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自由に気ままに異世界大陸指名犯 ー空賊ライフー  作者: クラ108
エピソード0 まだ最初の時
12/82

第5話 見せてやろう。先程の茶番劇とは打って変わって名演技ってやつをなっ!



 前回の話し。彼はステータスや金銭トラブルとかでしばらく自主的に大人しい生活をすることになった。その間にシルル教会でスキルについて学ぶも全く覚えられず、魔球だけは生み出せるようになった。



「・・・・・・」


 この異世界に来てから1ヶ月。彼ことクラリオンは真新しい体験を色々した。迷宮、モンスター、ステータス、スキルと魔法・・・本当に色々だ。最近はシルル教会で魔法の勉強なんていうのもやってる。途中宗教の話しを絡めてくる時もあるが、まあそんな些細はさておき人間は環境に慣れていく生き物である。



「ヤベェ。楽しいことがねぇ・・・・」


 つまり色々と飽きてきたのだ。

 そんな腑抜け状態でベットの上で寝転がってはうだうだ言っているのである。


「迷宮に至ってはもうバイトだよ。バイト感覚だよ」


 しかも今は自粛だし。

 彼のぐだりは続く。


「お金に困ってない。潜る必要もない。ボスとかそんなのいれば行って見てきたいと思うけど・・・」


 ギルドではそんな存在確認されていないと言っていたし・・・亜種とか偶にいるらしいけど。


「スキルは・・・覚えられないし。『スキル開発』で代用できるかどうか・・。はぁ。しょうもないスキルとかネタスキルだったら結構サクサク作れているのに全く・・・」


 異世界に行く主人公達は何が楽しく毎日生活してるんだろうか?

 異世界と言っても娯楽の類では元いた世界と比べものにならない。異世界に来た始め辺りは慣れないことで大変であるが、慣れた日常と化せば蘇る元いた世界の娯楽の数々。


「ああ~ゲームしてぇ~~~。ネトゲーしてぇ~~。配布とか詫び石とか溜まっているんだろうな~。音ゲーで洗濯機回したい・・・」


 現代社会の娯楽文化に浸っていた人ほどこれは堪えられない。

 イベントで素材集めに経験値稼ぎ。この世界で来る前にあと少しでイベントクリアするものだってまだあったのに・・・。


「・・・・・・・・」


 そして一旦無言となり・・。


「・・・・よし。やろう。マジでやろう。娯楽の英知である電子世界・・ネトゲという次元の壁に挑む時が来たのだっ!!」

 

 と言うことで唐突に暇を持て余した彼は、どうでもいいことに努力を捧げられる力を遺憾なく発揮しようとした。



「まずネトゲに必要なもの・・・PC類はもちろんのこと、ネット回線、電力、場合によってはプロバイダか?」


 PC類は『万物追及』なら理論的には作れると思うが・・0だな。できると仮定はしておくとして。


「問題はネット回線である」


 ケーブル、電波、wifi・・は異世界にあるはずもなく・・。となると元いた世界から常時接続環境の用意が必要。


「異世界と繋ぐ方法か・・・」


 すでにパスタメンという本の主人公から確立された異世界と繋ぐ方法があると仮定するなら、どこまで『スキル開発』で攻められるか。結構面倒になりそうだな・・・。



 そして色々と試すも・・・。



「やっぱ無理かっ・・・!!」


 結論から言えば何一つ異世界を繋ぐようなスキルは作れなかった。


「くそっ!!本当に何も出来ないっ!スキルも覚えられないしっ!なんだこの縛りプレイの状況は!?」


 そう簡単にはいかないものである。



 それから二日。



「あ。名案思いついた」


 突然名案が思いついたらしい。


「用はあれだよな。直接スキルで頼らないで異世界に繋ぐ方法があればイケるんじゃない?」


 スキルに頼らない他の方法で解決を模索しようということらしい。


「少しはスキルを使うことになっても間接的だと思うから・・・・」


 彼はスキルを作るのに集中すると。


「あ。できた『ステータス改造』・・・」


 できたのに微妙そうな顔をする。

 何だろな。こう言う時ちゃんとしたのがスッできるのは癪にくるな。普段からこうスッと作れないものかなこの『スキル開発』は。

 彼の悩みはともかく。


 彼のステータス画面には数値にスキル欄。そして神様によって追加されたメッセージ欄の三つが映っている。そこで思い出してほしいのが神様が『儂が作ったメッセージ欄』と言っていたのを。そしてバックドア発言もあったことも。

