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自由に気ままに異世界大陸指名犯 ー空賊ライフー  作者: クラ108
エピソード0 まだ最初の時
14/82

第6話 あらカワイイ。これ絶対癒し系だよ

 前回の話し。ついに異世界でもネトゲ生活開幕のなか、いちよシルル教会で魔法の勉強はしておく彼ことクラリオン。その中で魔弾もとい魔球だけはそれなりに操れるようになったわけで・・・。



 ヒュン。ヒュン・・。


「うん。中々良いね・・・魔弾」


 前回の勉強で魔球を出して遊んでいたら、本格的に戦闘で使えそうというわけで最近迷宮で魔弾と称して試し撃ちをしていた。


「『万物追及』で実弾作るよりこっちの方が速いし、応用も多い・・。採用っ!!」


 次からの戦闘手段は決まったな。


「しかしそうなるとスペル・・じゃなくてスキルカードたるものでも用意した方がいいかな?」


 魔弾「幻想彼方の弾幕」なんていいかもな。と想像していたりした。

 弾速も実弾と変わらない速度、機関銃のような連射、何よりも凄いのが貫通力。というのも魔弾のイメージがAP弾、HE弾。ちょい考える余裕があってAPCR弾。言うまでもないがネトゲの戦車ゲームの影響である。それを機関銃にように撃つのだからどれだけ凄いのが分かるだろう。


「まあそれはおいおい考えるとして、良い成果も出たし魔石集めて帰りますか」


 しかし迷宮での帰り道の途中で冒険者パーティーが見えた。



「しかしどこのどいつかね~上層の群れを刺激した奴は」

「どうせ初心者パーティーの連中だろうさ。おかげで横道通っての遠回りだ」

「新しい防具付けたばっかりで死にたくはないからな」

「それメイツ金属使った鎧だろ?結構いい値段で買ったよなお前は」

「おうよ。前々から欲しいと思っていたからな」


 ガハハと笑いながら進む冒険者パーティーを無言で見つめて呟いた。



「そうだよな。普通はあんな風に冒険者やって迷宮に挑むもの・・。ネトゲ生活に戻るのもやぶさかではないが・・・」


 う~んと悩むと。


「よし!実力は着いた!さらなる迷宮に奥地を目指し、真面目に冒険者をすべきだなっ!」


 特にやることが無いので早速行動に移す。



 それで・・・。



「で、うちに来たと?」

「そう!迷宮の奥を目指すのはいいが今まで自分は私服で迷宮に行っていた」

「それはそれで凄いな」


 彼が今いるのはミシャロ商会の倉庫。そこにいたアレンに事の経緯を話していた。


「そこで冒険者達が装備の話しで気づいたんだ。今の自分はありきたりなNPCな格好だとっ!」

「服装よりパーティー組む方が先じゃないか?」


 御尤もな意見である。


「アレンよ。全裸が一緒に迷宮に行こうって誘ってきたら、お前はパーティーを組むか?」

「流石に全裸はないだろ」

「そう。組むはずがないっ」


 ガシッっと力強いポーズをする彼。それに「いや、人の話しを最後まで聞けよ」とアレンが言う前に決めつけて話す。


「ネトゲでもレアとかSとかSRとか課金装備とか、効果や能力のパラメーターも大事だが見た目だって重視する。そういった装備に実力や取り組み度を見て人はフレンド登録するのだよ」


 何か力強い力説をしているが当のアレンは全く分かっていない。それどころか大丈夫かという目をしている。無理もない。


「あぁ~。つまり?」

「ファッションは大事!」

「・・そのファ何とかは知らねえけど装備を整えるのは基本中の基本だろ」

「うむ。だから珍しい物しか置いてないミシャロ商会で、防具を見繕いに来たんだよ。特に見た目重視で」

「まぁ別に倉庫にあるもの持って行ってくれるんだったら、何でもいいけどよ」

「わーい。だから大好きミシャロ商会~」  


 とか言いつつ既に漁っている。

 

「けど防具なんて倉庫には無いぞ。在庫管理任さられてるから何があるか俺分かるし」

「だから見た目重視だから、性能は気にしてない」

「そのファなんとかってやつか」

「そうそう・・・」


 会った時から不思議だと思っていたけどあいつは一体何をしたいんだろうな。ミシャロに来る連中はろくでもない奴らが多いからあいつもそうなんだろうけど。


「それでまだ子どもなんだから、将来はどんな化け物になるのか・・・」


 アレンの読みは当たっている。将来間違いなくとんでもない大物になるのだから。

 全くアレン君は・・自分をそんな目で見ていたなんて・・大した観察眼の持ち主じゃないか。


 それで・・・。


「あんまいいの無かった・・・」

「だろうな」

「でも参考にはなった。SFものがっ!!」


 アレンはうちの異世界はファンタジーものだったような気がするけど、どこにSF要素が入っていたのかな~っとアレン自身なぜそんな意味の分からないことを思ったのか不思議であったとさ。



