8.5話 冒険者ギルドで
これは彼がフレア三姉妹であるフーをギルドに連行した時の話・・・。
ギルドマスターであるトクガワは、フーを連れて彼らが戻って来たのを知ると彼らが待ってる部屋へと向かって行ったのだが・・・。
「お。お久しぶりですトクガワさん。いや~予想以上に長引いてやっと今日帰って来ましたよ。あ。あとこれお土産です」
「あ、ああ。ありがとう。久しぶりに会えて嬉しいよ」
いつものようにお菓子とお茶を頬張りながら彼はいた。しかいいつもと違うのは彼の頭に乗ってる蜘蛛もとい与吉。
いちよトクガワは前々からフェリカの提示連絡で知っていたが、まさか本当にテイマーしてるとは実際に見ないと信じられなかった様子。しかも「チ」と前脚を上げて与吉はトクガワに挨拶をする。
そしてフェリカは、少し前に起きたアラクニードの惨状をどう説明したものか下を向く。しかもトクガワの表情を見る限り、アラクニードから連絡はされていない感じに自分から事態があったことを伝えないといけない状態に気が重たい。
「フェリカ君も苦労掛けたな。こんな長く対応させることになって」
「え、あ~。いえ、そんなこと。なくもないかも・・なんですけど、あの~・・」
言葉が最後になるにつれて声が小さくなって歯切れも悪くなるフェリカだが、それよりもトクガワは今回の原因であるフーに目線を切り替える。
「フー君も久しぶりだね。分かっていると思うがそろそろ健康診断と誠実診断を受けてくれないかな?」
「マスター・・お久しぶりです。だけど健康診断だけは絶対・・イヤッ!!」
こここでもすごい頑な態度で否定する。それに彼は項垂れてる最中のフェリカに聞いてみた。
「あのさ、なんであそこまで嫌がるの?薬とか注射が駄目だとか?」
薬とか注射が嫌いな大人はいないことないだろうが、正直アラクニードに籠って嫌がるのは大袈裟過ぎると思っていたのだ。ただ・・・。
「クスリって何よ?健康診断には診断用のポーションを使うのよ」
薬を・・知らない?
この薬と言う概念は無かった事実がこの地味な会話で知った。と言うのも薬の代用としてポーションや治癒スキルがあるから、この異世界に薬が生まれなかった。
「少し驚くことがあったけど、つまり診断用のポーションが嫌でこんな事態を引き起こしていたと」
「はあ。はっきり言っちゃえばそうよ。だけどあれは飲むと命に関わる病気を感知してくれる優れものよ」
「ほーそりゃ凄い」
「だけど副作用が最低でも20日以上は頭痛、吐き気、高熱、関節痛、食欲不調、お腹も下すし、人によってもっと長くなる人もいるわ」
苦いとか不味いとかの問題じゃないらしい。それでもこのポーションが原因で死人は出たことはない。
またフーの場合は60日苦しんだ。
「まあギルドでも健康診断以前に不健康の原因って色々言われるけど、安全で確かめられるのはこの薬ぐらいなのよね」
「安全とは一体・・・」
「それにポーションがミシャロ商会製だから余計に不安があるわよ」
しかもそのポーションは何かの実験で偶然できた産物であり、元はポーションでもなんでもない裏話ものである。
それでフーはと言うと・・・。
「あら~フー、久しぶりね。マスターを困らせた駄目よ~?」
「ゔげっ。フレア姉・・」
「ああ。フレア君来てくれたんだね」
いつの間にか長女が現れていた。どうやらトクガワが呼んでいたようである。
「フェリカもクラリオン君もお帰り~」
「ただいま~」
「散々だったわよ。それでどうして来たのフレア姉?」
「それは勿論、妹が迷惑掛けたからね~。長女として責任取らないといけないし、今度は逃げられないようにと思って、ちょっと本気出そうかな~って」
そう言うフレアは普段は何も装備してないのに腰に剣なのか刀なのかとにかくデタラメな刀身がむき出しで付いていた。それにフェリカとフーは。
「うわ。フレア姉、ずいぶん本気で来たわね」
「流石に私もそれから逃げれる自信ないです、はい・・」
若干引き気味。
「ふふ、でしょう~?」
やっぱりあの武器、普通の武器ではなさそうだな。う~ん、自分もそんな武器が作れるようになるのかな~。
彼は彼でフレアに武器に興味深々である。
「じゃあフー。ポーションの時間よ~」
そして早速執行と言わんばかりにフレアの手に診断用のポーションと思われる容器が。
そこからじりじりと逃げるフーはここでも抵抗を試みるも最後は部屋の隅に追いやられ、無理矢理口に流し込まれた。
「ゔっ・・ン゛!?待っ・・ングッ!ンンーーーっっ!?!?」
その様子を彼らは。
「これは惨い」
「自業自得。因果応報の末路ね」
「嫌なのは分かるが飲んでもらうしかない」
フーの様子を見守ることぐらいしかできない。
そしてしっかり飲ませられ、ぐったりした姿に彼は・・・。
「よし。面白いものは見たし、そろそろ帰るか」
と帰る支度を始める。彼はこれから向かわなければならない場所があるのだ。
その彼の帰り際にトクガワは改めてお礼を言った。
「クラリオン君。今回はありがとう。フーは有能なんだがこうなると中々大変でね」
「まあ最初は厄介だな~と思っていたけど自分に掛かればこんなもんだな」
「はは。フー君に関しては今回限りだけにしてもらうようにしておくよ」
「そうだね。次はこういったこと無しだからな。アラクニードで被害も最小に抑えるのも大変だし」
「ああ、そうならないよう・・被害?」
「与吉~行くぞ。本当に次からこんなことは無いように。んじゃ、また」
彼がいなくなった部屋ではフレア、フー、フェリカ、トクガワのみ。
フーにはまだ書類とか諸々やることがあるので、ポーションの副作用が出る前にフレアは無理矢理叩き起こして書かせる準備をさせる。
「フー、起きてね~。まだやることがあるのよ~」
「フレア姉・・。もう身体がキツイ・・・」
「フェリカ君。ちょっと聞きたいんだが、彼最後にアラクニードに被害と言っていたが何か知ってるかい?」
「あ。あの、その~・・・数時間もしてないんですが実は・・」
そしてトクガワはフェリカから今日アラクニードで起こった惨状を知ったのだ。
彼ことクラリオン、冒険者ギルドから要注意人物指定に入る。
タイトル詐欺から脱却するには、10話分書かないと無理そう。あ~、中編の道のりが遠い・・・。