そう考えるとこのバックドアからメッセージ欄を作り、かつ通信状態を可能にしていたならば、スキルではない異世界と繋ぐ方法があるかもしれないと思いついたのだ。


「んでこれがステータスのプログラムッ!お、お~凄い羅列の文字・・。というか英語でも日本語ないな・・。なんだこの言語?全くわからん」


 今のステータス画面には『ステータス改造』でプログラムなのかソースコードなのか、今まで見たことない文字の羅列が表示されている。

 でもさ。自分確か『日本語化』というスキル常時発動してるよな?ならなんでこの文字は日本語になってないんだろ・・。



「お。これだな」


 それでもコードを漁っていくと数多くの文字の中でメールの内容が書かれた日本語があった。その辺りが神様が作ったメッセージ欄のプログラムであるのが分かった。

 さてこれからが大変だ。


「何せ文字が不明。PCの組み立てと簡単なゲームのプログラムをいじったことはあるけど、本格的なプログラミングなんか知ってる訳がないっ!だけどこちとら魔法やスキルやらで複雑に考えなくても強引に物事通じさせる手段があるっっ!!」


 ここはフルにその恩恵にあやかろうじゃないかっ!!

 彼は異世界に来てから一番に燃えたのであった。



 不眠不休で三日後。



「コマンドプロンプトらしいのは見つけたんだよ・・。スキルで『キーボード操作』を作ったんだよ。マウスもできるようにしたんだよ・・・。だけど英語とローマ字打ちしかできないんだよ。どこの言語だよ。エクノ語か?クソかよ・・・」


 謎の文字に変換もできないから詰んでる状況でも何か方法はないかと頭の中をゲシュタルト崩壊させながら、めげずに挑んでは終始幻覚まで見る始末。本当に努力を捧げているのがよく分かる。


 しかしついにその努力が結ぶ瞬間が突然やってきたのだ。


「・・・・?t・・・a・・//・・jp?あれなんか英語が見える・・スキルでも解析できなかった文字なのに」


 これも幻覚かな~っと文字の羅列をスクロールしていくと途中からどんどん英語の文字に見え始めた。


「あかんな・・・」


 バシンッ!


 眠気を払うかのように自分の頬を叩いて現実を見るようにするもそれでも英語が見えて続ける。


「今更スキルの効果が出たとかあり得ないしな・・・」


 黙々と見続けると確かに見覚えがある英語の単語の数々に彼は次第と意識がはっきりしていく。


「・・っ。待って!これ英語だ!このプログラム途中で文字が変わってる!」


 そしてよく見て気づく。


「ここの場所・・この文字と英語のプログラムが連動できるようになってる・・?っ!!『プログラム解析』・・!はっ!スキルが機能するだとっ!?英語の部分だけだけど・・・!いやこの際どうでもいい!!これで一気に!!」


 さらに時間を掛けて作業開始から三日と半日・・・。



「あ、あはは・・・アハハハハ八八ノヽノヽノヽノ\/\」


 壊れたような笑い声で叫ぶ彼。


「で、出来たぞ・・!遂にネットが繋がれるようになったああああああああーーーーーっ!!」


 途中挫折しそうにもなった。だけど自分は諦めなかった!それでもネットが見たかったからだ!!現代人にはかけがえのない存在だったからだっ!


