第11話 迷宮に行ってみないかしら?
前回のお話。魔導石と記号式を手にした彼は、ついに自分が求める武器の製作が可能となった。しかしまだまだ知識と技術不足。彼が求める武器にはほど遠かった。
さて、本日は自分ことクラリオン。今回は少し自分の身辺について色々と振り返りながら考えていきたいと思う。
ん?何故かって?実言うと少々・・いや、最近ご無沙汰していた『スキル開発』について模索して新たな有能性が分かってきたからだよ。決して武器作りに行き詰って、他のことをやり始めた訳じゃないからね?
「ステータス・・・」
自分の身体能力が数値化され、自分の状態を確認できる不思議な画面。そんなステータスを改造し、元いた世界のネットに接続できるようにしていた彼は、ただのテレビ画面でしかない。しかし今回は珍しく本来のステータス画面の数値を見ているのだ。
「特に数値が大きく上がったようなところはないか」
全体的に運以外は僅かに上昇。魔力は・・・数値が大きすぎて上がったのか下がったのかよく分からん。まあ大差ないか。
あまり変わらない数値だが一つ気になるところに目が行った。
「スキルの数が・・148か。ネタ込みでスキル200ぐらいは作ったんだかな~」
特に語られてないが今まで彼は暇な時に何かスキルを作っては、こつこつとスキルを作りおきしていた。しかし作ったスキルの数が減っていたことに気づく。
「う~ん、やはり忘れたか」
そう。神様のメールにもスキルは覚えても忘れたら忘れるとある。つまり減ったのではなく忘れた。そのことを思い出してこれ以上忘れないように今さらながら彼はスキル整理を行うことにしたのだ。
スキル欄の新規作成フォルダー機能を活用して生活、実用、ネタ、その他とファルダ分けと地味に嬉しい機能活用しながらナンバリングを始める。
「~~~~。~~ーーー・・・・」
ふんふんと言いながら作業しているとその様子を不思議思ったのか与吉は彼を見つめる。
チ~~~~~。
「どしたん与吉?お腹でも空いた?」
チ~チチ。チチチ?
「ん?ステータスを見てた。ほら前にB級映画見せた画面あるじゃん。アレだよアレ」
チチ?チッチ。
ああ。あれねと与吉は思い出す。
「ん~。しかし与吉にもステータスってあるのかね?」
チィ~?
そもそもステータスある種族とか無い種族とか分かれているのかな?
「やっぱこういうのはモンスターに適応されないものなのか。う~ん・・・」
改めて思うとステータスも不思議だな~。
そして彼はそんな思いに至ったからか、あることを試ししみようと与吉に目を向ける。
「はい。リピートアフターミー。『ステータス』」
チチーチチ。
シュタッ。
そう。モンスターでもステータスがあるのか与吉で遊び感覚で確かめ始めてみたのだ。
「ワンモアプリ~ズ。『ステータス』」
チチーチチ。
シュタッ!シュタッ!
与吉は決めポーズを付けてノリノリでやっても何も起きる様子は無い。
やっぱモンスターだと無理なのかね~。か、それとも発音や解釈が出来ていないからか、尤もな話モンスターと生物の違いがあるからなのか・・。
しかし・・・。
チチーチチ!
シュタッ!シュタッ!シュタッ!
チ!?
与吉が何かに驚く。前脚で何かを確かめるようにチョンチョンする光景にまさかステータスが見えたのかと彼もまさかと驚く。
「ん!?うそ?見えたの!?」
チ~~~。
「マジか。モンスターでもステータスは開けるのか・・。え?これって普通のことなの?」
また一つどうでもいいことでこの異世界の謎が深まった。しかしモンスターにもステータスがあって開けるなら、どんなステータスなのか気になるところ。なので早速彼は聞く。
「与吉さん、与吉さんや。ちょっとステータス見せてくださ~いなっ」
チィ・・?チ。
前脚を広げて「はいどーぞ」と見せるが。
見えん・・・。
他人のステータス情報は許可を貰えないと見えない仕組みになっているので、全く見えなかった。
「えっとね。心の中で『見せる!』とかそんなこと思ってもらえるとありがたいんですが~。なんかそんで感じできません?」
チ?チ~・・・チッ、チ~チ!