「よしっ。次だ。無ければ作る!私にはそれができるI can do it!」


 そして今度はバーバリエ宿屋に戻り、以前にミシャロ商会からタダで譲り貰った商品を素材にした物を『万物追及』で武器に作り換えた。


「うん。中々の出来だ・・・」


 武器は作ることはできた。戦闘で使えるかは別として。

 よくファンタジーにありそうな武器の形状を作れたのはいいが耐久性が気になるところ。


「あと能力とか効果とか付けてみたいよな」


 しかし剣が出来たとしてもただの剣。属性とか能力とかそんなのを付与できればなと思って、商品を資材にした際に出た何か効果がありそうな石を埋め込んでみたものの何も起こらなかった。なので・・・。

 


「それで今度は私のところに来たと?」

「頼れる大人とお菓子出るのがトクガワさんのところしかなかったので」


 今度彼が現れたのは冒険者ギルド。応接室で武器について話しをしながらお茶とお菓子を頂く。


「大事な話しがしたいと呼ばれて来たが・・・。はぁ。そんな理由で呼ばれても困るんだが」



 まず彼がギルドに来て受付で「クラリオン君が大事な話しがあるから遊びに来たよ。ってトクガワさんにお願いします。あとお菓子も欲しいです」という連絡が各所を周ってギルド長であるトクガワの耳に入ったのだ。無論普通であればそんなふざけた内容は無視されるのだが彼である以上無視ができない。なので仕事真っ最中の中これなのであるのだからトクガワの苦労が忍ばれる。

 だって頼れる人が少ないんだもん。


「はあ・・。自分に合う武器が欲しいならパレス工房という所があるから、そこに行ってみるのがいいんじゃないか」

「パレス工房?」


 

 そして。



「ここか」


 トクガワさんお勧めのところ・・・。

 オヴェスト・トレンボは迷宮の町。魔石やモンスターの部位を調達するためには道具の存在も欠かせない。なので道具を大量生産できるところは工房と呼ばれる。特にこの町では比較的大きな部類に入るパレス工房がある。トクガワが言うには武器や防具を製作を得意としているようなのだ。


「中は・・・」


 パレス工房の入り口の中をひょっこり覗いてみると、彼が想像する工房と言えば鉄を打つ姿なのだが違っていた。


「殆ど魔法で製作するのか・・・」


 彼がいた世界とは全く違う製作現場。見た感じは何人かで『万物追及』みたいに似たように扱っていた。スキルの性質的に近いものがあるのだろう。自分と似た光景に親近感を覚えるのだが突っ立ている訳にもいかないので、そろそろ彼は近くにいた人に声を掛けた。


「すいませ~ん」

「ん?何か用かい?」

「武器のオーダーお願いしたいんですけど。1()0()()()()()


 町では子どもは物珍しい存在。大人が行くようなところで買い物すればよく「坊やが来るようなところじゃないよ」と追い出されること多々ある。だからこそ買い物する時は大きめなお金をチラつかせる。カモであれ何であれ話しは聞いてくれるから助かっている。


「しょ、少々お待ちをっ!」

「みんなやっぱり現金だよね~」


 それから・・・。



「それで君が10ハク持って現れた子かい?」


 先ほど走ってきた人に部屋を案内されると、そこには書類を書きながら話す男性がいた。


「はい。武器の製作をお願いしたく・・・」


 見た目若いな。しかも若白髪というか白い。身体つきも職人って感じもないし・・・。


「なるほど。君が噂の子どもか」

「ん?自分そこまで有名人だっけ?」

「ああ。有名だよクラリオン君は。ギルドで荒稼ぎする子どもが出たりとかそれなりの対応してもらったとかね」


 あら?ギルドとの関係バレてる?しかも名バレ・・。


「オウカほど稼ぎ、その莫大な資金の損失にギルドが君と接触したなら大抵は想像はできるさ」

「あ~確かに妥当な考えか~・・」


 まあ分かるところは分かるよな~。

 ある程度は知られていて間違いないと彼は考えた。


「まあ・・否定はしないけど、そんなやましい関係はないよ?」

「まさか。ギルドが潰れたとなれば被害はこっちまで及ぶからね。別に脅しに使う人はいないよ」


 その話しはここまでとそろそろ本題に入る。



「それで武器の製作・・だったかな?」

「そうそう。なんかいい能力がありそうな武器が欲しいな~っと」

「ふ~~む・・・」


 何か見定めるかのように彼を端から端まで見つめる。


「もっと他の理由があるんじゃないかな?」

「え?他の理由?え~、普通に武器が欲しいだけだけど。ん~~・・強いて言えば武器に能力付けたい?」


 彼は袋からいくつも入った小さなブロックの金属を見せた。


「銅、鉄、銀・・・。珍しい。それはチタナイトか」

「まあブロックを・・こんな感じに」


 全てのブロック浮遊させながら全て混ざると小さなナイフを作り変えて、さらに何か効果がありそうな石もはめてみる。


「それで何かナイフに能力付属的みたいなものでも付けばと思ったんだんだけど、何も起きなく、こうして素直に武器を作ってもらおうと訪ねて来たわけです、はい」


 そしてナイフを元のブロックの金属に分け戻して袋にしまう。この一連の光景に男性は意外そうな顔をした。


「うん、少し予想外だったけどそれは素直に凄い。4種の金属を操れもして、見事な分離。鍛冶師としては取り分け優秀の部類だ。しかしなるほど。それでうちに来たわけか」

「ダメですかね~?」

「ん~~~」


 確かに噂になるだけの子だ。しかも思わぬ発見をした・・。ん~、お金にものを言わせるだけじゃあ売るつもりはないのだが。

 男性は色々と考えると・・・。


「よし。少し気が変わった」

「ん?何が?」

「君には武器を売らないことにした」


 すごくいい笑顔で言い切った。

 これ喧嘩を売られたと見ていいのかな?


