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Re^2 (Rescuer); of the Frankenstein's Monster  作者: 刹多楡希
第2部 Regain × Resolution(回復×決心)
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20. Return of Frankenstein's Realm

20. Return of Frankenstein's Realm

(フランケンシュタインの地への帰還)



You must create a female for me with whom I can live in the interchange of those sympathies necessary for my being.

俺の為に共に暮らし、生きるのに必要な心の共感を交わす事ができる女を創造してくれ。


Mary Shelley ”Frankenstein; or The Modern Prometheus”

Chapter 17 Monster's words of request for creation of the female.

メアリー・シェリー 『フランケンシュタイン あるいは現代のプロメテウス』

17章 伴侶の創造を願う怪物の台詞



 ダイヤモンド燃焼実験の後、俺たちはフィレンツェを発ち、4月上旬にローマにたどり着いた。俺はローマに初めて来たが、『諸帝国の没落』でローマ帝国の興亡を、『英雄伝』でローマの英雄達を知っていたため、どこか馴染み深かった。ただ剣闘士たちを戦わせたコロッセオは自らがラプラス邸で幽閉された経験もあり、好きになれなかった。


 一月ほどローマに滞在した後、ナポリに向かい、ヴェスヴィオ火山を登った。

俺は初めて火山を見た。今まで山というとモンブランの様な雪山のイメージが強かった俺にとって、溶岩が熱く燃える火山は同じ山だとは思えなかった。

 そこで俺は大プリニウス、ガイウス・プリニウス・セクンドゥスを知った。『博物誌』という大英百科事典の走りみたいなものを書いた人物だ。1700年ほど前にヴェスヴィオ火山が大噴火した際、調査に向かい命を落とした。自然哲学者でありながら、ヴィクターとは違い尊敬に値する人物だ。

 ヴェスヴィオ火山の大噴火で、都市ポンペイは溶岩に巻き込まれて消滅した。しかし、逃げる暇もないほど早く溶岩が町を襲ったため、遺跡として当時の人々の暮らしをそのまま残していた。

 俺はその話を聞き、噴火に巻き込まれた犠牲者達に哀れみを覚えた。自然から疎外された俺は、自然に否定された人たちを赤の他人だとは思えなかった。

 何故、神は、いや自然は時に残酷なのだろう。自然から冷酷な仕打ちを受けるのは、ヴィクターの様な自然を利用しようとした自然哲学者や、人の手によって創られた俺の様な存在だけではないのか?

 大プリニウスの活躍を聞いていると、自然の魔の手から、善なる自然哲学者が人々を救おうともがいている様に見えた。そんな事は今まで一度も考えた事はなかったというのに。

 

 次に立ち寄ったテルニの滝では、虹を見た。ファラデーは喜んで、ニュートンの光学に則った説明をしていたが、それに感心すると同時に、そのままでも十分美しい気がした。

そういえばゲーテはニュートンの光学に反対していた。多分、俺と似た様な感情だった気がする。

 ゲーテと会話を交わしてから、色々な事を経験し、俺は考えが変わった。あの時は、ゲーテが自然哲学を擁護した事に驚いたが、今ならその気持ちが少し分かる。また機会があったらゲーテと話してみたい。今度こそ、変な邪魔が入らない事を願う。


 6月17日、ミラノでデービーとファラデーは、ボルタに面会した。ボルタとは会った事は無かったが、俺の創造とも関係があった。ヴィクターはガルヴァーニの研究から電気に生命の源があると考えたが、ボルタによってその考えは否定された。ボルタはガルヴァーニの実験の本質は金属の方にあると考え、二枚の金属からボルタ電池を創ったのだった。

 そのボルタ電池を使って、デービーは様々な元素を電気分解した。そういえば、俺が王立研究所の屋根裏部屋で初めてファラデーに会った時も、ボルタ電池を使った水の電気分解を見ていた。ボルタとは奇妙な縁で結ばれているのかもしれない。

 電気に生命の源がないのなら、電気の力で死体から創られた俺は、生命ではなく機械なのだろうか?