「これは我が人生における最大の偉業であるっ!」


 バタンッ。


 力強い力説に言い終わると倒れる彼。不眠不休の三日半は子どもの身体には相当堪えたらしい。しかし確かにこれは彼の人生の中で偉業であったのは間違いない。



 そしてかいつまんで説明しよう。まず彼のステータスにあるメッセージ欄。あれは間違いなく神様が言ってたバックドアから付け加えられたものだった。そしてメールである以上送信元がある。


 彼は送信先をバックドアを通じてコードで接続できたのだ。見覚えある英語のコードが見えたのが違う世界に繋がった何よりの証拠である。

 そして送信先とはどこか?神様が最後に言っていた『ネトゲの戦車ゲームで野良のトッププレイヤーにならんといけんし大変なのじゃよ』と言っていた言葉。そう、神様のPCである。


 あの神様はメールを直接PCからバックドア経由で彼に送っていたのだ。そんな理由があってこそコードだけで神様のPCに繋げられたのである。

 そしてバックドアを逆利用する形で、彼は神様のPCを通じてネットを開ける状態にしたのだ。



 なおその時・・・。



『・・・あのIS-3・・頭出しでポンポン撃ってきよって。くっ、儂の90mm砲では貫通力が足りん・・。イーグルこっちに来れんか。儂が前に出るから狙撃頼めんかのう?』

『無理!東にヤークトE100が我儘ボディーでお仲間連れて進軍中!くそ上手いこと車体下隠しやがってっ!こっち足止め精一杯!』

『くそっ。有利と見て押してきたな。トータス!』

『こっちも無理だ。市街地が突破されてライン下げてる。味方の後退援護中。金弾使え金弾。課金してるんだろ。で、キューポラ狙えよ』

『全部金弾じゃっ!あいつ小刻みに動くんじゃよ!これだから頭の固い奴嫌いなんじゃ・・ってKV!?KV2!!お前、前に行くつもりかっ!?』


 ピ。


 KV2がSOS信号を出した。意味は誰か付いてこい。行くぞ!という意味が見て取れる。

 なら行くしかないじゃろ!お互いまだ1,2発は耐えられる!

 そう前に出たが・・・。


『あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛ーーーーーーー!!??』

『どうしたエレファント?』

『履帯切られたか?』

『lagったああああ゛あ゛あ゛あ゛ーーーーーー!!?なぜじゃああ゛あ゛あ゛あ゛ーーーーー!!!???』

『おいおい神が使うPCが処理落ちすんなよ』

『お前人間道具にケチったのか?』


 そのlagはその時彼がPCのアクセスに成功した際に少々いじくったのが原因である。


『何故なんじゃああああ゛あ゛あ゛あ゛あ゛ーーーーーー!!?!!?』

『お前、次サバでやれよ。デュアルCPUでXの最上位な』

『冷却は水冷式にしとけ。確かあの会社新しいの出したと思うから』


 そんなことがあったりした。

 その後復活した彼は暫くはネットサーフィンを楽しみ、ネトゲもして、神様がPCを変えて一時ネットが使えなくなって焦った時もあったが、繋がりが戻ったら新しくアカウント(ローカルアカウント)を作ってみたりとPC環境を整えていった。

 また神様がサーバー用PCだからか機械に詳しくないのか彼がPCにアクセスできているのを神様は知らない。



「音はヘットフォンで聞けるようにしておきたいな~」



 数日後。



「クラ君クラ君」


 そう彼を呼ぶのはバーバリエ宿屋の副オーナー。アスラである。そんな彼女が彼の泊まる部屋で彼と話していた。


「・・・でね。その人が他のパーティーの人と浮気して、今3階がギスギスしているのよ」

「そうかそうか」


 パラリと彼は本のページをめくる。ずっとネットばかりをしないで時にはこうやって本に向かうことも彼にはあるのだ。というのも・・・。


「しかも男同士なのよ。だからもう余計におかしくなってもう大変なのよ」

「それは大変だ・・」


 世間では彼はかなり稼いでいるお子様と見られてるところがある。なので部屋の防犯でも高めようと今まで鍵の増設をするとか対策をしていた。しかし。

 なんで毎度入って来れるのかな~あのお姉様は・・・。


 この世界の鍵は基本は魔力によるお札式になっており、簡単に貼って手軽に鍵を設置できたり、指紋認証、音声、魔力、パスワードと幅広い鍵の種類がある。しかしそれをアスラは容易く突破して、現在進行形で不法侵入を繰り返している。今読んでる本も防犯の心得と言うタイトルを読んで防犯意識を高めているのだ。


