第1話 よし。新しい発見の旅へ。いざ入城!
「あの・・・ウズラ卵ーーーーーーー!!」
高層ビルもマンションも都会の喧騒が無い広々と蒼く澄みきった空と心地よく草の音の中で、そこで叫ぶ一人の人物がいた。
「場所考えてろよっ!!」
嫌がらせか?あの無駄に時間掛けた意趣返しか?
叫んでいた彼。そう彼はある神様の計らいによって今さっき異世界に転生したばかりなのである。大草原の真ん中で・・・。
これは少し前の話し。
『お前。この世界で試しに生きてみよ』
「ん?」
まず意味不明な空間で目を覚ましたのが始まりだった。
『お前は訳あって死んだ』
如何にも「儂、神」と名乗りそうな服装のお爺さんがいた。それでもって数秒その人を眺め、どうにか頭を回転させ、彼は一つ分かったことがある。
あ。これテンプレのあれだと。真っ先にそれが頭に浮かんだらしい。ともかくそうなれば彼の理解力は早かった。
「あ。前ぶりはいいので要約するとなんですか?」
なのでよくある諸々の質問等は一切を省く。
でもなんだろうな~。見覚えあるような無いような・・。
『相変わらずお前の飲み込み具合が恐ろしい程に早いのう~。既に過去の影響を受けているのか、必然と捉えた確証事象を強固たるものにしたのか・・・』
何故か初対面のはずのお爺さんに既視感を感じた。
な~んかあいつムカつくな~。と言うか・・あれ?記憶が・・・所々思い出せ・・ない?
思い出そうとしてみるも一部記憶喪失していることに気付く。おかげでお爺さんの話しに集中できない。しかし・・・。
「まあいいか」
記憶が無いことを気にせず、むしろ異世界に行けるなら、社会とか世間体の一切しがらみが無いんだし、もっと自由に前向きに行こうと意気込みすら思う。
『ん?どうしたんじゃ?』
「ん?前向きに生きようと。で、早く要件は?どうせ心の中とか読めたりするんだろ?だったらある程度理解しているのも分かるだろうに」
なので今のお爺さんに思う心情を包み隠さず、敬う気持ちなくため口で話す。
『口の悪さも変わらんか。まったく』
ただ口の利き方にお爺さんは気にしてない。むしろさっきから彼のことを知ってる口ぶり。それに彼は気にも止めず「はや話せ」と態度に出している。
『なら言うぞ。お前がこれから異世界に行く。確か・・魔法とかスキルとかある。まあ、人が生きれる環境にはなっているから大丈夫じゃろ』
異世界の説明がこれだけで終わった。
『あと、そうそう。願い事、よくある特典じゃな。管理者によって内容はそれぞれじゃが、ここでは特典は一つだけな。異議は認めんから、そこよろしくな?』
「・・本当に簡潔な内容どうも」
『あからさまに文句のある顔してるのう』
「まあ簡潔すぎるのもあれだけどさ。なんで特典が一つだけよ?」
『そういう設定らしいなのじゃよ』
世の中、特技一つあっても食っていけるほど甘くないのに。
「はあ~。で、とりあえずその願い事で一体何からどこまでできる?」
『まあ極端じゃなければ何でも出来ると思うぞ』
ふ~~ん、何でも、ね~・・。
そして『決めるのは儂じゃないがのう』彼には聞こえないぐらいで呟く。
「ん?何か言った?」
『年寄りの独り言じゃよ』
「ふ~ん・・。でさ、例えばチートな魔法とか容姿とか・・まあモテやすくなるとか、願い事を増やせとかもできるの?」
『出来るぞ。最後の以外はの』
「チッ。やっぱダメか」
『堂々と神相手に舌打ちできるのう~。我々のこと嫌いすぎない?』
言質さえ取れれば強引な解釈でイケると思ったんだがな。やっぱ正攻法でどうにかしないといけないのか・・・。
強引に特典の数を増やそうと思っていたが駄目であった。しかしこれらの流れをテンプレと思っているからには、彼がそう言った小説やら漫画、アニメを嗜んでいるのは明確。ならば例え一つの特典でも何が良い最善になるかは予測済み。さっきまでのやり取りはあくまで選択の幅を広げられるかどうかでしかない。
「分かった。ならそうだな・・・。こんな魔法はどう?」
心を読めと言わんばかりに心の中で彼の考えた魔法を提示する。
『魔法開発のう~・・・』
心の中を読み取ったお爺さんは苦そうな顔になる。
「ご名答。魔法を作り、使用できる魔法」