 機械達もいつか、俺の様に意識を持って苦悩するのだろうか?


 そして6月下旬、デービー一行はジュネーヴに到着し、しばらく滞在する事になった。

 ジュネーヴ。フランケンシュタイン家の故郷。俺が壊滅させた彼らの暮らしていた地。

 俺が最後にここを訪れたのは、もう10年近く前の事だった。

 自然哲学者を抹殺し、自ら命を絶つつもりだった俺は、まさかこの地に戻ってくるとは夢にも思っていなかった。


 ある日、俺はファラデー達と離れて一人で物思いにふけりながら、ジュネーヴを歩いていた。

 途中、ジョン・ミルトンの友人ディオダティが造ったディオダティ荘のそばを通り過ぎ、俺はプレンパレ公園から少し先にある林の中に入った。

 人影のない林の中。俺はここで、幼いウィリアム・フランケンシュタインを殺した。

 嫉妬に駆られた俺が初めて犯した殺人。

 ウィリアムを殺した瞬間から、俺は本当に怪物になった。

 あの時の俺は、皆に愛されるウィリアムの事が羨ましくて、何でお前が幸せなのかと嫉妬の怒りに包まれていた。

  今の俺に残されているのは、消えない罪の意識と後悔だけだ。改心したとはいえ、俺は本当にわずかでも償いは出来るのだろうか?


 しばらく歩くと、子供たちの遊び場となっている開けた所に辿り着いた。

 子供たちは集まって何かを囲んでいた様だが、俺の姿に気付き、「怪物だ!」と叫んで逃げた。俺は林の中だと油断して外套で顔を隠すのを忘れていたのだった。

 怪物と叫ばれた所で、ウィリアムを殺した時の様な怒りも、ド・ラセーの時の様な悲しみももう俺は浮かばない。俺が人々から拒絶される事など良く分かっている。数少ない友達が出来たから、人々からどれだけ罵倒されようが心が折れる事などなかった。

