第4話 今日の夕食はクラリオン君も入れて焼肉ですよ~
前回の話し。成金になった彼はしばらくは迷宮には潜らず、教会を見つけたり、まさかのウズラ卵との会話があったり、新情報溢れる話しだった。
「なるほど。走ったり動いたりすれば体力は動けば消費する・・スタミナと混合されてる系か。魔法は・・あ、スキルだっけ?まあ一戦で魔力が・・大体1000ぐらい減ったと・・・」
シルル教会で彼はステータスの存在を知ってからというとしばらく間迷宮に潜っていた。一体ステータスの数値がどんな変化するのか見て試したくなっていたのだ。
「あとは魔石を集めて~中核だけにして~・・」
いつもように千単位で襲ってくる虫のモンスター相手に戦いに挑んで、出てきた魔石を魔法改めスキルを使って集め出す。
「・・・・いるな」
しかし彼は一旦動きを止めて耳を澄まし始める。
迷宮に子ども一人で行く姿は周りから奇異な目で見られていたが、これと言って何かしてくる訳じゃなかった。しかしここ最近一部の冒険者パーティーが彼を尾行しようとしている者が現れ始めたのだ。
「はぁ~。仕方ないんだけどさ~」
ただそれに彼は心当たりが一つあった。
最近ギルド換金所で高質な魔石を持って、オウカに換金する子どもの姿。
そんな姿を見ればカモと見えるらしい。または高質な魔石を発掘できる場所があるのではと彼の周りを嗅ぎまわり始めているのだ。
まあギルド職員がざわつきながらオウカ支払っているのが見えればな~~。
「なあおい、あの子ども・・」
「ああ間違いない」
そんなわけでどこかの今日もどこかの冒険者パーティーが彼を見つけて尾行しようとしていたのだ。しかし最近何度もか同じことを受けているから勿論彼は対策は考え済み。
リュックから野球ボールほどの球を取り出し、封と書かれた札を剥がして地面に転がすと。
ドドドドド・・・・。
遠くから彼には聞き覚えるがある足音が響き渡る。
「な、なんだ!?」
「おい!向かうからなんか来てないか!?」
ドドドドドドドドドドドドドドーーーーーーーー!!!!
「群れだとっ!?どうして!!」
「早くこの場から逃げないと死ぬぞ!」
「でもあの子どもは!?」
「馬鹿!死んだら意味ねえ!!」
虫のモンスターの群れに気づいて逃げていく冒険者パーティーに彼は呟いた。
「・・・自分はいつから無自覚系最強なろう野郎をやっていたんだろうか」
逃げる冒険者を見て思ってたことだ。あの数の群れを相手にしないのが普通というのを逃げる冒険者達から知ったのだ。
そもそもなんで迷宮序盤であんな大量のモンスターがいること自体おかしいんだよ。迷宮って深く潜れば潜るほどモンスターが強くなると思うじゃん?序盤であれだと奥深くに潜るのって躊躇うのは普通だと思うんだよ。だから最初は序盤でしばらく肩慣らしするのが普通だと思うじゃん。と彼は後世で語っていた。
「しかし本当に効果絶大だね。このモンホイ」
正式名はモンスターホイホイ。別名モンホイ。これはミシャロ商会から買った物である。効果はモンスターにモテまくる(寄って来る)という商品。
店員が「効果絶大だよ」と言われて買ってみた物で、おかげでモンスターは集まるし、後をついて来る冒険者も集まってくるモンスターに恐れをなして逃げるから最近愛用している。
「よし。2回戦やっていきますか。今日は7オウカ目指すぞ!」
そしてギルドにて。
「毎度のことながら机が高いんだよね。そろそろ台とか用意してもらってもいいんじゃない?」
迷宮での戦いを終えていつも通りに換金していると、いつも彼の受付を担当していた女性の後ろから見知らぬ男が近寄ってきた。
「少し宜しいですかな?お若い冒険者殿」
「マルク課長?」
後ろから現れたマルク課長に女性も驚きを上げる。
「どちら様で?」
「私はここの換金所の課長をしているマルクだ」
「ほうほう」
これといって声を掛けられる理由はないと思うんだけどな・・。
「いや~特に最近は君のような若い冒険者の活躍が目覚ましいことで・・・まあそんな他愛ない話しは後にして・・実は少々お話しがありまして」
「率直に言うと?」
「君が持ってくる魔石についてで・・こんな場所でもなんだから部屋で話しをしないかね?」
「いえ結構です。次回にまた」
面倒くさそうなことには関わりたくない彼。今の自由で優雅な生活にわざわざ変なことに突っ込むことはしたくない。それでお金貰って帰ろうとするが。
「いやいや。帰ってもらっては困るのでね」
マルク課長はカウンターを颯爽と乗り越えて出てきた。が、途中足引っ掛けて転げ回らなければ、もっと様になっていたかもしれない。
「課長!?」
突然の行動に受付の女性はびっくりするも。