「ああ。間違いないでほしい。つまり自分で作ってみないかってことだよ」

「・・・どゆこと?」


 それで・・・。



「まあ。そうだね。まず君の実力を見るからに武器をこっちで作ったとしてもすぐに物足りなくなると思うんだよ」

「ん~・・。そうなん?」

「よく考えたまえ。君は素で鍛冶師としての実力がある。おおよそ普通に武器を作っただけでは、何か物足りなくなって自分でいじりたくなるはずだ。実力はあるんだからね」

「あ~。あるかも・・」


 実際に彼は武器に能力付属的ができないからこのパレス工房に頼りに来たわけで、能力付属的の仕方が分かれば間違いなく試したくなるはずだ。


「だから武器を弄ってしまうんなら、自分で好きなように作ってもらおうと言うことだよ。もちろん鍛冶師のイロハはちゃんと教えよう。君からすればそう時間は掛からないはずだ。悪くない話だと思わないかい?」

「ふむ・・・・」

「それにもし気が変われば鍛冶師として雇いたいからね」

「そんな魂胆もあるのね・・・」


 しかし悪くない話しに彼も乗る気になる。


「お金は?」

「ああ。それはいらないからいいよ」

「ん?」

「ただ()()があってだね・・・」


 なんだろう。一気にきな臭くなってきたぞこの人・・。

 

「そんなに難しくない話だ。武器に能力を付けたい、だったかな?それに必要な媒体の迷宮の竜『バンパリア』の血を瓶いっぱい入れて来てほしいんだ」


 机の引き出しからガソコソすると青い装飾掛かった小瓶を出してきた。


「おっとそう言えば自己紹介をしてなかったね。私のことは『美男子のお兄さん』と呼んでくれると嬉しい」


 笑ってこそいるが怪しい笑顔にしか見えない。

 信用していいんだろうか・・・。



 で・・・



「それでまた私に来たと?」


 困った時にはトクガワさん。


「まだ若輩者の身としてどうかご教授願えないかと」


 とりあえず自称美男子のお兄さんから小瓶を受け取り「いつでも構わない」と言われたので、アドバイスを聞きにギルドに戻ってきたのだ。


「それで一々呼び出されるのわね・・。クエスト所に依頼受付あるからそこでどうにかしてもらえないかね?」


 で、また応接室で再度お茶とお菓子を頂き、さきほどあった出来事を話しをした。

 そもそも自分は迷宮上層しか行かないなら、さらに下の階層のモンスターなんて知らないんだよね。バンパリアってなによ?


「お茶とお菓子が出るからここがいい」

「はぁ・・・。今回はこっちでやっておくから次からは依頼所で通してくれるようにお願いするよ」

「善処しま~す」


 決して分かったとは言わない彼に次もこんなことあるんだろうなとトクガワは小さくため息をついた。

 


