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バトル・メイド・サーヴァントII~大東京八宝玉魔法陣編  作者: 黒船雷光


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第八十三話:熊本・霊巌洞の主

 九州・熊本空港に降り立った一行は、レンタカーに乗り込み、最初の目的地へと向かっていた。ハンドルを握るユウマ、ナビを操作する玲奈、そして後部座席には、護衛役の星荘(ほしな)桜親(さくら)、そして今回の作戦の知恵袋である彩花が座っている。


 ミッドナイト基地には健太だけが取り残されて、留守番をしている。

「詐欺だ陰謀だ…俺もハーレム旅行に行きたいぞ!!」

「五月蠅い!さっさとサイトの更新をしろ…」安倍星華(あべ・せいか)も容赦ない。

「あ、星華さんも生きたかったのに行けなくて八つ当たり…イタイイタイすいません!」

何となく健太も楽しくやっている様である。


 震災で被災した熊本城はかなりの復旧をしてその雄姿を見せている。

「わー!熊本だー!ネットで見たんだ、馬刺しと辛子蓮根がすっごく美味しいんだって!任務が終わったら、みんなで食べに行かない?」

 後部座席で、桜親(さくら)が早速スマートフォンの観光サイトを見ながら、無邪気にはしゃいでいる。

「さくらちゃん、私たちは修学旅行に来たんじゃないのよ」

 玲奈が呆れながらも、その表情はどこか楽しそうだ。

「はは、まあ、少しぐらいは息抜きも必要だよな」

 ユウマが苦笑する。


 だが、一人だけ、その和やかな空気に馴染んでいない者がいた。

「全員、警戒を怠らないでください。この地域の霊気は、東京とは比較にならないほど荒く、そして濃密です。奇襲には絶好の場所と言えます」

 星荘(ほしな)は、窓の外を鋭い目つきで睨みつけ、片時も気を抜いていない。

「ほしなちゃん、ちょっと固いよー。あ、見て!くまモン!」

「あの黒い熊が、擬態した式神である可能性も否定できません。油断は禁物です」


 その、あまりに真剣な星荘の様子に、彩花がくすくすと笑った。

「でも、ほしなちゃんの言うことも、ある意味では正しいのよ。私たちが今走っているこの肥後の国は、神話の時代から続く、強力な伝説が息づく土地。ほら、見えてきたあの金峰山が、霊巌洞がある場所。九州でも有数の霊的パワースポットなの」


 彩花は、手元のタブレットにまとめた資料を皆に見せる。

「これだけ強い霊脈があるからこそ、この地には、多くの強い魂が引き寄せられた。大本命の宮本武蔵はもちろんだけど、巌流島の佐々木小次郎、タイ捨流の丸目蔵人、一刀流の伊東一刀斎…それにね」

 彩花は、いたずらっぽく笑う。

犬田雫文(いぬた・しずく)ちゃんの杖術の流祖、夢想権之助も、武蔵とこの地で決闘したという伝説が残ってるんだよ」


「へぇ…雫文(しずく)さんのルーツも、ここに…」

 ユウマの言葉に、この旅が、ただのスカウトではない、仲間たちの魂の源流を辿る旅でもあるのだと、一行は改めて認識した。


 やがて、車が霊巌洞の麓に到着する。ひんやりとした、しかしどこか神聖な空気が肌を撫でた。

「なんか、空気が違うね…」

「ええ。昔の武芸者は神道と密接だったから。己を極限まで鍛え上げる過程で、霊脈や、こういう神秘的な大自然の力に近い領域で修行してその域まで達していたのよ」

 彩花の説明に、一同は観光気分で、しかし注意深く周囲の様子をうかがう。


 その時、洞窟の奥から、凛とした声が響いた。

「―――なんだ、うぬらは?」


 現れたのは、古風な口調で話す、長い黒髪を一本に束ねた精悍な顔つきの女性だった。白い道着を着ている彼女は、星荘(ほしな)桜親(さくら)を一瞥し、ふむ、と頷く。

「…変わった波動を持った輩が訪ねてくると感じて、顔を出してみたが…霊脈に守られた女もいるな?このような日本の南端近くに、何の用だ?」


「あ、あなたは…?」

 ユウマが問い返すと、女性は堂々と名乗りを上げた。


「我が名は、宮本飛鳥(みやもと・あすか)。武蔵の志を継ぐ者なり」


「いきなりキタァァァ!」

 大本命とのいきなりの遭遇に、ユウマは興奮を隠せない。


 飛鳥は、そんなユウマの様子を意にも介さず、続ける。

「先日は、大陸の輩が我を訪ねてきたが、『配下に入れ』とほざくので、刀の錆にしてやった。…さて、お主たちの目的は何か?」


 その問いに、言葉で答えた者はいなかった。

 星荘(ほしな)桜親(さくら)が、即座に武技礼装(メイド・コス)へと姿を変え、それぞれの武器を構える。それが、彼女たちの答えだった。

 その様子を見て、飛鳥は、楽しそうに口の端を吊り上げた。


「ははは、そうだな。武芸者が口先だけで語るのは、片腹痛い。―――いざ!」

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