複数の特典が無理なら一つから無数の手段を作り出す。一つ突出した強さより、複数の能力がある魔法の方が優位性の幅を広げられると思ったからだ。
『・・なるほど。やはりそう行きつくか。が、そう簡単にほい分かった。っと言うわけないのは分かっているのじゃな?』
しかしその魔法の真意は、裏をかいてバクみたいなチート魔法複数生み出そうという魂胆が隠すこともなく堂々と顔と心に出している。それをお爺さんは止めないはずがない。
「HAHAHA。な~に、時間は無限だ。人間、諦めたらそこで終わりって言うしな・・・」
そこから240時間・・・。
最初は凄くとんとん拍子で話しが進んでいたのに特典の魔法についてだけは、不眠不休で無駄に語り合う。それこそ魂を疲弊させるまで頑張ったと本人談。しかも年単位でも争うつもりだったと言う。いくら神でも初期設定の段階で年単位も居座れば、折れるか妥協はすると思ったからだそうだ。
かくしてその便利すぎる魔法は、彼の意味のまんまでは駄目なので制約は受ける形で、最後は笑顔で話し合いを終えたと言う。
『今まで人の中では一番無駄に長く時間を費やせてもらったの~。いや~本当にお前はクソじゃな』
「別に神様だから時間は無限だろうに。それとも急ぐ用事でもあったのかねウズラ卵」
『「あっはははは・・・・」』
こんな感じで笑顔だったらしい。
だからだろうか。彼が転生した先が大草原な理由が。
最初に戻り・・・。
「あと装備も一切無いっ!!!」
持ち物チェックすればこれといった装備も道具も無く、服とズボン、あと下着だけはコットンブリーフ(白)。しかも身体が子どもで頭脳は大人?の状態。
「くそ。若返ったのに子どもの身体で大自然で生きるのは酷だぞ」
地平線まで広がる大自然に目を細める。しかし何も彼が持ち合わせないが無い訳じゃない。あの時間を掛けて話しあった魔法開発があるのだ。
「まさか大自然から生き残る為に使うとは・・。まあいい!優位性、万能性こそが我が魔法!この程度の大自然切り抜けられるわっ!!」
かくして異世界と言う新天地で人生新しく再スタートした彼である。
「しかし魔法と言っても・・どんな感じだ?」
魔法が使えるようになった。が、いきなり今まで身体に無かったものを使えと言われてるもの。どう魔法を使うのかイメージが思いのほか湧かない様子。しかしそこは補正というべきか胸奥から流動的に流れる何かを感じ取ってみせる。
「ん~~。この流れる感覚が・・魔力ってやつなのか、な?」
ふむ、今まで身体に経験無いものが駆け巡るのは中々に新鮮・・・。
これだけでも色々と考察しがいがある彼なのだが、その前に魔法開発で考慮すべきことがある。
「制約がな~~・・・」
ここで『魔法開発』がどういったものになったのか説明しよう。
まず『魔法開発』については、魔法を作り、使用できると言うもの。作れる数、使用できる上限とかの制限はない。ただし既に存在する魔法、効果内容が同じ魔法は一切作ることができない。という意外にもシンプルな中身。
これならバクみたいな魔法が作れるそうものだが、長い話し合いの末この程度で許容したウズラ卵に何か隠された真意があるんじゃないかと、疑念の余地が残っている。
「ともかくまずは水だな。生きる上でこれは必須」
ただ水の魔法を作るにしても元からある魔法は作れないので、異世界にはないであろう液体を想像すると・・・。
「ほいよっと『コォーラー』」
指先から黒い液体もといコーラが出てきた。記念すべき最初の魔法である。しかし浮かれるのは束の間。
「ん?んん?ちょっ!?あれ待って!!勢いがっ・・・!」
ゴォォォーーーーーーーー。
「やばっ!手からコーラの滝が!っこれどうやって調節するんだ!?」
いきなり今まで無かったものを制御するのは難しいようである。
「うわ・・飲みにくっ・・。飲むたびに顔べたつく。服にコーラの繁吹きがっ!。コップ!コップが欲しい!」
そして辺り一面をコーラまみれにした彼が次にとった行動は・・・。
「魔法で水が出るなら、食べ物が出る魔法があってもいいじゃない!」
コーラが出せるならできるっ!!と自信を持って食糧が出る魔法を作ろうとする。
が・・・。
「何故だっ!?」
眉間に皺を寄せる彼。言葉通りご覧のあり様である。
どういうことだっ!?え?なに?もう元からそんな魔法があった?