 ふと、俺は子供が一人だけ逃遅れている事に気付いた。

「…本当に怪物なの?」

少年は俺と目が合うと、真っ直ぐな瞳で問いかけてきた。

「…少なくとも人間ではないな。…俺の事が怖いか?」

「…怖くなんかない…」

少年はそういいながらも、身体は小刻みに震えていた。

改めて良く見て見ると、服は汚れ、身体のあちこちは傷だらけだった。

おそらく、あの子供たちに虐められていたのだろう。

「…だって、同じ怪物同士だから…怪物だって、みんなにからかわれるんだ」

俺は、いつの間にかその少年に共感していた。

「俺から見れば、君は全然、怪物ではないな。いつか、理解してくれる友達ができるさ… こんな俺にだって友達ができたんだから…」

その言葉に少しだけ少年の顔が明るくなった。

「じゃあ、友達になってくれる?」

むしろ、俺が友達になって欲しいとお願いするべき事だ。俺には誰かの友達になれる様な資格なんてないのだから。

だが、そんな本音を言った所で事態をややこしくするだけだから、俺はただ頷いた。

それからしばらく、俺は少年と遊んだ。満足した少年に別れを告げ、俺は林を後にした。

背後から、少年に子供達が駆け寄り、口々に賞賛の声を挙げていた。

「あの怪物と遊ぶなんてすごい! 君は英雄だ!」



 俺は林を抜ける時、その手には豪華な装飾が施されたロケットがあった。林の中でロケットを拾ったのだが、さっきの少年にも心当たりはなく、持ち主を捜していた。

少し歩くと、広場に女性達が集まっていた。俺はロケットの持ち主について何か情報があるかと思い、少し聞き耳を立ててみた。

どうやら、一人の女性が何かを盗んだ容疑で、責められているのだった。

話の詳細を詳しく聞いていく内に、俺は声をかけた。今度こそ、外套をかぶって顔を隠しながら。

「…探しているロケットはこれか?」

いきなり巨人に話しかけられ、女性達は少し驚いていたが、ロケットを見ると表情が一変した。

「それです! どこで見つけたんですか?」

「さっき、林の中で拾った。多分、子供の相手でもしてる時に落ちたんじゃないのか」

容疑は晴れたらしく、女性たちはしきりに疑った事を謝っていた。


俺は、ウィリアムが身につけていたロケットを使ってジュスティーヌにウィリアム殺しの罪を擦り付けた。。

人から否定される苦しみは知っているのに、俺は何の罪のない相手を陥れた。それが賢さだとか思い込んで。



 ここにいると、どうしても過去の事を思い出してしまう。ファラデーといる間も、それは変わらなかった。

むしろ、ファラデーといると、彼が提案した伴侶の創造の事が頭から離れなかった。伴侶の創造を提案されてから、すぐにこの大陸旅行に付き合う事になり、何だかんだで俺は答えを先延ばしにしていた。

 もうここで決着をつけるべき頃合いだろう。

 だから俺はファラデー達から一度はなれ、昔過ごしたシャモニー・モンブランの山小屋で、一人で伴侶について考える事を決めた。

 ファラデーにその事を告げると、何かを予知したのか、必ず帰ってくる事を約束させられた。


 山小屋に行く前に、俺はフランケンシュタインの墓に立ち寄る事にした。

そういえば、以前墓に立ち寄った時は、俺は綺麗な紫色の花を供えた。だが、ある日、ファラデーに何かの祝いで同じ花を持っていくと驚かれた。彼から、この花はトリカブトと言って、猛毒で、復讐という花言葉を持つのだと教えられ、俺はそんな花を供えた事を後悔していた。

