24話 ランドセル
最近では恒例に成りつつある 詰所の訪問 詰め所には常時
親衛隊の誰かが1人は いる様にしているらしい?
聞いてわ居ないが いつ来ても誰かしらがいる
大抵はユーリなのだが 彼女は今 住人達の職の割り当てに奔走中だ。
「おはようユーリ」
「おはよう小梅」
「忙しそうね」
「ええ 何か仕事をさせて欲しいと 希望する者が後を絶たなくて」
「それは良好ね」
「そうなのだけど彼等の適正にあった仕事を出来るだけさせてあげたいから」
「少し前まで明日の事も分からなかった者達だから、今の状況を失うんじゃ無いかと心配なんだと思う」
…そうか 動ける様になって希望が出来て今を失いたく無いと願望が出て来たのね…
「今日の午後 住人全員議事堂に集めて貰えないかしら」
「それは構わないけど」
「そうね午後1時に議事堂の講堂にお願いね」
「あっ、小梅」…行っちゃたわ…
****
「神様 さくら」
「なんじゃ」
「午後から議事堂で住民を集めて今後の方針を話そうと思っているの 2人も参加してくれる?」
「あらあら 大舞台ね ふふ楽しみだわ」…?
まぁいいか…
****
「コンコン…みなさんお集まりになりました」
「わかったわ」
今呼びに来たのはユーリの補佐をしている サキちゃんだ
先日親衛隊の4人から自分達の手伝いをしてくれる者を集めても良いかと
相談されたので今は各々10人までなら良い事にしたのだ
何故10人かと言うと みんながみんなやりたがるからだ
それでは国が成り建たないからね。
いつもの8人が横に並び 私を中心に右隣に小春、左隣に小夏
小春の隣にユーリ、ルル、ミハエル、小夏の隣にデク、ボーだ
助祭5人と親衛隊補佐が各々1人づつの9人が後ろに控えている
目の前の階段状の席に住人達355人が座っている。
『神様』
『なんじゃ』
『こうやって観ると沢山いるね』
『なんじゃびびっておるのか』
『あらあら 人が多いほどやる気が出て来ますわ』
…何のやる気だ!
わたしは前にある壇上に上がり
「みなさん お集まり頂き 感謝しますわ」
(ざわざわ 小梅様小梅様だわ)
「みなさんが このマロン教国に来て半月が経とうとしてます」
「既に仕事が決まって専念している人」
「まだ決まらずに焦っている人も多くいると思います 」
「わたしは神マロン様の名の元 この国を豊かで明るい国にして行きます」
「その為には今、わたしには何が出来るか どう動けば良いか」
「日々考えています」
「みなさんにも考えて貰いたいのです」
「自分の人生をどう良くするのか その為にはどう動くか」
「誰しもが間違うかも知れません」
「間違えたのなら 立ち止まり何が間違えだったのか考え また歩き出してください」
「今 あなたに出来ることから初めて下さい」
「俺はまだ仕事に付けてない だから…」
「教祖様がお話し中だ!」
ミハエルだ 私は手でミハエルを制して
「どうぞ続けてください…だから?」
「仕事に付けるまで街の掃除をする 自分の住む街を綺麗にしたいから…それでも良いですか?」
「勿論です掃除も大事な仕事です どうか街を綺麗にしてくださいね」
一呼吸置いてわたしは言った
「焦らなくて大丈夫です あなたの住まうこの国は此処にあるのだから」
…
「うぉーっ!マロン教国万歳!」
「小梅様ー!」
「神のお言葉」
「俺も掃除をするぞー!」
歓声の続くなか 小春と小夏が壇上に上がって来た…
一瞬の静寂の後 その音は響いた…
「PAN!PAN!」
「みんなー小梅お姉様の国をよろしくねー!」
「よろしくねー!」
…「きゃー小春ちゃーん!」
「「可愛いー!」」
「小夏ちゃーん!こっち向いてー」
「「きゃー!」」
「「「うおー!こ、は、るちゃ、んーうおー!」」」
えっ!