「お。見えた!ほお・・。これが与吉の・・・。じゃあ自分も」
お互いにステータスを見せ合いっこ。
しかしこれが与吉のステータスか~・・・。
「はい与吉~。体力、魔力タ~ップ」
与吉の前脚を借りて詳細の閲覧する。
「体力の数値が高いのは速の数値が高いからか・・」
速80・・・。意外に速ぇ・・。自分は10なのに。やっぱ種族よって数値のバラつきが大きいな~~。あと与吉、魔力持っていたんだね。
ステータスが見れて新しい意外な発見。ただし・・・。
「5しかないけど」
チ?
しかしスキルは持っていないのか。こう言うのは何か一つ欲しいところ・・。
「あ・・・」
ここで思いついた『スキル開発』のさらなるチート活用術。新しい発見に刺激されて何か名案が生まれたようである。
「作ってみる?与吉のスキル・・・」
思えば彼の『スキル開発』は存在してないスキルを作れるスキル。『スキル開発』で与吉にしか使えない与吉専用スキルなるものが作れないかと思い至ったのだ。
そして数分で。
「嬉しいけど何か納得できない気持ちはなんだろう。とりあえずおめでとう与吉~」
与吉専用スキルなるものが作ることに成功した。そしてすぐに与吉のスキル欄に反映されてさっき作ったスキルが載ったのだ。
チッチチィ~!チッチチィ~!チッチッチッチチィッ~!
与吉は万歳するも何が起こったか分かっていない。多分お肉が貰えると思っているようである。
それはさておき、与吉専用スキルなるものとは一体何なのか。まあ言葉通りの意味であるが与吉にしか使えないようにしたスキルである。
ただ実際にそれが上手くいくのか、専用と付ければ存在しないスキルになるのか、もしそれで『スキル開発』の制約を掻い潜ぐれるのであればと言わば実験を兼ねて与吉で試してもいたのだ。しかしそしてそんな実験で分かったことは・・・。
「ん~~。専用と付けても駄目か」
与吉の成功に自分自身の専用スキルを作ろうとしたが作れず、結局失敗に終わる。
本当にどういった制約が掛かっているんだか・・・。
『スキル開発』の不明瞭の制約は、神様曰く自分自身のせいと言われているが、あの時は深く言及してなかったからあれ以降詳しいことは分からず仕舞い。
「はあ。まあそう上手くはいかないよね~・・」
チチ?
しかし彼は気分を切り替える。今に始まったことでもないし、今日は久しぶりに『スキル開発』を使ったぐらいしか使ってないのだから困らない。それに今は与吉専用スキルの実力を見てみたい気持ちで彼は一杯だ。
「それじゃあ与吉、迷宮で試しに行こうっ!」
迷宮に行こうと与吉を誘うが、そんな与吉はと言えば・・・。
チ?(肉は?)
「ん?肉?」
とりあえずスキル獲得おめでとう記念ということで、お肉を買って食べてから迷宮に向かうことにした。
なお彼が与吉に作った専用スキルは『ジャンプの極意』という。
内容は、与吉専用スキル。連続でジャンプを繰り返すごとにジャンプの動作に掛かる身体の負担軽減、動作速度、跳躍距離が向上がしていく。またこのスキルのレベルは存在しない。というものである。
ん?どうしてそんなスキルを?だって蜘蛛ってピョンピョン跳ぶじゃん?それだけよ。まあ実験だったから適当だったというのもあるけど。
しかしどうあれこの意味を考えれば、他人にスキルを付けられるチートであるのに当本人は全くそれに気付いていないのが残念である。
そして迷宮に行くと。
「与吉いいいいいいいーーーーーーっっ!ストーーーーッップ!!!!」
周りは土煙と砂利を上げ、仕舞いにはアニメのような速さで一瞬だけ姿が見える高速移動と爆風を与吉は披露していた。
事の始まりは与吉にジャンプを教えるところから始まった。
「だからジャンプってこう足でピョーンっと跳ぶのよ」
普段からジャンプを意識してないのかジャンプと言う言葉を分かってないのか与吉は首を傾げていた。
チチ~~?
「いつも歩く時とか、獲物を狙う時に跳びかかるあの動き」
片足ずつで跳ねながら地面の上をジャンプして見せたり、彼なりに与吉にも分かるようなジャンプのジェスチャーをして伝えようとする。
チッ、チッ、チィ?