 パレス工房・・・。



「オーガスいるかい?」

「もちろん。お前がふざけたこと言わないか見張っていたからな」

「それはご苦労。紅茶でも出そうか?」

「一人で飲んでろ」


 つれないな~とお兄さんは笑う。


「オーガス、彼がしたこと見たかい?」

「まあな」

「しかし私は23種操れる。自信を持って天才と言っていい」

「自分でそれを言うか」

「しかしどうもあの子ども、クラリオンは得体が知れないところがある・・」

「それであんな()()を押し付けたのか?」

「秤に掛けたのさ。どれほどの技量か。仲良くなって損か得かをね」



 後日。



 トクガワが彼の迷宮探索である人を紹介してくれると言うことで、彼は今日ギルドの応接室で待ち合わせをしていた。


「ここ自分専用の応接室になってきてるな」


 少し私物置いていってもいいんじゃないかと思いつつあったりする。

 例えばなんの防犯もしてないのに盗まれる気配すらもない宿屋の馬車置き場に置かれた積荷の商品達とか。


「確か置物にも使えそうなのあったよな・・・ロデオボーイみたいなあれとか」


 そんなことを考えてると部屋の扉が開く。


「そんな変な物ギルドに置かないでくれる?警備隊からみれば不審物以外何物でもないんだけど」


 ガチャリと開けられた扉には、未だこの異世界でお目にかかったことがないピンク掛かった赤色の髪をした少女が現れた。しかもどことなく見覚えある顔立ちでもあった。


「どちら様で?」

「私はギルド警備隊のフェリカ・アイリスよ。フレアの妹って言えば分かりやすいかしら?」

「あ~フレアさんの妹。あ~なんか言われれば似てる気がする。しかし妹がいたとは驚き」


 あの時力強く握手されたのを思い出す。

 フレアさんの髪はオレンジ掛かった黄色ぽかったけど、妹はそういう色か。それにショートポニテ。


「何?髪色が珍しい?」


 やはり髪の色はこの異世界でも珍しいのか、何か見透かしたように彼を見た。


「珍しい。黒とか金髪、あ。あと緑は見たけど・・。ふむ。アニメでよくある色合いだけど、実際に先天的に地毛がその色なら、人体の神秘か魔法の影響たるものか」


 とブツブツと言い始める彼。無論、髪の色に軽蔑も侮蔑もない。ただ単に興味からくる考察する。しかしフェリカはそれに気づくと今度は異様がる。


「姉からは聞いていたけど本当に変な奴ね」

「変とは失礼な」

「そうよ。姉もすごいのか馬鹿なのか判断に迷うって言うし、私の髪も異様とは見ないし・・・変!!」


 ビシっと指を立てるが、伸ばしてきた腕を彼は掴む。


「あれ?でも体毛は薄み掛かった金色だ。あら不思議」


 髪の色素だけ違うのか?それか部分的に色が違う・・?


「なっ!?・・・ッ!・・・!!?」


 腕を振り払いすぐさま距離を取ると大声で叫ぶ。


「へっ!へっ・・!変態だわこいつっ!!腕触ったと思ったら!腕の毛を見るとか!?子どもで変態の所業だわっ!!?」


 肌が見えている部分を隠そうとどんどん縮こまっていく。


「ん~、毛一つでもこの世界は未だ未知に溢れているな~」


 そこに。


「話しは進んでいるかね?」


 今度はトクガワが現れた。それでまず目にしたのは、うずくまるフェリカと手を顎につけて見つめている彼の姿があった。


「これはどうなっているのかな?」

「さぁ?これと言って心当たりがない。」


 少し落ち着いて。


「知っていると思うが彼女はフェリカ・アイリス。うちの警備隊をしている。迷宮にも詳しいから一緒に行ってもらえばクラリオン君の助けになるはずだ」

「私こいつ嫌なんだけど」

「まあ仲良くしてくれると嬉しいんだが・・・」


 そして話しは続き。


「それで私達にも少しお願いがあるんだ。手伝うのだからこっちも手伝ってほしいという話しだ」

「え。初耳。しかも何それクエストクリアするのに別のクエストクリアをしないといけないクソ設定。ただ武器作りたいだけなのに・・」


 あきらさまに嫌な顔をする。

 

「包み隠さないね君は。はは・・・」


 苦笑いするもトクガワはどういったことなのか説明してくれた。


「まずクラリオン君が探すバンパリアは中層にいるんだ。その中層には『アラクニード』があってね。バンパリアを倒すついでにアラクニードから、うちのギルドの子を連れてきてほしいんだ」

「どういうことそれ?」


 色々とわけがわからないよ。


「それは妹のフーを連れて来ることよ~」


 あれこの声は・・・。


「あ。フレアさん」

「お姉ちゃん!?」

 

いつの間にかフレアがいた。


「はぁ~いクラ君お久しぶりね~」

「お久しぶりです」

「フレア君仕事は終わったのかい?」

「ええ、問題事は終わらせたわ。それでフェリカとクラ君がフーを連れ戻すって聞いたから来ちゃった」


 てへっと言うフレア。

 あれ?というとフレアさんは3姉妹?姉妹揃ってギルド職員を勤めているのか。


「それでね~クラ君。うちのフーが今年度の健康診断と誠実診断受けてないから、そろそろ戻って来てほしいのよ~」


 健康診断があるんだ・・・。

 どこか現代社会の面影を感じる彼。


「フーは健康診断で飲む薬が嫌いだから立て篭っているだろうけど~」

「流石に半年以上も帰ってこないっていうのも家族として恥ずかしいから引っ張り出すのよ」

「だからついでに中層行くなら連れて来てほしいなと言う訳なのよ~。お願~い」


 なるほど。分かったけど・・・。


「まずアラクニードってなに?」


 まずはそこからだった。



「下層攻略ための中継地点だよ。クラリオン君はまだ行ったことがなかったのか」


 トクガワは苦笑して彼に教えた。


「そんなところがあったんだ」

「冒険者なら普通知ってると思うんだけど・・。っていうかまだ行ったことないの?今まで迷宮に何しに行ってのよ?」


 フェリカが驚くのも無理もない。オヴェスト・トレンボの迷宮は中層から下が本番で、魔石集めや発掘、使えるモンスターの部位などは全てそこからである。だからそこを行かずしてどこに行ってたのか呆れるのも無理はない。


