第九十話:巌流島大乱戦・神話 vs 剣技
「オレと遊べ!骨のあるヤツはいねぇのか!」
孫美空は、その名の通り、天真爛漫な子供が戯れるように、しかし一撃一撃が山を砕くほどの破壊力を持つ如意金箍棒を振り回す。
その規格外の攻撃に、日本の剣技を極めた三人の剣豪が束になってかかっても、まるで相手にならなかった。
「ぐっ…!太刀筋が、読めん!」
宮本飛鳥の二天一流の剣が、美空の変幻自在の棍棒術にことごとく弾かれる。
「なんちゅう馬鹿力たい!」
伊東一枝の一刀流の鋭い斬撃も、金剛不壊の肉体を持つ美空には、傷一つ付けることができない。
「我が間合いが…!」
佐々木沙也加の長大な野太刀は、その長さを自在に変化させる如意棒の前では、もはや何の利点にもならなかった。
剣術ではない。妖術。神話の力。理屈が通じない圧倒的な暴力の前に、三人の剣豪は防戦一方となり、じりじりと追い詰められていく。
「おほほほ、どうです?わたくしの斉天大聖は。あなた方のちっぽけな剣技など、児戯に等しいでしょう?」
高みの見物を決め込む朱麗が、扇子を広げて嘲笑う。
その時だった。
「―――させません!」
「私たちの仲間を、好きにはさせない!」
戦いを見守っていた、星荘と桜親が、その戦いに乱入した。彼女たちの瞳には、先ほどまでの落ち込んだ色はなく、仲間を護るという強い決意の光が宿っている。
「「―――八犬義盟・双星ノ儀!」」
二人の戦乙女の霊力が一つに重なり合う。それは、玲奈を介さずとも、互いの絆だけで発動させる、彼女たちだけの合技。星荘の【義】の槍が防御を、さくらの【仁】の刀が攻撃を担い、完璧な連携で美空の猛攻に割って入ったのだ。
「ほう、面白いのが出てきたな!」
美空の標的が、剣豪たちから二人の戦乙女へと移る。
『さあ、始まりました!剣豪と戦乙女のドリームタッグが、中華最強の神に挑む、世紀の一戦だ!』
ユウマが、戦況を即座に実況配信する。その熱のこもった言葉を、玲奈が受け止め、共鳴の力へと変えて、星荘と桜親へと送り込んだ。二人のオーラが、再び力強く燃え上がる。
「オラオラオラァ!」
美空が、如意棒を巨大化させ、二人をまとめて薙ぎ払おうとする。
「今です、星荘さん!」
「ええ!」
さくらが神速で美空の足元に滑り込み、その動きを一瞬だけ止める。その刹那の好機を、星荘は見逃さない。彼女は天高く跳躍し、ありったけの霊力を込めた槍を、流星のように振り下ろした。
「喰らいなさい!『星嵐烈破・天魁』!」
「ぐっ…!やるじゃねえか!」
さすがの美空も、その一撃は完全に防ぎきれず、猿の面の一部が砕け散った。
「…時間切れ、ですわね」
それを見た朱麗が、静かに扇子を閉じる。
「斉天大聖、戻りなさい」
その言葉と共に、美空の頭の緊箍児が締め付けられ、彼女は悔しそうに顔を歪めながら、主人の元へと撤退していった。
嵐のような戦いが終わり、島には静寂が戻る。
飛鳥たち三人の剣豪は、その場に立ち尽くしていた。自分たちの剣技だけでは、神話の領域には届かない。だが、戦乙女たちの「絆」の力は、その壁を打ち破る可能性を秘めている。
剣士としての純粋な強さだけでは、この世界の危機は乗り越えられない。
その現実を知る結果になった。
宮本飛鳥は星荘と桜親の元に行き「御見それいたしました。剣技だけではあ奴らには歯が立ちませんでした。どうか我らにその術を身に着ける稽古を授けてはくれまいか?」
いきなり仕立てに出られた星荘は「へぇっ!」とビックリしながら恐縮するが…
「宝玉の加護を得られているなら、あとは使い方を覚えるだけだから…すぐに、皆才能ある方出来る様になるよ!」と少しだけ先輩風を吹かせ、さっきまでの落ち込みは無くなったようであった。
「に、しても…やっぱり監視されてたね…」桜親はユウマにボソっと言う。
ユウマも護衛に二人を付けていても簡単ではないと思い知らされていた。