「そうそう。いつもの感じのそれ。じゃあそれを連続でいってみよう」
結果。
ヒュン、ヒュン、ヒュンッッ・・!
「バグ技だよ与吉」
風を切る速度に至るまで30秒弱。まさか自分が与えたスキルがここまでになるとは思ってもいなかった様子である。しかし次から本当にバグ技であった。
「はい与吉ストップ!集合!」
チ。
シュタッ。
目の前に一瞬で現れる。
あ。こんな感じのアニメで見たことあるな・・。しかしまさかジャンプで風を切るとか驚き。
この与吉のスキルをどう今後扱って行くべきか悩む彼だが、その間に与吉もまた考えていた。
何故か分からないか速く動けるようになった。不思議だ。そう言えばジャンプジャンプって言っていたけど、あれは一体何をしていたんだろう。
チィ~・・・。
そして与吉はさっきまでの彼が片足ずつに跳ねてる動きを思い浮かべる。
片足一本・・。跳ぶ・・・ジャンプ。
「ん~。だけどあんな速度が出せるんだったらいい打撃攻撃になるな。以外に戦闘に役立つ?なら何かしら武装させるのもあり・・?」
足にナイフみたいな武器と防具が一体化したやつとか・・。う~ん発想って大事だな~。武器作りに行き詰っていたけど、うん、やる気が出てきた。
チ・・。
与吉は一本の脚で跳んでみようとするもバランスも取れず、身体は持ち上がらない。
チチィ。
なので今度はいつものジャンプで反動をつけて次の脚で片足だけで跳んでみる。しかしそれでもダメだった。
チ~・・。
じゃあ次は2本で3本脚でとジャンプを調整していく。
チ・・。
4本脚で何とか安定。そこから何回か連続で跳んでみる。スキルの効果で負担が少なるのを身体で感じながら、跳ぶ脚の本数を減らし慣らしていくと。
チチ・・・。
2本から1本に。ジャンプすればジャンプするほどジャンプの回数が格段に増えて、ジャンプの威力の加減も分かっていく。たださっきから跳んでるジャンプは僅か1㎝にも満たない極小ジャンプ。それを連続で蜘蛛特有の脚8本で素早く軽快に跳び続ける。
チ、チ、チ、チ、チ・・・・ッッ!
「よし改めて武器作り再開するか!そして喜べ与吉!まず最初に与吉に武器を・・ん?与吉、何その凄いバイブレーション振動のような動きは?」
与吉の身体全体が物凄い残像が小刻みに動いていた。
ヂ~~~~~。
ピュンッ。
一瞬で消えた。しかし今まで見た高速移動の比ではない。同時に爆風(衝撃波)が吹き荒れ、凄まじい轟音が迷宮内に響き、吹き飛ばされる砂利が襲って来る。
「与吉いいいいいいいーーーーーーっっ!ストーーーーッップ!!!!」
適当に付けた与吉専用スキルがまさかとんでもないチートスキルに化けるとは彼も予想してなかった。
次の日。
彼はミシャロ商会のお店にちょっと向かっていた。
「いらっしゃませ~。おや。クラリオンさんじゃないですか」
「どうも~。何か買いに来たよ~。アレンは?また倉庫整理?」
もうミシャロ商会の人とは顔見知りである。
「ええ。最近はクラリオン君がよく買ってくれますからね。小まめに倉庫の在庫を確認してもらっているんですよ」
「なるほど自分様々だな」
「そりゃもう。それで本日は?魔道具で?それともポーション?」
「いつもの炭酸系ポーションとリボDポーション数本。あと変わった武器とかある?」
与吉に何かいい武装になりそうな物がないかインスピレーションになれる物を探しに彼はミシャロ商会に来たのである。
「相変わらず炭酸ポーション好きですね」
「好きよ~。そもそも炭酸があること自体ビックリよ」
ついでに彼はポーションを買っておく。しかしこの異世界のポーションは、医薬部外品ぐらいの効能しかない。劇的に怪我、病気が治ったりするわけじゃないのだ。なのになぜ買うのかと言うと彼は徹夜やちょっとした疲れに飲む健康補助飲料として使っているのだ。さらについでに言えばミシャロ商会ポーションは普通に売られるポーションとは違い、(良くも悪くも)様々な成分や種類が豊富で、他のと(色々と)比較にならないのである。
