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協奏の魔導士達(ソーサラーズ)  作者: 田んぼベアー
第1章
8/10

7話 決戦への序章

 マジックフロンティア2日目。

 俺は昨日、妹のこなつと再会した姉さん、柊結衣と久々の家族の時間を過ごしたのだった。

「おはよう、姉さん」

「ヤスヒロおはよう。こなつはどうしたの?」

「さっき部屋を見に行ったけど、まだ寝てたよ」

「そう。準決勝までまだ時間があるし、寝かせて起きましょう」

「そうだね」

「そういえば、朝ご飯はどうするの?」

「ああ、それなら寮の食堂があるよ」

「じゃあ行きましょ?もうお腹ペコペコ…」

 俺と姉さんが食堂に向かう途中、起きてきたこなつと一緒になった。

「お兄ちゃん、お姉ちゃん、おはよう!」

「おう、おはよう。こなつ」

「おはよう、よく眠れた?」

「うん!」

 こなつも一緒に食堂に行くと、蓮と奏がいた。

「みんなおはよう」

「やっと来たか、柊家」

「ヤスヒロ、こなつちゃん、結衣さん、おはよう!」

「柊家って言い方やめてくれよ、蓮」

 俺は苦笑した。

「すまないな、そっちの方が省略できて楽なんだが。お前がそう言うならやめておこう」

「幽夜と咲さんは?」

「あの2人なら先に食べて行っちゃったぞ」

「そうか。おっと、もたもたしてる暇はないみたいだぞ。試合まであと30分だ」

「ホントね。じゃあ、食べましょう?」

「「「「「いただきます!」」」」」


 朝食を食べ終えた俺達は急いでフィールドに向かった。

「何とか間に合ったみたいだな」

「柊先輩、おはようございます」

「おう幽夜、お前もう試合だろ?」

「そうですね、相手は茅野教官みたいですし」

「ニヴルヘイム…だっけか?あれ使えば楽勝だろ」

「簡単に言わないでくださいよ。アレ、スゴい量の魔力を使うんですよ?」

「そんなに使うなら身体がもたないだろ」

「ええ、ニヴルヘイムは2回が限度です」

「まあ、出来るだけ使わない方がいいかもな」

「はい。じゃあそろそろ…」

「がんばれよ。こなつも応援してるぞ」

「は、はい…!」

 しばらくしてフィールドに幽夜と相馬が出てきた。

「それでは、準決勝第1試合!桐生幽夜と茅野つくしの試合を始めます!礼!」

「「お願いします!」」

「始めっ!」

 まず始めに仕掛けたのは相馬の方だった。

「空間を喰らえ、スペル!《侵喰(ワールドイーター)》!!」

「何だそれ?こっちも行くぞ、スペル《砲弾(ミサイル)》」

 幽夜が自分の魔法道具であるスマホを空にかざすと、そこからミサイルが大量に出現した。

発射(ファイア)!」

 号令と共にミサイルが一斉に茅野教官に向けて放たれる。しかし、教官は慌てることもなく、

「ワールドイーターには効かない」

 バシュウン!

 彼女にミサイルが当たったと思った瞬間、紙一重の所で何かに飲み込まれるように消えてしまった。

「何っ!?」

「私のワールドイーターにはどんな攻撃も効かない」

「くそっ、こうなったら…!スペル《絶対魔氷(ニヴルヘイム)》!」

「《侵喰(ワールドイーター)》!」

展開された圧倒的な冷気も意味を為さないうちにワールドイーターに飲み込まれ、無効化されていく。幽夜があきらめかけたその時…

「ぐ…っ」

 突然茅野教官が苦痛に耐えるような声を出した。

(…?この魔法、もしかしたら…)

「私のワールドイーターにはどんな攻撃も効かないと言ったはず…」

「思いつきましたよ、打開策」

「え?」

「教官のワールドイーターを破る方法を思いついたって言ったんです」

「な、そんなバカなこと!?」

「あの魔法、一見全ての攻撃を完全に無効化してしまう無敵の技に見える」

「と、当然よ!そういう魔法何だから」

「だが実際は違う。実際は一定以上の威力の攻撃を無効化する魔法。そうですよね?さっきのニヴルヘイム、無効化しきれていなかったですし」

「くっ…、そ、そうよ。だから何だっていうの!?そんなことが分かってもあなたの攻撃じゃこの魔法は破れない!」

「あまり僕を見くびらないでいただきたい」

「…その余裕、怖いからやられる前にやらせてもらうわ。スペル《真空間(バキュームスペース)》!」

「これは、相馬叶美と同じ魔法!?」

 茅野教官の魔法が発動され、フィールド上の空気が失われる…、はずだった。しかし、

「何で、何で立っていられるのよ!?」

「僕のニヴルヘイムが支配した空間。上書きは許しません。さて、ここで問題です。ニヴルヘイム支配下で氷系の上位魔法を君のワールドイーターにぶつけたらどうなるでしょうか?」

「あ…、ああ…、ああ…あ…、い、いや…いやぁぁぁあああ!」

「スペル《冥氷河(コキュートス)》…、地獄の氷河に飲まれて消えよ」

「あああああああ!」

「………」

「ねえ、審判さん、終わりましたけど?」

「は、はい!勝者、桐生幽夜!」

 試合後、俺は幽夜と話した。

「勝ったな。てか、やり過ぎじゃないか?最後のセリフも厨ニっぽかったし」

「恥ずかしいんで言わないでくださいよ!」

「はは…。まぁ、良かったじゃないか」

 俺達がそんな話をしていると…

 ドカーン!