「マルク課長!!この前腰治ったばかりなのにそれでまた腰痛めたらどうするんですか!職場で介護なんて邪魔になるだけですからもうやめて下さい!」
思いのほか存外な扱いだった。
「大丈夫だよこれくらい」
笑顔を見せるが。
「いえ怪我の心配とかじゃなくて、怪我したらもう職場辞めて下さいという意味です」
「・・それ酷くない?」
「職場みんなから嘆願書でも用意しましょうか?」
「・・・以後気をつけます・・」
マルクがショボンとしている。
大した話しじゃなさそうな雰囲気に横を抜いて、今度こそ帰ろうとしするも。
「いや待て話しは終わってない」
がっしりと肩を掴まれた。
「正直なところ来てもらわないと困る。ギルドが今深刻な事態に陥りかけている。現状それを打開するには君の力が必要だ」
で・・・。
「話ってなんですか?お茶とお菓子は美味しいけど」
本当は来たくなかった彼だったが、広めの応接室にあったお菓子に釣られて入ってしまい、聞くことになってしまった。
「少し待ってくれないか。ある人達に会わせたいんだ」
「ある人達?」
「ここの冒険者ギルドのマスターとその重鎮達さ。と言っても私も重鎮の1人なんだかね」
そしてマルクは「すぐに戻ってくる」と言って一旦部屋から出て行ってしまった。
しかし魔石関係ね~。やはり形に問題があったのかな?最近は大人しい形のばかりなんだけど。にしてもこのお菓子美味いな。初めて見るお菓子だし・・・。おかわり貰ったら帰ろうかな。
数分後・・・。
「いや待たせたね」
再びマルクが現れると後からもう一人一緒に入ってきた。
「なるほど君がそうか」
入ってきた男性は薄く残るブラウン色の髪。年齢は初老あたりと思われる。そして彼のお菓子を食べる手は止まらない。
「はいは~い。扉前で立たないでもらえますか?ギルド長」
「それはすまないフレア」
そして今度は女性でオレンジ掛かった毛色。年齢は20歳前半。少し外ハネしているショートの頭が特徴的だ。
初めてカラフルな髪の色の人と出会ったな。
「はーいボク~。初めましてフレアって言うの。よろしくー」
彼の前に来ると手を出すと力強くブンブンと握手してきた。
「おや?フレアがいるとは、てっきり見回りの時間でこないと思っていたんですが」
「頼れる妹がいるからね~。全部任したわ~」
「はあ。あなたは・・・・」
そして今度はフレアに話し掛ける20歳後半で男性で、最大の特徴メガネを掛けていたこと。彼も眼鏡ってこの世界でもあったんだ。と眼鏡にしか注目してなかった。
そこからまた続々と人が現れ始め、全員揃うとさっそく話し合いが行われた。
「では改めて紹介しよう。私はここのギルドマスターとして身を置かしてもらっているトクガワという。このように時間を使わせて申し訳ない」
「うむ。全くその通り」
そしてまだ彼の手からお菓子を持つのが止まらない。
ん?トクガワってあのトクガワ?あ。もうお菓子が・・。
「でその徳川家康様がどうしてお呼びに?あと出来ればお菓子のおかわりも・・」
「イエヤス?なぜ私の先祖を知っているのかね?」
「ん・・?なぬ?」
「そんな昔話よりも今の話しだ。今ギルドは困った事態に陥ってるんだよ」
まさかの発言にまじまじとトクガワを見る。
え?これ流す話しじゃないよね?と止めたいところだが。
「では副長のオドルドが説明させてもらいます」
話しが勝手に進まれる。
そこのメガネ。勝手に司会進行するな。
「今回貴方をお呼びしたのはマルクから聞いていると思いますが、ここ最近非常に上質な魔石を連続のように貴方がギルド換金所で取引が行われました。その額が計56オウカ。いえ、今日のを入れれば62オウカです」
改めて総額を言うとオドルドはため息を吐き、周りの空気が沈む。しかし彼はそれを聞いて「ああ、そんぐらい貯まったっけ?」と周りの温度差が合っていない。
「ピンときてないようね~。今ね~君のせいで今ギルドが金欠なっちゃって~。このままだと破綻しそうなんだよね~」
「つまり責任取れと?」
「そう言うことじゃないけどさ~。ちょ~っとお金返してほしいんだ~」
「そうではなくお金を貸してほしいんだよ」
フレアの言い方に少し誤解があるとトクガワは訂正を入れる。
「貸してほしいね~・・。いくらぐらい?」
「20オウカ程。借りるのはできないだろうか」
「ん~、20オウカね~・・」
いきなり呼ばれてお金を貸してほしいと言われもいきなりの過ぎて悩む彼だが、今現在にかけて使ったお金の額がまだ1オウカもしてない。なのでお金を貸す余裕ぐらいはあるが、そもそも彼はお金を貸すこと自体抵抗がある。例え公的機関だからと言って易々と貸そうとは思っていなかった。
債券ならともかく金の切り目はと言うし・・。
ふむ、どうしようかと悩む姿に周りが彼がどう出るか様子を窺っている感じ。しかしここでトクガワの言葉が彼の考えを変える発言をしたのだ。
