ほんとに弱いのね
「お、女の子!?」
一本の樹の上から弓で狙撃を行う少女を見て、驚愕の思いと戦慄が体を走る。
「グオラアァ!」
現れた少女を脅威と判断したのか小鬼共は、威嚇するように大声を上げて樹に向かっていく。
数では、小鬼が圧倒的に有利。しかしーー
「グオッ!?」
「ガラァ!?」
「グラァ!?」
次々と倒れていったのは、小鬼共の方だった。
「その程度?」
樹の上で少女は、余裕の笑みを浮かべていた。
彼女の放つ矢は、まるで意思を持っているかのようにホーミングして小鬼の頭を貫いていく。
「凄い……」
その人間離れした精密狙撃に素直に驚いていると、一匹の小鬼が俺の方を振り向いて閃いたように目を光らせてこちらに跳んできた。
そして、そのまま俺の首に短剣を当てて、
「グルルゥ!」
まるで、「この人質がどうなってもいいのか!?」的なジェスチャーを取る。
「それで?」
だが、少女は余裕の笑みを崩さない。
「それにしても、ヒト族ってほんとに弱いのね。小鬼一匹にその様ってちょっとやばくない?」
少女が俺にかけてくれた言葉は、思いの外辛辣だった。
「ついでに言っとくと、わたしそのヒト族とは知り合いって訳じゃないから人質としての価値ないよ?」
「ちょっと、ひどくね!?」
「グルオラァ!?」
俺と小鬼が同時に突っ込みを入れる。
「まあ、ここで小鬼からヒト族一匹救えなかったらエルフとして恥だから助けてあげるけど」
そう言うと、少女は躊躇なく矢を放つ。放たれた矢は、複雑なカーブを描き小鬼の持つ短剣の柄にヒットした。
弾かれた短剣は、綺麗に孤を描いて飛んでいった。
俺と小鬼は、しばらくポカーンと短剣が飛んでいった方を見ていた。
「はい、余裕♪」
「す、凄げえ!」
「グルウゥ!?」
エルフの少女の余裕の笑い声と俺の感嘆の声と小鬼の驚愕の声が暗い森に響いた。
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