存在する魔法、効果内容が同じ魔法なんかあるはずもないような食べ物の魔法でも作ることが出来なかった作ることが出来なかった。
「あのウズラ卵めっ!やっぱ何か仕組んでいやがったなっっ!!」
彼の疑念が予想通りに当たった。
「はぁ・・。とりあえず動こう・・。じっとしていても意味ないしな」
食糧はどうにか狩ったり採取したりして、どこに向かうなんだが・・・。
この大自然の中をどこに向かって歩くかを考える。
「あの山に行くか。迷ったら高いところから見下ろせって言うし」
彼が見たのは山々が連なる大山脈。それが地平線の先まで連なっているというとんでもない大山脈である。因みに麓までは30km以上歩くのと標高が低く見積もっても7000mは超えている。
「まあ頂上目指すわけでもないし、見渡せる高さまで行けばいいか」
そして日は暮れて・・・。
「異世界生活第一日目~。まさかの野宿」
結局のところ麓まで到着もしなかった。そして食糧となりそうな物もなく、コーラで腹を満たすことしかできない。
麓辺りは行けると思ったんだけどな~。
子どもと大人の歩きや体力差とか分かってたつもりだが、こんなに違うとは思っていなかったようである。
「しかも人や村といったのは見当たらない・・・」
暗くなりつつ大地にはどこも火は灯るような明かりが一切確認できなかった。それに「これサバイバル生活の日々が続くんちゃう?」と彼の中に嫌な予感が通り過ぎる。
「しかし野宿か~・・。出るよな~。狼とか肉食系のやつらとかモンスターとか」
ただの大自然の野宿も怖いものあるが、ここは未知の世界の大自然。できる限り安全に野宿はしたいのでここでも頼りになるのは魔法開発だけである。
ということで彼は・・・。
「ふむ。『万物追及』」
突然地面が脈打ちだす。新しく魔法を一つ作りあげたのだ。
ふっ。元素操る魔法があっても陽子、中性子、電子まで細かく操作する魔法なんてあるまい。とのこと。これで雑作も無く、物質を操るチート魔法を手に入れた訳だが、内心食べ物を作る魔法が出来なかったことから、チート系は無理じゃない?とダメ元で出来たことに結構喜んでいたりもする。
それで大層なチート使って何をするのかと言えば。
「これで穴が掘れる」
地面に穴を掘るためにそこらの土の元素操るらしい。
「じゃあまず横になれるぐらいの大きさと深さを掘って・・・」
大雑把に穴を作り、そこらへんの草を抜いて穴に敷き詰めてこれで完成である。そして穴に入って横になって寝る。
「んでもって・・・」
最後に『万物追及』で穴を塞ぐように土で蓋をする。
これで簡単にモンスターに襲われることはないだろうと考えた安全な野宿方法であった。
「あとは空気穴をちょい空けて・・・」
うん。完!璧!
