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協奏の魔導士達(ソーサラーズ)  作者: 田んぼベアー
第1章
9/10

8話 決着

「アイツが教皇…?」

「う、嘘…」

 俺よりも驚いた様子で声を上げたのは奏だ。

「奏、久しぶりだのう。元気そうで何よりだ」

 教皇は奏の姿を見るとわずかに笑みを浮かべた。

「教皇って…、どういう事か説明してよ、『おじいちゃん』!」

 …は?今何て?『おじいちゃん』って言った?教皇が奏の…?

「「「「「えぇーーー!?」」」」」

「ちょ、ちょっと待て奏。おじいちゃんってどういうことだ?」

「どうもこうもないよ!この人は姫野創吾!あたしのおじいちゃんだよ!」

 …聞き違いじゃなかったか。

「えーっと、教皇サン?」

「我に何か用か?」

「いや、何で奏の祖父がテロリストなんてやってるのかな~、と」

「そんなことか、我も最初はテロなんて起こす気はなかった。ただ純粋に禁忌を研究することで、実用化し、魔導の発展を目指していたのだ。しかし、国はそれを認めなかった。禁忌の研究は悪であるとして我ら黒皇教団の存在を排除しようとしてきたのだ。我々も抵抗せずにはいられなかった」

「それで、テロを…か」

「我々は国が運営する施設などを襲ってきた。君達を巻き込むことになってしまい、すまなかったな。そして今回はこのマジックフロンティアを狙ったのだが…」

「おじいちゃん…、もう、やめて、お願いだから…、もう…」

「安心したまえ。私は今日、君達の戦う姿に感心してな、それに孫のお願いだ。今回はテロ行為をやめることを宣言しに来たのだ」

「…は?」

「聞こえなかったか?テロをやめると言ったのだが」

「いきなりかよ!?」

「まあ、今日の目的はそれだけじゃないさ。今日は柊ヤスヒロ君、君に用があって来たのだ」

「俺に?」

 俺は意外な言葉に耳を疑った。

「ああ、我の部下、シャドウ、ヴァニタス、リベリアを仲間に引き入れた君がどんな人間かしりたかったのだよ」

「…どんな人間か分かったか?」

「いや、まだだな」

「どうすれば、俺のこと分かってもらえるんだ?」

「フン、言うまでも無かろうに」

「違いねぇな」

 俺と教皇はお互いに笑みを浮かべた。

「あの…2人共まさか…」

 奏は困惑したように呟いた。

「さあ、どこからでもかかって来たまえ」

「ハッ、言われるまでもねぇ!最初から本気で行かせてもらう!スペル!《終焉(ヴァーミリオン)》!!」

「ふむ、なかなかのものだ。君に本物の禁忌というものを見せてあげよう。スペル《黙示録の(サタニック・ドラゴン)》」

 そういうと地面に魔法陣が出現し、『何か』が飛び出してきた。その体は炎のように赤く、背中には翼、長い尾、7つの頭を持っていた。

「これは…、本物の竜、なのか…?」

「竜よ、その黒炎を焼き払え!」

 ゴォォオオオ!

「俺の《終焉(ヴァーミリオン)》を打ち消す炎…!?」

「さて、今度は君の番だ…」

「くっ…」

(このままじゃやられる!何か打つ手は…)

「ヤスヒロ!」

「はっ!」

 声のした方を見ると奏が心配そうに見ていた。

(…っ!そうだ!)

