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プレゼント

 俺は、列車の座席から窓の外を眺めていた。

煌びやかな街の景色がそこから見えるが、どんどん遠のいていく。

でかい川を挟んで、こっち側はもう何もない田舎だ。

駅に到着すると、俺は列車から降りた。

コートを羽織った奴らとすれ違う。

みんな、俯いて暗い表情をしている。

そりゃ、そうか。

みんな仕事帰りで、疲れてんだ。

電光掲示板が目に付いた。

サンタクロース的な奴が、何か言ってやがる。


「もう、クリスマスかよ」


 だが、そんな浮かれた気分にはなれない。

金なんかねえし、プレゼントなんてもっての他だ。

ふと、街にいたホームレスを思い浮かべた。

連中も、クリスマス気分になんてなれないハズだ。

生きてくのすらままならないんだからな。

 駅から外に出ると、子供を連れた親がいた。

子供が、店頭のディスプレイを見ながら、何か言っている。

しかし、親が子供の腕を引いて、そこから引き剥がしていく。


「……」


 何故か、腕がうずいた。

石像が破壊されて、もうこの腕輪の効力はないハズなのに。

気が付いたら、俺は店内に入って、ディスプレイにあった靴下に入ってるお菓子セットを買っていた。


「おい」


 父親と子供が振り向く。

父親が警戒した表情で、俺のことを睨み付けて来る。


「……これ、やるよ」


 靴下セットを差し出すと、父親が驚いた顔をした。

そして、子供が目をキラキラさせて、父親の腕を引いた。

俺は、しゃがんで子供に靴下を渡した。


「ほら」


「イイノ? オッチャ、アリガート!」


 父親は、今度はまっすぐ俺の目を見据えた。

そして、小さく頭を下げると、その場を去った。

子供がすごい楽しそうにはしゃいでいる。


「ヨカッタ、ナ」


「ウン!」


 腕の痛みが和らいだ気がした。


「……そういうことかよ」


 俺は気が付いた。

人間には元々、見えない腕輪がついていて、罪悪感を感じるとそいつに締め付けられる。

俺は、それに気が付かないで今まで生きて来た。


「……だからか」


 だから、今まで苦しかったんだ。

良いことをすりゃあ、痛みは和らぐんだ。

俺は、来た道を引き返して、駅に向かった。

今から、街に戻って全力でいいことをする。

まずは、あの兄弟を止めねえとだ。

確か、あのガキの女は、いいことをすりゃあ、それが自分のパワーになるっつってた。


「……そうだ」


 俺は、あることを閃いた。

街のみんなに、何かプレゼントをしてやろう。

もらってうれしいもんといやぁ、やっぱ食いもんだろ。

ここにいる奴らの好きなもんを、プレゼントしてやりゃあいい。

俺は、チケットを買って、街へと向かう列車に乗り込んだ。


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