表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
8/16

決裂

 コメディショーをこなし、夜はバーで酒を飲む。

それが俺のライフスタイルになりつつあった。

いつしか、俺にはシュレックのあだ名がつき、そこそこ知名度も増した。


「シュレーック、ヨカッターヨ」


「シュレックじゃねぇっつってんだろ」


 そんな風に悪態をついたが、まんざらでもなかった。

アヤベさんのスターになるっつー夢。

それに乗っかるのも悪くねぇかもだ。

だが、事態は急変した。

 今日も酒をたらふく飲んで、ホテルに帰る途中だった。

前を歩いていたアヤベさんが、突然、立ち止まった。


「……」


 いきなり立ち止まったせいで、俺は危うくアヤベさんに突っ込む所だった。


「うおっと、どうしたんすか?」


「手切れ金だ」


 振り返って、メニー札の束を俺の方に向けて来た。


「……何、言ってるんすか。 いらねっすよ」


 手切れ金?

意味が分からねー。


「お前の方が人気が出たら、意味がねんだよ」


「人気? あんなの、ちょっとチヤホヤされてるだけじゃねーすか」


「それがダメなんだよっ! いいか? チヤホヤされたいのは、俺なんだ! お前はただの踏み台で、アニキ、いい天気でゲスね、とか何とか言って俺のご機嫌を伺う召使い、その程度で十分なキャラなんだよ!」


 アヤベさんは、物凄い勢いでまくし立ててきた。

そんな風に思ってたのか……

本音を暴露され、俺は戸惑った。

この人が、こんな器の小せぇお方だったとは。

しかし、ここでこの人に見捨てられるのはマズい。

アヤベさんは、俺の胸ポケットに無理矢理手切れ金をねじ込み去って行った。


「ま、待って下さいよ!」






 

 ホテルまで追いかけて、ドアを叩く。


「コンビでやるの、考え直してくだせえ!」


 すると、キイ、と扉が開いた。


「アヤベさん、考えなお……」


「も、申し訳ございません、大月様」


 申し訳無さそうな顔で出てきたのは、僕だった。


「アヤベ様からの申しつけで、しばらくあなた様の面倒を見るようにと……」


「……なあ、おめぇからも説得してくれよ」


「私はアヤベ様の僕であるが故、その命令には従えません。 あなた様がお金に困らぬよう、明日、仕事を斡旋致します」


 ……仕方ねえか。

別に、コメディアンになりたい訳でも、スターになりたい訳でもねえんだ。

ここは大人しく、僕の斡旋する仕事を受けるのがベストかも知れない。

 こうして、翌日俺は僕と合流して、仕事を紹介して貰うことになった。







 早朝、ホテルの前でポケットに手を突っ込みながら待っていると、僕がやって来た。


「おはようございます」


「おう、で、どんな仕事をすりゃいい」


「あなた様にして頂くのは、解体工事でございます」


「解体?」

  

 解体工事なんてしたことねーが、単純な力仕事なら、変に職場の奴らと話す必要もなさそうだ。


「何を解体すんだ? ビルか? テナントか?」


「いばらの賢者像の解体でございます」


 



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