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協奏の魔導士達(ソーサラーズ)  作者: 田んぼベアー
第1章
2/10

1話 黒皇教団

「もうすぐ休みだけど、どうする蓮?」

 ある日の訓練後、俺は隣で缶コーヒーを飲む友人、桐原蓮に話しかける。

「そうだな…、特に予定はないが…」

「じゃあさ!ヤスヒロも蓮も遊びに行こうよ!こなつちゃんも一緒に!」

 突然話に割り込んできたのは、クラスメートで幼なじみの姫野奏である。

「奏、遊んでて大丈夫なのか?」

「勉強のこと?大丈夫よ!あたし、こう見えてもやるときはやるタイプだから!」

奏は「エッヘンっ!」と胸を張って言った。

「あのな、お前がそう言ってやった試しが一度でもあったか?」

 それに…、と俺は奏の身体、主に胸部を見て付け加える。

「無い胸張っても、残念度が増すだけで大きくはならないぞ」

「なっ、なっ…!い、言ったわねヤスヒロ!」

「ああ、言ったよ。『事実』をな」

「な、何~!!もう怒った!絶対に許さないんだから!!」

「はいはい、そのセリフも聞き飽きたよ…」

「やれやれ、本当に仲良いなお前ら…」

 呆れ気味に蓮が言うと、退校のチャイムが鳴った。

「ふぅ、帰るか…」

「そうね、疲れたし」

「僕は早く寝たいんだが」


 いつも通り1日が終わると思ったとき…


 ドカーーーン!!


「な、何だ!?」

「これって…爆発音よね…?」

「まだ眠れそうにないな…」

 3人目は無視しても、俺達は驚きを言葉に出さずにはいられなかった。

「お前ら、大丈夫か!」

「遠山教官!」

「何が起こっているんですか、教官!?」

「奴らが…、『黒皇教団』が…、こんなに早く動き出すなんて…」

「『黒皇教団』?何ですか、それ?」

 聞き慣れない言葉に眉をひそめる。

「黒皇教団は、『禁忌』とされる魔法を違法に研究する組織。簡単に言うと、魔法を使う、テロリスト集団だ」

「じゃあ僕達は今、その教団のテロの被害者ってことですね」

「桐原、落ち着いているな」

「ええ、今は寝るのを妨げられた怒りの方が大きいですから

 蓮に落ち着いているが、それに対して俺は…

(怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い…)

(何だよ、テロ?俺達は普通の魔導訓練生だぞ?)

(俺達は…、ここで死ぬのか……?)

 襲いかかる多くの負の感情に押しつぶされそうになったとき、

「ヤスヒロ!あきらめないで!!」

「かな…で…?」

「死んじゃったら休み、遊べないでしょ?だから…」

 その瞬間、俺の中にあった闇が晴れた気がした。

「ありがとう、奏。お前はやるときはやる女だよ」

「バカが元気を取り戻したのはいいが、敵さんのお出ましのようだ」

 蓮は声を掛けると、柱の陰から仮面を付けた怪しげな男が出てきた。

「おやおや、バレていましたか。さすがマジックアカデミーの訓練生だ」

「貴様、黒皇教団だな?」

 遠山教官が尋ねる。

「我々のことを知っていますか。ならば、仕方ありませんね…」

 男は恭しく頭を下げ、名乗った。

「私は黒皇教団の研究者であり、幹部のハイドと申します。以後、お見知りおきを…」

「ふざけるな!俺達のアカデミーを壊しておいて!」

 俺は怒りに身を任せ、『ハイド』と名乗った男に飛びかかった。

「うおおお!スペル!《火炎(フレイム)》!!」

 俺は持っていたスマホにありったけの力を込めて、渾身の魔法を発動した…、はずだった。

「スマートフォンを媒介にする魔導士ですか、嫌な奴を思い出しますね…。ですが、体力切れのようです…。興ざめですね、ここで退くことにしましょう」

「ま、待て!」

「では、またお会いすることを楽しみにしてますよ?未熟な魔導士よ…、スペル、《転移(テレポート)》」

ハイドは光に包まれて消えた。

「ちくしょおおおおお!!」

「ヤスヒロ…」

「バカ、無茶しやがって…」

「柊、お前は…、」

「教官。俺、もっと強くなりたいです。だから、明日の訓練、本気で俺と模擬戦してください」

「バカ、何言ってんだヤスヒロ!」

「そうよ!かなうわけないでしょ!?」

「いいだろう。模擬戦、やってやろうじゃないか」

「「教官!?」」

「ありがとう…ございます」

そう礼を言って、俺は寮の方角へ足を向ける。

「ちょ、ちょっと待ってよ!ヤスヒロ!!」

「しょうがない奴だ…」

 2人はそう言って俺について来る。


――長い1日が終わる…、そして…


「バカじゃないの!?お兄ちゃん!!」

「いや、話した通りいろいろ事情があってだな…」

「事情があるのは分かったけど、教官は勢いで挑んで勝てる相手じゃないよ!」

「分かってるよ!そこを何とかするんだろ」

 うるさい…、とてもうるさい…。そりゃその場の勢いだけであのクソ教官に模擬戦を挑んだのは後悔してるけど…。

「ヤスヒロ、こなつ、うるさいぞ、眠いんだから静かにしろ」

苛立った声で横になった蓮が言う。

「すまなかったな。じゃあ、寝るか…」

「すみません、桐原先輩。おじゃましました~」

バタン!

「…明日、どうするつもりだ?ヤスヒロ」

「まだ考え中だ」

「そう言うと思ったよ」

「それじゃあおやすみ」

「ああ、また明日」


──次の日の実技訓練…

「柊…、あまり俺をガッカリさせるなよ?」

「ハッ、今すぐその鼻へし折ってやるぜ、クソ教官!」

「それでは、遠山航教官と柊ヤスヒロの模擬戦を始めます」

辺りが緊張した空気に包まれる。

ハイドによって破壊されたアカデミーの建物、ケガを負った生徒、昨日のテロを忘れさせるような青く澄んだ空…、目の前の景色を見て様々な想いが込み上げる。

「始めっ!」

こうして俺の一生忘れることのできない模擬戦が始まった…


To be continue…

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