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ネタ見せ

 翌朝から、俺とアヤベさんでネタの練習に入った。

場所は最初に俺がやって来た公園だ。

ここは美術館だったり、古城の残骸が残っていたりして、観光客的な奴らも多い。

それと、でかいリスが多いのも特徴だ。

何でも、ここに来た転生者がリス好きで、よかれと思って公園にリスを放ったらしい。


「食ったらうまいんすかね」


「お前はやりかねないから怖ぇーわ」


 早朝から練習を始めて、昼からはアヤベさんが街を案内してくれた。

観光地みてーなとこを回ったりもしたが、俺がそういうのに興味がねぇと分かると、飯のうまい店に連れて行かれた。


「ガフッ、うめぇっす」


「だろ? 足んなかったら追加注文してもいーからよ」


 夜はアヤベさんのスタンダップ・コメディを客席に紛れて見学。

何言ってんのかは分からねーし、俺はあくびをこらえるのに必死だったが、終わった後はすげぇ良かったっす、とゴマをすっておいた。

実際、この人について行きゃあ、飯の心配はいらねぇ。

日に日に、俺はこの人のことが好きになっていった。


「アヤベさん、俺、舞台立ったことないんすけど、大丈夫すかね?」


「最初は誰でもそうだって。 緊張しないでやるには練習しかねんだ」


 そうやって練習を重ね、とうとうステージに立つ日がやって来た。

小汚ねぇコメディハウスで、入場料は1メニー。

客は最大で50人って規模だ。

始めてのステージで緊張してねぇっつったら嘘になるが、アヤベさんの顔に泥を塗るわけにはいかねぇ。

短ぇネタだし、まあ、何とかなるだろ。

 何人かのコメディアンがネタを披露した後、俺らの出番がやって来た。


「っし、行くか」


 アヤベさんが大股でステージのセンターに歩み寄る。

俺もそれに続く。

客の入りは大したことねぇ。

ネタが始まった。


「なあゴロー、突然だけど、俺、錬金術使えるようになったわ」


「錬金術? ちょっと見せてくれよ」


 アヤベが手鏡を俺に渡してくる。


「オッケー。 俺の錬金術で、お前の顔を変える」


「マジか! うわっ、鏡に化け物が映ってる!」


「まだ何もしてないって」


 10人中、2人位の客がははは、と笑う。


「あ、これ、俺だわ。 じゃあアヤベ、せっかくだから、小顔のイケメンに変えてくれよ」


「物体の質量は変えられないんだ。 お前の顔だと、シュレックかハルクにしか変えられない」


「だったらこのままでいいわっ」


 ネタが終わり、マイクの前でお辞儀をすると、パラパラと拍手が起こった。







 ステージを終えて、俺らは行きつけのバーに向かった。


「初めてにしちゃあ、良かったぜ!」


「あざっす」


 始めてのコンビでのネタ見せ。

それがそこそこウケて、俺たちは気分が良かった。

そこに、さっきのショーを見ていたと思われる客がやって来た。


「シュレーック、メチャ、ウケータ」


「……?」


「ゴロー、お前、面白かったってよ」


「……まじすか」


 客は俺と握手をして、その場から去って行った。




注:ネタは異世界の言葉でやってます

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