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協奏の魔導士達(ソーサラーズ)  作者: 田んぼベアー
第1章
7/10

6話 再会

「そういえば、咲さんは何で出なかったんですか?」

 俺は素朴な疑問を口にした。すると咲さんは、

「今年は愛弟子達の戦いを見守ってたかったんだよ」

 と笑いながら言った。

「ヤスヒロ君、2回戦の相手、かなりヤバいオーラ放ってるよ。死なないでね?」

「大丈夫ですよ。咲さんの鬼特訓の成果、発揮してみせますから」

「ふふっ、こうして話してるとヤスヒロ君のお姉ちゃんにもなったみたいだよ」

「姉さん…ですか」

「ん?どうしたの?」

「い、いえ…ただ、懐かしい響きだなぁ…と思って」

「ヤスヒロ君にもお姉ちゃんがいるの?」

「はい、事故で亡くなってしまいましたけど」

「お姉ちゃん、見てくれてるといいね」

「はい…。ありがとうございます」

「さあ、試合、始まるよ」

そして、2回戦第1試合、こなつと幽夜の試合が始まった。

「始めっ!」

「幽夜くん、いくよっ!」

「来い、こなつ!」

「はああ!スペル!《竜巻(トルネード)》!!」

「くっ、スペル!《絶対零度(ゼロ)》!!」

 こなつの風に対して、幽夜は空気中の水分を凍らせ自分の周りに氷のドームを作った。

「これなら風系の魔法は効かないぞ!」

「そうだね~、でも…」

 こなつの周りで炎が燃え上がる。

「これならどうかな~!スペル!《不死炎(フェニックス)》!!」

「そんな炎が効くわけ…」

 その瞬間、燃え上がった炎が氷を溶かしていく。

「そんな、何で!?」

「ふふ~ん!フレイムとトルネードの合体魔法だよ!炎を風で強めることで、絶対零度にも負けない炎を作ったんだ!」

 こなつは得意気に説明した。

「じゃあ、炎さえ燃えないようにすればいいんだね?」

「え…っ?」

 こなつが困惑の声を発したその時、幽夜を襲っていた炎が消え去った。

「えっ?何!?」

「これが『本当の』絶対零度さ。スペル《絶対魔氷(ニヴルヘイム)》…!」

「きゃあああ!」

「ふぅ、危なかった…。これ、すごい疲れるからあまり使いたくないんだけどな…」

「勝者!桐生幽夜!」

(幽夜の勝ちか…、こなつもがんばったな。)

「…っと、次の試合は…、教官と…、誰だ?」

「アホか、彼女はアカデミーの教官だ。模擬戦とかの審判やってた人だろうが」

「ああ、あの人か。じゃあ、第2試合は教官同士ってことか」

「そうなるな。お、始まるぞ」

フィールドにはもう遠山教官と茅野教官が出ていた。

「茅野教官、今日こそ勝たせてもらいますよ!」

「遠山教官も懲りませんね」

「もちろんです!今日こそ勝って私とお付き合いを…」

「お断りしますわ。どうせ私が勝ちますから」

「今日という今日は勝ぁーつ!!」

「始めっ!」

「先手必勝!スペル!《強化(エンチャント)》ー!」

 遠山教官は強化した拳で茅野教官に殴りかかる。

(教官、単純すぎないか…?)