同じ間違いを犯すわけにもいかず、まずは、墓に供える花を探す事にした。


俺は花の咲いていそうな場所を巡り、白い花を供える事を決めた。

花を摘もうとした時、俺は気づいた。

ここは、ヴィクターと結婚したエリザベスを殺した場所の近くだ。

俺の伴侶を殺した腹いせに、俺はヴィクターの伴侶たる綺麗なエリザベスを殺した。


 後悔の念に駆られながら、俺が白い花を摘もうとすると何か光るものを見つけた。

それは、結婚指輪だった。落ちていた場所の頭上を見上げると、窓が開いて光が差し込んでいるのが見えた。おそらく、窓から指輪を落としてしまったのだろう。

 指輪を返そうにも、月が出るほど夜も遅く、さっき通った正面玄関は閉まっていた。仕方なく、俺は壁をよじ登り、窓から忍び込んで指輪をこっそりと返す事にした。

 部屋の中は、人気がないと思ったが、良く見るとベッドで小さな何かが動いていた。

 それは、2歳ぐらいの子供だった。俺はちょうど起きていた子供と目が合ってしまったが、子供は醜い俺を見て泣きもせずただ興味深そうに見つめていた。

とっさに俺は、言葉を発していた。

「…名前は?」

「ナマエハ?」

俺は、逆に聞き返されて面食らってしまった。確かに人に名を聞く前に自分から名乗るのが礼儀だ。

だが、俺に名前はない。だから名乗る事なんてなかった。俺はもう何と呼ばれようと気にはしない。

「俺は…怪物だ」

「カイブツ…」

怪物と名乗っても、子供はキョトンとしていた。まだ怪物の意味を知らないのだろう。

「ウィリアム」

俺が殺した子供と同じ名か…。この子には、俺が殺してしまったウィリアムの分まで、幸せになって欲しかった。

そんな虫のいい事を願っていた。

「ウィリアム、俺の事が怖くないのか…」

こちらのウィリアムは俺を否定しなかった。単に理解していないだけかもしれないが、それが少しだけ嬉しかった。

しかし、ここに長居をするつもりはなかった。

「俺は指輪を返しに来た」

そう言って、俺は拾った指輪を机の目立つ所に置いて帰ろうとした。

しかし、泣きそうな顔をしているウィリアムに気がついた。

どうやら、ウィリアムも何かが欲しい様だ。俺は少し考えた末、

「ウィリアムにはお花をあげよう」

そう語り掛け、摘んでいた白い花を一輪あげた。ウィリアムは花に満足したようだった。

俺は窓から降りてその場を去った。背後で扉が開く気配がしたが、振り返る余裕はなかった。



 その少し前、マリアは結婚指輪をなくした事に気付き、困っていた。ウォルトンに話、夜中に近くを探しに行こうとしたが、危ないと止められた。代わりに、ウォルトンが探しに行ってくれる事になった。

ウォルトンに捜索を任せ、部屋に戻ると、窓から、月明かりに照らされた巨大な何かが飛び降りていた。

さっきまで何かが部屋の中にいた。

不安になったマリアはすぐに息子ウィリアムの無事を確認した。

ウィリアムはマリアに抱きかかえられると、しきりに同じ言葉を繰り返した。

「ユビワ…カイブツ…カエシタ」

ウィリアムが指さす先には、無くしたと思っていた指輪が置いてあった。

「オハナ…カイブツ…クレタ」

ウィリアムは小さな手に白い花を持ちながら、笑っていた。

一体誰が、指輪を届け、ウィリアムに花をくれたのだろう?

「…カイブツ……まさか、あの怪物さん?」

マリアは、いてもたってもいられず、怪物の消えた方へと向かった。



フランケンシュタイン家の墓に辿り着いた俺は、さっき摘んだ白い花を供えた。

懺悔を終えた後、俺はシャモニー・モンブランの山小屋に向かって歩き始めた。

それは、8月頭の満月の夜の事で、遠くから別の影が墓に向かっている事に怪物は気付かなかった。



***


「呪われた、呪われた、創造物よ!(Cursed, Cursed, Creature!)」

満月が照らす中、フランケンシュタイン家の墓に供えられた白い花を蹴散らせながら、ゲンファータは叫んでいた。


 ジュネーヴに妻子を残した俺は一人で再び怪物の追跡を再開し、着実に距離を縮めていった。しかし、彼等の足取りを追って、結局ジュネーヴに戻ってきたのだった。

 満月の夜に故郷に戻った俺は、家族の眠る墓に見慣れない花が供えられている事に気づいた。

 それは、以前のトリカブトではなく、白いエーデル・ワイスの花だった。

 怪物が供えたものだというのはすぐに分かった。墓の前から巨大な影が消えていく所を遠くから見ていたからだ。

 花なんか供えた所で、お前に苦しめられた家族の無念が晴らされる事はない! 無念が晴れるのは、お前の死という供え物だけだ。


 早速、怪物を追いかけようとした俺の前に現れたのは、ウォルトンだった。

「探し物の途中で、聞きなれた声に導かれて来てみたら…戻って来たんですね」

俺は、一瞬嫌な予感が心をよぎり、ウォルトンに尋ねていた。

「ウォルトンさん、マリアとウィリアムは無事ですか?」

ウォルトンは暖かい笑顔を見せた。

「二人とも無事です。あなたの帰りを待っていますよ。一度休んではどうですか?」

安堵した俺は、再び怪物を追いかけようとした。

「すまない。今戻る事はできない。俺はまだ怪物を追いかけなければならない」

ウォルトンはいたたまれず、俺を引き留めた。

「…もうあの怪物は悪事を犯さないと思います…」

思いがけない言葉に、俺はつい怒りをぶつけていた。

「何だと!…ウォルトンさん、あなたはアイツの悪事を知っているはずだ!」

しかし、ウォルトンは冷静に話を続けた。

「知っています。しかし、悪い事をしなければならないほど、怪物は追い詰められていた事もです。私はジュネーヴに戻って来た怪物の行動を密かに監視していました。デービー卿は有名ですし、すぐに怪物が戻って来たことは分かりましたから。私はデービー卿やファラデーといった周囲の人々にも密かに話を聞き、しばらく様子を見ていました。悪い噂は何も聞かず、良い噂ばかりでした。いじめられていた子供と遊んであげたり、物を盗んだと疑われた女性の容疑を晴らしたり…」

