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バトル・メイド・サーヴァントII~大東京八宝玉魔法陣編  作者: 黒船雷光


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第八十五話:熊本霊巌洞・新たなる契約

 「…それは、かなりの僥倖(ぎょうこう)です」


 気絶した玲奈を介抱しながら状況を報告すると、電話越しの安倍星華(あべ・せいか)の声は、感嘆と、控えめながらも確かな喜びを滲ませていた。

「宮本武蔵の魂を宿した戦乙女…その記録は、我々『星詠司』にも一切存在していなかった。ユウマ、お前がその場で契約し、一度本部までお連れしなさい」


 早速の成果に、一同は安堵の息をつく。だが、当の本人は、全く状況を理解できていなかった。

「で、わしにどうしろと?」

 宮本飛鳥は、刀を鞘に収めながら、心底不思議そうな顔でユウマたちを見つめている。


 ユウマと彩花は、これまでの経緯――東京魔法陣のこと、八咫烏(やたがらす)の暗躍、そしてこの国が直面している危機を、一から十まで丁寧に説明し、協力をしてもらえないかと交渉する。


 話を聞き終えた飛鳥は、ふむ、と顎に手を当ててしばし黙考した後、静かに口を開いた。

「…この日ノ本の危機に、わしの武芸が役に立つというのなら、協力は惜しまない。と言いたいところだが、生憎、わしはまだ学生の身だ」

「え、学生!?」

 あまりのギャップに、ユウ-マたちが驚きの声を上げる。


「ええ。学生を辞めてまで、東京に行く必要はありません」

 電話の向こうで、星華が冷静に補足する。

「ユウマとの契約を結んでいただければ、貴女が普段の生活を送っている間は、我々から干渉することはありません。ただ、我々が助けを必要とする時、その契約を通じて、戦場へと推参していただく…そういう形で結構です」


 その提案に、飛鳥は「なるほど」と頷き、契約を承諾した。

 ユウマと通じ合い、霊力の回路が繋がる。

「ほう、これは…面白い。必要に応じて湧き上がるこの霊脈の力…遣わせてもらってもかなわないのかね?」

「もちろん大丈夫だ…と思う。俺もそこをいつもすごく意識しているわけじゃないんだけど…ただ、様々なネットを介した情報や気持ち、応援なんかを力に変えて送ることが出来るのが俺の力なんだ…」

その刹那…ユウマはぶわっと何かを体から抜かれるような感触を感じる。

「ははは…コレは良さそうだ!」宮本飛鳥の姿が袴そのままに和洋折衷の武技礼装になった。


「日ノ本の敵になる相手は遠慮なく斬ってよいのだな?」「え?…ああ、まあ…」

飛鳥の放つオーラは強者のそれであることがユウマでさえよく分かった…


 こうして、一行は宮本武蔵という、この上なく強力な仲間を得ることができた。だが、その大きな成果とは裏腹に、帰りの車内の空気は、どこか重かった。


「…」

 後部座席で窓の外を眺める玲奈は、すっかり落ち込んでいた。誘拐されたかと思えば、今度は本気で殺されそうになる。あまりの恐怖体験の連続に、心がすり減ってしまっていた。隣で彩花が「でも、玲奈ちゃんがいたから、飛鳥さんは私たちの実力を認めてくれたんだよ!」と懸命にフォローするが、その言葉もなかなか届かない。


 そして、その前の席に座る星荘(ほしな)桜親(さくら)もまた、静かに唇を噛み締めていた。八犬士の中でも最強クラスであるはずの自分たちが、二人掛かりで全く歯が立たなかった。

 これまでも、新選組・土方美鈴(ひじかた・みすず)や、実戦においても各地区武将の剣や技とも対等にやり合ってきた自信があったが、今回はその圧倒的な、しかも契約前の本人の力だけによる霊圧に完敗した…

 その事実は、彼女たちの誇りを深く傷つけていた。


(飛鳥さんは、とんでもなく強い。それは間違いない。でも…)

 ユウマは、バックミラーに映る仲間たちの沈んだ顔を見ながら、新たな不安を覚えていた。


(これから先、こんな風に、俺たちの心を折るような強敵ばかりが出てくるんじゃないのか?果たして、このやり方で、本当に日本を…みんなを守っていけるんだろうか…?)


 新たなる仲間との出会いは、同時に、彼らがこれから進む道のりが、これまで以上に過酷であることを、静かに突きつけていた。

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