「ただ私達は20オウカを20オウカで借りたいということじゃないんだ」
「ん?どゆことそれ?」
「バレルとハクでお金を貸して頂きたいんだよ」
「バレルとハクで?」
そう言われると彼は何か思い当たる顔になる。
「クラリオン君。君はオウカ硬貨ではなくバレルとハクの支払いを求めたことがあったのを覚えているかい?」
「あ~~・・・。うん、あった」
それはまだ彼がオウカの価値が分かってない辺りなこと。
「2、2オウカになります・・・」
「あ。じゃあバレルでお願いしていいですか?手持ちのバレル硬貨が少ないので」
「え?バ、バレルでですか!?」
「うん」
「あ・・あの。はい・・・」
2オウカをバレルに換算すれば20,000バレル。つまり1バレル硬貨で2万枚、10バレル硬貨なら2,000枚。それを彼は知らずにバレルやハク硬貨での支払いを求めた時が何回かあったのだ。結果、バレル硬貨だけで100,000枚数ぐらい保有中なのである。
「今・・・部屋に土嚢ように積まれているような・・」
何故そんなバカげた数まで集めようと思ったんだと周りは問いただしたい気持ちにさせる。
だってさ、バレルとか結構使うかなと思ってたんだよ。その時はお金のやり取り全部バレルだけで済んでいたし。とのことらしい。
なおその時の受付の人は、子どもでオウカ程稼ぐんだから何か訳ありなんだろうと余計な気遣いを起こして、お互いすれ違いを何回も繰り返して今に至ったのだ。
「つまりクラリオン君はバレルとハクを必要以上に保持していて、ギルドは慢性的バレルとハク不足なんだ。せめて換金だけでもしてもらえないだろうか」
明らかに自分が迷惑を掛けていたことに眉間に指を置いて「あ~」と言いながら目をつぶると・・・。
「・・っ、はい、部屋に置いてあるバレルとハクは換金してもらっていいです」
「それは助かる。あとで荷台と護送も付けて取りに行こせよう」
現金護送することになった。
「あと20バレルだっけ・・?利息無しで貸すよもう・・」
それには周りの意外であったかのか少しざわつく。
「無益でいいのか?」
「誠に残念ながら」
本当は利息を付けたかったが迷惑を掛けていた手前、協力しないというのもあれなのでお金も貸すことにもした。本当に残念そうな顔で。
「そ、そうか。何故悔しい顔をしてるか分からないが、これで大方の問題は解約したよ。善意的な協力に感謝する」
「・・・そうだね」
どこがと言いたげに吐き捨てて言う。
「それと出来ればこの話しは内密にお願いしたい。どうも資金の貸し借りは、相手がどうあれ癒着の温床と指図されるのが多いんだ。余計な荒波は立てたくないからね」
「別に言いふらす理由も無いんで心配しなくていいから」
しかし話しは簡単に進んでいるが事は結構深刻だったりする。何せこの町のバレル保有数がギルド4割強あったのが2割弱近くまで持っていかれ、バレル硬貨による町の資金回りが本当に悪化一歩手前で来ていたのだ。
しかもこの短期間で町の総資産の10分1近くまで彼は稼いでしまっているのだ。
「それとしばらくこの町での大きな取引や買い物は自粛をお願いしてもらいたい。クラリオン君が稼ぐ金額に対して、この町の資金だけだと回り立たてられないんだ」
彼への金銭のやり取りの桁がギルドや町の資産運用にも障害しかもたらさないことが明白。今後のお金使いでも釘を差された。
それからは融資者としてのサイン、返済期間、保証内容、有事の際の対応、その他諸々の細かいことも決めて、契約記号紙と呼ばれる紙に契約の詳細をまとめ始めた。
因みに契約記号紙とは、彼と町の門番のやり取りで手の甲に魔法陣の紙バージョンと思っていい。
その間・・・。
「思いのほかあっさり終わったわね~」
トクガワ達の話しを横目でフレアは聞いていた。
そもそもフレアはギルドの警備長であり、あとの話しはあまり関係ないから彼らの話し合いに参加しないで今は佇んでいる。
1日でオウカを稼ぐ子だから、子どもと思うのはやめろってマスターは言っていたのが頷けるわね~。
「弱みと見てつけ込む考えも・・まあ少しはしてたけど、善良な心はあって良かったわ~・・本当に」
ただこのギルド警備長、今の話し合いを佇んで聞いているだけでは無かった。彼の考えをさっきから読んでいたのだ。しかしフレア自体に思考を読める魔法とかスキルなんか持ち合わせていない。
彼の心を読めるようにしたのはただ一つ、記号式と呼ばれる物だ。フレアは彼と最初握手をしたその時に思考を読める記号式を組み込んでいたのだ。手を強く振って握手したのもバレないように違和感をなくす為であった。