 

「もうクラ君聞いてないでしょ!最近ずっと部屋に籠ってばっかりで!」

「聞いている聞いてる。世の中そんなもんだよ」

「やっぱり聞いてない!お姉ちゃん泣いちゃうよ!」


 最近「お膝にどーぞ」「はいあーん」「お風呂にしましょうか」とやって来ている。特に一人でネットを見たい時やネトゲの時はだけはやめてほしいと心底彼は思ってる。


「ねえクラ君聞いている?」


 なんでこんな人がいるのかね~。


「もしもしクラ君?クラく~ん」


 と言うかお金に困ってないし家を買うのもありだよなこの際。多く鍵を掛けてるのに開けてくるし・・・。


「クラ君。ア、アスラお姉ちゃん・・本、本当に無視されると・・泣っ泣いちゃうからゃ・・・ヴゥゥ・・グス」


 本当に泣きかけていた。

 泣くなよその程度で。


「はいハンカチ」

「うん・・・大切にすりゅ」

「あげるとは言ってねぇよ。いや別にいいけどさ」

「それよりも!お姉ちゃんと話し続きしましょっ!!」

「本当にこのお姉様はブレないな」


 こんなやり取りが今日あったので、気分転換がてらに外に出かけることにした。

 最近ネットでシルル教会で魔法の勉強行ってなかったからな~。顔見せにいくか。


 そんなわけで早速シルル教会へ行ってみることに。



「お久~」

「クラリオン君?」


 教会の礼拝堂に入ったが誰もいなかったので教会の奥にある部屋に向かった。勉強しに何度も入っているからノックはぜずに部屋の扉を開けるとミルティアがいた。


「おっ!クラリオン!」

「最近来ないからずっと潜ってたと思ったよ」

「すまんな。色々やってたら時間を忘れてた」


 それからメルダーとクロエ。


「はあ~これだから男は一度遊ぶとずっと遊び続けるバカなんだから」

「マルリよ。人間は失われた時間を取り戻す為には、他の時間を犠牲にしないと成り立たないのだよ。イベント開催してた時は睡眠時間を削ってでもな」

「何言ってんのよあんたは」


 またバカなことを言っているとマルリは呆れた顔をした。そしてミヤちゃんは「ミル(ねえ)。お腹空いた」と彼そっちのけでミルティアにおやつをねだっている。


「もう。本当に心配したんですよ。しばらく来なくなるんだったら一声入れてくださいね」


 迷宮に潜って帰らぬ人は人知れずいる。突然帰らなくなればそれはそう言う意味も差しているのだから、長期に潜る予定なら一声掛けるのが普通だ。といっても彼は潜ってもいないが。


「いや~急に私生活の一部が戻ってきたからついね・・。うん、怠惰なひと時だった」

「本当に何を言っているのか分からませんよ。クラリオン君」


 さて、ここで一通りのあいさつを済ませれば魔法の勉強の時間といきたいところだが。



「はいそれじゃあどうしてこの世界にステータスがあるのか分かるかな?前に教えたからみんな分かるよね~」


 その前に子ども達の授業が先のようだった。そもそも彼が教会に来る前から子ども達にミルティアは、この授業はやっていたようで彼の魔法の勉強は他の子ども達の授業が終わってからやることになっている。