ちなみに穴の横には遊び心で木の十字架が刺さっていたりする。
「まあ寝る時間にしては早いが、今日は歩いたからな~。疲れ・・・てないんだよな~。マジか~。眠たくもないんだけど」
これが若さか・・・。
こうしてあまり寝付けないながらも異世界生活一日目が終わった。
そして朝。ゾンビのように土の中から這い上がる。
「あ~いい天気だな。しかし・・・」
腹空いたな。
そして異世界生活二日目の朝は空腹から始まる。
「さて・・目的は変わらず山の上を目指すとしても食糧確保だな~」
一狩り行こうぜ!と行きたいと思ってもどこに生物がいるのか、いたとしても動物の解体なんて彼は動画で見たことぐらいで、そこらの生き物はちゃんと食べられるかも分からない。
「・・サバイバルって簡単に出来るもんじゃないな」
あーだこーだ考えても仕方ないので、とにかく山脈目指して歩く。
そして・・・。
「第一食糧発見」
歩く途中で生き物らしいのを発見。
「あれはウサギか・・・?」
見た目はウサギ。だが異様に首と脚が長い。それが3匹見える。
キモい・・・。どう見ても地球の生き物じゃない。と言うか食べたくもない。
しかしやっと見つけた貴重なタンパク質。逃すのは少し迷う。
「仕方ない・・」
そう言って目をカッと開き・・・。
「『サーモアイ』開!眼!」
道中、便利そうなスキルをコツコツ作って用意していた一つ。サーモグラフィックの視界になるスキル。欠点は発動中は通常の視界は見えなくなる。
「1、2の・・」
おっ。草にも2匹隠れていたか。まあどうウサギを捕まるかだが・・・。
「・・・ん~」
指で距離を測るように確認をすると。
ガ・・ドシャアアアアアアアーーーーーー!!!
「っ!しゃーーー!獲ったどーーーー!!」
野宿した要領で地面に穴を空ける感覚で、ウサギがいる周辺丸ごと『万物追及』で大穴を空けて落としたのだ。ただ加減云々は苦手なようで、直径10m深さ30mはあるんじゃないかと思うほどの大穴を空けていた。
「わ~・・・」
彼も自分が思っていたより深い大穴にちょっと乾いた声が出る。
ともかく彼は土を操作しながらウサギを捕まえた。
「お肉ゲット・・」
捕まえた割にはあまり嬉しそうじゃない。外見のキモさがあるが、また更に凄い眼力飛ばしてくる。
「全力でお前を呪ってやるという圧しか感じない・・。と言うか本当に呪いとか飛ばしているんじゃないか・・?」
魔法がある世界ならばあり得なくもない。しかしこれといったことは起きてないから、大丈夫と思いたい。
「あとは解体か~・・・」
あれだよな~。血抜いて~、皮剥いで、内臓取って洗うんだよな~。水は『コォーラー』でどうにかなるとして・・。血抜きってどんくらい時間掛ければいいんだ?それとも血が垂れなくなるまでとか?
それでも曖昧で慣れないながらも『万物追及』で刃物ぽっい物を用意して、ウサギを解体していくしかない彼である。
「あと2匹はまだ血抜きしておいて・・・。うん、まあ初めはこんなもんだろ。」
解体作業を終わらせ、よく見る肉の形にはなった。しかしいくら食べれる形になったとは言え、ここから一つ忘れていたことがある。
「あとフライパンとか用意して、肉入れて焼くだ・・・・」
火が無い・・。
動物の解体と言う難題の前に火という存在を失念していた。忘れてならないのが開発魔法は、既に存在する魔法、効果内容が同じ魔法は一切作ることができない。『万物追及』は上手くいったが、制約の幅がどの程度あるか分からないから火の系統の魔法が一切できないのもあり得る状況なのだ。
そして案の定・・・。
「できねぇぇぇえええええーーーーーー!!」
小一時間の時間を費やしてもどんな間接的、副次効果で火ができるスキルを作ろうとしても一向に作れなかったのである。
「あのウズラ卵っっ!ホント余計なことしやがって・・っ!」
騒いでせいで虚しく腹が鳴る。
「っ・・。はあ、とにかくこの肉をどう食べるかだ」
