第八十七話:福岡決闘・二天一流 vs 一刀流
「まあ、せっかく外まで付き合ってもらったんだ。一手、手合わせ願おうか」
体育館から追い出されたというのに、宮本飛鳥の瞳は、楽しそうに輝いていた。伊東一枝も、その挑戦を断る理由はない。二人は、体育館横の広大な駐車場で、竹刀を手に静かに対峙した。
「木刀や真剣なんて使いだしたら、大騒ぎになった時に収拾がつかないからな…」
ユウマが、二人のただならぬ気配に冷や汗をかきながら判断する。そして、ふと、悪戯心が湧いた。
「うーん…ついでだから、実況しちゃうか!」
ユウマがスマートフォンを取り出し、配信を開始する。
『【緊急生配信】剣豪・宮本武蔵 vs 一刀流・伊東一刀斎!世紀の対決、独占生中継!』
その、あまりにパワーワードが過ぎるタイトルは、瞬く間にネット上で拡散された。二人が構え終わった時には、急な配信にも関わらず1万人を超える…視聴者数はとんでもないことになっていた。
「飛鳥さん、分かりますか?俺と共鳴して、霊力の供給がされてるのが…」
「うむ。この身体に力が満ちてくる感じ、悪くないぞ。…すまんが一枝殿、今日のわしは、どうやっても負けようがない」
「その雰囲気…まあ、その自信を持つんは、よう分かるばい」
一枝は、不敵に笑う。
「ばってん、うちが『一刀斎一刀流』を名乗るのは、『二の太刀要らず』やけんたい。無駄に霊圧が高いだけが、強さやないっちゅーことを、証明しちゃる!」
「言うねぇ!いざ!」
『うおお、どうなる剣豪の対決!世紀の一戦を見逃すな!』
ユウマが煽り、視聴者がコメントで盛り上がる。
だが、星荘と桜親は、その熱狂にはついていけなかった。ただ剣士として己を鍛え上げてきた二人が放つ、純粋で、あまりにも濃密な霊力と闘気の圧力に、完全に圧倒されていたのだ。
じり、じり…と、二人の間合いが詰まっていく。
そして―――
―――瞬間、一閃。
互いの一の太刀が、目にも留まらぬ速さで激突する。
バキィィィィン!
竹刀は、「破竹」という言葉が生まれる所以を証明するかのように、凄まじい音を立てて爆散した。勝負の行方は、武器の紛失で終わりかと思われたが、
「…この、威力…くそ、完敗たい」
膝をついたのは、伊東一枝だった。
「竹刀でなければ、今頃、爆ぜていたのはウチの頭やった…」
博多弁で悔しさを滲ませる一枝に、飛鳥は手を差し伸べた。
「まあ、わしはちとズルをして、そこの共鳴者とやらと契約しているでな。お前も契約して真価を発揮すれば、もっといい勝負ができるであろう」
「…よかろう」
一枝は、その手を取った。
「修行の成果ば発揮する場所があるなら、望むところたい」
こうして、伊東一刀斎の魂を持つ伊東一枝も、仲間に加わった。
「よし、わしが付き合えるうちに、巌流にも会っておこう。――船島に行くぞ!」
なんだか、すっかり飛鳥が仕切っているが、その頼もしさに、誰も反対する者はいなかった。
ただ、8人乗りのワゴン車が、これでエライ狭くなったことだけが、新たな問題だった。




