見えない鎖
朝の光が差し込む部屋にいても、自由は感じられなかった。
世界は、私に見えない鎖をかけていた。
行きたい場所に足を運んでも、何かが押し戻す。
声を上げても、空気に溶けて消える。
村の広場で、小さな子どもが転んだ。
助けようと手を伸ばすが、腕は勝手に止まったかのように固く感じられた。
結果、別の大人が間に合い、子どもは無事だった。
――私の存在が、何かを変えることはない。
歩いても、誰も振り向かない。
話しかけても、返事はない。
触れようとしても、壁があるかのようにすり抜ける。
目の前の現実が、私を無色として扱う。
必要がない存在に課された鎖は、ただの空気のように、しかし確実に私を縛った。
夜になると、孤独は深く沈み、胸に重くのしかかる。
かすかな光も、意味を持たない。
希望も、慰めも、記録も、世界は与えない。
助けた子どもも、避けた魔物も、偶然の産物として忘れ去られる。
功績は他人に帰り、私は消える。
存在しても、記録されない。
触れても、認められない。
動いても、結果は変わらない。
――自由とは、他者や世界に認められることなのだと痛感する。
無色には、認められる権利すら、与えられない。
天井を見上げる。
見えるのは、ただ黒い空間だけ。
静かに、世界は私を無色として包み込み、逃れられない鎖で縛りつけた。
生きているだけで、孤独は拡がる。
意味のない存在として、重く、深く、私は沈んでいった。




