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ディオン

「……あー、やべえ、家の戸締り忘れてたわ。 わりーんだが、一旦家戻るわ」


「へ?」


 俺は小走りで小屋から飛び出し、急いで船のチケットを買って乗り込んだ。

冗談じゃねえぞ!

何が核爆弾だ。

何で俺がそんな世紀末戦争に巻き込まれなきゃならねえんだ。

アヤベさんから貰ったこの手切れ金50メニーで、できるだけ遠くへ逃げるんだ。

メインステーションから電車を使えば、かなり遠くまで行けるハズだ。

船が到着すると、ビルの隙間を縫って地下へと延びる階段を降りる。

閉鎖的な空間に出ると、券売機でメインステーションまでのチケットを購入して、ゲートを手で押して地下鉄を待つ。

この数日で、随分ここでの生活も慣れたもんだ。

最初は徒歩で徘徊してたのも、地下鉄を使えば簡単に移動できるって分かったし、思ったより、治安も悪くねえ。

そんな風に、ここでの生活を受け入れ始めた時だってのに、この事態だ。

物事ってのは、うまくいかねえ。

だが、俺はこの世界で生きていかなきゃならねえ。

逃げた先だって、言葉は通じねえだろうしな。


「やってらんねえぜ……」

 

 メインステーションに到着すると、地図の貼ってある場所に向かう。

とにかく遠くへ行きたい。

幸い、行き先は番号で表記されている。

ここの世界でも数字はアラビア数字の為、俺でも分かる。

見た感じ、109ってのが一番遠くの目的地っぽい。

俺は、109に向かう電車のホームへと向かった。









 ディオンは、観光客のスマホの画面に飛び込んで、移動する機会を伺っていた。

これで、この持ち主がラインを誰かに送れば、それに乗って移動することができる。

しばらくして、その持ち主がラインを受信した。

文面はこうだ。


「今、コンサートホールの中」


 持ち主の女性が返信を送る。


「マジ、写真送って!」


 ディオンは、その返信メールに乗って、相手の携帯に移動した。

そして、そこから飛び出す。


「きゃあっ」


「……ここは、コンサート会場? 超ラッキーじゃん」


 今日、ここで人気アイドルのコンサートが行われる。

会場内にはたくさんの人が紛れており、ディオンにとっては願ってもない状況である。

開始5分前。

会場はほぼ満席だが、空席もある。


「ちょーっと、すいませんねえ」


 ディオンは、人ゴミを抜けてその空席にやって来ると、何事もなかったようにそこに座る。

照明が消えて、ステージが明るくなると、アイドルのメンバーが現れた。

客が総立ちになって歓声を送る。

おもむろに、ディオンは指を手に突っ込んだ。


「オエエエエエエエエエエエエエエエッ」


「……キャアアアアアアアアアアアアアッ」


 口の中から、大量に虫が吐き出され、それが客席のファンにまとわりつく。

ムカデや、ゴキブリのような害虫が、足やら腕にまとわりつく。

一瞬で会場は、パニックに陥った。


「何なのよっ、コレ!」


 負の感情が、一気に蔓延した。      


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