「竜よ、焼き払え!」

 俺は迫りくる炎を見据えた。

「まずは久々の…、スペル!《変身(モードチェンジ)》!!」

 俺は幽夜と戦ったとき以来のモードチェンジを使った。

「気分が盛り上がったところで、スペル!《魔炎界(ムスペルヘイム)》!!」

 ムスペルヘイムの黒炎は竜の赤い炎を飲み込み、燃え上がった。

「どうだ、じいさん!俺の勝ちでいいだろ!」

「いやぁ、参った参った。よもやあの炎を超えるとはな」

「んで、俺のこと少しは分かったか?」

「ああ、君はとても面白い。これからの成長が楽しみだ」

「そりゃどうも」

「さてと、そろそろ帰るとしよう」

「えっ?おじいちゃん?」

「教団は終わった。我は家に帰るよ」

「うん!あたし、寮生活だけど、おじいちゃんに会いに時々帰るからね!」

「ああ、ではな諸君」

 そう言ってアイツは帰っていった。

「さてと、どうする?」

「どうするってヤスヒロ、あなた、私の試合忘れてない?」

「あ、そうか。姉さんの試合があった!」

「しっかりしてよね?審判さん、始めましょう?」

「何か色々ありましたけど大丈夫ですか?」

「ええ、もちろん。さあ早く」

「は、はい、分かりました!そ、それでは、2回戦第2試合、相馬叶美と柊結衣の試合を始めます!礼!」

「「お願いします!」」

「始めっ!」

 この試合に関しては言うことは特にない。これといった見所もなく終わってしまったからだ。あえて言わせてもらうと、瞬殺だった。

 開始早々、姉さんが仕掛けた。

「手加減出来ないの、ごめんね?スペル《天変地異(アポカリプス)》」

 相馬に向かって空から巨大な隕石が降り注ぐ。

「《黒禍(ブラックホール)》!」

「ええと、あの、多分吸い込みきれないと思うから逃げた方がいいわよ?」

「え?きゃぁぁあああ!」

「勝者!柊結衣!」

 改めて見ると姉さんの強さは反則級だと思う。主人公の俺を差し置いて、何たるチート姉…。

「さてと、あとは決勝だけね」

「うん、姉さんはほどほどにね。あと…、幽夜は死ぬなよ」

「は、始めから負ける気じゃダメですよ!勝つ気で行きます!」


決勝

 桐生幽夜vs柊結衣


「それでは、マジックフロンティア決勝戦、桐生幽夜と柊結衣の試合を始めます!礼!」

「「お願いします!」」

「始めっ!」

 ついに決勝戦が始まった。

(とりあえず、幽夜が生き残ることを願おう。あまり無理はするなよ、幽夜…)

「スペル《天変地異》!」

 先に動いたのは姉さんだった。視界に捉えたのは絶望的な光景。幽夜に巨大な隕石群が降り注いでいく。

(あ…、終わった…)

 そう思って幽夜を見ると…、

「フッ…」

 笑っていた。そして幽夜はスマホを空に翳した。

「スペル!《冥氷河(コキュートス)》!!」

 その瞬間、巨大な氷河が空中から出現し隕石群を相殺した。

「おぉー!防いだ!」

 俺は興奮のあまり叫んでしまった。

 続けて幽夜は、さらに魔法を発動した。

「スペル!《絶対魔氷(ニヴルヘイム)》!!」

「スペル《強化ー耐寒ー(エンチャントコールド)》!」

 すかさず姉さんも耐寒の魔法を使用。そして

「スペル!《侵喰(ワールドイーター)》!」

「ニヴルヘイムにそのスペルは…」

 幽夜がそう言ったとき、吹雪が収まった。

「アハッ!私の方が茅野さんよりも魔力が多いから、この程度なら完全に無効化出来るのよ」

「ニヴルヘイムを『この程度』…?ダメだ、レベルが違い過ぎる…」

「じゃあ、そろそろ終わりにしましょう?」

 姉さんがハイドを殺したときと同じ冷たい笑みを幽夜に向ける。

「幽夜くんはちょっと楽しめたから、ご褒美に私のとっておきを見せてあげるわね」

 そう言って姉さんはポケットから小さい本を取り出した。

「これが私の道具、魔法使いみたいでしょ?」

「あ、あの…、終わらせるならできるだけやさしく…」

「フフッ、死なない用にがんばってね?じゃあ、終わらせるわよ」

 手に持った本、いわば魔導書を開くと姉さんは魔法を発動した。

「スペル《終止符(ジ・エンド)》。これが私の禁忌よ」

 ドサッ!

 急に幽夜が倒れてしまった。

(え…?何が起こった…?)

「勝者!柊結衣!今回のマジックフロンティア、優勝は柊結衣です!」

 今回の優勝は姉さんだった。最後に何をしたのかは分からないけど、禁忌だというなら納得だ。

 こうして今年のマジックフロンティアは幕を下ろした。


To be continue…

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