「いつもながら単純ですね。スペル《迎撃(カウンター)》」

「ぐわぁ!」

「私と付き合いたいのであれば、もっと強くなってから来てください!」

「し、勝者!茅野つくし!」


「あの2人、何なんだ?」

 俺の疑問に蓮が答えた。

「3年前から交際を賭けた勝負をしてるそうだ。どういうわけか茅野教官との勝負のとき、遠山教官は調子が悪いらしい」

「にしても、こんな戦いは無いよなぁ…」

「僕もそう思うが…、次の試合が始まるぞ」

「え…?あぁ…」

「第3試合、姫野奏と相馬叶美の試合を始めます!礼!」

「「お願いします!」」

「始めっ!」

奏は合図とともに走り出した。対して、相馬叶美の方は動いてすらいない。

「動かないならあたしから行くわよ!スペル!《戦慄(メロディー)》!」

「フフッ、格の違いを思い知らせてあげる。耳障りな音よ、消え去りなさい!スペル《真空間(バキュームスペース)》!」

「くぅっ!?」

 奏は真空状態となったことで呼吸ができない。

「5、4、3、2、1、0…。スペル解除」

「ふぐっ!」

 呼吸が急に失われたことで奏は気絶してしまった。

「勝者、相馬叶美!」


「あの相馬叶美って奴、何者だ?」

「知らないのか、ヤスヒロ?アイツは相馬理事長の娘だ。それぐらいは知っとけ」

「なるほどな。才能は父親譲りか」

「そんなことより、次はお前だ。気をつけろよ」

「分かってるって。じゃあ、行ってくるよ」

「ああ、がんばれよヤスヒロ」


 そして俺は2回戦のフィールドに立った。

「リベリア!お前らの企みは俺が阻止してみせる!」

「へ?」

 俺の叫びに対し、黒いローブの少女から返ってきたのは何とも間の抜けた返事だった。

「へ?って何だよ!?」

「あぁ、ごめんなさい。でもあなたは…、そう、そういうこと…。なるほどね。やってくれたじゃないの、ハイド様」

 彼女の言葉は聞き取れなかったが、フード越しでも彼女の感情が読み取れた。

 これは怒り…。何に対してかは分からないが、彼女は確かに怒っていた。

「それでは、リベリアと柊ヤスヒロの試合を始めます!礼!」

「「お願いします!」」

「始めっ!」

 合図とともに俺は駆け出した。そのとき、

「ごめんなさい。予定変更よ。」

 俺は彼女の発した言葉の意味が分からず困惑していると、猛烈な眠気に襲われた。

(しまった――!)

「スペル《催眠(スリープ)》」

 バタッ!

 俺はリベリアのスペルで眠ってしまった。

「勝負あり!し、勝者、リベリ…」

「ちょっと待ってもらえる?」

「え?」

「彼と少し話したいの。いいかしら?」

「は、はい。ど、ど、どうぞ!」

 フードの向こうにいたのは、藍色の髪をもつ優しげな少女だった。

「スペル解除。おはよう?」

「う…、うぅ…」

「起きたかしら?」

「え…?」

「ヤスヒロ…大丈夫?私のことわかる?」

「…え?お前は…、嘘だ…」

「久しぶり、ヤスヒロ。3年振りかしら?」

「姉…さん?」

「う、嘘…、お姉ちゃん…なの?」

「こなつも…久しぶり」

「何で…生きて…?」

 驚きを隠せないまま尋ねる。

「あの事故の後、病院で目が覚めて言われたの。君は2年も眠っていたんだ、って」

「に、2年!?」

「そう。目が覚めたのはつい最近のことなの。それからしばらく経って、私が生きていることをあなた達は知らないって聞いたの」

「何となくは分かったけど、姉さん?」

「何?」

「どうして教団なんかにいたの?」

「前にアカデミーの遠山教官とヤスヒロが戦ったじゃない?それを観に来てたら教団に連れ去られちゃって、ハイドに洗脳されてたんだけど…」

「だけど…?」

「私とヤスヒロを戦わせたハイドへの怒りで洗脳が解けて、あの試合が終わり今に至るってわけ」

「お姉ちゃん、会いたかった…、会いたかったよぉ…!」

 泣きじゃくるこなつを姉さんが抱きしめた。

「泣かないで、こなつ。またこうして会えたんだから」

「ちょっといいか?」

「蓮!?」

 俺は突然割り込んできた蓮に驚いた。

「そもそも何でヤスヒロ達はお姉さんが生きてるって知らなかったんだ?」

「それが、私もわからないのよ」

「何で?」

「何でって言われても…」

「しつこいぞ、蓮。…いつも眠そうにしてる癖に」

「気になるんだからしょうがないだろ。あと、最後のは余計だ!」

「プッ、フフッ、フフフッ、アハッ、アハハハハ!」

 俺達のやり取りを聞いていた姉さんがいきなり笑い出した。

「何で笑ってるんだよ、姉さん!」

「あの無愛想なヤスヒロにこんな友達が出来たと思うと面白くて」

「あー、確かにコイツかなり無愛想でしたね。今はそうでもないけど」

「私、心配してたのよ?私がいなくなって大丈夫か」

「大丈夫だったから、安心してよ姉さん」

「あの~?そろそろいいですか?」

 審判のお姉さんが待ちくたびれた様子で聞いてきた。

「あ、ごめんなさい、そうだったわね。どうぞ?」

「あ、はい!勝者…、って、名前、リベリアさんじゃないですよね?」

「ええ、エントリー名と同じよ。と言っても名前だけだけどね。私は結衣。柊結衣よ」

「あ、はい…、勝者、柊結衣!」

 こうして、マジックフロンティア1日目の日程は終わった。

 この後奏と話したのだが、

「お姉さんと積もる話もあるだろうから、また明日ね!」

と言って帰ってしまった。

 「奏の言葉に甘えて、久しぶりの家族の時間を過ごさせてもらおうかな…」

 そして、俺は家族が待つ寮の部屋のドアを開けた。

「ただいまっ!」


準決勝

 桐生幽夜vs茅野つくし

 相馬叶美vs柊結衣


To be continue…

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