「けど、この記号式本当に凄いわね~。魔力消費が激しいけど流石フーね~。だけどもう少しちゃんとしたことにお姉ちゃんは使ってほしかったんだけどな~」
苦笑しながらも彼の思考が読める記号式に対して何か思うことがある様子。そしてこの話し合いに繋がるまでの出来事を思い出す。
そもそもこの話し合いの前に相手の素性とか素行とか注意深く知っておく必要があった。何せ相手が子どもでオウカも稼ぐのだからどんな人物か予想が出来ない。
なのでギルドは彼に対して極秘の調査クエストを信頼おける冒険者に発行していたのだ。だから最近彼を後を追おうとする冒険者が増えていたのである。
しかし。
「どこも失敗か~。部屋の扉にミシャロ商会の怪しげな置物を置いて不用意に近づけないようにしてるらしいし~ちょっと厄介ね~」
そう、クエストは失敗に終わる。迷宮では尾行を引き剥がすかのようにモンスター群れをおびき寄せるはで迷宮での素行も不明。しかしモンスターの群れを殲滅したかのような跡があるから実力は確かにあるというのは分かった。
「私より強かったらこの仕事に自信なくしちゃうな~」
だけどあれは盲点だったわね~。
しかし彼が泊まるバーバリエ宿屋の従業員の女性から、やたら詳しい彼の内情を聞けたのだ。おかげで話し合いの道筋が作れるきっかけになった。ただ自慢げに「私の弟よっ!」とか嘘と誇張がいくつかあったので、真実かどうか確かめるのに変に時間は掛かったのもここに記述しておこう。
「だけど今度のクラリオン君の動きは注意した方がいいかもね~」
それから・・・。
「んじゃ、これで全部書き終えた・・っと」
「ああ。これで一通りだ。しかし本当にいいのかね?あとから見返りや要求をされても用意されないのは」
「もう決まったことだからいいよ。利息取る気はあったけど心情的に諦めたから。まああとお菓子のおかわりも気づいて用意してくれたし」
彼とトクガワとの話し合いで契約記号紙に全てまとめ終わって、今は一息付きながら気楽に話していた。特にこの話し合いでトクガワも彼について色々と知った。
彼はどんな目上の人だろうと敬うどころか遠慮なく話してくる態度に「ああ。きっと何かやらかす子だ」と早速不安に駆られていたりしている。
「あ。だけど。もし知っていたらちょっと聞きたいことがあるんだどさ」
「先ほどまとめた契約記号紙に抵触しなければ聞くが・・・何を知りたいのかね?」
「いや、そんな警戒しなくてもいいのに。スキル関連の本が置いていそうな本屋とか知らない?ちょっと覚えるスキルでも増やそうと思っているんよ」
ステータスの事を知ってから、自分が作ったスキルをチェックできるようになって、普通に存在するスキルはどんなものなのか比べてみたいと思っていたのだ。
「本屋か。すまないがあまり私も詳しくないんだ。そうだ。フレア、君はどこか知っていそうなところは無いかい?」
「私?そうね~~・・・」
こうしてギルドと彼の関係が深まった、いや深まってしまった日になった。というのもその日から時々、応接室でお菓子だけ食べに来る集りとして彼はやって来るのだから・・・。
だってお菓子美味しいし。
「ふぅ~~。フレアおかげで助かったよ。彼の心情を教えてくれなかったらこうは円滑に話しは進まなかっただろうね」
「それはフーのおかげよ~。あの記号式のおかげだしね~。だけど彼、途中からお菓子にしか目が行ってなかったわよ~。本当はまだ子どもかしら?」
「それでも引き続き注意人物なのは確かだ。何かあったら頼むよフレア君」
「ふふ。まかせて頂戴」
そして・・・。
「ふむ。フレアさん情報から・・南大通りから少し離れた小道の~・・2ー4ー11番」
ギルドでの出来事があった日から数日後。フレアから聞いたスキルに関する書物がある本屋に目指して今日は早速その本屋に彼は向かってみた。
「お。ありおる」
そしたらスキルの本が値段が割高か法外の値段か分からないが1ハク辺りで売られていた。しかしそんな値段に関係なくスキル関する書物の類は全部買い占め、戦闘や生活で使える幅が増えるかもと読書とスキルの習得に時間を費やすと思っていたのだが・・・。
シルル教会。
「・・それでここに来たんですか」
「まさか初歩で行き詰まるとは思ってもいなくって何かアドバイスでもと」
「ここはそう言う場所じゃないんですけど」
彼は前に出会ったシルル教会のシスターであるミルティアと話していた。
いや~ね。スキルの本を買ったんだけど全然上手くいかなくて。それで最初はギルドでお菓子食べながら聞こうと思ったんだけど、応接室に何故か『売切れ』の札が置かれていたんだよ。不思議。だから他に頼れそうなところが教会ぐらいでさ・・。
「ほら人生に悩める人を救うのが教会の仕事だし。ということで先生として何かご教授お願えないであろうか?」