「「「「はーーーい」」」」

「Zzzz・・・・」


 なのでこの子ども達の授業が終わるまで彼はお昼寝の時間にしようとする。そんな怠惰の姿勢に今まで無視していたミヤちゃんここぞとばかりに動き出す。


「Zzz・・・・」


 ガッ。


「ン゛ヌ゛ッ!?っく・・!この見事な脛への無慈悲な一撃・・・もろに入った」


 ミヤちゃんが脛狙いのローキックにバッサっと力尽きて崩す彼。


「もう・・ふざけてないでちゃんとして下さいね」


 大体こんな感じで子ども達の授業に彼がいるといつもこうなる。なので見慣れた様子で皆は彼を窺う。


「全く。いきなり来たと思ったらこんなバカして、一体何しに来たのかしら?」


 マルリは変わらずの口調。

 ミルティアも手慣れた様子で倒れた彼に治癒スキルを使ってあげる。


「ああ~これぞまさに神の癒し・・」

「はいクラリオン君の眠気が治ったので、みんな続きやりますよ~」


 痣が引けば予鈴チャイム変わりに授業の開始の幕開けとなった。

 

「まったくひどい眠気覚ましだな。捻りがないな。そろそろ新しい考えが必要な時期だと思う」


 さっそく復活すればどうでもいいことを真顔で本気で言う彼に「なんの心配だよ」と誰もを思わせる。


「いや必要ないだろ」


 メルダーがそう突っ込むと。


「メルダー君。クラリオン君。無駄なお喋りはしないようにね~」


 パタンっと厚みのある聖書を閉じてる。まるで鈍器を持っているように見えるのは気のせいではないだろう。


「は、はい!」


 最近彼と並び常習犯になりつつあるメルダーは即座に返答する。

 最近は自分が来てから一緒に殴られるの多くなったからな~。


「クラリオン君は?」


 返事をしない彼に笑顔で聞くミルティア。

 ミルティア先生。笑顔って威嚇なんですよ。知ってました?


「クラリオンく~ん?」

「善処します」


 素直に「はい」とは言わない。


「じゃあもう一回聞くけどどうしてステータスは出来たのかな?」


 もう一度するミルティアに「はいはーい!」と手を挙げる皆に彼も仕方ないと授業に参加することにした。


「はーいはい!はいはい!はい!」


 ただし普通に挙げるようなことはしない。子ども達の授業に真面目に参加するほどでもないから、茶々を入れるようにふざけに回る。それにミルティアの顔から笑顔が少し無くなったように見えた。

 まあそこは気にしないでおこう。

  