「で、どうだろうか?我々もクエストとして冒険者に発行するのも情けない話しになるし、何より手強い。中々こっちに戻ってこないんだ」

「解雇通知でも送れば?」


 堅実な攻めとして解雇を提案する。


「それは最終手段だから、あまりしたくはないね」

「十分最終段階だと思うんだけど」


 まあしかし、今後迷宮の奥には行く予定があるかもしれないし、アラクニードという場所も気になるよな~。行って損はないと思うけど、人を連れ戻しにね~。う~ん・・・。


「よし分かった。アラクニードからそいつを拉致ってくればいいんだな?」

「誤解しかない言葉選びはやめてもらえるかな」

「似たようなものなのに」

「とにかく普通に連れてくればいい。よろしく頼むよ」



 話しが終わると改めてフェリカとついでにフレアと一緒にまず何からすればいいのかを話した。


「中層すら行ったことがないのにバンパリアの相手にしたいなんて・・。これじゃあこれじゃあ子守りもいいところよ」

「ふっ。何を言うか。ここ最近新しい攻撃手段として魔弾を覚えたんだ。十分に強いぞ」

「はっ。どうだか・・」

「2人とも~喧嘩はしないでね~」

「いやいや~。子ども相手に本気で喧嘩腰になる小さい大人なんているわけないじゃないですか~。でしょ?フェリカさん」


 フェリカの拳にそっと力が入る。

 子どもの身で使える煽りは使いますともさ。はは。悔しがる顔がよく映る。


「はいはいクラ君煽らない~。それでねクラ君が倒そうとしているバンパリアなんだけどね・・・」


 バンパリア通称不落要塞。迷宮中層にいるモンスターで体は青く光る分厚い結晶で覆われている。結晶を砕いても直ぐに再生。基本温厚だが怒ると凶暴。体長尻尾まで12m体高8mと中柄である。


「なんて言われているのよ~。しかも5~8頭で群れてるから全部相手にしないといけないの~。結構大変よ?」

「それと中層までは片道5日か6日。帰りの食糧はアラクニードで調達するとして、野宿の準備だって必要になってくるわ」

「ああ。だからみんな結構な荷物背負っているのね」


 迷宮で見かける冒険者はどれも大きな荷物背負っていたな~と思い出す。

 というか片道で6日。往復12日もするのかよ。うわ・・遠出だ。


「言っておくけどそれが普通だからね」


 そんな感じで大体情報は集まった。じゃあ早速迷宮にと思いたいところだがそれは明日。まず今日はフェリカと共に迷宮に潜る道具やら準備する時間に充てることになっている。


「あんた中層まで潜ったことがないんだから、準備とか知らないでしょ?だから面倒見るのよ。本当に足手纏いになったら嫌だからね」


 面倒とか言いつつもちゃんと面倒を見るのはフェリカのいい所かもしれない。


「ほら行くわよ。明日には行くんだから」

「明日?ちょっと今日中に準備するの無理くさいんだけど?」

「なに言っているのよっ。夜は長いのよ。それぐらいの時間があればちょいちょいなんだから」

「ちょいちょいですか・・・」


 次の日。


「遅い!」

「お前達が早すぎるんだよ」


 時間だと朝5時。その時間に迷宮前集合と掛けられ、朝早くから彼は昨日用意した道具をリュックに背負っていた。

 全くこれだから文明レベルが中世だと日が出たら朝起きる習慣って面倒くさいよな~。


「というかなんで普通の服着てんのよ!?防具とかはどうしたのよ!?」

「んなの着ないし、まだ用意が整ってない」

「あんたホントバカじゃないのっ!?」

「はいはい。朝から元気ね~。2人とも~」


 そんなフェリカはギルドの警備隊だからか防具は軽装。武器は普通そうな剣1本のみと至ってシンプルな装備だ。


「こいつのせいよ!」

「いや、自分悪くないし」


 こんな調子で彼らは迷宮に向かうんだから大丈夫であろうか。


「それとあんた。どうしてそんなに荷物が多いのよ・・」


 いちよ荷物分担として昨日、共有で使う道具はフェリカが持つということになっている。「子どもに重たい物は持たせるわけにはいかないじゃない」のこと。子どもの彼に負担が無いようにの配慮していた。


「ふっ。女性はたかが一泊二泊で馬鹿みたく大量の荷物を持っていくように子どもにも大量に持っていくものがあるのだよ。おもちゃとかお菓子とかなっ!」


 などとふざけてカッコよく言う。別に私用で何か持って行くのはフェリカも止めはしない。が、それ以上に目を引くものを彼が持って来ていたからだ。


「だからって!なんでそんな無駄に大きい鉄板みたいの持って来るのよっ!?」


 そう。彼のリュックには彼の背丈以上の長さとそれなりに幅がある鉄板みたなのを横にして取り付けられていたのだ。というより明らかに彼より重い。

 それに彼はまたふざけたように話す。


「ふっ。確かにこれは鉄板であるのは違いない。しかしだっ!なんとこれにはフックが付いていて物が引っかけられる便利機能がある鉄板なんだよっ!」


 ババンッ!と集中線が出そうな勢いに周りが「な、なんだってー!」っとツッコミを期待したい彼なのだが、当然そんなこと起こるはずもない。しかも何ふざけたこと言ってんの?そんな荷物持って迷宮に行くつもり?と目で語るフェリカが拳をボキボキ鳴らしていた。

 おいおい。子どもに暴力はいけないんだよ。


「まあ落ち着きたまえフェリカ次女よ。別にこんなの背負って行く訳じゃない」


 バア゛~ンッ。

 

 リュックから雑に金属特有の鈍い音を立てて地面に降ろすと、またリュックから今度はロープを取り出して鉄板とリュックを固定する。


「はいできた~」


 鉄板の上に乗るとどうだろうか。なんと フワッと鉄板が浮かんだのだ。


「う、浮いた!?何その鉄板!浮遊石でも使ってんの!?」


 毎度おなじみこれは『万物追及』によるもの。ほら。パレス工房で自分と同じように金属を操っているのを見てたらさ。物浮かせるんだったら「大きいいの浮かせれば乗れるんじゃね?」と昨日の寝る前に思いついて、やってみたら浮くは乗れるわで夜のハイテンションになっちゃったんだよね。うん、おかげで眠い。


