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漁夫の利  作者: 郷新平
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戦いの行方

 2国で長い間、争っていた城の決着がつこうとしていた。この争いの先にあるのは何か?

 小さいながら城があり、小規模な城下町がある。町の周囲はすり鉢状の丘になっており、周辺は木々に囲まれている。

 丘の少し上には中央にあるような城と城下町がある。

 この二つの殿の仲は悪かった。そして、度々、小戦を続けていた。そして、この日、いよいよ、戦を終わらせる日が来た。

 この日は雨が降っていた。上の城の殿と軍師平吉は下の様子を伺っている。川を堰き止めているので、下の城下への水の供給は止まっている。

 甲冑を纏った殿はニンマリとその様子を眺めている。

「いよいよ、この戦が終わるわ。あの忌忌しい、奴とも今日で終わりよ。真にお主は天才軍師よ。中国の軍師、韓信と比べても、遜色ないわ!」

 軍師は不敵に笑う。

「いえいえ、某は韓信殿のやり方を模倣しているまで、本当に素晴らしいのは韓信殿。または某を起用して下さった殿の慧眼の賜物にございましょう」

「こやつ、嬉しい事をいってくれるわ。この作戦が成功した暁には、約束通り、儂の娘を嫁にくれてやろうぞ」

 軍師は平伏する。

「はは、ありがたき幸せ」

「がはははは」

 ふぅ、これで拙者の安泰は約束されたも同然。それもこれも、おのお人好しの貫太のお陰よ。

 平吉と貫太は同じ城の軍師で共に過ごしてきた。釣りをしながら、貫太は古の兵法を勉強していて、その案を次々と平吉に話し、それで、天下を取るんだと言っていた。平吉はその案を戦に活かし、殿や民衆の信頼を勝ち得てきて、町人は「生きる実感が得られますわ」と言って、喜んでいた。今回も案を頂戴した。

 平吉と貫太は殿の娘に恋をしていた。貫太は一度、娘と話す機会があり、話したら、興味を失ったらしい。好敵手が居なくなった平吉は喜んだ。好敵手が心変わりがしないうちに、平吉はこの戦では、自分で手柄を上げたかった。

 殿は平吉を見やる。

「実はと言うと、お主がアイツの夫の候補でよかったわい」

 平吉は眉を開き、殿を見やる。

「と言いますと?」

「アイツは一度、貫太と話した事があり、話が合わなかったらしい」

 兵法好きのアイツの事だ、大方、兵法の話をして、娘を辟易させたのであろう。

 殿の娘と下の城の殿の娘は同程度の美貌と知能らしい。

 雨が強く、降り注ぎ、ビュンビュンと吹き付ける。

 平吉は殿を見上げて、頷く。

「そろそろでございます」

 殿は顔を引き締める。

「水を吸ってしまうから、水責めで満足な結果が得られないから、周囲の木を伐採しろと言った時は面食らったが、それもこれもこの時の事を思えば、少しの苦労だったわ。」

 これも貫太の発言をそのまま取り入れた。難色を示された時はどうなるかと思ったが、何とか言いくるめることができて、うまくいったわ。

「殿、その愚痴は此度の戦が終わったら、多いに聴きましょうぞ」

 そう言うと、平吉は何でこんなに雨が降ってるのに、もっと上から水が流れてきてもいいんじゃないか?

 その時に

「放て」

 殿がそう言うと堰を切って、勢いよく水が流れた。

 同時期に上から土砂を含んだ水が濁流となり、流れてきた。皆は土砂に巻き込まれて、流されていった。

 平吉は過去に戦に勝った時に大喜びしている、自分を冷ややかな目で見ている。貫太を思い出した。

 あれは策を取られた怒りじゃなく、こんな所で満足している俺を蔑んでいたんじゃないか?

 上の城から上に進み、平面になる所まで、登りきった所に大きな今まで、大量の水を堰き止めて、これを機に切られた堰と水の流れを目で追う。下の城の殿と家族、軍師貫太、それと町人が見ていた。

 2城と町は消えた。暫くするとそこに湖ができた。

 その周辺には城と城下町ができている。

 殿と軍師が、釣りをしている。

 軍師の糸が引いている。

「貫太よ、竿が引いてあるぞ」

 貫太は魚を釣り上げようとすると、急に竿が重くなった。力入れて釣り上げると、釣り上げた魚に魚が食いついていた。

「これはこれは」

 魚を釣り上げると、貫太は暫く、バタバタと跳ねる魚を見つめていた。

「貫太よ。早く、捌いてやらなければ、魚が苦しそうではないか」

 貫太は殿を見ると

「拙者は輪廻転生を信じております。その定義でいくと住人は魚に転生したと思い、沈んだ住人は生を実感したいと申しておりましたので、平吉の代わりに、こうやって、生の実感を与えてやっているのでございます。」

「そうか」

 貫太は粋の良さで、魚は本当に住人の生まれ変わりだと思っていた。

「所で殿」

「何だ?」

「何で、拙者を取り立てていただいたのですか?」

「何となく、儂と似ている気がしたからじゃ」

「それは買い被りすぎで、ございます」

 貫太は上の殿の娘と話した時は策に対する、理解度は申し分ないのだが、何分、この一帯さえ、納めれれば、後は泰平に暮らせれば、良いという考えだったので、自分には合わなかった。なので、平吉に与えようと思い、天下を取るつもりなら、策を与えて、名声を得させ、後で自分は適当な所で抜けて、敵対勢力に付き、そこで実績を積んで、味方ができた所で独立して、三すくみの状態にしようと思っていた。

 過去に項羽と劉邦の時に韓信は劉邦について、2勢力になっていた所を今度は自分を韓信に見たて、3勢力になろうとしていたのだ。それが達成できないみたいだったので、下の殿に適当な理由をつけて、亡命した。

「お主は兵法が好きなんだろ?娘に聞いたよ」

「左様でございますか」

「娘もお主と話していると、お互いに気が合うらしくてな。結納を許可したまでよ」

「ありがとうございます」

 この殿は野心がある方なのだろうか?ない時は自分が政権を取り

 そんな事を貫太が考えていると

「儂も兵法に触れるのが好きでな、雨の日になると、いつ水責めで、乗っ取られるのか、肝が冷える毎日を送っている反面、そんな事ができるなら、儂は負けてしまうだろうと、思って、血が高ぶっていたのじゃ、じゃが、いつまで経っても来ない。その時にお主が来た。いよいよ、時が来たと思って、お主を迎える事にしたのじゃ」

「上の城の殿は小さい範囲で統治できれば、いいと考えておりました」

「儂は三国志が好きでな、曹操殿の様に、この戦乱の世を統治したいと思ってある」

 貫太は眉が開いた、このお方ならもしや

「この世は戦乱の世、力があり、この世を統治しようと思わないならば、拙者がつくべき人物ではありませぬ」

「大きくでたな、余の役に立ってくれるか?」

「尽力させていだきます」

「頼もしいな」

「はは」

「司馬炎を見逃す程、甘くはないぞ」

 司馬炎は曹氏から天下を簒奪した者、そこを疑っているとは、成る程、確かに一筋縄では行かないらしいわ。

 この戦乱の世と同じ様に殿が天下を統治した後に、そこを奪うか、自分が策を巡らして、敵を倒している時に奪いとられるか。

「なあ、この魚達は儂らに似てると思わぬか?」

「「ハハハハハ」」

 2人は腹の底から笑った。

 魚は跳ねるのが、終わり、命が尽きようとしていた。


2人の行く末は?

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