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忘れじの紡ぎ声  作者: ange
第1章
6/9

出会いは桜の木の下で5

今回と次回は、咲弥と浅葱はおやすみです。


プラプラと河川敷を歩くこと5分。川に向かって設置されたベンチに座る人物が見えた。俺は、その背に向かって足を早める。足音に気づいたのか振り向き、「あ、ゆきくん」っとのたまった。

「あってなんですか。こっちはわざわざ迎えに来てあげたんですよ、侑楽様」

「ごめんね。学校は?」

「昼までだったんで。───家、帰るんすよね。送りますから立ってください」

侑楽様はのそのそと立ち上がる。

「さぁ行きましょう、ゆきくん」

そう言って意気揚々と歩き出す。

「分かりましたから・・・って!そっちじゃないです!」

「えぇ〜?」

本当にこの人はっ!この方向音痴はいつになったらなおるんだ。

「いいですか?俺の後ろをついて来てくださいね?絶対に離れないでくださいよっ!!」

「は〜い」

うふふと何故か嬉しそうに侑楽様は笑う。

「はぁ・・・こっちは浅葱たちと飯食ってたっていうのに」

「たち、ですか?浅葱くんの他にも誰か?」

「あれ、侑楽様知らないんですか?昨日の会議でも・・・・・・また寝てましたね?」

「寝てませんよ」

「じゃあ、聞いてたはずですよ?水無月家の推薦で陰陽院に編入した、吉野咲弥ってやつです。本当に心当たりありません?」

「無いなぁ」

首を捻って侑楽様は答えた。確実に寝ていたな。俺は後ろにいるから見えないと思って好きな勝手なことしてたんだろうな、どうせ。

「その子は何故、編入を?」

「やっぱり聞いてなかったんじゃないですか!浅葱が陰陽院の中で倒れていたのを見つけたそうです。名前以外の全てを思い出すことが出来ないらしく、水無月家で保護という形を取ることにしたらしいですよ」

「ふむ・・・」

何かおかしな事を言っただろうか。あぁ、そういえば・・・

「侑楽様、多分見てないとは思うんですが、時雨様見てませんか?」

「ゆきくんはどうして否定から入るんですか?」

「え、見てないでしょう?」

「見てないですけどね・・・時雨さんがどうかしました?」

「知らないですけど、浅葱が探してたっぽいんで」

「どうせまた花詠さんの所じゃないんですか?」

あぁー確かに。でも浅葱もそれはすぐに考えつくだろうしなぁ。昨日の会議もすぐに終わったし、トラブルも無・・・くはないけどいつものことだ。それに、トラブルに手を取られるなんてこと、1番の年長者である時雨様には無いだろう。あの人が唯一手を取られるのは、浅葱のことだし。───時雨様が浅葱に心配をかけてまでする何かがあるのか?

「浅葱くんには、力になれなくてすみませんと謝っていてください」

「分かりました」

「それと」

「はい?」

「しばらく、京都にいることにしましたので別荘まで帰してもらえますか?」

何を言うのかと思えばそんなことですか?そんな・・・

「あんた何言ってるんだ・・・?」

「こちらで少し用事を思い当たりましたので、ひと月ほど葉月の別荘に滞在します」

「そういうことは、早く言えぇぇ!!」

そう叫んだ俺の目の前には、空港。そう、葉月本家のある岩手に帰るためには、飛行機に乗らねばならない。新幹線でももちろんいいのだが、目的地まで一気に行ってもらわないと、この人はどこの駅で降りるかわかったものでは無いからだ。

「ここまで来てそれ言いますか!?」

「今思い当たりました」

「んぬぅ・・・!それは、仕方ない・・・気もしますがっ」

「まぁまぁ。いいじゃないですか。ゆきくんとも中々会う機会がないですから」

「学生ですから」

「ゆきくん別に陰陽院に通う必要有りませんよね」

一体何度この言葉を聞かされただろうか。確かに、侑楽様の言う通りなんだ。俺の家は武士の家系で、代々葉月家の護衛をしている。“視る”力はあるが、それ以外の才は全くと言っていいほど俺の家には無い。その事に対しての不満は一切無いのだが・・・知識がないということだけは許せない。知らずに戦うのと、考えて戦うのでは圧倒的な差がある。それを埋めるために俺ほ陰陽院に通っている。まぁそんなこと、口が裂けても侑楽様に言うつもりは無いけど。

「浅葱とかすず様の面倒とか見ないといけないですし」

そんなことを言って俺は今日も誤魔化すのだ。


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