「ふっふっふっ。これで歩くよりも早く楽で移動できるのだ。通称ボードだ。恐れ入ったか。昨日楽し過ぎて、あんま寝てないのだからな~。あっはっはっはっ」


 ただ人とか物とか乗って移動すると結構魔力消費激しいけど、まあ別に魔力で困ることないんだけどねっ。


「・・って、それが遅く来た理由かっ!」

「だって人間、空を自由に飛べるようになったら、ずっと飛びたくなるのが人間ってもんじゃん!」

「そんなのがあるんだったら荷物役割分担なんていらないじゃない!先に言いなさいよ!」

「うっさい。昨日の夜にふと思いついて出来たんだ。無茶言うな」


 そんな、ああだこうだに言う二人はこれから迷宮に行くというのに心配になってくる。



「じゃあ二人共~あまり無茶しないようにね~」

「私もお姉ちゃんらしく首根っこ捕まえて持ち帰るわ!」

「死なない程度に頑張ります」


 ボードの大きさ的にフェリカと荷物も置けるスペースがあるので、腰にかけるように座ってもらう。

 にしても我ながらこのボード移動はいい案だな。よし、今後もこれを足として使おう。



 そして二人は迷宮へ・・・。



「そう言えばフェリカってどういった戦い方なの?いちよパーティーとして知っておかないと」

「私は基本は前衛よ。スキルと剣で中距離攻撃もできるわ。そういうあんたはどうなのよ。あとそのまままっすぐ進んで」

「あいよ。自分ね~、そうだな~。あんま攻撃よりのスキルはあんまないな。だけど魔弾のおかげで全距離対応と広範囲攻撃が得意になった。おかげで戦闘幅が増えた」

「あんたそれ強いの?お姉ちゃんは強いとか言っていたけど・・・」


 どうもこいつは胡散臭いのよね~。スキルも怪しいけど本当に強いのかしら・・。

 

 それから・・・。



「待って。止まって」


 ボードを迷宮奧まで進ませれば、既にもう中層辺りまで差し掛かる。正直フェリカもまさか半日もしないで中層にたどり着いたのに「獣人並みに速い」と少しは彼を見直していた時にフェリカが急に静止の指示を出した。


「どした?」

「あれよ。あんたのお目当てのバンパリア。普段は中層の中間にいるのが多いんだけど中層の序盤で会うなんて」


 フェリカは指を差して言った。

 大広間になっている空間に青い結晶で覆われた8体のモンスターがいた。

 

「あれが・・」


 でけぇ。恐竜でいたよな草食の4足歩行のアンキロなんとか。

 最初見て思い出した。「恐竜ってこんな大きんだ」と小さい頃に見た博物館を思い出を。そして目の前にはそんな骨格に肉を持った身体、青く光る結晶で覆われた皮膚なんかは博物館でもお目に掛けれない。


「いい?私はそれなりの戦闘はできるけどそもそも1体で1パーティー相手するのがやっとな相手なのよ。私も援護ぐらいはしてもいいけど、本当にやれるの?」


 フェリカの言葉にふっと現実に戻る。


「まかせろ。元から一人でやるつもりだったんだ」

「あんた。何か作戦でもあるの?」


 う~ん。作戦か・・。


「・・ゴリ押し!!」

「舐めんなよ迷宮」


 一旦フェリカと荷物を下ろし、彼はボードに乗ってそのままバンパリアの群れに向かう。


 まあ確かに舐めプは良くはないわな。


「ここは魔弾で決めようかっ」


 のんびり進ませていたボードを戦闘開始と一気に加速させる。


「まずは一体!ヘッドショット!!」


 気づかれないように後ろから回り込み、頭の上を通過した瞬間狙い済ます。

 ついで気分を変えて・・っ!

  

  パアンッ!


 炸薬からなる似た響きが魔弾から放たれた。普段であれば風を切る音しかしないのだが『SE変換』というネタで作った雰囲気を盛り上げるスキルによって音が追加されている。なおシルル教会の授業でやった茶番劇に使われていたものでもある。

 猫も犬の鳴き声も出せるのだよ。面白いだろ?


 オ゛オ゛ォッ!?


 が、しかし。


「うっそ!?」


 頭を貫通することなく。頭の結晶で防がれたのだ。


「あれでも普段より硬めで撃ったんだけど!?」


 撃ったバンパリアが驚きの声と同時に威嚇の声を上げた。


 オ゛オ゛!オ゛オ゛!


「あ~仲間が寄って来るっ!」


 しかもあの図体で結構早い動きとかやめてほしいんだけど!

 威嚇の声に反応した他のバンパリアがあの巨体で地響き起こしながらダッシュしてくる様はまさに圧迫してくる壁である。


 オ゛オ゛ーーーー!!