火が生み出せないとなると、手段は一気に激減する。しかしそんな状況に一本の枯れ木が目に入る。
「・・・・・・」
サバイバル。枯れ木。そして火おこしと言えば・・・。
「付いたぁぁぁあああああーーーーー!!魔法なんか無くても火ぐらい出せるわっ!ホモサピエンスを舐めるなよっ!!」
誰もが思い浮かぶ原始的火おこし、錐揉み式発火法。
今さっき着火して、たき火に成功した。これには彼も力強いガッツポーズ。しかし。
「ロープとか使ってキコキコ回すやつとかも欲しいな」
皮膚が所々剥けたのは辛かったらしい。
それから2日後・・・。
「着いたぁぁぁぁぁぁああああああああーーーーーーー!」
あれから色々ありながらも日が暮れる前に当初の尾根までとはいかないがその近くまで登り上げた。
「ここまで色々と辛かったな~~トイレが・・」
道中を出来事を思い出す。食糧や水に関しては何とかなったものの、飲み食いすれば誰もが起こす生理現象。大自然にトイレットペーパーなんてものはなく、周りにあるのは葉っぱのみ。しかも葉っぱよってはお尻に深刻な被害を及ぼものもある。
あのザラザラで、幼い肛門は一回死んだ・・・。
その為、お肌に優しい葉っぱがあれば枝ごと捥ぎ取って、ここまで登っている。しかし今はそんなの思い出してる場合ではない。
「寒い・・・」
カサカサと捥ぎ取った枝の葉が風で鳴る中、冬のように寒い。当然と言えばそうだが山の標高は高ければ気圧が低くなり気温が下がる。しかも日は落ちかけ、彼の服は薄地であるから余計に寒い。しかもだ。
「一切明かりが見えないな」
彼が最初にいた場所からそのまた遠くの先まで、明かりといったのが一切確認できない。大自然溢れる森に草原が地平線までよく見渡せてる風景に心まで寒くさせる。
「明日頑張って山向こうに行こう。せめて人がいますように・・・」
人に出会えることを願う彼だった。
次の日。
「・・・寒い」
いつも通りと言わんばかりに穴掘って這い上がる朝の起床。しかし今回は寒いから早めに目が覚める。
「いや、ホント寒い!早く山降りないと風邪絶対引くっ・・・」
風に当たればまた寒い。少しでも身体の温度を上げようと尾根の先まで早足で向かおうとする彼だが、悲しいかなここは山の上。酸素が薄く数分でばてる。
そして息絶え絶えで尾根に到着すれば・・・。
「え?うそ。まじ?」
苦しい呼吸を忘れて山向こうの風景に驚いた。何故なら1㎞まではいかないものの平野が続いていたのだ。
「これ山じゃないの?」
が、そんな疑問よりもまずはこの先に人がいるかどうかである。こうしてまたまた少し歩いて行くと・・・。
「はーーっ。なんとまぁ、ファンタジーなことで・・・」
見下ろした先にあったのは念願の町があった。だがただの町ではない。ビル20階分に等しい外壁が町を囲み、その中心にはさらに高い城に城下町とその他にも色々と目立つ建物が見える。
「改めて異世界だと実感するな・・・。しかしこれ町?都市?」
とりあえずこれで人の生活はできる。ただ思えば一文無しなんだよな。
何一つ道具も無ければお金もない。この状態で町へ行っても大丈夫なのか不安がよぎる。
「はあ。嘆いても仕方ない。ぼちぼち行ってみますか・・・」
今度は下山して町に向かう。ただ降りるとどんどんと傾斜角度が急斜面になってどの場所も絶壁なので、『万物追及』で足場を生やしながら降りていく。
「よっ!とっ!はっ・・・!しかしどうして魔法世界なのに、こう体力使うことが多いんだろうかね~」
飛ぶ魔法欲しいな~~。と思いながらもこの道中に考えてるも作れること叶わず。歩くしかない彼であった。
下山が終わると水平線からでも見える町の城壁に今までの生活から彼を安心にさせる。しかし、ふと思った。
「ある意味で異世界=外国・・・」
言葉ってどうなっているのだろうと。
自分の語学力は1.5語学力(日本語と英語半分)、いや今は1.3かな?
