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赤ずきん。  作者: しおん
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僕は赤ずきん。旅する商人だ。

名前の由来はおとぎ話のごとく赤いずきんを被っているからで、おばあさんが狼に食べられたからとかいう物騒な理由ではない。


そんな僕――――赤ずきんは、革でできたカバンを斜めにかけて新しい村を目指している。前の村ではいい毒が手に入ったから次の村で高値で取引できるはずだ。うまくいけば数週間は快適に生活する事ができるだろう。それもまあ、これの需要にもよるが。


そんな僕は今、前の村から続く森の中をさまよい歩いている。真っ直ぐに進んでいけば新しい村に行きつくという情報だけを頼りに、歩いてきた。だというのにそこには広大な大地しかない。僕は道を間違えてしまったのだろうか?


もうしばらくすれば、美味しいご飯を食べてあたたかなベットで眠ることができると思っていたのに、とても残念だ。携帯食料も底をつきかけている現状、最悪このカバンを食べるしかない。革は食べられても、売り物の毒は食べられないからな。


それにしても、周囲に何もないとは一体どういう事だろう。遠目にでも村が目視できる程度には視界は広くとれているはずだ。つまり、僕が手にした情報は偽物の情報だったということだろうか?毒を買ったから怪しまれたのか?そんなに怪しい者ではないというのに。毒ぐらい誰でも買うだろう。プレゼント感覚で。極楽浄土への片道切符は贈り物として恥じるものではないと思うのだがな……。


それにしても参った。


探していた目的地が無いのだからここは諦めてどこか別の場所にいかなければならない。だが、右も左も真正面も人の住んでいそうな場所は見当たらない。土だ、砂だ、更地なのだ。後ろは今の今まで歩いていた森。人なんてどこにもいやしない。


ここ数日は天からの恵みの雨もなく水筒の中身は盃一杯にも満たない程度。人は塩と水がなければ死ぬらしい。ましてや僕は連日連夜森を歩き続けた身、汗など滝のようにかいている。体内の塩分も水分も底を尽きるぞ!

手近なところに湖でもあればいいのだが、生憎水音ひとつしやしない。干からびて死ぬという最悪の未来が頭をよぎるのは無理もないことだろう。だがしかし、こればっかりは確実に避けたい未来だ。


とりあえず森の中に退避して水場を探すしか方法はない。水のあるところにならば人でなくても動物がいるだろう。とりあえずそれを狩って食べて飢えをしのぐしかない。まってろ動物共め、今いただきにいってやるからな!


ということで森に戻ってみたのだが、何もない。いや、厳密にいえば木しかない。鳥もいなければ虫もいない。歩いて来た時には気がつかなかったが、ここは生き物の気配すら感じない異様な空間だ。木もところどころ腐敗し朽ちているし、土地そのものが死んでいるのか?


そういえば、この毒の原料はこの森の草木だとか言っていたな。これは少し調べて見るのも悪くないだろう。前の村に戻りがてら暇つぶしにでも探ってみるか。




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