「・・っとあっぶねっ!?あの突進こわっ!?」


 そのまま壁に激突して大クラッシュ。さながら交通事故に巻き込まれる瞬間を見ているようだった。

 事故というよりこれ事件じゃね?相手故意にぶつけてこようとしているんだから。


「なら魔弾単発が無理ならフルオートじゃああああーーーーーー!!!」


 もう面倒なのでやっぱり魔力のゴリ押しで魔弾をバカみたく撃っていく。


 バババババババババアアアアアアアアーーーーーーーーーー!!!!!!


 光と言う光、種類ある魔弾がこの大広間を覆うほどの密な弾幕。弾幕ゲームの比ではない。そんな光景に一人驚愕させていた。


「なっ!?何よこれはーーーーーーーーっ!!?」


 バババババババババアアアアアアアアーーーーーーーーーー!!!!!!


 物陰から見ていたフェリカは「魔弾とか」とか「ゴリ押し!!」とか言っていた意味がこのことだったのかと理解した。そしてそれからはあまりの弾幕と騒音にただ呆れるしかなかった。



「こんなものか・・・」


 一掃できたかなと撃つのを止めてハチの巣になったのを拝もうとするも・・・。


「うそ~ん」


 なんとあれだけの魔弾を受けても立っているバンパリア達の姿が。これには彼も息が抜けた声になる。

 しかしバンパリアも無傷ではない。


「流石にひび割れていますな」


 身体の結晶は砕かれて薄くなっている。これならあと一息でと思った瞬間。


 パキパキ・・・・。


 砕けた結晶の下から新たに結晶が生えてくる。


「・・マジかよ」


 これが不落要塞と言われる理由。身体の結晶は厚く硬く、並み半端な攻撃は全て防がれる鉄壁の要塞。結晶が砕けてもすぐに再生するその再生力は不落と意味当てられる。まさに不落要塞と名に相応しいモンスターなのである。

 確かに相手にはしたくないな。高い位置で飛んでれば攻撃できないのが救いか。



「さすが不落要塞って言われるだけあるわね」


 遠目で見守るフェリカは呟いた。

 あの攻撃もかなり凄かったけど・・どうやって相手にするのかしら?



「ならAPCR弾じゃゴラアアアアアア!!今までより貫通力倍増しだっ!!」


 バアーーンッ!!


 しかし・・・。


「抜けねええええーーーーーー!!」


 抜けなかった。



「なにやってのんよあいつは・・・」


 相変わらずバカしてるとフェリカは口に出す。



「しかも心なしか撃ったところの結晶が分厚くなってない!?」


 なおパンバリアの結晶は削れた部分が分厚く再生される。一度攻撃を受けた場所はさらに強固になるのだ。おかげでパンバリア達が膨らんで見えるほど厚みが増している。


「くっ。やっぱこういうのは眼とか口を狙うのが定石か」


 今までの攻撃の無意味さと余計なことをしてしまったのは忘れよう。ここからが本番だ!


「行くぞっ!」


 タイミングを見計らい一気に距離を詰める。またパンバリア達は結晶の厚みが増えたせいなのか動きが悪い。

 すれ違い様に目に魔弾を撃ち込む。


 オ゛ヴァ゛!?


 流石に目から結晶が生えたり治ったりはしないよな。しかし血の色は青いのか。

 そんな確実な手ごたえのダメージを実感した。


「っと!いっ・・!っぶね!こいつら動き鈍っても危ないのに変わりないな」


 一体に集中していれば、他のパンバリアが突進をかましてくる。なので攻撃したら一旦高く飛んでまた狙いを定めるヒットアンドウェイを繰りかえす。

 

 

「ふむ・・・。少々両目を潰すという残酷性が垣間見たが・・・」

 

 光を失ってもグォングォン動くパンバリア達。壁や仲間に当たり、血涙からは「人間は残酷だっ!」と言いたそうな痛みと怒りが湧き出しているようにも見えなくもない。


「さて、どうやって倒すかなんだよな~・・・」


 ああも結晶が硬いとね~。しかしあの自称美男子のお兄さんめ。こんな厄介なモンスターを焚きつけるとかあの野郎・・・。


「あ」


 ここで一つパレス工房でのやり取りであることを思い出した。

 これ・・使えるんじゃない?ブロック・・・。

 腰に掛けていた袋から取り出したのは、自称美男子のお兄さんに見せた小さな金属ブロック。これで彼は何かをするらしい。

 

「これを」


 ブロックを操りながら一体のパンバリアに近づくと・・・。


 グチャ・・・。

 オ゛オ゛ーーーーーッ!!?


