以外とマゾなんだなお前
「ちょっと、どう言うことよ!?」
「い、いや、知らねぇって。つーか、手ぇ放せ、そろそろ呼吸できなくてつらいし、首もげそう……」
身に纏っている露出度の高い革製の鎧から覗く胸部の白いはだに輝くタトゥー、主従契約の紋章を指差して迫ってくる少女。
「どうして、わたしがテイミングされてるのよ!?」
「……お前が同意したからじゃね?」
ブチッと言う音が聞こえた気がした。
どうやら、彼女の地雷を踏んでしまったようだ。
ブンッと空気を切る音がして、次の瞬間ズドオォンという音が鳴った。無論、彼女が俺の脳天にかかと落としをお見舞いした音だ。
「あり得ない!そんなわけないでしょ!?欲深くて浅ましいヒト族の男にわたしが忠誠を誓う!?心の奥底でわたしは、この男に屈服したがってた!?ムリムリムリ!そんなの絶っっっっっっ対に無理!!」
「でも、実際テイミングが成功しちゃってるから、そうなんじゃない?以外とマゾなんだなお前」
再びブンッと空気を切る音が響いた。
今度は、ズドッと言う音ともに俺の側頭部に回し蹴りが突き刺さった。
「あんたの言うマゾっていうのがどういう意味かは知らないけど、侮辱されてるってことくらいは分かるわよ?」
地面で伸びている俺を見下ろして少女がドスのきいた声で話しかけてくる。
「とにかく、絶対に認めないから。あんたの下につくなんて」
そう言って脚を持ち上げる。
今度は、倒れている俺の顔面を踏み潰す気がらしい。
「お、お前!いい加減にしろ!」
思わず怒鳴る。さすがにこれ以上喰らったら命に危険を感じる。
すると、今まさに降り下ろされようとしていた脚がピタッと止まった。さらにそのまま、ゆっくりとぎこちない動きで脚を俺の前からどけた。
「お、おい。どうした?」
とりあえず危機を回避したが今度は、彼女のことが心配になる。
だって明らかに動きがおかしい。
まるで、見えない何かに操られて動く人形のようだ。表情だって苦しそうだし。
「くっ……うっ……」
彼女は、苦しそうに短く唸ると自分の両手を持ち上げた。
そして、そのまま手を首に持っていき……。
「おい!なにしてんだ!」
突然、自分の首を締め始めた。それも尋常じゃない力で。
みるみる内に彼女の表情は歪んでいき、苦しそうな嗚咽を繰り返す。
「やめろ!くっ!おい、ゴブ太郎手伝え!」
ゴブ太郎と二人がかりで彼女の手をどかす。
なんとか彼女の自傷行為を止めた。
「はあはあ、なんだよ……今の」
「ゲホッ!ゲホッ!……主従契約の効果よ。あなた今、わたしに悪意を持ったでしょ?」
「そりゃあ、まあ少し。だって顔面蹴られたし……」
「それよ。テイミングされた奴隷が主に不快な念を与えて主が奴隷に悪意を持つと、契約の効果が発動して奴隷は、自分に罰を与えるのよ」
「罰ってレベルじゃないだろアレ……」
「そう言う物なのよ主従関係って」
そう言って彼女は、うつむいた。
「……確かに放置していて良い問題じゃないな。どうすれば良い?」
「取り敢えず、わたしと一緒に来てくれる?テイミングの解呪方法なんて聞いたことないけど……お父さんなら何か知ってるかも」
「了解。ただ、その前に一つ教えて欲しいことがある」
「なによ?」
「名前だ。君の」
その問いに彼女は、しばらく黙っていたが、やがて答えた。
「アリアよ。この、シドレアの森を支配する長命種の血に連なる者」
美しい金の髪をなびかせて、弓遣いの少女は謡うように名のった。
進藤カリヤ
見習い調教師
習得魔法:テイミング
習得奴隷
ゴブ太郎:小鬼LV17
アリア:長命種LV48
評価ありがとうございます!
出来れば感想いただければ幸いですm(_ _)m
やっと、ヒロインの名前出せた。