「・・はいじゃあクラリオン君」


 よし。このご指名に恥じないないようにしなければ。


「見せてやろう。先程の茶番劇とは打って変わって名演技ってやつをなっ!」


 みんなの期待は裏切らない。そんないい笑顔で始まったのが・・・。


 カシャン。パッ。


 周りが暗くなったと思うと彼にだけスポットライトが当たるかのような舞台劇使用。無論彼のスキルによる演出である。


「それは争いから・・生まれました・・・」


 無駄に演技掛かった言い回しで、相変わらずの茶番劇が始まった。

 そしてメルダーとクロエはそんな行動を審査員のように評価する。


「メルダーさん。これはどう思いますか?」

「この突然な行動・・。ミル姉がどう評価することによって全てが決まる」


 そのミルティアは。


「クラリオン君。まだ茶番劇が長いようですね~」

「あ~クラのやつ死んだな」

「暗くて危ないから近づかないだけだけど、明るくなったらね~・・・」

「茶番劇の閉幕か」


 そして茶番劇が進む。


「人が4足歩行か5足歩行を始めていた時代・・・」

「そんな時代はありませんよ・・」


 ミルティアの発言に彼のスポットライトは消えてミルティアにパッと当たる。

 まあ彼も適当に言っている訳じゃない。暇つぶしで買っている本の一冊にステータスの歴史について記されてたのがあったから少しは知っているのだ。


「ミルティア先生。赤ちゃんだって初めは4足歩行から歩くじゃないですか。だからそんな時代もあると思うんですよ」

「絶対に無いですよっ!」


 フッ。人間が猿であったことも知らないとは・・。

 と、現代人の別にどうでもいい知識力の差で優越感に浸る。


「あ~ミル姉がクラの空気に呑まれたな~」

「そうなるとその後どうなると思いますかメルダーさん」

「クラに口八丁で言いくるめられる」


 との審査員。それと先ほどから無口なマルリとミヤちゃんはと言うと。

 またふざけたと呆れるマルリ。

 そしていつの間にかお菓子のクッキーを1人でポリポリ食べて観賞しているミヤちゃん。

 もう既に授業ではなくなっていた。


「そんななんやかんで人が2足歩行になって、裸で大地を駆けている日々・・ある人達は気が付いた」

「昔も今もちゃんと服は着ています!」

「先生。たまに全裸で外駆け回りたい時だってあるじゃないですか」

「ありません!!」


 これで突っ込みとボケは成り立った!この場の空気が我が支配化にっ!


「とでも思っているよな~」

「あ~そんな顔してるね~」

「ちょっと男共。あれいつになったら終わるのかしら?」


 メルダーとクロエが話している横でマルリも途中で合流する。


「クラが言い終わるまでじゃね?」

「はぁ~~。あいつが来てから騒がしくなったものねまったく」

「けど僕は楽しくはなったと思うよ?」

「あとミヤはどうしたんだ?」

「あれ・・・」


 ポリポリ・・・。


 ミヤちゃんはまだお菓子を食べていた。


「・・ん。食べる?」

「食う!」

「というかミヤちゃんそのクッキーはどこからとってきたの?」

「あったから食べた」


 その言葉の真意を聞こうとクロエはマルリを見るが、マルリも知らなと首を振って伝える。


「これ僕たちも怒られそうだね~。一緒になって」

「はぁ。ミヤもミヤだわ・・・」


 それでどうせ怒られるんだったらもう一緒に食べようとみんなでお菓子を食べて彼の余興を楽しむことにした。


「ある人は言いました『俺の筋肉ヤバくない?』『いや俺の方がもっと逞しいぜ』2人はそれからどちらの筋肉は素晴らしいか、それはもう悲しい裸の争いが始まりました」

「違います!2人はお互いどちらか強いか毎日勝負したんです!お互い勝敗がつかないライバルだったんです!」


 面白おかしく話す彼に突っ込みを入れるミルティア。

 皆楽しんでくれて何より。しかしお菓子食べているのは頂けない。自分のも残してくれるとありがたいな・・・。


「世の中広いんだ・・。そんな奴らがいても不思議じゃないんだぜ」

「いてもステータスの歴史にはありません!」


 そしてここからが本題と言わんばかりにしめをくくる。


「そこで2人は神様に問いかけました。どちらの筋肉が素晴らしいのか。と」


 もう無駄だと理解したミルティアは、他の子ども達がに「違いますからね~」となだめることだけにした。ただし周りが暗いのでお菓子を食べていることには気づいていない。


「神様は言いました。『それ見て確認してお』と。まあ神様も毎度筋肉筋肉とスパム並みに問いかける2人がうっとしいと思い、自分達で確認できるようにしたのがステータスの始まりなのです」


 パシャンとスポットライトが消えてどこからともなく拍手と声援のような声というか音と言うのか周りから響くのもまた彼のどうでもいいスキルの演出。それにもやはり皆手慣れた様子で不思議とは思っていない。