やれやれとミルティアは首を振るも気を取り直す。
「素直に教わりたいと言えないんですか?クラリオン君はもう少し言葉使いをちゃんとした方がいいですよ」
「失敬な。自分が尊敬できる人にはちゃんと敬語は使ってるさ」
「・・・クラリオン君が私をどう思ってるか分かりました」
「因みに今まで尊敬した人達は、中学校の先輩達が修学旅行で泊まった宿屋の露天風呂で、一気団結して組体操のタワーを決行した話しを聞かされた時と先輩が体育館の屋根に登ったはいいが降りれなくなって、仲間がタワーを組んで感動の救出劇を体育の授業じゃないのに外で繰り広げていたことです」
「なにを言っているか分かりませんが、ろくな人達じゃないですね」
「また失敬な。後輩であった自分を分け隔てもなく対等に接してくれたあんな先輩達はいないっ!」
今でも心残る青春時代を熱く語る。
「どうしてクラリオン君の言葉使いが悪いのが分かった気がしました」
「まあ茶番はここまでとして月謝は出すので、この本に乗ってるスキルについて教えて下さいミルティア先生」
月謝袋も渡すも袋には「お世辞」と書かれた文字。
「あ。間違えた。こっちです」
訂正してちゃんとした月謝袋の方を渡す。なおお金は1ハク。
「・・はぁ。クラリオン君、何でもお金で解決しようとするよくありませんよ。素直にお願いすればいいの。いちいちお願い事する度にお金なんて使わないでしょ?」
「でも買い物のお使いで余ったお金をお小遣いにしていいって言うと子どものやる気と行動力は凄いぞ」
「屁理屈は言わなくていいです。いい加減ちゃんとお願い出来ないんですか」
「だって、金銭のやり取りには責任と期待を求めてるわけで・・」
「出来ないんですかっ」
「・・・お願いしま~す。ミルティア先生」
「はい。よく言えました」
ここも思いのほかここも面倒なところだったなと彼は若干後悔した。
そして本題に戻り・・・。
「それでクラリオン君は何が分からなかったの?」
「この本に想像して魔力に込めれば大抵の簡単なスキルはホモでもできるって書いてあるんだけどさ」
「なんてこと書いているんですかっ!?この本はっ!」
ただ彼はサルをホモサピエンスを略してホモと言っただけである。
「次から紛らわしい言い方しないように」
「は~い。ところでさミヤちゃんだっけ?ぶっちゃけ襲われる覚悟で来たんだけど」
「ミヤちゃん達なら外に遊びに出てるわよ。夕方前には帰って来ると思うけど」
そうか。残念なような残念じゃないような・・。
「まあいいか。で、実際どうしてできないのか分からないのよ」
「だけどどれも初級のスキルの内容ですよね?クラリオン君ならどれも簡単に覚えられそうですけど・・・え?もしかして知らないんですか!?」
「ちょっと癇に障るな・・。普通のスキル以外なら無数に覚えてるわ。ミルティア先生はどうよ?お幾つお覚えで?」
「え?それは・・・ま、まああれですよ。そ、そもそも別にスキルが無くても簡単に火とか水とかは出せるんですよ」
ほらと言わんばかりに指先からマッチのように小さい火と少量の水を出して見せた。
「!?スキルじゃなくて?」
「魔法の方で極簡単な無詠唱魔法です」
「魔法?あ。なんかそう言えばスキルと魔法の二つがあるとか書いてあったな~・・」
あのウズラ卵からのメールの内容を薄っすらと思い出す。
だけどスキルと魔法ってどう違うんだ?ミルティア先生から出す火と水がスキルなのか魔法なのか区別のつかん。
そんな彼の様子に先ほどの話しを忘れていることにミルティアは安堵する。何故ならばミルティアはスキルを一つしか覚えてないのである。それを若干コンプレックスとしているのだ。
「魔法とスキルの違いはステータスに載るか載らないかぐらいです。他にも細かな違いはあるけど、魔力を形に。それをより確かな概念あるものへと昇華するのが魔法でありスキルなんです」
「へーー」
ステータスに載る載らないかの違いか。なら見た感じ区別のしようがないな。
「けど想像は出来ているはずなんだよね~。何で出来ないんだろ?」
「ではクラリオン君。何でもいいからこの本に書いてあるスキル一つを試しに私に見せてください」
「あい分かった」
彼は本に書いてある炎のスキルを出してみようとするも・・・。
「やっぱ出ない」
「ん~。うまく魔力を形に出来ていないですね」
「できてると思うんだけどな~」
それから頑張ってみるが・・・。
「何故出来ないっ・・・!」
「えーーーっと、その、人それぞれですよ。人によって得意不得意があるじゃないですか」
全く習得出来なかった。ミルティアもあれやこれやとアドバイスはしてみるものの成果は何一つ出ずに終わった。
くそ!『スキル開発』でも不条理に出来ないスキルもあったけど、これもかっ!
