クラ君・・」
「え?これ自分が悪いの?」
そんなこともあってアスラは買い物を手伝いながらミヤちゃんに一般常識をレクチャーしてあげるのだった。
それから色んな店に行き、最初嫌がっていたミヤちゃんも色んな道具に興味深々と買い物を満喫していったのだった。
「まあこんなもんか」
必要そうな道具はある程度買い揃えた彼ら。アスラという大人がいたおかげでいつもの買い物よりスムーズに行えたのだが、もう時間は夕刻を迎えそうになっていた。
「クラ君、お金使いすぎだよ。なんで今日だけで100バレルも使っちゃうの」
「いいの。自分金持ちだし」
「将来碌な大人にならないよ」
「あとミヤちゃんはお金は出世払いね」
「ん」
そして彼が次に向かったのが。
「そしてやっぱ最後はここだな。ミシャロ商店!」
今までと違って彼のテンションが高い。布教の一環とミヤちゃんにも今後ミシャロ商会の物を使ってほしいとお店に案内しようとする。
「はいミヤちゃん。違う店案内するね。いいところ知ってるから」
しかし一切碌な物が置いてない店にアスラはミヤちゃんを違う店に誘導する。
「待て。そんな偏見な目で見てはいけない。例えばこの新型のヒノキ四式なんて凄いんだぞ。ペンな細さなのに丈夫で20m伸び縮み出来るんだぞ。誤作動は多いけど」
色々と面倒がる彼だがミシャロ商会のことだけは、彼なりに熱意を持って話す。
「あとこれもすごい。汗取りシール。体に貼れば汗を吸い取って清潔間違いなし。ちょっと粘着力が強過ぎて皮膚が持ってかれそうになるのと吸い過ぎるとブヨブヨになって触りたくない異様な感触なるぐらい」
「はい行こうね〜ミヤちゃん」
「あと火の調理に必要な時に火が出せる魔道具。時々身体まで着火する時もあるチャッカとか。広範囲に広がる脳内アラームとか色々・・って!お金出しているの自分なんだからなっ!?」
ただでさえ彼がミシャロ商会の品で部屋が悲惨なことになった出来事を宿屋の副オーナーとして忘れている訳がない。お陰でミヤちゃんには一般的な常識が身に付いたとさ。
「あと迷宮に必要そうなものと言えば・・。あ。ミヤちゃん。ポーションとかどうかな?」
「ポーション?」
アスラに対して少し警戒が緩くなったミヤちゃんは聞き返す。
「ポーションは疲れた時とか魔力の回復促進に使う飲み物よ。味は美味しくないけど迷宮に行くなら少し持っておいた方がいいわね」
「ん~・・」
あまりパッとしないミヤちゃん。持っていくようなものには見えないらしい。しかしまた彼はポーションだけはミシャロのが良いと強気で迫る。
「いいかミヤちゃんにアスラ姉様よ。ポーションだけは!ポーションだけはミシャロ商会の方が絶対いいっ!!普通に売ってるポーションはただのポーションでしかないっ!しかしミシャロ商会のは違うんだっ!種類、品揃え、効能!どれもが一級品なんだよっ!」
「なんでクラ君はミシャロ商会に肩入れするの・・・」
普段の彼には見られない熱意にこれにはアスラは呆れ返すしかなかった。
「例えばこのリボピポーション。劇的な回復はないも疲労回復の速さなら普通のポーションより早い!梅干し60個分のクエン酸入り!!」
懐から取り出したのはどこにしまっていたのかミシャロ商会のポーション。
「絶対に変な物しか入ってないよ」
「自分で確かめて批判するならまだしも偏見だけで判断するのは愚の骨頂!試せっ!!」
このような力説と駄々をしばらくこねる彼にアスラの骨が折れて「じゃあ一回だけですからね」と仕方なくミシャロ商会のお店にお邪魔する。それから店員と彼も混じって自信満々にポーションを紹介。進ませて試飲までさせてくれる優しさ溢れていた。因みにミヤちゃんはポーションの試飲に凄いしかめっ面して飲まなかった。匂いが嫌らしい。
「これで準備よしっ!」
「何でクラ君はあんな得体もしれないポーション飲めるの・・。お姉ちゃんちょっと気分悪いんだけど・・・」
「はい。お姉ちゃん」
そこにつかさず彼はミシャロ商会のポーション。蜂の子入りロイヤルゼリー配合ゼリーポーション(スプーン付き)を手渡す。なお彼に悪意はない。ミシャロ商会のポーションの信頼と布教の思いで渡しているのだから。
「クラ君・・・普通のポーションでお願い」
「・・・ミヤちゃん、いる?」
分かってないなと代わりにミヤちゃんに渡してみるも。
