5話 開幕
俺達の特訓の日々は想像を絶する辛さだった。
「リアルボクっ娘の指導とか『萌える』わ~」
とか思ったのは間違いだった。もう思い出したくもないのでこの話はやめにしよう。
その日々はあっという間に過ぎていき、ついにフロンティア本番が訪れた。
「ゆーや、ヤスヒロ君、ついに本番だよ!特訓の成果を存分に発揮するんだよ!」
「「はい!」」
「…にしても、咲さんがあんな厳しいとは思わなかった」
「姉さんは教団でもトップクラスの魔導士でしたから、魔導の訓練には人一倍熱心なんですよ」
「なるほどな~。そうだ、トーナメント表でも見に行こうぜ」
「そうですね」
今年のマジックフロンティアの1回戦はこんな感じだ。
1回戦
柊こなつvs東雲透吾
桐生幽夜vs蒼井サナ
巽京真vs茅野つくし
遠山航vs城野翔
姫野奏vs神崎菜々美
相馬叶美vs月野琉奈
桐原蓮vs山野結衣
柊ヤスヒロvs柳瀬浩太
「今年は少ないな」
「そうですね。去年はこの倍以上いたのに」
「まあ、教団のこともあったんだ。仕方ないだろ」
「あの…、すいません!」
「お前が謝る必要なんてない。もう仲間だろ?」
「……ありがとうございます」
「気になるのはこの中に教団のメンバーがいないかだな」
「はい。少なくとも知ってる名前の人はいませんけど…」
「まぁ、偽名を使うだろうな」
「僕もそう思います」
「そろそろ開会式だし戻るか」
そしてマジックフロンティアの開会式が始まった。そして…
「ここにマジックフロンティアの開会を宣言する!」
相馬理事長の開会宣言で今年のマジックフロンティアは始まった。
そして1回戦第1戦目
「こなつの試合か。幽夜に応援されればはりきるんじゃないか?」
「からかわないでください!まぁ、こなつには勝ってほしいですし応援しますけど」
「……いつの間に呼び捨てになったんだ?」
「あの…、あまりいじらないで下さい」
「ああ、すまない。…っと、試合が決着しそうだぞ」
俺達が話してる間に試合は進み、こなつが対戦相手、東雲に魔法を撃とうとしていた。
「いくよ!スペル!《竜巻》!!」
「くっ、スペル!《反射》!!」
東雲のリフレクトによってトルネードは跳ね返され、こなつを襲う。しかし…
「ふふん。甘いよ、透吾くん!スペル!《吸収》!!そして、スペル!《禍津風》!!」
ドレインによって強化されたマガツカゼが東雲を飲み込んだ。
「勝者、柊こなつ!」
「こなつの勝ちか」
「あの、こなつってあんなに強かったんですか?」
「ん?ああ、アイツ、風系の魔法に関してはトップクラスだからな」
「応援する必要ありましたか?」
「まあ、そういうなよ」
「はぁ…。次はお前だろ?」
「あ、はい!」
「幽夜く~ん!がんばってね~!!」
「こ、こなつ!そんな大きな声で呼ばないでくれ!」
「あ、ごめんごめん。がんばってね。」
「おう」
幽夜は開始3秒で相手を気絶させ勝利した。
「応援が必要ないのはお互い様じゃないか…」
俺は思わず苦笑してしまった。
その後も遠山教官、奏は順調に勝ち進んだ。そして、蓮の試合。
「桐原蓮と山野結衣の試合を始めます!向かい合って、礼!」
「「お願いします」」
「始めっ!」
「悪いけど、僕の勝ちだ。スペル《龍の息吹》」
赤い光線のようなものがフードをかぶった少女に襲いかかる。
決まった!…と思ったその時…、少女は微笑んだ。
「アハッ。スペル《錬金-壁-(アルケミー・ウォール)》!」
空中から突然黒い壁が構成され光線を打ち消した。
「ドラゴンブレスを防ぐだと…?」
「う~ん、大したことないわね」
「お前、何をした?」
「弱い人には説明できないわね…」
「何だと!?」
「じゃあね。スペル《天変地異》」
「な…っ、ぐぁぁああ!!」
数秒間、沈黙が支配した。そして…
「し、勝者!山野…」
「あぁ、ごめんなさい」
「えっ?」
突然、山野が審判の言葉を遮った。
「私の本当の名前は山野結衣じゃない。私は黒皇教団のリベリア。エントリー名も変更しておいてくれるかしら」
「そ、そんな方を参加させてはおけません!」
「あら?じゃあ、シャドウやヴァニタスはどうなの?」
「そ、それは…」
「改心したからいいと言うの?ろくに罰も与えずに」
「くっ…、分かりました…。し、勝者!リベリア!」
そして、俺は混乱が収まらない中試合に勝利し、2回戦、山野結衣改め、リベリアと試合をすることとなった。
2回戦
柊こなつvs桐生幽夜
茅野つくしvs遠山航
姫野奏vs相馬叶美
リベリアvs柊ヤスヒロ
俺はその後、蓮と話した。
「まさか僕の相手が黒皇教団だったなんてな」
「蓮…、大丈夫か?」
「ヤスヒロ、アイツは危険だ。気をつけろよ」
「ああ、リベリアは俺が止めて見せる!」
俺は2回戦に向けて決意を新たにした。
「その前に、こなつと幽夜も応援しないとな」
「ああ、妹とその彼氏。どっちを応援するんだ?」
「こなつ」
「即答かよ」
「ははっ、まあな」
そして、マジックフロンティア2回戦の幕が上がる…。
To be continue…