その様子にミルティアは。
「じゃあ、魔法を覚えてみたらどうですか?私も色々やってみたから詳しいですよ」
ミルティアは手から魔力からなる光る球を作りあげると、頭の上より高く投げると風船のように浮かびゆっくり下に落ちていく。
「クラリオン君も私みたく魔球を作ってみてください。これを操れればスキルと同じようなものです」
「本当にスキルか魔法かの区別がつかないな・・」
「これはただの魔力の塊みたいなものです。これなら誰でも簡単に出せますよ」
ん~、そうは言ってもね~。魔力の塊とかそんな感じなのは分かるけど・・・。
とりあえず彼はイメージしてみると。
ゴン。
「あ。できた。やればできるもんだな自分。なんか床がゴンって音鳴ったけど」
そのままゴロンゴロン転がってミルティアの足元まで転がる。
「クラリオン君。これ重いんですけど」
「うん、ボーリングの球かなって思った」
「どうすればこんな魔球ができるんですか・・」
「魔法って不思議だね」
「どうしてそれで冒険者やってられるんですか・・・」
というわけで今度は魔球作りを開始する。そして魔法との相性が良かったのか思考誤差しながらも短時間でミルティアと同様の魔球を作ることに成功する。
「ミルティア先生できました。渾身の出来です」
「う~ん、魔球はちゃんとできるようになりましたね。それで魔球を頭より高く投げて、魔力だけで動かしてください」
そしてミルティアはお手本を見せる。
高く上げた魔球の真下で息を吐いて受け止めて、息を調整すると球が上下に浮き沈みし始めた。
「お~」
「私はこんな風にするけどやり方は自由にやってみて。」
「これはもう一発芸の領域」
「違いますから」
という感じで練習開始。
そして夕方・・・。
「ん~、これは意外に使えそう」
それなりに魔球を動かせるようになって彼もご満悦な様子。
「だけどこの魔球の数どうにかなりませんかクラリオン君・・」
普通なら魔球すぐに消えてしまうのに彼のは何時間残り続けていた。と言うより数日残り続けた。
そして・・・。
「ただいま」
彼の練習中に遊びから帰ってきたのかひょっこりミヤちゃんが帰宅する。
「あ。ミヤちゃんお帰りなさい。みんなはどうしたの?」
次来たら倒すと宣言していたミヤちゃんであったが、それよりもトテトテとミルティアに向かって手に持ったものを見せる。
それを見た瞬間さっきまでの事を忘れさせる衝撃が目に映った。
「これ捕まえた」
「あらすごいじゃない」
「「死んだのこの2匹。あと3匹捕まえた」
ネズミであった。尻尾を持ってプラ〜ンとしている40cm強ある巨大ドブネズミ2匹をミヤちゃんはミルティアに見せていたのだ。
「じゃあこの2匹今日食べましょうか」
「んんんんんん!?!?!??」
衝撃的な会話に驚きを隠せない。
「えっ?ん?食べっ!?食べるん!?」
「クラリオン君も今日の夕飯一緒に食べます?今日はミヤちゃん沢山捕まえたので」
「ちょっ、ちょっと待って・・・」
ダメだ。魔法以上にインパクトが・・。というホントに食べるのっ!?あのネズミをっ!?ラットを!?
そんな苦悩している様子にミヤちゃんは。
「やらん」
持っていた2匹を後ろに隠す。
「ミヤちゃん意地悪しちゃいけません。みんなで仲良く食べないと」
「待て。えーっとまずそのネズミ・・捕まえたのか?」
ミヤちゃんが持っているネズミに手を指す。
「拾った」
ドヤ顔のミヤちゃん。それにミルティアは説明する。
「このネズミはね。体は大きいんだけど捕まえるの難しいの。ミヤちゃんだから捕まえられるのよ。流石獣人の子だわ」
どう声を掛ければいいのか分からない・・。
そんな時にあとから遅れて他の子ども達がやってきた。
「誰だお前?」
「ん~。あっ。ミル姉が言っていた前に言ってた子じゃないかな?」
「男2人さっさとこの三匹持ちなさいよ。重いんだから」
初めての対面にお互い顔を見合うが、それ以上に彼は一番後ろの女の子が引きずっている袋を凝視する。
すげぇ暴れてる・・・。
「お帰りみんな。メルダー、クロエ、マルリちゃんも」
ミルティアは帰ってきた子ども達に彼を紹介する。
「前に言ってた子なんだけどね。クラリオンって言うの。今ちょっと魔法の練習していたのよ。みんな仲良くしてね」
簡潔に自己紹介すると同じ同性だからか男2人が彼の元に駆け寄ってくる。
「思い出した。なんか冒険者やってるとか聞いたぞ」
「やっぱり迷宮に行ってるの?」
「こら男2人!いえ、もう一人増えて3人!いいからこのネズミを持ちなさいよっ」
子どもよりネズミに目線が行く。しかもそれを食べるとか言うもんだから、こいつら病気とか感染病にかかってないだろうなと一歩距離を置いて警戒する。
「とりあえず色々と聞きたいのは分かるが、ちょっと待て」
「みんなー。今日の夕食はクラリオン君も入れて焼肉ですよ~」
しかし遮るようにミルティアが今日は豪華に焼肉宣言。ただし肉はドブネズミである。
「だよな!今日5匹も捕まえたんだから!」
「久しぶりのお肉だね」
「だから手伝えって言っているのよ馬鹿3人!」
わいわい騒ぐ中で一人危惧する。
え。あのネズミ主体のサバト料理食わせられるの?