「クラリオンく~~ん・・・」


 明るくなったことで周り様子が分かるようになったミルティア。しかしその右手と左手には2丁拳銃のように2冊の分厚い本が。

 キリスト教に右の頬を殴られたら左の頬を差し出せってあるけど、この場合イエスは差し出すのであろうか・・。


「許せ。子どもの茶目っ気だ」


 どうあれこうあれこの先の結末は変わらないだろう。


 次の時間。


「次は計算の問題ですよ」

「「「「はーーーい」」」」

「・・争いは争い生み、暴力は暴力を生む」


 机に突っ伏している彼。何があったかは察しの通りだろう。

 そもそもシスターが暴力を振るうのはいかがなものか・・・。


「まずクラリオン君がネズミ5匹とミヤちゃんにネズミが7匹、マルリちゃん、メルダー君、クロエ君が1匹ずつ持っていたとします。そしたらまずみんなの合わせて何匹になりますか?はいまだ寝ているクラリオン君」


 ミルティア先生。そろそろ他の子を指してあげてもいいんじゃないですかね?

 ずっと寝ていても仕方ないのでムクッと身体を上げて・・。


「そんなの簡単だ。自分の3匹は野に返すから10匹だねっ」

「15匹!」


 そしてその横で答えるメルダー。


「はい正解ですメルダー君」


 先生、何のために自分を指したんですか?


「だけどクラリオン君とミヤちゃんは沢山持っているのでずるいですよね?」

「欲しければくれてやる」

「ずるくない」


 ミヤちゃんもミヤちゃんであった。


「じゃあみんなで分けることにします。そしたらみんな何匹になるかな?」


 はいみんなで考えましょうとパンっと手を叩いてシンキングタイム。みんなは手の指を使って一生懸命計算をしてみる。

 そもそもこの平均の求め方は小学5年生ぐらいの問題である。ミルティアが出した問題は簡単であるが、それをまだ5,6歳の子が解くというのは少々難しいかもしれない。

しかしながらこの異世界にはすぐに手元で見られるステータスという日頃から見える数字であり、計算を知る機会が多い。

 そんな異世界の諸事情があるから、比較的早い段階で平均の求め方の計算問題が取り扱われていたりする。



「はい。みんな分かりましたか?」


 そう聞かれるとみんな微妙な雰囲気。しかしミルティア先生は気にせず今度はミヤちゃんを指名する。


「ではミヤちゃん。分かるかな?」

「みんなの分を獲ってくる」

「えっとミヤちゃん。それは良いことなんだけど」

「私にはできる」


 この逞しさとワイルドさ。さすがミヤちゃんブレがないな。


「そうかもだけど~・・・じゃあクロエ君」


 仕方ないので次の指名が入る。


「僕、メルダー、クラリオン、ミヤ、マルリで・・えっと3匹?」

「はい正解です」

「平凡な答えよの~。個性がない!」

「やらん」


 彼とミヤちゃん。ある意味ブレない。

 まあそんな感じでワイワイ騒ぎながら勉強の時間が終えれば、今度は彼の勉強の時間が始まる。もちろん彼一人だけの授業だから、他の子らは休み時間で外で遊びに行っている。

 にしてもここの教会ってまったく人が来ないよな。信仰少ないのかね?



 始まる魔法の勉強。



「まったく次からふざけないでくださいね」

「善処します」


 先ほどの授業にお小言を言われながら、彼の勉強会は始まった。内容は魔法について。未だ簡単な魔法でも悪戦苦闘しながら彼は取り組んでいく。


 で・・・。


「凄い上達ですよクラリオン君」


 僅かな時間で上達する速度にミルティアは素直は誉めた。ミルティアも「まさかそこまでできるなんて」と思ってもいなかった様子。

 いや~人は褒められると嬉しいものだね~。


「ふっ。もっと褒めるがよろしい」


 そして調子に乗る彼。流石に怒られそうにも見えるがそれでもミルティアは褒めた。


「ええ、本当に凄いですよ。たったこんな短時間でいくつもできるんですから・・魔球が」


 そう。魔球である。始めはちゃんと魔法の指導をしてもらっていたんだが・・・。

 なんか行き詰ちゃって。気分転換に魔球をボンボン出して床埋める程生産してたらさ。ミルティア先生が「ただの魔球でよくそこまで」と褒めてくれてたんだよ。どうしようもない顔だったような気もしたけど。


「いや~でもこの魔球、意外に汎用性が高いよね~。魔力の調節だけで、サイズ、硬さ、

ルーメンに発光時間まで」


 それに鉄砲のように勢いよく撃てるようになったのもいい。むしろ魔弾と命名しよう・・。ふっ。弾幕を張れる程度の能力か・・。迷宮で色々試したくなるなっ!