「よくある脳内変換とか順応してるかとあり得るのか?」
よくあるご都合的解釈を思い浮かべるも。
・・・ないな。
あの爺さんがそこまで都合よくやってくれてるわけがないと彼には思えなかった。なお実際にお爺さんもそこまでしていない。
「何か対策しておいた方がいいな・・・」
頼りの綱は魔法開発。問題は魔法を作れた数より作れなかった不発の方が数多いこと。
「これ絶対作れないだろうな~。もう経験が語る・・・」
しかし物は試しにあれよこれとは考えてはみるも。
「・・この僅か数秒で四つ・・没か」
やはり無理であった。
あれだな・・発想を変えよう。自分がどうにかするんじゃなくて、世界自体がどうにかする。そんな壮大なスキルをだな・・・。
「こっちの世界の言葉や文字が全部日本語になる。うん、これだったらイケるんじゃない?」
結構強引な魔法を考えた彼。しかしそんな彼を観測する者が一人・・・。
『本当に次から次に・・。全くよく考える。来たばかりだから色々考えるのは仕方ないとはいえ・・全部日本語か』
その声はお爺さんとは別の声。
『これだと過去の事象にまで大きく変えるだろうな』
「名付けて『日本語化』」
『しかもネーミングセンス・・。え~っと、これは許していいんだっけ・・?ん~、マニュアルには振られてない・・・なら、いいか』
ザザ・・・。
一瞬だけ世界にノイズが走る。しかし誰も彼もそれには気付いていない。
「ッ・・!マジか!?できたっ!?え?かなり無茶な魔法だと思ったけど・・できるもんだな!」
とりあえず会話の心配は無くなったようだ。
それから・・・。
「門番は・・・二人か」
目の前には町の入り口たる巨大な門。できれば道中でちゃんと人と会話できるか試してみたかったが、誰一人会うことなく門までたどり着いてしまった。
ふ~む、しかしあれだな。文明が中世とするなら関所みたいな通行税を取られたりするのだろうか?
今現在の彼は一文無し。ここでも下手したら詰まない?と不安がよぎる。
「おい子ども。止まれ・・・この町に何の用だ?」
門の前で立っていた二人の内一人の老兵が彼に日本語でで声を掛けた。
あ。普通に日本語。すげぇな『日本語化』。
日本語で話せることに若干の安堵はするも問題はこの先。老兵の目線がすごく不審者を見る目で彼を見ている。しかし彼は臆することなく話す。
「そろそろ普通のベットで寝たいので入れてくださいな」
「子ども一人でか?」
そう言われると再度自分の状況確認。
子ども一人、手ぶらで金無し・・。
きっと孤児かホームレスにしか見えないのだろうと分かった。しかし意外なことに。
「まぁ・・いいだろう」
入る許しを貰えた。
あ。いいんだ。
「よし。新しい発見の旅へ。いざ入城!」
が。
「待て」
待たされた。
「何処かに所属しているなら証明できるものを。無ければ通行税3バレルだ」
「ツケでお願いします!大丈夫、そこはかとなく稼げると思うので」
「・・・・・」
無言である。完全に怪しまれも老兵は言う。
「このような場所で荷物も武器も持たず、金も無い子どもか・・・」
「あのホントは全てウズラ卵が悪くて、自分だってこんなことになるとは思ってなくって・・・」
「はぁ・・金が無くても入れる方法はある」
「あ。あるんだ」
え?じゃあ何さっきの沈黙は?
「手の甲を出せ」
「手の甲?」
言われるままに出すと門番は手の甲に何か書かれた紙を貼ってきた。すると紙が光って、光終わると紙を剥がす。
「何これ?」
手の甲には光る文字のような記号のような魔法陣みたいのが刻まれている。
そして擦ったりしても落ちることはなく、興味深そうに彼は見つめる。
「契約記号式だ。二日以内にここの門番の詰所に来て金を支払え。支払わないと・・・」
「支払わないと?」
「両腕が体から離れる」
「「・・・・・」」
それって腕がもげるということですか?