「あと武器ですか。ん~新しい武器は入荷してないから目ぼしいのは無いですね~。でも新商品の雑貨は入荷しましたよ。見ます?」
「見よう」
ミシャロ商会に普通の物はない。新商品と聞けば聞かずにいられない。
「これは遠隔リモコンと言いまして。付属のシールに操りたい物に貼って、リモコンでボタンを押すとあら不思議。シールを貼った物が自由自在動く優れもの。ただ時より動作不良を起こすのが欠点。あ。人にシール付けちゃ駄目だよ?」
「動作不良起こす?」
「あはは。ノーコメント」
「よし買おう!」
いい買い物をした。
「あ。あとね。新商品じゃないけど、今回の商品と一売れない商品も送られて来たんだけどこんな物も本部から来たんだよ。クラリオン君は珍しい物とか好きだろ?これなんだか分かる?」
「どれどれ・・」
店員は新商品の他に彼にある物を見せてくれた。
「これね、どこからか発掘された物でね。何かの一部だと思うんだけど、どうにも分からないから有能なミシャロ商会だったら分かるだろうって持ち込まれてきたんだ」
正確に言えばよく分からない商品を生み出す奇才溢れる変人が巣くうミシャロ商会だったら、何か分かるんじゃないと流れ着いた物である。
そしてそれを見た彼は意外そうな顔をする。
「またSFチックな造形で」
それは菱形の水晶の中に電子回路のような模様があり、その中心にコア、核、CPUなんて呼ばれそうな物が見える。しかも水晶の真横4か所に配線差し込み口ぽっいのがあった。
「ん~。差し込み口も完備されていると」
「何かお分かりで?」
「これ正にオーバーテクノロジー。なんかコアぽっい感じは分かる」
「やはりそうですよね。精密な造形で現在技術では製作不可能と開発部門も言っていましたし」
ミシャロ商会には開発部門なんてあるのか・・・。
「だとしたら余計にこれ貴重なんじゃない?オーバーテクノロジーなんだから」
「いや~うちらは興味あるものしか目がないですからね~。それが無ければ例えオーバーテクノロジーでもゴミですよゴミ。だからこんな町にも流れてくるんですから」
あはは。と笑うが物によっては笑い事にならない物や希少な物かもしれないのにゴミと言い切れるのは、流石ミシャロ商会。自分達にとってそれが必要じゃなければ、簡単に切り捨てられる心意気が凄い。
「よしそれを10ハクで買おうっ!」
「いつもいい値段で買ってもらって悪いね~。ポーションはおまけにしておくよ」
そしてそれらを買う彼。ミシャロ商会と彼は本当にwinwinな関係柄である。
しかしファンタジーの世界で電子部品があるとは。高度科学文明でもあったのかな?
それから数日・・・。
「どうよこの新作の武器!」
シルル教会で新しく作った武器を子ども達に彼は披露していた。
「残像が光ったり光る粒子が出たりアクションに持ってこいよ!」
記号式を組み込んで可能とした圧巻のファンタジーある剣。しかも振り落とす度にブォンブォンと音がなる某SF映画に出てきそう剣であった。しかし子ども達はそんなことなんて知らず・・・。
「めっちゃかっこええ!!」
「この光は何だろう・・。魔力かな?」
メルダーもクロエは目を輝かせる。
「導石だけの火力武器だけじゃない!華も兼ね備えたロマンたるやっ!!」
そんでもって与吉の武器やら武装やらの話はどうなったかと言うと閑話休憩と言うべきか誠心誠意で製作中と言うべきか・・。いや、本当のところかなり行き詰って、他の事し出して、与吉と一緒にシルル教会に遊びに来たのだ。
