第九十二話:剣豪を訪ねて・帰路
福岡県古賀市の早朝。朝日が昇る中、ユウマたち一行は、新たなる仲間となった宮本飛鳥、伊東一枝、佐々木沙也加の三人と、しばしの別れを告げていた。
「では、約束通り、我らは九州の守りにつく。何かあれば、契約を通じて呼ぶがいい」
「うむ。だが、次に呼ぶときは、あの猿のような化け物以上の、骨のある相手を用意しておけよ」
飛鳥の言葉に、ユウマは力強く頷いた。彼女たちは、ユウマとの契約を結んだことで、いつでも東京の戦いに参戦できる、心強い味方となったのだ。
三人と別れ、再び8人乗りのワゴン車に乗り込んだ一行は、東京への帰路についた。だが、それはただの帰り道ではなかった。
「次なる目的地は、岡山県。剣聖・塚原卜伝の魂を継ぐ者を探します!」
彩花が、タブレットに表示した地図を指し示す。彼女の「武芸百人一首」を巡る旅は、既に始まっていた。
岡山で一行が見つけたのは、塚原美琴…古刹で静かに茶道の師範を務める、穏やかな女性だった。彼女は戦いを好まなかったが、ユウマと玲奈の持つ、国を憂う純粋な想いに共感し、静かに契約を受け入れた。
次に訪れたのは、古都・奈良。柳生新陰流の道場。
「…柳生石舟斎。私の桜新陰流の、大元になった流派…」
さくらは、どこか緊張した面持ちで、道場の門を叩いた。現れたのは、柳生の魂を継ぐ、凛とした佇まいの女性師範、柳生美津子。彼女は、さくらの剣を一目見るなり、その源流を見抜いた。
「…面白い。我が柳生の剣に、仁の心が加わると、そのような優しい刃になるのですか」
二人は、言葉の代わりに、木刀を交える。さくらの剣は師範に及ばなかったが、その戦いの中で、さくらは自らの剣の価値と、戦乙女としての誇りを、確かに取り戻していた。師範もまた、さくらの剣に未来を見出し、協力を約束した。
道すがら、一行は次々と、歴史に名を遺す剣豪たちの魂を受け継ぐ者たちと出会い、契約を結んでいった。ある者は、その力を試すかのように激しい戦いを挑んできた。またある者は、ユウマたちの覚悟を問うだけで、静かに力を貸してくれた。
そして、東京へ戻る最後の夜。高速道路を走る車内から、満天の星空を見上げながら、ユウマは今回の旅の成果を噛み締めていた。
「宮本武蔵、佐々木小次郎、伊東一刀斎、塚原卜伝、柳生石舟斎…それに、上泉信綱まで…。すごいメンバーが集まってくれたな」
「ええ。日本の歴史が持つ、霊力の厚みと強さを、改めて実感したわ」
彩花の言葉に、全員が頷く。
ほしなとさくらの瞳には、もはや迷いはない。玲奈もまた、自らの役割を、前向きに受け止め始めていた。
「帰ったら、すぐに作戦会議だ」
ユウマの瞳に、強い意欲の炎が燃える。
「八咫烏に、高梨幸太郎に、そして菅原天音に、見せつけてやる。俺たちが束ねた、この国の本当の力を!」
ワゴン車は、無数の仲間たちの想いを乗せて、決戦の待つ東京へと、ひた走っていた