とんでもない呪いを掛けられたと思った彼である。
「支払いの延長は・・・」
「相手が同意すれば契約内容は変えられる」
「ではさっそく延・・・」
「二日以内だ」
「・・・・・・」
それから門番とのやり取りをしたが駄目であった。体全体を使ったダイナミック表現したのが癇に障ったのだろう。
「ったく、もう少し優しくしようという心はないのかね。まだ未来ある子どもだぞ」
そんなやり取りを思い出すもついに町の中。念願の文明に浸り、見たことない物があったりと興味深く辺りを見渡す。
「にしても遠くから見ても大きいと思っていたけど、近くから見てもこれまた随分と大きいな」
囲む城壁もかなりの高さだが町の建物も5階や6階の建物が多く、中には10階以上の大型の建物もあったりした。
「ファンタジーなんだけどなんだかな。建物の大きさに元の世界と親近感があって、ちょい子洒落た観光都市みたい・・・」
あとアニメみたいに他種族とか髪の色が緑やら紫に水色にピンクと鮮やか奴があまりいないな。金髪、若干赤みに栗色みたいな人もいたけど、髪染めてる程度の色だし・・・。
「それよりもまず金か」
二日以内で3バレル用意しろと言われたが・・・バレルってこの世界のお金の単位?3バレルってどのくらいよ?全然通貨価格分からん。
「どのみち今後お金は必要だからな~。どうやって稼ぐかだが・・。ギルドとかあったりするのだろうか」
異世界系には必ずと言っていいほど存在するバイト支援センター。実際にあるか分からないが、目の前にある焼き鳥みたいな小さい屋台をしてるおっちゃんがいたので聞いてみることにした。
「おっちゃん。おっちゃん」
「うん?なんだ坊主買うのか?」
「買えないし金がない!ついで借金もある」
「そんな堂々と言えることじゃねぇよ」
客ではないと分かると不敵された顔になる。
「お金入ったら買いに来るからさ~。ギルドとかそんなの近くにない?」
「何?冒険者ギルドか?」
お~やっぱあるのか。
「そうそう。今日来たばっかで場所が分からんのよ。ひと稼ぎしたら5本でも10本でも買うからさ~」
「坊主が冒険者?子どもでか?」
「イエ~ス」
今さっき決めたばっかだけど。
「本当に冒険者か?」
「当たり前よっ!見よこの万能性溢れる魔法をっ!」
足元の土からフライパン、包丁、まな板、ナイフ、ついでに土偶を作り上げ、土から色んな物ができると見せつける。
「おお。土で道具作れるのか。あんま戦闘に関係ない物ばっかだが」
「ふっ。何も戦うことだけが冒険者じゃない。こういったことにも気を配れる後方支援もまた大切よっ!どうだ見直したか。崇め奉っていいのだぞ」
さらにフライパンの上に土ダンゴを用意して、炒めるように転がす。
「実力はよく分からんが、まあそこらの子どもでもねぇな。どっかの来たばかりのクランの子かお前は?」
「クラン云々は知らんがこの町に来たばかりなのは確かだ」
そして土偶に土ダンゴをお供えし始める。
「お前は何しにこの町に来たんだ・・。まあいい。ギルドの場所だっけ?だったらこの道をまっすぐ向かって歩きな。右沿いにデカい建物にデカいギルドの旗が2本立っているから分かると思うぞ」
「ありがとうおっちゃん。稼いだらすぐ来る!」
さっそく彼は知ったギルドの方角に向かって歩いて行った。
「期待しないで待ってるよ」
おっちゃんは彼の背中を見送って思った。
冒険者ギルド。
「たしかにこれはでかいな。しかも国会議事堂にどこなく似ている・・・」
おっちゃんに言われた通り彼はギルドの建物に辿り着いた。国会議事堂よりは大きくないが、クエストの依頼や発行を行う依頼受付所、換金所、アイテム販売等など大きめな複合施設になっている。
「ただ一番怖いのはここでもお金って必要になるのかな・・」
入会料やら斡旋料金とか・・。
それでも入ってみないことには何も始まらない。しかし中に入ってみれば、思っていたより冒険者で溢れ、何かの受付カウンターには冒険者達がやり取りし、ある者はその順番を待ち、どこかで喚く者がいたりと騒がしい。
「は~。とりあえず何かあるか見て回るか」
トコトコとギルド内を散策をしてみる。そしたら。
「あら?珍しいわね子どもがいるなんて。ぼく。お名前は?」
ギルドの職員と思われるお姉さんから声を掛けられた。
「え?名前・・?」
ただその質問に焦る。当たり前すぎて今の今まで気づかなかった。
まさか自分の名前すら忘れていたとは・・・っっ!言われるまで気づかなかった。
自分の名前の記憶すら忘れていたことを。
「ッ。ク、クラリオンです」
とっさに彼はオンラインゲームで使っていたネームを言う。今後彼はクラリオンと名乗るようになる。
初投稿と言うこともあり、というか色々初めてなので投稿の仕方や誤字脱字が多彩に極めてる場合があります。指摘があったら直すかもしれません。
あとタイトルに指名犯とか空賊とか単語ありますが・・・序盤では全くそんな関係の話しは出てきません(明言)。中盤からタイトルの内容になるタイトル詐欺です。気をつけてください。