だって与吉の脚の関節部分の武具のところの製作が難しくってさ。一本一本作るのが大変で・・。
「はっ。まったくどこかいいのかさっぱりなのよ」
それで女の子達・・。マルリは言うと武器のどこかいいのか分かっていない。
「ん~~・・」
ミヤちゃんは特にロマンたる外見には興味なく、ただ振りまくる。
だけどミヤちゃん・・・。それ大人用サイズなんだけどな~。
見事なまでの高速の素振りに人間とは根本が違うと素直に感心する。
「あのクラリオン君。教会にそんなに武器を持ってきてほしくないんですけど・・・」
そんな騒ぐ中でミルティアは物騒な物は持ってこないでほしいと彼に言うが。
「はい。ミルティア先生には日頃の感謝を込めて、これをどうぞ!」
「何ですかこれ・・」
「よく切れる万能包丁!導石を使用したこの包丁は腕の負担を軽減し、トマトもペラペッラに切れる優れもの!」
難点は力加減を間違えるとまな板ブッタになることは秘密だ。
彼もどんどんとミシャロ商会と変わらない近い何かの発揮しだしていた。
さて、そんな刃物談義をしている中、教会の部屋の扉からノックする音が聞こした。
「シスターミルティア~。いるかしら~?」
声からして女性で、ミルティアは聞き覚えがあるようでその人の名前を呼んだ。
「コヨテさん?」
その声に彼も反応すると扉には、ミヤちゃん同様の白い髪に尻尾、革の防具に腰後ろに二本の直刀。見るからに冒険者の格好。そしてその姿に彼もピンとくる。
もしや・・・。
「母・・」
「あらミヤ~。お母さんより良い武器持ってるわね~。それだったらお父さんボコれるかもしれないわよ?」
「んん~」
ミヤちゃんが先ほどまでの素振りよりも速度を上げて残像がすごい。
「やはりミヤ母か。見事な母親ゆずり」
「あら?新しい子と・・モンスター?」
コヨテは彼と頭に乗っている与吉を見た。
「いえ、この子は遊びに来るクラリオン君です。いちよ冒険者やってるらしいですよ」
「ミルティア先生。らしいじゃないです。やってます」
「でもコヨテさん。今回は早く戻られましたね」
無視かよ。
「ええ。前線でモンスターの大量発生があってね~。厄介そうだから一旦戻って来たのよ~。ミヤ置いて危険に巻き込まれる訳にはいかないから~」
そしてコヨテは彼を見て言った。
「もしかしてだけど~。最近噂で聞く子どもの冒険者って君のことかな?」
冒険者をやっていることあって彼の噂ぐらいは知っていたようである。
なお彼の噂は『上層のどこかに高質な魔石鉱脈があるのを知ってる子ども』『迷宮をかっ飛ぶ子ども』『落盤通り魔』の三つが有名になってる。パンバリアの生き血集めで他者の迷惑考えないで結構派手にやっていたこともあって悪評が多い(彼は悪評が多いことは知らない)。
「子どもで迷宮の話題なら間違いなく自分だな」
「あらやっぱり。どうもミヤの母のコヨテよ。冒険者同士よろしくね」
「よろしく。改めましてクラリオンと与吉だ」
チ。
与吉も脚を上げて挨拶する。
「クラリオン君ね。それでクラリオン君はミヤとお友達なのかな?」
「ん?ミヤちゃんと?」
挨拶を交わしながら自分の娘を引き合いに出すが、それを聞かれて彼はミヤちゃんとの今までの出来事を思い浮かべ・・・。
「あ。そうだ!色々と言いたいことがあったんだ!!お宅の子ども人の首噛でくる時あるんだがどう言った教育してやがるっ!?」
ミヤちゃんに襲われることに親に抗議しだす。
遊びやら勝負やらで彼が勝つ度に首後ろ噛んでくるようになってから、これだけはやめさせるように言っておきたいと思っていたのだ。
「あら?狩りごっこかしら?」
「そんなリアルごっこは一生したくないわっ!」
しかしミヤ母は動じない。
「あのそれでコヨテさん。ここに来たってことはミヤちゃんを引き取りに来たんですか?」