…ミハエルは小春推しかーって おいっ!
会場は親衛隊の部下達に任せて 歓声が止まぬ中
わたし達は元の部屋に戻り会議をする
みなさんご苦労様でした
『何処ぞの選挙演説みたいだったのう』ホゲッ
『議事堂だけに』
『あらあら 素敵な舞台でしたわよ』…ふぁー
「小梅様 民衆の心を掴む 素晴らしい演説でした ゴホッゴボッ…失礼」
ミハエル貴方は違う意味で心鷲掴みされてたよ
声まで枯らして…
「俺は夢を見ていたのか師匠達が可憐に見えた」
「デクよお前にはまだ鍛錬が足らんようじゃな」
「あらあら デクわたしはいつでも可憐よ」
「うっつい声に出して」
「デク殿 小春様は可憐だけでわありませぬぞ」
「ふふ小梅ありがとうね これでみんなも落ち着いて仕事を探せるわ」
「そうなると良いわね」
「大丈夫よ 男も女も ファンクラブが云々言ってたから ふふ」
違う意味で不安だよ
「小梅様一つ問題がありまして」
「何かしらミハエル」
「麦畑の方は 私達にも知識と経験があるので何とか成っているのですが 田んぼと言うのですか 其方はどうして良いものか まるで解らず…」
「そうだった 此方の世界には田んぼなんて無いもんね…」
「あらあら エルフを連れて来て管理させれば良いでわ無いですか」
…?エルフ?
「小春様 エルフとはサテライト王国に住まうと言う?」
「そうじゃな それが出来ればそれが良いじゃろな」
この後サテライト王国について
一番詳しかったミハエルから話を聞いた
「サテライト王国はエントールと同じくして王族が治める国でして」
「古巣のブルーレイク教も貴族の位置に食い込んでいます」
「エルフはサテライト王国の森の中に集落を作り暮らしています」
「貴族たちはエルフのチカラと美貌を欲して ブルーレイク教と手を組みエルフ達を我が物にしようと画策してると聞いてます」
「美貌ですか?」
「エルフは美男美女で何時迄も若いままだと聞くわ」
と話すユーリを見やる…
確かにわたしより少し歳上位にしか見えない美形だし
わたしの視線に頬を染めるユーリだった
「しかし エルフの集落が見つからず 本当にあるのかどうかと言う者も居る様です」
「人間には見つけられんじゃろな」
「王族は動いて無いの?」
「はい 王族には古い誓約書があるそうです」
「誓約書の内容は知ってる?」
「一説には 魔物を森から出さない代わりに森に住まう事 エルフに関わらない事と書かれて居るとか」
「誓約が破られたら」
「即死するらしいです」
ジト目で神様を見た…視線を逸らした!…
「わかったは 田んぼの問題は此方で考えて起きます」
「宜しくお願いします」
「そうそう 此方を」
と鞄から瓶を取り出した 何故鞄から取り出したかと言うと
空間から取り出すと 一々びっくりする者が居るとの事で
今更ながら自粛した 無論空間神法製だ…
だが ランドセル型なのだよ神達の希望で
「何やら泡立って甘い匂いがしますな…」
「それをパンを作る時に混ぜて見てください 混ぜた生地を冷蔵庫」
に入れてはダメだった時間が止まってしまう
「には入れず…取り敢えずは半日寝かせてから焼いてみてください」
「 混ぜる量と寝かせる時間で出来上がりを確かめながら 中身が柔らかいパンが出来たら わたしの所に持ってきてください 時間は掛かると思いますか 創意工夫して下さいね」
空っぽになったランドセルをミハエルにあげた
「よ、宜しいのですか!」
「ええ 大事に使ってくださいね」
その日からランドセルがミハエルの
トレードマークになった。