 潰れた目にブロックが刺さる。そんな傷口にまた傷をつける惨いことをする人間は、何の躊躇いもないまま、さらにブロックを操って体内に潜り込ませると・・・。


「ふんぬっ!」


 スキルを使い、拳を握り、腕に力を入れる。


 オ゛、オ゛、オ゛ガア゛ア゛ーーーーッ!ガア゛!?!?ガ・・ガ・・・・。


 そしてズザーーと音を立てて倒れるパンバリア。


「ブロックを脳まで届かせて潰しにいく・・。ふっ、流石に頭の中までは硬くないようだな」


 なぜか悪役キャラぶる。

 だってそれぐらいしか倒せる考え浮かばなかったし・・ねえ?うん仕方ない。それしか方法が無かったのだから仕方ない。

 しかも彼、脳がどの辺りにあるか見当もついていなので、本当に頭の中を文字通りグチャグチャにしながら動かしている。


「と言う訳で行ってこい!ビット!」


 残りのバンパリアも同じように葬り去っていく。


 それで・・・。


「終わったの?」


 静かになったところでフェリカが荷物を持って顔を出す。一体どのように倒していたのかフェリカかの距離からでは見えなかったから、不思議な様子でもあった。


「うん。終わった。ちょっとおつかれ」

「ねぇ。どうやって倒したの?途中からよく分からなかったんだけど」

「え~っと。頭の中をクジュクジュにした」

「つまり、ろくでもないと言うことね」


 良くお分かりで・・・。


 一時半後。



「ねぇホントそれいつまでなのよっ!?」

「それはこっちが聞きたい」


 彼の目的であるパンバリアの血の採取に煙にならなかった一体から、適当に血が流れているところに青い小瓶につたうように集めているのだが一向に満杯にならない。


「結構入ってると思うんだけどな~」


 瓶を振ってみるがやっぱり空の感覚。しかし瓶を逆さにしたら小瓶の容量より多くの血が流れ出でる。

 あの野郎・・変な瓶渡してくれたな。


「あ~もうっ!一回アラクニードに行くわよっ!なんで血の採取でこんな時間が掛かるのよっ!いつまで突っ立てればいいわけっ!?」


 と、ご立腹なので血の採取は諦めてアラクニードに目指すことになった。



 そしてまた数時間後。



「もうすぐアラクニードよ。あ。こっちの幹線通って」

「ほいよ」

「にしてもこの鉄板ホント速いわね」

「いや、これ自分のスキルで飛ばしているんだけどね」


 のんびりと会話しながらボードに乗って進む彼とフェリカ。そこで彼はふと思いつく。


「そう言えばさ。アラクニードってどんなところ?トクガワさんから簡単に聞いたけど」

「広さで言えば地上の町より大きいわ。以前は超大型モンスターの亜種の巣だったのよ」

「巣?」

「文字通り『巣』よ。アラクネアの亜種のね。城以上の高さはあったそうよ」


 城ってこの街の中央の城のこと?

 その様子を感じとったフェリカは続けて言った。


「言ったでしょ超大型の亜種だって。尋常じゃない糸も吐くわその巨体で普通の蜘蛛並みに動くわとかね」


 よく倒したな~。地球防衛軍でも逃げ腰になりそうだわ。


「つまりそいつを倒して巣を奪ったのか」

「なんか言い方悪いわね。だけど巣を見たらきっと驚くわよ」


 笑い顔になるあたりどうやらその巣は凄いものらしい。

 しかし巨大な蜘蛛の巣か~。確かに見てはみたいな。


 そんな中進んで行くと・・・。


「フェリカさん。フェリカさん。薄っすら光る線みたいな物はなんなのかね?」

「線?何言っているのよ?」


 彼は何か見えたらしく、その見えた方向を指を差すと。


「ほら。あれ。光る水晶に反射して・・・」

「ん~・・・。ッ!止まって!」

「え?なぜに?」

「いいから早くっ!」


 グラッ・・・。


 それなりの速度で上空で飛ぶボードに何かに引っ掛かった。


「おっつ!!?」

「ッ!」


 バランスを崩しボードから落ちるも彼は魔力を地面まで伸ばして、落ちる衝撃を緩和した。フェリカはスキルを使ったのか高さ的に骨折は免れないのに綺麗な一回転をしてシュッっと着地する。


「なんか引っ掛かった感あったけど何今のっ!?なんかブランブランしてボードが空中に浮いてるんすけど!?」

「糸よ!気をつけなさいっ!」


 着地してからというとフェリカはつかさず剣を抜いて臨戦態勢。そんな警戒するには訳がある。

その意味は周りに蜘蛛型のモンスターがいることを示しているからだ。

 通常蜘蛛には徘徊性と造網性と言うのがいる。前者は糸で網を張らず動いて獲物を獲り、後者は糸を張って獲物を捕獲する。迷宮の蜘蛛はその両方の特性を合わせ持っているのだ。


「・・・いなそうね」


 よってその存在は脅威で、網を張り、俊敏に動き、音も立てない。迷宮での死亡率の大半は蜘蛛によるのが原因となっている。


「いちよ探知スキル系で周囲を見ているけど・・・」


 彼もいちよ『サーモアイ』で近くに熱源のモンスターがいないか周囲に警戒を配ると・・・。


「あ」

「何かいたのっ!?」


 焦るフェリカに呑気に彼は「あれ」と指を差す。そこには・・・。


 チ。


「「・・・・・・」」


 そこには「チ」と鳴く抱きかかえられる程の大きさで、デフォルメされたかのようなモッサリしたハエトリグモがいた。


「あらカワイイ。これ絶対癒し系だよ」

「どうすればそんな観点で見れるのよ・・・」


 その出会いは偶然か必然か。今後も関係がどう続くか分からないがこれが彼にとって最初の仲間の出会いであった。


今回も強引に無理して内容を詰めてしまった・・。


2020.02.16 文の一部を修正。

2020.07.27 誤字一部修正

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