「・・・外食にしよう」
「え?何ですかクラリオン君?」
「はい!今日はみんなで外食!新しい出会いに!魔法について教えてもらった感謝を込めて!!」
外食という言葉にみんな「?」である。
「クラリオン君。外食ってお金掛かるのよ。だから・・」
「奢ろう!全力を掛けて奢る!なにそれぐらい容易いし、いい店も知っている。冒険者である自分ならーーっ!!それぐらいできて当然なのだーーーっっ!!」
そして・・・。
「はーいみんな~。改めまして~クラリオンと言いま~す」
今彼らは彼が紹介した料理店にいる。あのあと「いえ、奢ってもらうのは・・」とか「いえいえ是非とも礼を」と遠慮合戦に発展。膠着状態になった彼は打開策として・・・。
「動くなこのミヤちゃんがどうなってもいいのか!こっちは命掛けてグハッ!?」
ミヤちゃんをたぐり寄せ、指で銃に見立てて頭に突きつけるもくるりと秒ですり抜け、彼に腕を回して逆に締め付け落とす。
そんな命がけの茶番劇の果て、彼は満身創痍でなんとか勝利を掴んだ。
だってネズミなんか食いたくないし、それをこいつら食べてるんだから病気で亡くなるのも時間の問題。せめて上手いものでも食べて死んでほしい。と、彼なりの適当な配慮もあった。
「でも本当にいいのですか?ここ物凄く高そうで・・場違いなような」
「いいのいいの。ここの店長とは顔見知りだから」
顔見知りと言ってもまだ最近知ったばかりである。
「今日はお友達をお連れに?」
「お、店長。先日はどうも。ちょっと騒がしくなるけどよろしく。」
そんな感じに店長に挨拶を終わらせ注文を頼ると今度は子ども達から質問攻めに合う。
「なあなあクラリオン。ミヤから締め付け受けていたけど大丈夫なのか?」
まずメルダーという元気ある男の子から体の心配を気遣った言葉を貰った。
「大丈夫な訳ないだろ。あれで死にかけたの二度目だよ」
「そっか~。二回も食らったか。俺もクロエもやられたぞ。俺なんか腕を折れたしな!」
「僕その時泡吹いて、気絶していたんだけどね」
クロエという大人しそうな男の子もミヤちゃんにやられたそうだ。
「マジか。やっぱあれ普通に折れるか」
「もしミル姉ちゃんが治せなかったら・・・ふっ、今でも折れた骨が疼くぜ!」
「へ~。ミルティア先生って治癒スキル持ってるんだ」
ミルティアが一つだけ持っているスキルが治癒スキルだと分かった。
しかし骨まで治すのか。ミルティア先生意外に凄いのか?でもメルダーもよくそれでミヤちゃんと一緒にいられるな。トラウマだよ普通は。
なお張本人であるミヤちゃんは「?」と理解してない様子。
「お待たせしました。料理をお持ち上がりました」
しばらくしてから店員が料理を次々持って運び出してきた。それを見たミルティアは彼の耳に向かって小声で話しかける。
「本当に大丈夫なんですかクラリオン君!?払えるお金なんて私持ってませんよ!?」
「だから奢るって言っただろ。第一初め会った時に自分の財布見たでしょ?」
彼が財布落とした時にミルティアはオウカ硬貨を持っていたのを見ているが、それでもミルティアは「本当に?大丈夫ですか?大丈夫なんですか?」かとしつこく目を潤つかせた。
「全く・・。すいません店員~」
「はい。なんでしょうか?」
「頼んだ料理の料金って大体でいいんで、いくら位になりますか?」
「そうですね。御料金は800バレルか相応かと」
「だってミルティア先生」
話しを聞いたミルティアはその額を聞いて目を眩ます。
「8、800バレル・・・。8、800・・」
私達1日の食費で頑張って20バレル。それが800バレルですと・・・。
「目が覚めんな」
ミルティアの顔の前で手を振るも反応がない。その様子を子ども達は心配そうに見て・・・・はいなかった。
「死んだ?」
「ミヤ。マルリ的にはそれはないのよ」
ミヤちゃんの言葉に訂正を入れるマルリ。ミヤちゃんと同じ女の子で、シスターであるミルティアの弟子志望者でもあるらしい。だからマルリも彼同様にミルティア先生と呼んでいたりする。
「それよりもう食わね?」
メルダーは出された料理に釘付け。
「そうだな。じゃあミルティア先生起こすか」
パン。
ミルティアに指先を向けて練習の末にものにした魔球を軽く放つ。
「あいたーー!?」
撃たれた頭を擦る。
「う~。頭が痛い・・・」
「ミルティア先生が復活したので盛大に食べるぞ」
その言葉に子ども達は歓喜の声をあげる。そしてミルティアもいつまでもボーっとしているわけにもいかず。