ベシッ。
叩き落とされる。
こやつら・・・。
仕方ないから宿屋で待ってる与吉に彼はあげることにした。ともあれ買い物はこれで終わり。また時間が微妙だから「明日迷宮しない?」とミヤちゃんに彼は提案するとミヤちゃんも今日は色々行けて満足したのか軽く了承してくれた。
「あ~明日から迷宮探索か~・・・」
そして明日から迷宮に潜ることを思うとやっぱり面倒だなと思いつつも彼は、明日の迷宮に向けて準備するのだった。
次の日。
朝日を迎えるのと同時に今日の一日が始まる一般的な習慣の中で、未だに睡眠を貪る彼と与吉。そこに突然のモーニングコールが囁いた。
「おそい」
「の゛ぉ゛」
聞こえると同時に彼の肺から空気が押し出される。この感覚に彼はすぐに気づく。
「ミ・・ミヤ、ちゃん」
ミヤちゃんである。彼がくるまってる布団丸ごと抱きしめて彼の上に乗っかていた。
「迷宮」
そしてミヤちゃんは呟く。その姿は防具を身に着け、彼の短剣、道具を持ってすぐにでも迷宮探索に行く気の姿。
昨日行くはずだった迷宮探索が明日となり、それが今日となった今、彼が朝起きないこと予想してて泊まる部屋に凸してきのだ。それに彼は。
「一日中人はだらけられるとな、頑張って朝起きても午前11時、気付けば午後を過ぎ、こうやって一日の大半を無駄に終わるのが普通なんだ。だから自分はまだ寝ないといけない・・」
寝ぼけが取れ切ってないのか謎理論を展開する。
「んっ!」
「お゛ご・・さ、酸素が抜けっ・・る」
ミヤちゃんに色々支度を促され、与吉を頭に装着してやっと彼は部屋を後にするのだった。
そしてバーバリエ宿屋の玄関ホールで。
「実に・・実にいい朝だわっ!!二人で手をつないでいる姿がっ!!」
アスラが朝から待機して迷宮に行く二人を待ち構えていた。
「この姿を毎日見られたらお姉ちゃん幸せ・・はっ!」
そこでアスラは気づく。迷宮に行けばしばらく帰って来ないと・・・。
「やっぱり行っちゃ駄目っ!!クラ君と会えなくなるし、ミヤちゃんも知り合ったばかりなのにっ!」
思いっきり抱きついておいおい泣きつくアスラ。
忘れてた。このお姉さま、たまに待ち伏せているんだよな。
アスラたまにこうやって彼がどこかに行くをのを察して玄関ホールで待ち構えている時があるのだ。それが今日に限って捕まってしまったのである。
あー。朝から辛いのに・・。
「うぅ゛~クラくっ・・ク、クラ君っ!?いつもその板ずるいっ!!」
なのでこういう時は。とミヤちゃんに視線を送り、この場でボードに乗ってもらって、飛んで引き剥がすことから始まる。
「いい加減HA・NA・SE」
「お姉ちゃん、体力がゼロになってもクラ君だけは・・っ!」
しかしアスラも手慣れたのかボードにしがみつこうとする。
シルル教会なら彼が茶番劇を起こす時があるが、バーバリエ宿屋だとアスラがよく茶番劇を起こすようであった。
「ああ、なんで朝からこう・・」
この茶番に彼はミヤちゃんに目線を送る。
「ミヤちゃん・・ヤれ」
「ん」
アスラの額に獣人なりの軽めのデコピンをかます。
「アイタッ!?」
流石にアスラもボードから手が離れた。そしてその隙を見逃さず彼らはボードの乗ったまま玄関扉を強行突破するのである。そんな彼らの去り際にアスラは・・・。
「クラ君、ミヤちゃんっ!!帰って来たらおやつはカンノーロあるからねーーっっ!あと扉の修繕費待ちだからねーーーっっ!!!」
と玄関ホールをアスラの声で響かせる。
※なおカンノーロとはイタリアのお菓子である。
そんな感じで彼らの課題クエストに向けての迷宮探索が始まった。が・・・。
チチ・・。
「ん?どした与吉?」
チチィ~?(朝ごはんは?)
「確かに食べてない」
「ミヤも食べてない」
「・・・どこかの店で朝ご飯食べてから行くか」
そうすんなりといかないのが彼なのである。
なんか書いていたらなんか無駄に全体が結構長くなっちゃったから、半分ぐらいにしたのがこの14話です。
書いて思ったけど、いや結構前々からだけど全然話しが進まねぇ~。そして15話でも全然話しが進まねぇ~。何を書きたいんだこの筆者は。と自問自答しながら黙々と書いています。
一部、話の内容を修正する予定です。2020.03.06
話の内容を一部修正しました。 2020.03.07
誤字一部修正。 2020.07.28