「そうね~。地上にいる間は家族でしばらく一緒にいようと思ってね~」
「お待ち。それよりお宅の娘の苦情についてだな・・」
3人でゴタゴタと話している姿にミヤちゃん以外のメルダー達はいつの間にか円陣を組んで小声で会議していた。
「なんかミヤを連れて行くとかそんなの言ってなかったか?」
「ミヤがいなくなると寂しくなるかも」
「私がミヤをちゃんと見てないと心配なのよ。あいつが来たせいでわんぱくに磨き掛かってるから」
自分達はどうすべきか何ができるかを話してる子ども達の姿にコヨテは目を見張り、子ども達の思いとくみ取ったのかミヤちゃんに聞いた。
「ミヤ~。お母さんとしばらく一緒と教会でみんなとしばらく一緒にいるのどっちがいい?」
「ん~・・・」
いきなり言われてミヤちゃんは唸る。家族と一緒にいたいし皆とも一緒にいたい。出来れば前もってそんな話をしてほしいが、世の中思うようにいかないのは当たり前。さらに親が冒険者なら突然選択を迫られることになるのはこの異世界では珍しくない。
悩んだ末ミヤちゃんは、ミルティア、メルダー、クロエ、マルリ、最後に彼を見る。そして・・・。
「ここにいる。クラに勝つまで戻らない」
「え~。お母さんちょっと悲しいな~」
親としては一緒と言ってほしかったのにガックリした様子で、お母さん悲しいとチラチラとミヤちゃんに訴えかける。
またメルダー達はホッと息を下ろす。
「母。強くないと生き残れない」
よしよしとミヤちゃんはミヤ母の頭を撫でる。
「もう~頑固なところはお父さんそっくりね~」
そしてさらにミヤちゃんからとんでもないお願いされる。
「母。あと武器欲しい」
子どもお願いにしては随分物騒なお願いであった。
「武器?あ。さっきミヤが持ってたアレ?」
「それは自分の自慢の武器です。ちょっと見せびらかしに貸してました」
自分お手製だから自慢げに言う彼だが。
「あれ、刺さった」
ミヤちゃんは彼に告げる。
「ん?刺さったとは?」
いつの間にかミヤちゃんが持ってた彼の武器が無くなっていた。そしてミヤちゃんは指を差す。
「天井」
上を見上げるとそこには天井に突き刺さった彼の武器があった。
「ちょっとおおおぉぉーーーーーー!!?」
「ああ。天井が・・・」
乱暴に扱われて武器の心配する彼と天井の破損具合を心配するミルティア。その後は与吉に天井伝ってもらい、剣に糸巻いてミヤちゃんに引っ張って抜いてもらった。
「ふふ。毎日楽しいそうね~ミヤが残りたいのも何となく分かったわ~」
そんな騒がしいことがあって夜・・・。
シルル教会の子どもの寝室でメルダー達は話し合っていた。
「けどミヤ~。どうしていきなり武器なんか欲しいって言ったのさ~」
「クラに勝つために」
「クラリオンに勝つね~」
あの後ミヤちゃんとミヤ母はこういう話になった。
「だけどミヤには武器は早いわね~」
「けどクラは持ってる」
ビシッと武器に不具合がないか確認している彼を差す。
「クラリオン君は冒険者だから~」
「じゃあ冒険者になる」
ん~と悩むミヤ母。子どもが何かねだるのは不自然じゃないが、ただねだってるわけじゃないのを母親だからこそ感じ取った。
「ミヤ。どうして武器なんて欲しいの?」
「クラを殴るため」
武器の確認していた彼も思わず「ん!?」と顔を向ける。
「まちがえた。勝つため」
「ちょい待ちミヤちゃん。聞くがこの自分にどうやって勝とうと思ってる?」
「殴る」
「それただのいじめ!」
そしてそれを聞いたミヤ母は全て納得した。
「なるほど~好きな子をいじめたくなるあれかしら~」
うんうん。分かる分かると頷き始める。
絶対違うっ!ただでさえミヤちゃんの身体能力は脅威なのに武器なんか使われたらもう本当に死ぬわっ!