ゲンファータはウォルトンの話を遮って叫んだ。

「アイツの善行の話など聞きたくない! どうせ、いい人の振りをして中身は怪物なんだ! ウォルトンさん、あなたは騙されてるんだ!」

 どうやら表面上は、改心した様に振る舞っている様だが俺は騙されない。

それでもウォルトンは食い下がった。

「もう復讐は諦めたらどうですか。今のあなたは見ていられません。あなたの兄ヴィクターも復讐に駆られ、憔悴して死んでいきました。その時にそっくりです。けれども、ヴィクターと違って、あなたには守るべき家族がいます。もう平和に暮らしましょう。怪物が改心した以上、もう復讐は何も生みません」

それは、俺自身が心の奥底で少し思っている事だった。だが、俺には復讐しかなかったから、その言葉を否定するしかなかった。

「…黙れ! アイツは殺さなくてはならないんだ!」

俺は供えられていた白い花を憎しみを込めて蹴散らすと、怪物を追ってシャモニーの方へ向かった。


 アーネストを止める事ができなかったウォルトンが途方に暮れていると背後で、声がした。

「…ウォルトンさん、あなたも怪物さんの事を知っていたんですね…」

それは、マリアだった。怪物を追いかけてこの墓に辿り着いたのだった。

「マリアさん、アーネストとの話を全て聞いていましたか…。私は怪物の事を知っています。もしかしたら、アーネストよりも詳しいかもしれません。アーネストの兄ヴィクターから直接話を聞いたのですから…」

マリアは蹴散らされた白い花を拾い上げながら言葉を続けた。

「…おかしい事かもしれないけれど、私も、あの怪物さんは悪い人じゃない気がするんです。アーネストは詳しい事を教えてくれないけれど、怪物さんにまつわる話を詳しく教えてくれませんか?」

「全てをお話ししましょう」

ウォルトンは、ヴィクター・フランケンシュタインの誕生から始まる悲劇の物語を語り始めた。


話を聞き終えたマリアは、壮大な物語にしばし呆然としていたが、やがて決意を固めた。

「アーネストに復讐をやめさせなければなりません」

 ウォルトンとマリアは、準備を整え、アーネストを追いかけ始めた。



***


1814年6月26日


 セント・パンクラス・オールド教会(St Pancras Old Church)のある墓の前で、少女メアリー・ウルストンクラフト・ゴドウィンはいつもの様に本を読んでいた。

墓にはこう記されていた。


MARY WOLLSTONCRAFT GODWIN

メアリ・ウルストンクラフト・ゴドウィン

Author of A Vindication of the rights of Woman

女性の権利の擁護の著者

Born 27th April 1750

1750年4月27日誕生

Died 10th September 1797

1797年9月10日死去



墓に若い男性が現れて、メアリーに親しげに問いかけた。

「今日も、母親の墓で読書かい?」

男の方に振り返ったメアリーは目を輝かせた。

「パーシー、今日も来てくれたの?」

パーシー・シェリーはメアリーに笑顔を返した。

「今日は大切な話があって来たんだ」

「大切な話なら、別の所に行きましょうか?」

「…いや。ここで構わないよ。君の母親にも聞いてほしい事だから」

墓の前で、シェリーはメアリーの瞳を真剣に見つめた。

「メアリー。君の事が好きだ」

メアリーもシェリーの瞳を見つめ返した。

「パーシー。私もあなたの事が好き」


互いに愛を誓い合った二人は、刹那の幸福を味わっていた。これから待ち受ける数々の不幸を知る事もなく。


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