「だけどクラリオン君。こないだの魔球もそうですけど、いつになったら消えるんですかこれ・・・」


 ミルティアの手にはずっと光る魔球もとい魔弾を持って彼に向ける。

 前回作り出したボーリングボールの魔球が数日間で健在あったのを考えればしばらくは光ぱっなしなのであろう。

 なおボーリングボールの魔球が野球ボール並みに小さくなった辺りで、何を思ったかミヤちゃんは特大な投球ホームで空高く打ち上げていた。


「そのうち?」

「・・はあ~。ずっと残る訳じゃないのでいいんですけど・・・」


 それにしても・・・。

 ミルティアは思う。

 クラリオン君は冒険者と言っていますがまともなスキルを一つも覚えてない。それどころか簡単なスキルも覚えてないです。しかも魔法も苦手・・。いえ、そもそもスキルを初めて習うような仕草・・。それで本当に迷宮に潜っているのか怪しいぐらいです。


「ですけど魔球だけは無駄に上手いんですけどね・・・」

「ん?何か?」

「なんでもありませんよ。本当に迷宮に行ってるのかな~って」

「いや、行ってるよ?最近行ってないだけ。巷で有名で困ってるほどに」


 そんな会話をしばらく続けていると遊び終わったのか部屋の扉を開けてミヤちゃんが入ってきた。


 バタン。

 

「戻った」


 しかも1匹のネズミの尻尾を掴んで。


「おかえりなさいミヤちゃん。他のみんなはどうしたの?」

「罠仕掛けてる」

「・・・・・」


 そして彼は無言。ミヤちゃんに掴まれた息絶え絶えになってる大なネズミを見透かしたのように凝視する。それに気づいたミヤちゃんは・・・。


「やらん」


 キリッと睨まれるが即座に冷静に「いらん」と言い返す。


「はあ~~。どうしてそんなの捕まえる気になるのか。捕まえられるのか・・」


 衛生面とか色々あるのにそんなの無視して持つとか食べるとか・・・いや、ホントそれアカンからね・・。


「近所の評判は良いんですよ。このネズミを捕まえられるのはミヤちゃんぐらいですもの」

「そりゃそんなドブネズミ捕まえてくれるなら近所の評判は良いだろうね。近所の守護神だよ」

「今日大きいの1匹だけだった。果物とお小遣い貰った」


 捕まえた褒賞に果物とお小遣いまでもらっていたようだった。果物は現在マルリが持って向かっている。


「お小遣いまでもらうとは・・いい仕事にしてますな」

「1バレル。みんなで使う」


 この子本当に時々良い子だよね。暴力はよくしてくるけど。


「ただいまー。帰って来たぞ~」

「今回の罠は結構いけそうだよね」

「ってまだあいつがいるのよ。さっさと帰ればいいのに」


 そして他の子ども達も続々と帰ってきた。

 ならこの辺りで切り上げて帰りますか。


「んじゃミルティア先生。今日はここまでで。また来ます」


 この場から離れようとする彼にミルティアはちょっと止める。


「今日も一緒にご飯食べないんですか?ミヤちゃんが一匹捕まえてくれたのに」

「・・・さらばっ!!」


 彼は一旦だけ立ち止まるも秒速ダッシュで振り返りもせずにシルル教会から帰って(逃げて)行った。

 ぜってぇ死んでも食わねぇ。


「クラリオン君。またいっちゃいました・・・」


 今日も彼の食の安全は守られたのだった。


タイトルの内容に入るまで15話以上先になりそう・・・。

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