「な、何だ!?」

 突然、フィールドの中央が爆発した。

「柊先輩、気をつけてください。この手口は、『アイツ』です」

「えっ…?」

「フハハハハハ!」

 俺が困惑していると、爆発の中心から笑い声が聞こえてきた。

「まさか、アイツは…」

「はい。結衣さんを洗脳し、僕と柊先輩が一緒に倒したはずの相手…」

「久しぶりですねぇ!柊ヤスヒロ!桐生幽夜ァ!」

「ハイド!お前は…!」

「私はお前たちに倒され、教皇によって復活した!それからずっとリベリアを最強の刺客として育て上げてきた!それなのに、貴様らはそれすらも奪った!私は教皇に見限られ、教団から脱退させられたのだ!全部貴様らのせいだ!全部、全部、全部!」

 ハイドの叫びに恐怖する観客や選手達。俺や幽夜も突然の奇襲に軽いパニックに陥っているその中で…

「ちょっといいかしら?」

 怒り狂うハイドに物怖じせずに話しかける人が約一名。

「なっ、お前は…!」

「私達の戦いに手を出さないでほしいわ、無能なハイド様?」

 俺の姉、柊結衣だった。

「何だと…?リベリア…、貴様私に逆らってタダで済むと思っているのか!」

「あなたこそ、私と戦って勝てるとでも?」

「黙れェ!まずはリベリア、貴様からだ。裏切り者には死あるのみィ!」

 怒り狂ったハイドは黒い炎を放った。

「なっ、これは俺の《終焉(ヴァーミリオン)》!?」

「違うわね、ハイドは禁忌を使えるほどの男ではないわ。所詮見た目だけの紛い物よ」

 姉さんはそういって黒炎に向かって手を出した。

「ね、姉さん!?何を…」

「ねえ、茅野さん?」

 姉さんはフィールドの端にいた相馬に話しかけた。

「あなたの魔法、コピーさせてもらうけどいいかしら?」

「…!そういうこと…。いいわ、お好きにどうぞ」

一瞬驚いたような顔をした茅野教官だったが、すぐに納得したような顔になり、すんなり許可をだす。

「ありがとう。じゃあ遠慮なく…、スペル《侵喰(ワールドイーター)》」

 黒い炎が姉さんに届く寸前で消え去っていく。

「はぁ、こうも簡単にコピーされると、教官としての立場がないわね…」

 茅野教官は呆れたように呟いた。

「さて、あなた程度じゃこれは破れないわよ?」

「く、くそ!ど、どこだ!一体どこで何を間違えた!私が、私がこんな所で…」

「黙ってもらえるかしら?目障りな上に耳障りよ」

 そう言って姉さんは空に手を翳した。

「ヒ、ヒィ!や、やめろ…!」

「私を育ててくれてありがとう、本当に感謝してるわ。だからせめて最後は私オリジナルの魔法で一瞬で楽にしてあげる」

「ーーーッ!」

 そのとき俺が見たのは、声にならない悲鳴を上げて恐怖するハイドと姉さんの今まで見たことがないようなほど美しく冷たい笑顔だった。

「さようなら、ハイド様。スペル《神の裁き(ジャッジメント)》」

 空中に魔法陣がいくつも出現し、ハイドに向かって一斉にレーザーが照射された。

 ジュウウウウウ!

「終わったわ。さあ、試合をしましょ?」

 姉さんがいつもの暖かい笑顔でそう言ったその時、

ザー…、ザザッ!

 突然ノイズのような音が聞こえたと思うと、それはすぐに声に変わった。

「アカデミーの生徒諸君、ごきげんよう。今回は役立たずのハイドの処刑、感謝する」

 驚いて審判席の方を見ると、黒い装束を着た男が立っていた。

「珍しいですね、あなたが自ら動くなんて」

「幽夜、知ってるのか…!?」

「ええ、アイツは僕達の最大の敵。黒皇教団の創立者…」

「なっ…、つまりアイツが…」

「ええ、そうです。素顔を見たのは初めてですが間違いありません。彼こそが『教皇』ですよ」

 白髪に青い瞳の男、教皇は満足そうに微笑んだ。


To be continue…

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