「そ、そうね。それじゃあみんなシルル様に感謝の祈りを・・」
「じゃあ!全員食べてよし!」
ミルティアの言葉を遮り、大きな声でこの場を仕切る。
そして待ってましたー!と言わんばかりに子どもらは料理を口にする。
「み、みんなー?食べる前にやることあるよね~?」
食べるのを制止させようとするが、男は口いっぱいに肉を頬張り、女の子達はお皿に食べる分だけ盛りつけて行儀良く食べている。彼も一口食べるとミルティアの代わりにみんなに話した。
「よしみんな。なんかシルル様というのに感謝してるか?してるよな?」
既に食べているからみんな首を縦にして頷く。
「OK分かった。もう気にせず食べていいぞ」
そして子ども達は食事を再開する。
「だってミルティア先生。みんな感謝してるって」
「全然祈りになりませんよ~」
「いいじゃん今日ぐらい無礼講で」
「じゃあせめてクラリオン君はしっかりしてくださいね?」
今さら止められそうにないからせめて彼ぐらいはしっかりやってほしいと思った。しかしそう易々と彼は人の言うことは聞かない。
「はいはい・・・神様かーんしゃ!いただきま~す」
手を合わせ軽く頭を下げたら、肉まんみたいのに手を伸ばす。
「クラリオン君。それお祈りとは言わないわ」
「自分が生まれた故郷ではこのやり方が感謝の仕方」
「はぁ。そういうことにしておいてあげます」
仕方なくため息をついてミルティアも祈りを捧げてから料理を食べ始めた。
それからしばらく騒ぎながら自己紹介やら楽しく食べていたのだが、ちょくちょくとミルティアと子ども達は彼を覗き見る。
「ん?何?」
「いえその・・ずいぶん変わった食べ方してますね?」
「これのこと?このマイ箸?」
彼の手には箸が持たれていた。それでさっきから料理を取っては口に運んで食べているのを珍妙に見えたそうだ。ただしミヤちゃんは黙々と食べている。
「それ僕も思ってた。なんか変わった食べ方だな~って思ってた」
クロエの質問にみんなが興味深々であった。ミヤちゃんは除く。
「別にフォークやナイフ使って食べられるけど、この食べ方が故郷での食べ方なんだよ」
「「「「へぇ〜」」」」
だからそんな珍しい食べ方をしている彼の故郷にメルダーは聞いた。
「なあなあ。クラリオンってどこから来たんだよ」
「・・多分あっち」
そんなこと言われても答えられらくもないが面倒なので適当の方角を差す。
「お前は空から来たとでもいうのか」
多分間違ってはいないだろう。
「ねえ。あんたもミルティア先生を先生って呼んでいるけど、弟子になるつもり?」
今度はずっと罵声しか声を掛けてないマルリが話しかける。彼もミルティアを先生と呼んでいるので同じ弟子なったのか気になっていたのだ。
「違う違う。スキルとか魔法について教えてもらっているから、敬意を払って先生と呼んでるだけ」
「そうなの?」
「そうなの」
「あぁ〜あ残念。せっかく先輩として色々とこき使えると思ったのに」
残念そうな顔をしたがそこまで気にしていたわけでもなく、あっさりと表情変えて食事に戻る。
一方ミヤちゃんは特に質問はないらしく、欲しい料理をずっとモグモグ食べている。それでもっていつの間に店員を呼び出しては追加オーダーすらしてる。
ミヤちゃんなかなか侮れない性格だよな・・・。
そして楽しい食事も終わり。
「924バレルになります」
「あとちょいで1ハク超えそうだったな」
「924バレル・・・」
また思考停止になりそうになるミルティア。
ミヤちゃんの追加注文が結構高めに付いたらしい。しかし彼は気にしてない。あのネズミ喰わされるのであればこの程度はした金よっ!とのことである
「あの・・かなりお高い食事だったと思うんですけど・・」
「だから奢りっているでしょうに」
「でも・・・」
ミルティアもこれ以上言っても仕方ないのは分かっている。だからせめて代わりになる何かを考えると。
「分かりました・・。次来たらもっと色々教えられるようにしますね」
「うむ。それは期待してる」
2人は話しを終えると待っていたのか話しが終わると子ども達は声を掛ける。
「ミルティア先生。話しは大丈夫ですか?」
「ええ。終わったわよ」
「じゃあなクラリオン」
「またねクラリオン君」
「おう。またな」
こうして今日の楽しい夜は過ぎていった。しかしミヤちゃん最後に。
「お腹空いた」
「ミヤちゃん・・・」
ミヤちゃんはマイペース。