第一回鬼ごっこから遊びなのか戦闘なのか激しさが増しつつあるのだ。武器なんか持たせれば本当に脅威なのである。
「じゃあ~変わりに男を堕とす技でも教えてあげるわね」
「おい待てミヤ母!」
ミヤちゃんに余計な知識が増えれば、それがどういった形で彼に向くのか分からないから、それもたまったもんじゃない。
「おとす・・技」
そしてミヤちゃんが思い浮かぶのは地面に顔を練り込む彼の姿。
「あの~子どもを預かる身としてはあまり変なの教えないでもらえると嬉しいんですけど・・・」
さすがに教育上良くないことは止めにミルティアも割って入る。
とにもかくにもミヤちゃんには武器を持つのは早すぎるのこと。でもミヤ母は「少し考えておくわ」と保留になったのだ。
そして話しは子ども達に戻り・・・。
「それよりあいつはスキルが多すぎるのよ」
「そうだよな~。ミヤに連勝する時もあったしな」
「土を持ち上げたり、壁出したりしたあれは、やっぱり冒険者してるんだなって思ったよね」
鬼ごっこ大会で戦場と化したあの事件以来、どんな遊びでも彼はスキルを使いはじめ一番を取るようになっている。
聞いてるうちにミヤちゃんは思う。クラは日々強くなってる。けど身体は弱い。力もない。足も遅い。あと勝手に自爆する。
だからこそ感じる彼のスキルの強さ。しかしミヤちゃんは彼ほどのスキルを持ち合わせていない。
「・・・・・」
ミヤちゃんは無言で自分の手を見る。今からでも自分が手に入れられる強さのものを。
次は・・・勝つ。
話しは変わってミヤ母と彼の帰り道・・・。
「にしてもびっくりしたわ。まさか有名人がいるなんて~。しかもうちの子とあんなキャッキャッウフフしているなんて~」
キャッキャウフフって。
「いやね。言ったけど噛み癖が酷いんですがあの子」
「嫉妬しているのよ~。自分より強いんだって」
「なんかそういうの聞いたことある。確か猫とか力を誇示するのにマウンティングとかするってテレビにあったような~・・」
「そのマやらテレビは知らないけど、私達の種族だと稀にやっちゃう子はいるわよ~。血を出すまで噛む子はいなかったけど」
あと好きな子に素直になれなくて噛んじゃう子もいるけど・・・。うちの子どっちかしら?
「血が出ると言うより流血させられているんですが」
「ミヤは負けず嫌いだからね~。お父さん似なのよ~」
おや?軽く流されたぞ?血を流されたことをお父さん似で流したぞ。
それからミヤちゃん話しに花が咲く。ミヤ母もミヤちゃんと会えない間の話しが聞けて嬉しそうであった。
そして次の日。シルル教会では・・・。
「ミヤ~ミヤ~。どこ~~?」
マルリはミヤちゃんを探していた。ミルティアの勉強の時間が終わったら突然走り出してどこかに行ってしまったのだ。なので皆で探している真っ最中なのである。
「ミヤ〜ミっいた・・って、ミヤっ!?」
礼拝堂にいたと思ったらミヤちゃんは捕まえたであろう獲物の首を噛んで引きずっていたのだ。そこにメルダー達も合流して・・・。
「ミヤいたのか!って・・またか」
「また襲われてる」
引きずられていたのは彼だった。まさに捕食された末路の様子であった。
「どうすればいつもこんな事が起きるのよ」
もはや見慣れた光景に皆冷静。
「ダメだよミヤ。またクラリオン君をこうしちゃ」
それでもクロエがミヤちゃんに諭すも離れない。
「お~いクラリオン。生きてるか~?」
とりあえず体を揺するメルダー。
「・・・昨日の天井突き刺さり事件から丈夫な武器を作って見せに来たら襲われた」
「生きてるようだな。いまミル姉呼ぶから」
メルダーは息があるのを確認するとミルティアを呼びに走って行く。
「ほらミヤ離すのよ。こんなの噛んでも毒なだけなのよっ!」
ミヤちゃんを引っ張ろうとするが。
「・・やめてくれ歯が食い込む。脈が近いんだ」
「というよりあんたも反撃か何かしなさいよっ!?」
もがけば致命傷と無抵抗で彼は徹することにしていた。
「お~いミル姉連れて来たぞ~」
「ミヤちゃん。離さないと駄目ですよ~。どうしていつも噛んじゃうの?」
「無意識」
「やめてその反射神経」
ミルティアも慣れた様子で介抱をしはじめる。すると今度は礼拝堂の扉がバンッと開き・・・。
「ミヤ~いるかしら~?」
昨日の今日とでミヤ母が現れた。
「母・・」
「コヨテさん?」
「すいません。早く外してもらえませんか?」
「あ。クラリオン君もいたのね。おはよう~」
「挨拶はいいからこの惨状を見て何か言うことありませんか?」
「ところでミヤ・・」
また無視かよ。
しかしそのあとミヤ母の口から予想外の言葉が口に出る。
「迷宮に行ってみないかしら?」
次回。ミヤちゃん迷宮で荒ぶる。
とりあえず書けたけどなんだろう・・。自分でも書いて出来が悪いなと思うんだよね。もしかしたら書き直すかもしれない。
2020.06.09 一部誤字修正。




