プロローグ
新小説始めました。よろしくお願いいたします。
今日はイスタイル王国1000年目の建国記念日だ。
城内は一部一般開放され、非常に賑やかだ。
城の大広間では、パーティーの準備が着々と進んでいる。
建国記念日のこの日に次期国王の任命式も行われる。
「次期国王はやはり『ルーチェル』王子だろ。」
「そりゃそうだろ。国民の支持率も高いし、騎士としての武勲もあるし、頭も良い。国王に相応しいに決まってる。」
「女性にも人気があるしなぁ、正に完璧超人だよ。この国も安泰だな。」
‥‥‥話に出てくるのは我が弟ばかりで俺の話題なんて一つも出てこない。
次期国王と噂、いや決定事項である『ルーチェル・フォン・イスタイル』はこの国の第二王子だ。
そして、長男でありこの国の第一王子であり全く話題にも上がらないのがこの俺、『アルノイド・フォン・イスタイル』だ。
何故、俺の話題が上がらないのか?
それはルーチェルの方が出来が良いからだ。
ルーチェルと俺は一つしか年が違わない。
気がついた時点でルーチェルはいつも俺の一歩先を行っていた。
頭脳明晰、スポーツ万能、容姿端麗、おまけに性格が良い。
うん、兄として勝てる部分が何処にもない。
当然だが注目はルーチェルに迎い、俺の周りには人がいなかった。
俺は両親に褒められた事が1度も無い。
何故なら、俺が優秀な結果や戦果をとったとしてもルーチェルがそれよりも良い結果や戦果を残していくからだ。
こんな事が毎回あれば、腐っていくのは時間の問題だった。
誰にも評価してもらえない、褒めてもらえない寂しさがわかるだろうか?
更に決定的だったのは俺が10歳の時だ。
偶々両親の部屋の近くを通った時、話し声が聞こえた。
話はルーチェルを褒めていたのだが、その時衝撃的な一言を聞いた。
『儂の後を継ぐのはルーチェルしかいない。儂の子供はルーチェルだけだ。』
ショックだった。
何か色んな思いがグチャグチャして部屋に帰り泣きわめいた。
それでも誰も慰めてくれる人はいない。
この城、いやこの国には俺の味方はいない、と自覚した瞬間だった。
そして、俺は決意した。
成人したら、俺はこの国を出ていく、と。
そして、正に今日、俺は決行中なのだ。
人混みに紛れながら廊下を通り中庭に出る。
既に国民達は集まっている。
俺もその中に混じって見ている。
ベランダに親父達が出てきた。
「皆の者! 今日は建国記念日というめでたい日に更にめでたい話がある! 本日を持って我が息子、ルーチェル・フォン・イスタイルを王太子として任命する!」
大歓声が起きる。
『王様万歳!!』
『ルーチェル様万歳!!』
‥‥‥わかってた。わかっていたけど何かもう泣きたい気分だった。
俺の事なんて一言も出てこない。
もう、これで踏ん切りがついた。
俺は大歓声をあげる人混みに背を向けて歩き始めた。
泣きたいのをグッと我慢して‥‥‥。
この日、王族の俺は死んだ。
これからは只の『アルノイド』として第2の人生が始まった。