孤独な証人
村の外れで、災害が起きた。
土砂が崩れ、家々が押し潰される。
叫び声、助けを求める声が空気を揺らす。
だが、私には届かない。
触れられない、声も届かない、影だけが確かにここにある。
人々は慌てて救助に走る。
無色である私も、手を伸ばせば何かを変えられそうな気がした。
しかし、触れた途端、世界は私の介入を消した。
瓦礫を押しのけても、手を伸ばしても、何も残らない。
助けた瞬間の痕跡は、まるで風に消される砂のようだった。
人々が無事を確認し、安堵の声をあげる。
その光景を、私はただ見つめるだけだった。
手も、声も、存在も――必要とされない。
胸の奥が締め付けられる。
世界は、私を必要とせず、関わることを許さない。
ただ見ているだけの存在――孤独な証人。
夜、帰路を歩く。
道端の小石、倒れた葉、風に揺れる枝。
触れても、音も振動も、存在の証も残らない。
世界は無色を避け、修正し、排除する。
誰も見ない。
誰も触れない。
誰も記録しない。
けれど、私は生きている。
存在している。
ただ、それだけが確かだった。
孤独は深く、静かに、胸を締めつける。
世界の全ての出来事を、唯一見届ける者として、私は立ち尽くす。
――誰も認めない。
誰も触れない。
私は、無色の証人であり続ける。




